ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第117話 どうしてこうなった!

 ラシアはティーガーとロディーの話を聞いて……テーブルに倒れ込み頭を抱えている。

 

 脳内では緑の髪の歌姫が歌っている。そのリズムに合わせてラシアも声が出る。

 

「どうしてこうなった!? どうしてこうなった!?」

 

「どうしてこうなったって自分な、何が気に入らんねん。めっちゃ名誉なことやで?」

 

 変な踊りを踊りそうなラシアにティーガーは突っ込みを入れるが……ラシアの心境はそれどころではない。

 

 二人がラシアに用事があってやってきたのは良い。

 

 ロディーが超有名人だったので、おやっさんもセレットもびっくりしていたのは少し面白かった。

 

 良いのはそこまでだ。二人から話を聞くと……今回の騒動を解決に導いた功労者として、ラシアが城へ呼ばれ、王様とか国の偉い人達から勲章授与とかそんなイベントが発生するらしい。

 

 寝耳に水というか……寝耳に放水ぐらいの勢いがあるとラシアは思う。

 

 ラシアがやった事は、騎士団を連れて箱船ダンジョンを調査して踏破したぐらいだ。

 

 十分に凄いとは思うが、デゴットの依頼になっているので、そこまで凄い手柄にはならないはずだ。

 

 おやっさんにも人と話をしろと言われているので、ラシアはティーガーとロディーにとても詳しく聞いたら何か色々とおかしかった。

 

 とんでもなくおかしかった。

 

 ロワンテがホムンクルスだったという事を見抜いたのもラシアになっているし、地下のホムンクルス培養装置を発見したのもラシア。

 

 墓地の地下に建造されていた魂を移動させる装置を発見したのもラシア。

 

 そして箱船ダンジョンにあった、ホムンクルスを魔物にし保存する装置を破壊したのもラシアと騎士団という事になっているらしい。

 

「そういう訳やからまた国のほうから連絡あると思うから待っててな。しかし今回はホンマに助かった! お礼ぐらいしか言えんけどありがとうやで!」

 

「ティーガー! お礼を言う気ならもっとちゃんと言いな! ラシア隊長。この度は本当にありがとうございました。私が聖騎士のトップとなった暁には、このような事が二度と起こらないように気を引き締めて参ります」

 

 ラシアは思う。ここで……誤解を解いておかないと間違いなく大変な事になる。ティーガーやロディーは他人に比べれば好意的だ。

 

 だからラシアは徹底的にちゃんと説明する。今までの自分を悔いるように、全ての間違いを正すように。

 

 ティーガーもロディーもいい人だ。ラシアの話を一言一句間違えないように聞いている。

 

 ……

 

 …………

 

 ようやくラシアは全てを説明し終えたが……ティーガーもロディーも難しい顔をしている。

 

「そういう事です。皆さんが勘違いして良い方向に向かっただけなので、私は何もしていないので無理です! 行きたくないです!」

 

 切実な訴えにティーガーが頷いた後に口を開いた。

 

「なるほどな! そういう事にして欲しいんやろうけど……事が事だけに無理や!」

 

「絶対分かってない!」

 

「大丈夫! ウチは分かっとる! やけど簡単に説明したる」

 

 国王や宰相に何かを報告する時、今回のように騎士と聖騎士が力を合わせて解決したのなら、そこにあるのは結果だ。

 

 だから報告するのは結果だけ。

 

 途中で誰がどう頑張りました、などの工程はもはや言う必要はないのだ。解決しているのだから。

 

 だからラシアがどう言おうが……ラシアが言った事でホムンクルス工場などが見つかった以上、今更、嘘や本当といった事は関係ないのだ。

 

 伝えた事が事実。しかもどこにも間違いはない。

 

 ラシア自身も箱船ダンジョンに行ってロワンテを倒し、施設を破壊しているのだから。

 

「違うんです! そうじゃないんです!」

 

「人と話ししたくないのは分かるけど国王陛下やで? すっごい名誉な事やろ。何が不満なん?」

 

「不満しかないです!」

 

 ロディーは困ったように笑い、ティーガーはもう一度考え伝える。

 

「じゃあ……ラシ。ウチと立場入れ替えて考えよか。ウチが今から嘘とか適当な事を考えて、そこにお宝があると言いました。ラシはその事を知りません。けど、その場所に行くと本当にお宝がありました……そこでウチが嘘でしたとか言っても宝はなくなるか?」

 

「どうしてこうなった!」

 

 ラシアはテーブルに倒れ込みもう瀕死だ。何があっても国王とかそんな偉い人達の前になんか行きたくない。

 

 知らない間に騎士団と聖騎士が解決したと思っていた事に自分を入れられても意味不明だ。人前に出るのが嫌なのもあるが……作法とかそんな事は絶対に分からない。国王陛下にタメ口をきくような事はしないが……それでも謁見などどうやるの? という話だ。

 

「ティーガーさん。ロディーさん……どうにかなりませんか?」

 

「隊長は……本当にその辺変わりませんね……ローウェンテニアでも理由をつけて何度、謁見を逃げた事か」

 

 記憶にない事を言われてもどうしようもないと思っていると、ティーガーが少し考えてくれているようだった。

 

「うーん……ラシは謁見が嫌やねんな?」

 

「はい。人が多い所と権力者が多い所がさらに嫌です」

 

「自分……ローウェンテニア王女直属騎士やろ……まぁそれはええけど。方法は一つある。ラシにしたらこっちの方がええかもな」

 

 ラシア的にはそんな面倒くさい方法があるのなら……切実に回避したいので、ティーガーが思いついた方法を聞いた。

 

 それは……デルパロア大公との和解というか、話し合いだ。

 

 そこで、お互いの誤解を解き、大公から国王に謁見の話は無しにしてもらうと言うことだ。

 

 ティーガーから見ると、娘のエリゼが話をややこしくし、ラシアと大公の関係がおかしくなったのだ。

 

 ラシアが普通に冒険者をしているぐらいなら、目をつけられる事もない。

 

 優秀であれば声をかけるかも知れないが……リュートリア達のように大公が育てている冒険者も多いので、接点がないのだ。

 

 全ての元凶はエリゼとなる。

 

 ティーガーから見ても、ラシアは精神面は常識人枠だ。戦闘面は除く。大公は…………ギリギリ、話は通じると思う。

 

 だからこれ以上に拗れるかも知れないが……今のままはお互いによろしくないという事だ。

 

 どちらも得をしていなくて損をしている。

 

 お互いがお互いのことを知らずに、イメージだけが悪い。そんな感じだ。

 

「誤解が解けたら……大公やったらなんとかしてくれると思う。あとはラシがどっち取るかやな。国王に謁見するか……大公と話するか」

 

 ラシアは考える。謁見する方がたぶん命の危険はない。だけど……これから先で様々なダンジョンに行ったりするのに、いつまでも変な確執があって良いことはない。

 

 味方でなくても……敵なら敵とはっきり分かる方が良いのだ。

 

 話ができるのなら、良い機会ではないのかなとラシアは思う。

 

「……ここを逃したら、大公と話す機会がないような気がするので、ティーガーさんお願いできますか?」

 

「ウチに任しとき。まーそっち選ぶとは思ってたしな。ただ一つだけ言うとく。命の危険がない訳ではないから、そこは覚えとくんやで。なんせ大公やからな」

 

 ラシアは頭が痛い。だけど誤解が解けるならその方がいいのでラシアが頭を下げると、ティーガーがすぐに走って大公の元へと向かっていった。

 

「……ラシア隊長。騒がしい娘で申し訳ない」

 

 ゲーム時代のロディーを思い出すとあんな感じだったのでその事を伝えると、ロディーは苦虫を噛み潰したような顔になった。

 

 そして話が落ち着いたので、リレッサやナットンが二階から降りてくる。

 

「ラシア、ロディー。話は終わりましたか?」

 

「はい。今は返事待ちといった感じですね」

 

「娘がお騒がせしています……ん?」

 

「あ……ローウェンテニアの赤虎」

 

 ナットンがロディーを捉えてそう言った。ラシアも、確かロディーの二つ名ってそんな感じだったなーと思い出す。

 

「ボルトルデの機械人形!? どうしてこんな所に!? その姿、量産型か!」

 

「試作型ですが? あと名前はナットンです」

 

 すぐに剣を取り出し構えるロディーを、ラシアは慌てて止めて敵ではない事を説明した。

 

 そんな事をやっていると、また客が来たようでラシアの耳に外の話し声が聞こえる。

 

「うぉい! ガロ婆! ここまで来て引き返そうとするとか、どこの子供にゃ!」

 

「うっさいよ! 帰るって言ったら帰るんだよ!」

 

「駄目にゃ! ここで和解しとかにゃ、もうチャンスはないにゃ! 弟子と孫の死を無駄にするんじゃないにゃ!」

 

「あーあー! 聞こえないよ!」

 

「お前ら縛るにゃ! 無理矢理にでも連れて行くにゃ!!」

 

 ティーガーはまだ戻ってくる気配がないのに……今日はいつもの数百倍大変になりそうだなと思った。

 

 そして……少し日が流れ、大公との対話の日を迎えた。

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