ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第122話 霧風のダンジョン

 本日の予定は、クランメンバーでダンジョンへ行く事だ。

 

 どこへ行くにしても火力不足というか、レベルもスキルも足りていない感じだ。ラシアの目的は元の世界に帰る事。

 

 その目標達成にクランメンバーを巻き込むのはどうかと思うが、メンバーも全員が強くなりたいと言っているし、ダンジョンの知識も手に入る。

 

 お互いの利益は一致しているので、これで良いと思う。

 

 ラシアが元の世界に帰った後でも、このメンバーで超級ダンジョンを抜けられたなら、それぞれ冒険者としてやっていけるとは思う。

 

 だから、無責任な事にはならないはずだ。たぶん。

 

 ただ……クランマスターになって今更だが、マスターになったのは少し失敗かなーとも思う。

 

 何をするにしても他人の人生が乗ってくるので……邪魔という訳ではないが、少し重い。

 

 リレッサの事もある。ナットンは……まぁ放置でおk。奴は友人だ。

 

 自分だけの命なら正直……もっと雑に扱えるのだが、今はそうもいかない。

 

 Xランクになり、社会的な信用も出てきた。自分の行動がメンバーの評価にも繋がるし、その逆もある。

 

 メンバーは全員がまともなので助かってはいるが……ラシアがメンバーの足を引っ張らないように注意したい。

 

「…………はやく、おうち帰りたい」

 

 冒険者ギルドに着いた所だったので、全員になんとも言えない顔をされた後にノアから突っ込みを入れられる。

 

「ラシアさん! 今から冒険に行くところだからね!」

 

「もっ申し訳ない。ついぽろっと……」

 

 変な事を言うのはいつもの事なので、メンバーは笑って許してくれるし、ノアはラシアを心配する。

 

「ラシアさん。大丈夫? 何か悩み事あったら遠慮なく言ってね。話だけなら聞いてあげられるから!」

 

 本当にいい娘だなーとラシアは思い、ノアの帽子を取ってからその頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

「ラシアさん!? どうしたの?」

 

「いえ、お礼のつもりで撫でました」

 

「私は大型のワンちゃんじゃないよ!?」

 

 そんな事を冒険者ギルドでやっていると周りから見られるので、そこそこ恥ずかしい。いつもの受付嬢が空いていたので、すぐにそこへ行き手続きを始める。

 

「おはようございます。ラシアさん、本日は?」

 

 本日のラシア達が向かうダンジョンは、ようやく霧風のダンジョンだ。

 

 攻略難易度的には中級なので、ラシア達からすれば簡単なダンジョンになるが理由はそれなりにある。

 

 前から気にしていた、弓を使う後衛組のスキル強化だ。やはりここがネック。

 

 前衛がバランス型なら後衛組が火力になるのだが、クランメンバーの弓組は総じて火力が低い。

 

 現実でも弓は火力が高いと思うのだが……クランの弓使いは目が良いので基本は索敵になっている。

 

 だから先に、火力を上げやすい弓組の攻撃力を上げる感じだ。

 

 後はそろそろ手持ちの料理アイテムが減ってきたので、その食材を確保して簡単な物を作ってみようというのもある。

 

 ルインエルデや王都でも、料理バフのアイテムを見た事がないのだ。

 

 でもそれを作るアイテムがあるので、それを確保して作ってみようという事をラシアは考えている。

 

 モンスターもいてドロップアイテムもあるので、確実にあるはずなのだが……その辺はどうなのかなーと。

 

 あとは、ここの後から行こうと考えているダンジョンの特殊エリアに入るのに必要なアイテムもドロップするので、人数分を入手するといった感じだ。

 

 クランメンバーの強さを考えればもっと稼げる所もあるのだが……ラシア一人で決めている訳でもなく、相談して決めた結果なので大丈夫だと思う。

 

 受付嬢から渡された用紙に、向かう場所と滞在時間を書き込む。二日もあれば踏破できるのだが、今回は収集がメインなので余力を持ってだ。

 

 全てを書き終えると、受付嬢からラシアに少し話があった。一つはグオンの事だ。

 

 最近、不幸な事が重なってXランクの冒険者が減少しているとの事だ。減っているからといって急にSから上げられるものではないので、信用があって評価が高い冒険者となると、今はグオンが候補だそうだ。

 

 ラシアが知っているだけでもガーゼンが亡くなっている。

 

 Xランクといえどもミスすればすぐに死んでしまう。ここはそういう世界だ。

 

「分かりました。私の方から伝えておきますが、強制はできませんよ?」

 

「はい。大丈夫です。すみませんがよろしくお願いします」

 

 ラシア的にもグオンにはXランクに上がっていて欲しい。それはやはり帰還石の事だ。ラシアにもしもの事があって撤退するとなると、もう一人は知っている人が欲しいのだ。

 

「そういえば……XランクとかZランクって国に何人ぐらいいるんですか?」

 

「そうですねー。冒険者のXランクなら四十人。Zランクで五人となります。騎士や聖騎士の皆さんを含めるともう少し多いのですが、冒険者ならその数になります。Sで十分と言う人も多いので、強さでならもう少しいるとは思います」

 

 ラシア的には思ったよりは少ないといった感じだった。ただ生きていくだけなら高難易度のダンジョンに挑む必要もないので、ランクを上げない人もいるんだなとは思う。

 

「そうそう。ラシアさんにも伝える事がありました。ラシアさんのクランLLLに加入したいと言っている方が多数いますが……どうしますか? 面談とかするのであればギルド側で場所を用意しますが」

 

「……えっと。何かの罰ゲームですか? 誰が好き好んで碌に会話もしないクランマスターがいるクランに入ろうと思うんですか?」

 

「自分でそれを言いますか……。そうですね。客観的に見れば、物静かなXランクの美女がクランマスターなので誰でも入りたいのでは? ラシアさんは騎士団や聖騎士とも付き合いが多いようですし」

 

 話が聞こえていたクランメンバーになんとも言えない顔をされるが……確かにそう見えなくもない。

 

「……今は、今いるクランメンバーを大事にしたいので、新しいメンバーの募集は受け付けていないとお伝えください」

 

「分かりました。気が変わって募集する事があれば、こちらに言っていただければと思います」

 

 それから少し話をした後にラシア達はダンジョンに向かった。その背中を見送っていると、落ち着いたのもあって隣の受付嬢が話しかけてきた。

 

「……ラシアさん。ここに来た頃と変わりませんねー。もうXランクの冒険者なので話しかけづらいのはありますけど……クランメンバー以外と話してる所を見ない」

 

「あれだけ徹底してると……何かあるのかなと、こちらとしては思っていたけど、極度の人見知りなだけだったのがまた……」

 

「やっぱり普通と違う人がXランクとかになれるんでしょうねー。それはそうとクランメンバーの件どうでした? こっちでもものすごい聞かれますけど……」

 

「募集しないって話よ。他のクランだと人数が多い方が凄いみたいな感じなのに、ラシアさんはそういうのまったく気にしてないから」

 

「何するにしても楽な気はしますけどね」

 

 受付嬢達がそんな話をしている間に、ラシア達はポータルを抜けて霧風のダンジョンへとたどり着いた。

 

 このダンジョンは昆虫系と動物系のモンスターで構成されていて、風が止まると霧が発生する。

 

 イメージでいうと谷に近い感じのダンジョンだ。階層は七階層で、ボスは虹蜘蛛。谷のような足場の悪い所で、モンスターは遠距離と飛行型ばかりだ。

 

 ただ中級ダンジョンなので、油断する事がなければ特に苦戦するような場所ではない。

 

 ラシアが一番後ろを歩き、ある程度散らばってモンスターを探し始める。

 

 ラシアが探しているモンスターはコック鳥とヤジリムシとペネトワスプの三匹だ。

 

 コック鳥はやたらと食材を落とす、トサカがコック帽に見えるデカい鳥。

 

 ヤジリムシはハサミムシの鋏の代わりに弓がついていて、矢を飛ばしてくる上にアーチャーのスキルも使ってくる。

 

 ペネトワスプは中型犬くらいのデッカい蜂で、こいつもアーチャーのスキルを使ってくるので、スナイパーのビエットとレンジャーのゲニツに覚えてもらいたい。

 

 後はヤジリムシは接近するとシーフ職が覚えるナイフラッシュというスキルもたまに使ってくるので、その辺はハイシーフのフォルグに覚えてもらっても良いと思う。

 

 その辺を警戒しながらミストゴートみたいなモンスターを倒して進んでいると、二階層へと向かう階段が見つかった。

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