ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第123話 スキルとアイテム

 二階層に降りてうろうろしていると、大きな羽音と共にペネトワスプが現れた。

 

 このモンスターはワスプ系の進化種で、針を矢のように飛ばしてくる。そしてスキルとしては、防御力貫通で弓矢のダメージを与えるペネトレイトアローだ。

 

 そこでラシアはいつものように気になる。防御力貫通とかってどういう事? なのだ。ラシアなんかは聖銀鋼製の、まともな金属鎧を着ている。

 

 こう……外国の配信者が銃でフライパンを撃つみたいに穴が空くのだろうかと思う。

 

 ギュスターブからくらった発勁掌は防御力無視だったので、感じ的には体の中を直接殴られたような衝撃が駆け抜けた感じだった。

 

 貫通も似たような物かとは思う。鎧に穴が空いたとかは聞かないので……

 

 そして近くにいたダードに盾を借りて、覚えてもらうビエットとゲニツにペネトレイトアローの名を教える。ラシアはペネトワスプと対峙し、皆が見守る中で戦いが始まった。

 

 ペネトワスプは高く飛び上がり、急降下や針を飛ばしたりして攻撃してくる。

 

 スキルはまだ使ってこない。すぐに倒す訳にはいかないので、ラシアは飛んでくる本体や針を盾で流しながら機会をうかがった。

 

 するとようやく使ってくれたようで、少し溜めがあった後に光に包まれた針を飛ばしてきた。

 

 ラシアはそれの軌道を読み、盾で綺麗に受ける。

 

 それでようやく貫通の意味が分かった。盾に刺さった直後に、まとわれていた光だけが貫通してラシアの腕に刺さった。

 

 通常の攻撃ではないので肉が切れ血が出る訳でもないが……骨というか、腕の奥に何かが刺さったような痛みが走ったのだ。

 

 だから……普通に痛い。

 

 これで覚えられるはずなので、ラシアはペネトワスプを倒した。

 

 そして結果だが、ビエットとゲニツはペネトレイトアローを覚える事ができた。試しにモンスターにも撃ってもらったが、今まで矢が刺さらなかったモンスターにも刺さったりしたので、純粋な攻撃力も上がっているのだろうと思う。

 

 攻撃力に関しては、ラシアは考えないようにしている。確実にきりがないからだ。

 

 身長や体重、その日の体調でも変わるはずだし、今の矢にしてもそうだ。

 

 同じ力でもよく研がれていたら刺さるよね? ってなるからだ。

 

 そんな事を考えていると、スキルを覚えて喜んでいるメンバーは置いておいて、ノアが心配してくれた。

 

「ラシアさん。腕、大丈夫?」

 

「はい。痛みはありましたが今はもう大丈夫ですね」

 

「ラシアさん。気になるのは分かるけど無理したら駄目だよ?」

 

「ありがとうございます」

 

 心配してくれているノアに礼を言って、次のモンスターを探し始める。

 

 次の目標はヤジリムシだ。こいつからはシャープアローという、矢の直線上にいるものにダメージを与えるスキルを覚えられる。

 

 弓職の範囲攻撃なので確実に覚えたい。皆で頑張って探し始める。

 

 ……

 

 そしてヤジリムシからシャープアローも覚える事ができたので、ビエットとゲニツの目標は達成だ。フォルグもナイフラッシュを覚える事ができた。

 

 後は下に降りつつコックバードを狩って食材を手に入れる事。次のダンジョンの場所は決めているので、そこで必要になるアイテムもここで取れる。

 

 ゲームだとベリーが実っているグラフィックがあり、そこを調べると竜酔いの実かラッキーベリーが手に入る。

 

 どちらも必要だが、ダンジョンで使うのは竜酔いの酒だ。この辺は後で製作する予定だ。

 

 ラッキーベリーは食材アイテムで、普通に食べても幸運値が上がる。ラシアもクリティカル型なので、ラッキーベリーを使ったラッキータルトという大幅に幸運値が上がるアイテムも持っている。

 

 コックバードや他のモンスターを倒して、ベリーがなっている木があれば回収する。

 

「ラシアさん。このラッキーベリーって美味しいの? 食べてみてもいい?」

 

「タルトの方は美味しいので、たぶん美味しいと思いますよ」

 

 じゃあ一つ貰うねと言って、ノアは皮を剥き、ラッキーベリーを食べ始めた。

 

「あっ! 美味しい!」

 

「どんな味に近いです?」

 

「んー。さくらんぼに近いかも」

 

 この世界にもさくらんぼってあるのかと思っていると、ノアが近づいて来てラッキーベリーを剥き始める。

 

 そして。

 

「はい、ラシアさん。あーん」

 

 えっ? とラシアは驚くが、ノアみたいな美少女にこんなことをされて断れるほどに、ラシアの女性経験は多くない。

 

 少し顔を赤くしながら口を開けると、ノアはそこにラッキーベリーを入れた。

 

「あー確かにさくらんぼに近いかも。美味しいですね」

 

 そう感想を言ってノアの方を見ると、ラシアと同じようにノアの顔も赤くなっていた。

 

「なんでノアさんが赤くなっているんですか……」

 

「だって! 絶対に断ると思ってたから! 口開けてくれると思ってなかったもん!」

 

「じゃあ……無理に入れなくてもいいのでは?」

 

「それはこう……自分に負けた気分になるからしかたない」

 

 嬉しい気持ちもあるが……恥ずかしい方が勝るので、やらないでくれた方が幾分か嬉しいなーと思いながら探索を続ける。

 

 そしてダンジョン時計を確認し、外が夜になり始めるとダンジョンの中に霧が現れ始めたので本日の探索は終了だ。

 

 現在は四階層にいて、五階層に降りる階段も見つけてあるので、その辺りで休憩だ。

 

 他のAやSといった冒険者もいるので、夕食が終わった後にメンバーは情報交換に行ったり、先に休憩したりしている。

 

 モンスターなのだから階段近くに来ても良いとは思うが……その辺は冒険者という強者がこの辺にはよく集まっているというのを理解して近寄らないのだろうとラシアは思っている。

 

 クランメンバーとは話ができるので、明日の事や世間話などをして過ごす。そしてラシアと他のメンバーの見張りの時間になったので、少しだけ離れた所に座った。

 

 そして様々な事を考えながら見張りをしていると、まだ交代の時間でもないのにノアがやってきて、ラシアの隣に座った。

 

 一言二言、挨拶をかわし二人で静かに座っていると、ノアがラシアに話しかけた。

 

「……ラシアさん。最近、あんまり元気ないけど大丈夫?」

 

「え? そう見えますか?」

 

「うん。勘というか……なんか元気ない感じに見えるかなー」

 

 体のどこが痛いとかしんどいとかそういう話ではないのだが……ラシアは気分的にというか、なんというか少し沈んでいた。

 

「……心配をかけたようで申し訳ない」

 

「……色々あったからね~」

 

 本当に色々あった……ロワンテや箱船ダンジョンの事はいい。事故みたいな事だし、多分だが解決もした。その上で怪我人などは出なかったのだ。

 

 だから本当に良い方向で終わった。

 

 ラシアが気にしているのは、ガロニアや大公の事だ。

 

 怪我をさせられたティアが許した。親であるおやっさんもセレットも許したのだ。だからこれ以上はラシアが言う事はない。

 

 ラシアは怪我をさせた方の立場だ。

 

 大公の時もそうだが……こう、言葉に表せない感情が残っているのだ。殴って解決という話でもない。

 

 喧嘩があって殴られたとなり、やり返して殺したらやり過ぎだ。

 

 それはラシアにも分かっているのだが……

 

 ガロニアも深緑のダンジョンの関係で、孫のガーゼンや弟子のベニユッド達を亡くしている。

 

 そんな事は関係ないと言えるほどラシアは割り切れないのは分かっているし、あれが落とし所としては最善だとも分かっている。

 

 大公に関しては、ラシア的には誤解だけは解けたので干渉しないつもりだし、リレッサにも話を聞いてもらった。

 

 思っている事を伝えると、ノアは何も言わずに静かに聞いてくれた後に答えた。

 

「ラシアさんの言う事は少し分かるなー。私も正直……もう少し強かったら、怒りに任せて行ってたと思う。だけどそれをして死んだら家族が悲しむからやめた。でもガロニアさんの話も少し分かるかなー。ティアちゃんに怪我させたのはガロニアさんじゃないしね」

 

 ノアは話を続ける。

 

 やっぱり全員が、たぶんそんな気持ちなんだろうと思うと、ノアは言った。

 

 ノアはセレットに似ているので、セレットの気持ちも分かる。

 

 ガロニアが宿に来るようになったが、それでも前のように先生とは言わないのはそういう事なのだと。

 

「ラシアさんはお父さんに似てるんだよ。お父さんもかなり怒ってたから、こう怒りの矛先をどうしたらいいか分かってなかったよ。でも我慢というか、これ以上は駄目って納得するしかなかったみたい」

 

「感情論で喧嘩しても誰も得しないですしね……」

 

「うん。そうだと思う。気にしない事にしたみたい。お母さんからしたら、ガロニアさんって師であり母みたいなものだからね」

 

「なるほどー」

 

「だからラシアさんもあんまり気にしない方がいいと思う。話し合いで解決できたラインはきっとここまでだから」

 

 大きく息を吐き出してから、ラシアは考える。たぶんこの世界に毒されているのもあるなと。元の世界なら殴って解決などしない。

 

 理不尽な事はもっと多い。それでも元の世界の方が良いと思っているのだ。

 

 だから……悩んでウダウダする暇があったら、関係を改善するなり他の事に取り組む方が絶対にいい。

 

 時間も心も無限ではなく有限だからだ。

 

 ラシアはモンスターではなく人として生きたいのだ。毎回、暴力で解決していたら、きっといつかはモンスターになると思うから……

 

 ラシアは心を落ち着かせてからノアに礼を言った。

 

「かなりスッキリとしましたので、あんまり深く考えないようにしようと思います」

 

「いえいえ、どういたしまして~。私はけっこう、なるようになれの精神だからラシアさんもそっちの方がいいよ!」

 

 ラシアはわりと静かなタイプの人間なので、ノアのような明るいタイプが羨ましく思う。

 

「ノアさん。相談に乗ってくれてありがとうございました。私にできる事があったら言ってくださいね」

 

 軽い気持ちで言ったつもりだったが……ノアはすぐに食いつき、リクエストを投げる。

 

 それは……膝枕して欲しいとかいう、今までの流れを吹き飛ばすものだった。

 

「こう、調子に乗ってるのは分かる! だけどチャンスがあったらラシアさんに膝枕されて頭ナデナデされたい!」

 

 深く考えたら負けだとラシアは考える。

 

 その上で、ノアの髪を触りたい気持ちもあるので、まぁ良いかの精神だ。

 

 ラシアはノアのリクエストに応えてあげた。

 

 それから二人で他愛もない雑談をし、次の日を迎え、この霧風のダンジョンの踏破に向けてボスへと向かった。

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