ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第118話 先へ行く為に

 ティーガーのおかげでもあり、せいでもあるが、ラシアは大公との話し合いが実現する事になった。

 

 ラシア的には……今までイメージだけで見ていたので、この話し合いでどういう人か見極めたい。

 

 今はどういう人か分かっていないからだ。セレットやガロニアといった錬金術師達は、ろくでもない奴だという。おやっさんやグオン、元冒険者や現役の冒険者の評判もよろしくない。

 

 だけどパルサーやティーガーといった騎士や聖騎士は、立派とまでは言わないが、国のためになら何でもする凄い人という意見だ。

 

 それは二人の親であるデゴットとロディーも似たような物だ。デゴットは、自分はあそこまで割り切れないし、絶対に国には必要な人物だと言っていた。

 

 ロディーはまぁ私怨たらたらなので放置でよし。呪詛しか言ってない。

 

 ちなみに……司教派の聖騎士を壊滅させたのも大公の仕業だそうだ。中身は……どっちもひどすぎて言えない。

 

 現司教の中身は、前の前の司教……なんか良い感じの体の持ち主を拉致って、ロワンテの装置で作り替えてまた司教になったそうだ。

 

 そこを完全に潰して、聖騎士は貴族派にまとめ、ロディーが聖騎士のトップになるそうだ。

 

 その辺は国王とか国のお偉いさんと、大公が話し合った結果らしい。

 

 だから今回の会談でラシアがやる事は見極めるだけ。自分の事を好意的に見てくれるならよし、嫌いでもよし。ラシアには帰るという目的があるので、その邪魔さえしなければどう思われていてもよし。

 

 全ての人から好かれるなど聖人か詐欺師だけ。

 

 そんな事を考えながら、昼食に近い朝食を食べながら、ラシアはセレットとガロニアを見ている。

 

 こちらはフウコウとリレッサのおかげで和解が成立した。

 

 ガロニアが宿を襲撃した訳ではないが……ティアやおやっさん、ダード達にも怪我をさせた。

 

 だけど……ラシアはガーゼンやベニユッドの最期を知っている。

 

 その上でフウコウがガロニアを縛って連れて来て、理由を説明した時に、最初に頭を下げたのはリレッサだった。

 

 おやっさんも一戦やりそうなぐらい怒ってはいたが……毒気を抜かれた訳ではないが、思う所があったのだろう。

 

 ガロニアを蹴り飛ばした事を謝り、あの騒動に関わった者全員が頭を下げて謝った。

 

 敵対しないのならそれで良し、ぐらいの感覚だったが……ラシアの視線の先にいるように、宿に遊びに来るようになったのでなんとも変な気分だ。

 

 そんな事を考えていると、おやっさんがラシアの向かいに座った。

 

「お前はいっつも頭爆発してんな。起きたら櫛ぐらい通せ」

 

「おやっさん。ボサボサ頭の私を見られるのは寝起きの特権ですよ」

 

「あほか。もう少しシャキッとしろ。お前は噂の白の騎士とか白獅子だろうが」

 

 白の騎士は前から言われているので良いのだが、白獅子はティーガーがパルサーの青豹を流行らす時についでに広めたらしい。鎧が白いだけなので……黒い塗料で塗ってやろうかと思う。

 

「おやっさん的には……どう? 良かったと思う?」

 

 ラシアはセレットとガロニアを見ながら言ったので、おやっさんにも伝わったのだろう。

 

「どうだろな。現役の時なら……やりに行ってるが……俺も丸くなったんだろうな。宿の主人をやってたら分かるが……暴力で解決する方が少ないからな」

 

「なるほど……冒険者は?」

 

「一に暴力、二に力、三、四が似たような物で五に金だ。六はコネ」

 

「……冒険者って終わってるかもしれない」

 

「今更か。誰でもなれて力さえあればわりと許される職業だぞ」

 

 おやっさんの性格上、納得はしていないとはラシアは思うが……おやっさんも大人だったんだなーと思う。

 

 和解した次の日からは、なんというかおやっさんとセレットの距離が近くなった。なんかこう新婚さんみたいな甘い感じになっている。まぁ新婚なのだが。

 

「まぁ……お前の場合は相手が大公だ。俺よりは大変だろうが頑張れよ」

 

「お互いの生活の邪魔にならずに、敵対しない関係が一番の落とし所ですけどね」

 

「死んだら花ぐらい添えてやる」

 

「……そんな結末になるなら苦しまずにお願いしますって感じっすわ」

 

「アホか」

 

 そこでラシアは思う。死んだらどうなるのかなーという事だ。

 

 死んだら死んだなのだが……もし生まれ変わりみたいなものがあって、リセットされて赤ちゃんから始まるとしても……正直この世界だけは嫌だなと思う。

 

 人間じゃないならどこでも同じかもしれないが、人で生まれ変わるなら元の世界がいいなと思う。

 

 異世界は想像以上に住みにくいのだ。

 

 ……

 

 そして……それから数日が経ち、ラシアは大公との話し合いの日を迎えた。

 

 お互いに何かあっては駄目なので……警備は恐ろしく厳重だ。

 

 騎士団側からはデゴットも出て、上から数えて二十人くらいの強者が来ている。

 

 この前、箱船ダンジョンでご一緒にしたお兄さんお姉さんもいて元気そうだ。やっぱりちょっと軽い感じなので、ラシアを見ると手を振っている。

 

 新生聖騎士もロディーを筆頭に同じぐらいの人数が来ている。こちらは騎士団と違い、ラシアの事はあまり知らない感じなので戸惑いや畏怖もある。

 

 共通しているのは全員が完全武装。

 

 大公側も……何かあったら確実に潰すという気なのだろう。

 

 自身の配下である冒険者達も集結している。

 

 その中にはリュートリア達もいる。

 

 そしてラシアも完全武装だ。聖銀鋼の鎧を身に纏い、背にはディスラクシオンツールで強化したプラティディオンハンマーを背負っている。

 

 これに関しては大公からの指定だ。意味は分からないが、装備の指定があったので着ている感じだ。

 

 ラシアの左右には完全武装のパルサーとティーガーがいる。

 

 何というか二人ともとても絵になるなーと思い屋敷の中を歩いていると、ティーガーに話しかけられる。

 

「これだけの人数がおるけども……ラシが暴れたら止められへんのも問題やな」

 

「暴れませんけどね」

 

「でも、仮に全員が襲ってきても倒せるやろ?」

 

 ラシアが知らないアイテムなどを使われたら詰みだが、真正面から来た場合なら多分だが大丈夫。なんというか搦め手を使うタイプの職が少ないからだ。魔法使いの職もいるが、全員が正面切って火力で押せ押せタイプの強者だ。

 

 だからラシアの方が火力があるので、戦いになったら勝てるとは思う。

 

 どこかその辺に隠れているとは思うが、ラシアが苦手な遠距離や暗殺系の職が少ないのは、もう少し考えた方が良いとは思う。

 

「そうですね。仮に私を倒すなら、もう少し搦め手を使うタイプの職がいた方が良いですよ。サモナーとかネクロマンサーとか辺りですね。対人なら初手を潰せるだけで本当に強いので」

 

「なるほどなー。その辺はほとんど見ーへん職やな。ローウェンテニアにはいっぱいおったんか?」

 

 ゲームとしての記憶はあるが、ラシアの中にリレッサ達が知っているローウェンテニアの記憶はない。だから答えるのが難しいなーと思っていると、目的の部屋へと辿り着いた。

 

 そして中に入ると大公が一人で待っていた。

 

 そして……大公はティーガーとパルサーに退室を命じ、ラシアと二人で話をする事になった。

 

 ティーガーもパルサーもお互いに何かあっては駄目なのでその命令を拒否しようとしたが……そんな事ができるはずもないので、部屋の外へと出て行った。

 

「さて、どうなるやろな……ええ感じに行くとは思うけども……」

 

「お互いに悪ではないと思いたいが……自分より嘘が上手い嘘つきの嘘は分からないからな」

 

 パルサーとティーガーがロワンテという同じ顔を思い出していると、デゴットとロディーがやってきた。

 

「パルサー。どうなった?」

 

「デルパロア様の命令で私達は外で待機だ。今は二人きりで中で話している」

 

「……ラシア隊長はともかく。大丈夫なんか?」

 

「おかん。そこは大丈夫ちゃうけど、どうしようもないで」

 

 騎士団にしても聖騎士にしても……どちらも必要な人物だ。様々な思惑は確かにある。それでも二人が敵対する状況は避けたい。

 

 だからデゴットも騎士団の精鋭を集めた。ラシアへの恩もある。

 

 大公には、こちらもこれだけの事をやっているのだと見せる面もある。

 

 聖騎士側から見てもそうだ。ロワンテの企みをほぼ何の被害も出ない状況で解決させた。

 

 そんな人物に協力してもらうのは恐ろしいが……敵対して良いことなど全くない。

 

 だから警備に当たっている精鋭達は、何もない事を祈り警備に当たっている。

 

 そして……長い時間をかけ、日付が変わろうとしたタイミングでようやく会談は終わった。

 

 二人の会談内容は、誰にも語られる事はない。

 

 大公の顔はいつもと変わらない。ラシアの顔はいつもより疲れている。

 

 ティーガーが二人にどうなったかを尋ねると……多くは語られなかったが、お互いの誤解は解けたという事だった。

 

 そして……ラシアが国王から勲章授与される話は消えたが、Xランクへと昇格した。




ここでこの章は終わります。

次回から新章に入ります。会談の内容もそこで間に挟みつつと言う感じで。
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