ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第128話 騎乗

 ラシアの目の前には竜の祠がある。ゲームだとここに入りたい人が竜酔いの酒を置くと、別のフロアに行ける道が現れる。

 

 深緑のダンジョンでいうなら、羽化場に行くような物だ。

 

 一本置いて道が現れたら全員で行けばいいと思うのだが……ケチって何かあっては話にならないので、メンバー全員に竜酔いの酒を配り、一人ずつ祠に供えて手を合わせる。

 

「これをすると、一匹の蛇というかドラゴンが来るのでびっくりするとは思いますが、特に気にしないでください。何かあったら私が倒すので」

 

 全員が頷くと、遠くから地鳴りのような音が聞こえ、それはどんどん近づいてきた。

 

 それはラシアの言ったように、とても大きな長い竜でドラゴンというよりは蛇みたいな姿だった。遠くの枝から体を伸ばして酒の匂いを嗅ぎ始め、まずは竜酔いの酒を一本だけ飲み込んだ。

 

 するとたちまち酔い潰れてしまい、その場で大きないびきをかき始めた。

 

 この辺はゲームと同じだなーとラシアは思いながら、強大な竜の背に乗った。

 

「当分は寝てるので、今のうちに行きましょう」

 

「ラシアさん……乗って大丈夫? 途中で起きて襲ってきたりしない?」

 

 この世界は現実なのでその辺はどうなのかなーと思うが、行かないと進めない。とりあえず進んで、戻る時はゲートポータルや帰還石を使えば良いので、たぶん大丈夫だけど、もしもの時は何とかしますと言って全員に上がってもらい先を急いだ。

 

 竜の背を歩いて進んで行く。ゲームなら一瞬で着くのだが、想像以上に長い背を歩き、ようやく別の枝へとたどり着く事ができた。

 

 そして、竜達がいる場所へと進んで行く。

 

 今回はティーガーとグオンが乗るドラゴンなので、先を歩いてもらい進んで行くと、ゲームと同じように三匹の乗用車ほどの大きさのドラゴンがこちらを見ていた。

 

 ゲームと同じなら……自分が好きなドラゴンの元に行けば、『このドラゴンにしますか?』という選択肢が出るのだが……ラシアの瞳は一匹のドラゴンに釘付けだ。

 

 ゲーム時代のラシアでも、見た事が少ない虹竜がいた。綺麗だとは思うが、ゲーミングドラゴンなので目がなんかチカチカする。

 

 残りの二匹は青竜と灰竜だ。この辺の竜は確率はどれも同じなので、リセマラしたら好きなのが選べるが……この世界だとどうかなーと思う。

 

「それで姐さん、俺達はどうしたらいいんですか?」

 

 グオンにそう聞かれたので、今いる竜のことを簡単に説明し、近くに行けば何か反応があると思うと伝えた。

 

「ちゅうことは狙うはあのド派手なドラゴンって感じやけど、ウチは自分の立場は分かっとる。グオンが先に行って選んできい。ウチは余ったのでええわ!」

 

 そんな遠慮しなくてもいいとラシアは思うが、ついてきたのはティーガーなので、一歩引いて考えているのだなと思う。

 

 そしてグオンが虹竜に向かって行くが……めちゃくちゃ威嚇された。

 

「姐さんこれは?」

 

「私にも分からないので、他の竜の所にも行ってもらえますか?」

 

 グオンは言われた通り、次は青竜の所に行くとまた威嚇され、灰竜の所に行くと猫のように喉を鳴らした。

 

 そしてグオンが灰竜の頭に手を置くと、その手を舐めた後に立ち上がり、グオンに付き従うように戻って来た。

 

 ラシアはなるほどと思う。こちらが竜を選ぶように、竜もこちらを選んでいるのだなーと。そうなると……ドラゴンナイトでも、相性次第では竜に乗れない人が出てくるのではないかという事だ。

 

「ラシアの姐さん。これでいいんですかね?」

 

「鞍とかいるはずですが……試しに背に乗れるか試してもらえますか? 賢いモンスター? なので言葉は分かってるはずです」

 

「わかりやした。おい。俺を乗せてくれるか?」

 

 灰色の竜は小さく鳴いた後に、グオンが乗りやすいように身を低くしたので、グオンは恐る恐るその背中へと飛び乗った。

 

 周りからは歓声が上がる。

 

「ドラゴンに乗れるようになったら、その竜が使えるスキルが追加で使えるのでまた教えます。あとは飛べるはずですが……場所が場所なので、戻ったらやりましょう。鞍とかもいると思いますし」

 

「わかりやした」

 

 そう言ってグオンはドラゴンから飛び降り、これからよろしく頼むとその竜の顔を撫でた。

 

 そして次はティーガーの番なのでそちらを向くと、目がキラキラしていて明らかにテンションが上がっていた。

 

「次はウチの番やな! よっしゃ! 一発かましてくるわ!」

 

 グオンが大丈夫だったのでティーガーも大丈夫とは思うが、もしもの時はまた竜酔いの酒を作って再度チャレンジだなと思っていると、青竜の方はティーガーに少し怯えているようだった。

 

 だからティーガーが虹竜の所に行くと、グオンの灰竜と同じように喉を鳴らした後にティーガーの手を舐めた。

 

 周りからは歓声が上がり、ティーガーはさっそく虹竜にまたがってこちらへと戻って来たので、ラシアは声をかける。

 

「ティーガーさん。おめでとうございます」

 

「ラシ! ありがとうやで! めっちゃ目線高なったわ!」

 

 これで目的は達成だ。クランとして考えればグオンが虹竜を得られた方が良かったのだが、灰竜だけでも十分に強い。

 

 だからラシア的には、ドラゴンが手に入っただけで十分なのだ。

 

 クランメンバーは灰竜や虹竜に触ったりしているが、まったく嫌がる事もなく、とても大人しい。灰竜と虹竜で喧嘩する事もない。

 

 攻撃や痛めつけるような事をすれば、生き物なのでもちろん反撃もされるだろうが……街とかで余計な事をされない限りは、たぶん大丈夫だとは思う。

 

 そこで思う。騎乗用のドラゴンだが……モンスター扱いなのでギルドに届ければたぶん大丈夫のはずだ。ティアの蟻も大丈夫だったのだ。

 

 後は帰るだけだ。能力とかのチェックもしたいが……危険なダンジョンでする必要はない。中級とかの安全な場所でやった方が良い。

 

 その事を皆に伝えると、特に反対する理由もなかったので、このまま帰還する事が決まった。

 

「後は……戻ったらちょっと大変やな! グオンはウチと一緒にそのまま登録行こや」

 

「わかりやした」

 

「こちらとしてはありがたいんですけど、ティーガーさんも慣れないドラゴンで大変なのでは?」

 

「いや、こいつは大丈夫な気がするからたぶんいけるやろ。それにグオンはXランクで、ウチは聖騎士でも上の方の人間やからな。ぱぱっと二人で説明して登録する方が早いやろな」

 

「ではお手数かけますが……よろしくお願いします」

 

「全然かまへんで! ラシのおかげでドラゴンに乗れるようになったからな!」

 

 そんな事を話しながらまた竜の背を歩き、ダンジョンへと戻ってくる。道を作ってくれたドラゴンも未だによく寝ている。起きては飲んでいるようで、二本ほど減っていた。

 

「そうそう。どうやったらドラゴンを手に入れられるとかは、しばらく様子見する方向でいっとくわ。一ヶ月とか二ヶ月とか様子見して、ホンマに人に危険がないと分かったら場所だけギルドには報告する」

 

「分かりましたけど……酒は?」

 

「そこはまた別口やからな。そこはラシに任せる。ここもそうやけど、あの酒も見たことないからなー。なんか特殊なアイテムやろ?」

 

「……よくお分かりで」

 

「ラシのそういう所はええ所や。冒険者に伝えて強くなったら死ぬ事は減るからな。でもな、知識も力や。大公みたいなのと交渉する時に、力で解決せーへんつもりやったら、そういうのも一つの手札として持っとき。そっちの方がええで。殴って解決も嫌やろ?」

 

「確かにそうですね……」

 

「今回に関しては……ウチが徹底的に周りに自慢したいだけやからな! 騎士も聖騎士もドラゴンナイトって多いからな! めっちゃ楽しみや!」

 

 こういう所がティーガーだと思うが、思慮深いところもティーガーなので、ラシアは残っている竜酔いの酒を渡しておいた。

 

「こちらは当面来る予定がないので、証拠の提示として渡しておきます」

 

「おお。ありがとうやで! 騎士団とかおかんとか国には要報告やからなー」

 

「でしょうね……。虹竜のスキルに関してはどうします? 必要なら書いておきますが?」

 

 その辺はロディーが竜に乗っていた事を覚えているので、たぶん大丈夫とのことだ。でも竜に乗っていたくせに、騎乗用のドラゴンの事は知らなかったというのはどうなんだ? とティーガーを悩ませていた。

 

 その辺は記憶に穴があるのもあるだろうが、ローウェンテニアでは竜を繁殖させてドラゴンナイトになると騎乗用として国から貸し出されていたので、ロディーが知らないのも無理はないと伝えると納得していた。

 

 襲ってくるドラゴン達を討伐して、ようやく出口へとたどり着いた。ゲートポータルを使っても良かったのだが……ドラゴンを手に入れた二人が拒否した感じだ。

 

 そしてポータルを抜けて王都へと帰還する。

 

 かなりの大騒ぎになったが……ティーガーとグオンが任せておいてくださいと言ったので、ラシア達はルインエルデへと帰還する。

 

 そこでドラゴンの素材は使える物が多いので残し、魔石などだけを売って宿へと帰還する。

 

「私もドラゴンに乗りたいなー」

 

「ノアさんは魔法職なので無理ですね。喋る魔導書とか帽子はあったと思いますが……」

 

「それ面白そう! …………ん? ラシアさん、宿の前に誰かいるよ?」

 

 遠目だったので少し分かりにくかったが、そこにはたぶんパルサーと思われる人物とメイドの姿をした女性が立っていた。

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