ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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八章 進む先
第119話 先へ


 大公との会談も終わり、数日が経った。

 

 今までの事を考えれば……大団円なのだが、物語と考えるとモヤモヤが残る展開だと思う。

 

 とはいえ、お互いの誤解は解けたのだから良いことなのは間違いない。

 

 先に頭を下げたのが大公なので、よくこんな小娘に頭を下げたなーとは思う。

 

 話をややこしくしたのは娘の方だし、蟻の巣ダンジョンの事などは盛大に迷惑をかけられた。

 

 だけどそのおかげでティーガーとも仲良くなり、ロディーにも出会えた。

 

 何というか、上げた拳の向かう先が分からない感じだ。殴って解決という話でもない。お金で解決という話でもない。金輪際関わらないでくださいという話でもない。

 

 怒りとまではいかないが、なんというかモヤモヤが残る感じだ。

 

 正直……完全装備で会談に臨んだのだ。ここだけの話、何かあったら屋敷ぐらい吹っ飛ばしてやろうとは思っていた。

 

「私はまだまだ、子供だなー」

 

 部屋の椅子に座って外を眺めながらそんな事を呟いていると、宿の掃除を手伝っているリレッサがその言葉を拾い、答える。

 

「そこで暴力を出さなかったラシアも大人ですよ」

 

「そうですかね? 大公にしても、よく非を認めたなーと」

 

「大公にしても、ラシアと同じ考えなのでしょう。暴力で解決した所で碌な結果にならないと分かっているから、言葉で解決したのですよ。暴力は最終手段でもありますが……一番手っ取り早い手段でもありますからね。そして伝わりやすいですし」

 

「あー殴った方が早いパターンですよね」

 

「はい。人でありたいなら言葉は大事ですよ。暴力も一つのコミュニケーションではありますが、人であるならまず対話を」

 

「なるほど」

 

 その通りだとラシアは思う。

 

 人がモンスターを倒してアイテムを手に入れるのも、言葉にすれば、お前をぶっ殺してアイテムを奪います、の簡略版だ。逆にモンスターも、お前を殺して食うという意思を、言葉ではなく行動で示している。だから暴力になる。

 

「何というか……どこ行っても人の世は住みにくいって感じか」

 

「かも知れませんが……人は人の世でしか住めないので比べようがないですよ。動物や虫になれる訳でもありませんからね」

 

 なんて事を話しているとリレッサの掃除が終わったので、ティアを連れて出かける事にする。

 

 行き先はラシアがたまに行く武器屋兼鍛冶屋さんだ。

 

 もう少ししたら宿周辺の地区で、祭りとかやってみようぜ! というノリになったらしい。

 

 その流れでおやっさんの宿にも、一品で良いから何か出してくれという話が来た。

 

 おやっさんは唐揚げでも出すかとなったが、リレッサがどうせ出すなら新しい物を出しましょうと言い出した。

 

 それでラシアに話が飛んできて、ちょうどティーガーが遊びに来ている時だったので、たこ焼きでも作るかとなったのだ。

 

 あんな半円の鉄板など、この世界にはなかった。ナットンに説明したら図面を引いてもらえたので、武器屋に相談に行った。すると作れるとの事で、いくつか頼んでいたのだ。今日がその完成の日だった。

 

 おやっさんに声をかけて、三人で武器屋へと向かう。

 

 バスに乗って行っても良いのだが……途中にある公園にも寄りたいので歩きで向かう事になった。

 

 この世界に来た時より治安は良くなったなーとラシアは思う。前はそこら中で喧嘩してたし、何かが盗まれたとかもよく聞こえていたが……今はほとんど聞かない。

 

 やっぱり兵士が巡回しているのもあるし、地区が綺麗になったのもあるのだろう。

 

 そしてティアとたまに来る公園へとたどり着く。この辺も良くなったのか、来る度に人が増えているし屋台の数も少し増えている。

 

 なんかこう……世の中だけが進んでいるのに、自分だけが置いていかれるのは少し悲しい。

 

 なのでティアとリレッサにはベンチで待ってもらい、今回はラシアが屋台にお菓子を買いに行く。

 

 人と話をしなくても生きていけるので、話そうと思えば人並み以下には話せるのだ。会話が成立しない訳ではない。

 

 だから三人のお菓子を買って戻ったら、ティアにしてもリレッサにしても褒めるのはやめて欲しいとラシアは思う。

 

「ラシアさんが頑張った!」

 

「ティアちゃん……あれぐらいは頑張ったうちに入らないからね」

 

「ですが、ラシア一人なら買わずに目的地に行くでしょう?」

 

「うぐっ……」

 

 行動を読まれているのは、さすがはローウェンテニアの神童と言う事かと思いながら、三人はベンチに座りお菓子を食べる。

 

 大公との関係が改善したので……気分的にはかなり楽になり、何をするにしても動きやすい。

 

 ただまぁ……強すぎるこの体が少し恨めしい。

 

 大公にも言われたが……人としての常識的な範疇をラシアは超えているのだ。だから何をするにしても目立つ。

 

 モンスター等に関する知識も豊富なのだが……やはり力が色々とおかしい。

 

 ティアに記憶を渡してダンジョンを踏破してと言っても、それは無理なのだ。

 

 でも……この体のおかげで行動できているのもある。仮にレベル1でこの世界に来ていたとしたら……最初のクレイウルフで死んでいるのだ。

 

 諦めるつもりはないが……一つだけ考えておかないと駄目な事がある。

 

 それは……元の世界に帰れないという事だ。

 

 帰れないとなったら……こんな世界で生きていく意味などない。

 

 それでも、自分で自分の命を奪う事などできない。

 

 だとしたら生きていく事になるのだろうが……そうなってくると冒険者はやめて、なんか商売でもする方がいいなと思う。

 

「ラシアさん。どうしたの? 考え事?」

 

「んー。そんなとこ。ティアちゃん、私が冒険者やめたら宿で雇ってね」

 

「分かったー」

 

「ラシアなら雇ってもらうより、自分で宿を経営してみては?」

 

「姫様。自分で考えて経営するより、雇ってもらった方が楽なんですよ」

 

「確かにそれはそうですね」

 

 そして全員が食べ終わったので、ラシアは武器屋へと向かった。

 

 たどり着くといつもの店主がいて、できているぞと言ってくれたのでそれを受け取り、少し世間話をする。

 

「強い奴だとは思っていたが……噂の白の騎士とは思わなかったなー」

 

 ラシアが白の騎士だという話は、ギルドを通してゆっくりと広がっている。

 

 白の騎士という肩書きも目立つが、それ以上にXランクの冒険者が初心者ダンジョンや初級ダンジョンを主戦場にする冒険者たちの街にいる事が珍しい。

 

 そのせいで、強いというより変わり者という感じで見られているらしい。

 

「どうして王都やもっとデカい街で活動しないんだ? 人も集めやすいだろ?」

 

「こう……余計な所にお金かけるなら、装備やアイテムに回したいので」

 

「なるほどな。Xランクの冒険者が街にいるってだけで、他の奴からしたら良い刺激になるしな」

 

 そう言って鍛冶屋の親父が指さした先を見ると、ダード達より若い冒険者になったばかりであろう者たちがこちらを見ていて、なんとも恥ずかしい気分になった。

 

「そういえば今更なんですが……ここって材料持って来たら武器とかって作ってもらえますか?」

 

「おう。物によるけどな。こういう形にして欲しいとかあったら、図面でもってきてくれればできるぞ。日にちはかかるけどな。ただアクセサリー系は作ってない。細かいからダルいし、ウチの設備じゃ無理だな」

 

「なるほど。何か頼むかも知れませんので、その時はお願いします」

 

 そう言って、ラシアはたこ焼きを焼く鉄板の代金を払ってから宿へと戻った。

 

 そしてティアとリレッサに手伝ってもらい、試しに焼き始める。

 

 ちなみにタコは、リレッサがよく行く魚を売っている露店に頼んだら、普通に仕入れてくれた。なので、ちゃんとタコを使う。

 

 チーズとかソーセージを切って入れても良いが、アレンジを教えると蛙肉とかを入れられそうでとても悲しいからだ。

 

 どれぐらい水を入れたら良いとかは覚えてないので、大体で水と少し牛乳と卵と、ネギっぽい食べられる植物を入れて焼いていく。

 

 最初のうちは水を入れすぎたりして上手く丸くならなかったが、何回か試しているうちにようやく形になってきた。

 

 タレはリレッサがホットサンド作る用に色々と試していたので、説明したらそれっぽいのを作ってくれた。

 

 成功と失敗を繰り返しておやっさん達にも食べてもらい、これなら合格点かなーと思った所で声が聞こえた。

 

「ラシおるかー! 遊びに来たったでー」

 

 来そうな気はしていたが……本当に来るとは思わなかった。とはいえ、ティーガーのおかげで大公と話をする事もできたので、感謝しかない。

 

「おっ? ええ匂いするやんけ。ラシって料理とかできるんやな」

 

「誰と比べるかにもよりますけど……人並みには。もう少ししたら焼けるので食べますか?」

 

「おう。食べる食べるー」

 

「ラシアさん。料理上手だから美味しいよ!」

 

「ほんまか! それは楽しみやな!」

 

 ティアと遊んでいるティーガーを見て、おやっさんが疑問をラシアに投げる。

 

「なぁ……ロディー様の娘がウチの家に遊びに来て良いのか?」

 

「……今更では? パルサーさんちも大概では?」

 

「パルサーはデゴッパチの娘だからな。かまわん」

 

「うん? ……おやっさん、デゴットさんと知り合い?」

 

「内緒」

 

「うわっ……可愛くねー」

 

 そんな話をしていると、ティーガーが思い出した様に手を叩き、ラシアに伝えた。

 

「そうそう。おかんが箱船ダンジョンのカードキーが欲しいって言うとったのと、冒険者ギルドが近いうちに来いって言うとったで」

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