ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第134話 この国の王様

 ロガリア・バルザエイン。この国の王様の名前だ。その隣にいるのはデトラナ・バルザエイン第一王子。息子さんで王子様。

 

 さすがに世捨て人に片足を突っ込んでいるラシアでも、それぐらいの常識は知っている。

 

 そういうお人達がなぜここにいるのか? デルパロア家が国で二番目のお偉いさん宅で、大公も国王と親しい間柄で、エリゼも普通に親交がある。

 

 国王も実務とか色々忙しくて、気分転換に来たんだろうなーとラシアは思う。

 

 大きな声では言えないが、心の声の音量を最大にしてラシアは言いたい。

 

 来んなよ! だ。

 

 護衛の人達も大変だし、みんな和気藹々と食事会を楽しんでいたのに、今は全員がひざまずいている。

 

 喧嘩をしていたので和気藹々は嘘だが……こんな冒険者ばっかりの所に来なくても良いのではと思う。

 

 ただまぁ国王を前に喧嘩する馬鹿もいないようなので鎮火はした。ラシアは思う。ワンチャンそっくりさんだったら嬉しいなーとは思うが、デゴットもロディーも丁寧に挨拶をした後に護衛に回っているので、確実に本人なのだろう。

 

「公の場ではあるが、そうかしこまらないで欲しい。デルパロア家に呼ばれたとはいえ、公務から逃げてきたような物。気を張らずに食事を楽しんでほしい」

 

 と、国王が言ったので、ひざまずいていた者達は立ち上がり、かなり緊張しながら食事会へと戻っていく。

 

 国王も大公の周辺にいる者達と集まり、話をしている。

 

 こういう時は仲良しグループで集まる事が多いので、ラシアはよく孤立していた記憶があるのだが、今は集まってくれる友人がいるのでありがたい事だなーと思う。

 

 第一声はノアだった。

 

「なんか凄い事になったねー。こんな近くで国王陛下って見たことないよ」

 

「私もです。LLLだと国王陛下にお会いしたのってグオンさんぐらいかな? 間違って本人じゃないとかない?」

 

「いやー。ちゃんと本人っすねー」

 

 パルサーにも聞いたが、影武者かどうかまでは不明だが、あの人が国王陛下だという事だ。

 

「デルパロア家から、もしかしたら来られるかも知れないと知らせはあったが……本当に来られるとは思っていなかったな。まぁ警備の方は万全だから、いつ来られても問題はないが……」

 

 ラシア的には爵位の凄さなんかは分からないので、大公もこの国で二番目に偉いとか言われても、そうなんですね、という感じなのだが……国王とかになると話は変わってくる。

 

 元の国で言えば総理大臣とか大統領とかその辺だろうとは思うが……そんな人が一般人の食事会に参加するってどうよ? という話だ。

 

 ラシア的には触らぬ神に祟りなし。近寄らないのが無難だ。

 

 貴族達は慣れているのか……自身が育てたりしている冒険者を連れて挨拶に行ったりしている。先ほどのドリル令嬢もそうだ。

 

 リュートリア達も付き合いがあるのか挨拶に行っているが……みんなすげーなとしかラシアは思わない。

 

 それよりも重要な事がある。

 

 ラシアの背に隠れてフウコウがティーガーを威嚇しているのだ。

 

「シャーーーー! なんでワッチとラシアまで巻き込みやがったにゃ!」

 

「普通に考えてツレを馬鹿にされたらムカつくやろ!」

 

「そう言うなら友達まで巻き込むなにゃ!」

 

「大丈夫や! フウコは一回助けたったやろ、文句いうなや!」

 

「……ラシア! こいつ一発殴った方がいいにゃ!」

 

「殴られたら痛いやんけ!」

 

 自分の為に怒ってくれたので、ティーガーもパルサーの事も怒る気はないのだが……フウコウに関しては、まともに喧嘩してもティーガーに余裕で負けるので、ラシアの後ろに隠れている感じだ。

 

「まぁ……過ぎた事ですから良いんですけど、どうしてフウコウさんまで巻き込まれたんですか? 蟻巣ダンジョンに行った時の繋がりですか?」

 

「んや。そんなしょうもない理由とちゃうで。ウチが紅虎。パルサーが青豹。ラシが白獅子。ほんでフウコが死招猫やから、ネコ科繋がりやな!」

 

 そっちの方がしょうもないと思っていると、フウコウが代弁してくれた。

 

「そんなくっそしょうもない繋がりでワッチを巻き込むんじゃないにゃ!」

 

「重要やんけ! 二つ名がネコ科の奴とかほとんどおらへんねんぞ! 仲よーせんでどないすんねん!」

 

「なるほどな。ラシアとノアも遭難組という組があるようだし、私達が猫組というのも何か面白いな」

 

 と、パルサーはわりとご満悦だ。

 

 そしてノアが手を上げて猫組に入れて欲しいと言い出したが……ティーガーに駄目だと言われた。

 

「なんで!?」

 

「ノアはなー。なんか犬っぽいからなー。なんというかノア犬って感じやな」

 

「それだったらノア猫でもいいのでは!?」

 

「猫はワッチと被るから駄目にゃ~」

 

「というか……フウコウさんの死招猫がかなり物騒な二つ名ですね」

 

「にゃー。ワッチといると全滅するとか、ことある事に言われるにゃ。死猫や不幸猫や死を呼ぶ招き猫とか、喧嘩売ってる二つ名が多いにゃ!」

 

 確かにガーゼン達も亡くなっているが……ラシアから見てもフウコウは慎重に行動するタイプで、沈黙のラシアと同じで悪口の類いだなーと思う。

 

「それで……国王陛下まで来てますけど、どうなるんでしょうね?」

 

「どうなんやろな? ラシは……まー行かんか。冒険者やったら陛下に挨拶に行ってもええと思うけどな。今後の事もあるやろうし」

 

「いやー……行かないですね。勲章の授与とか断っていますし……できるだけ権力持ってる人とは関わりたくないので……」

 

「今更感半端ないにゃー。紅虎に青豹。それこそ宿の方にもガロ婆が行ってるのににゃ」

 

「いいんです。ガロニアさんとはまともに話してないですし、ティーガーさんパルサーさんは友人枠なので」

 

「難儀な奴だにゃー」

 

 そんな話をしているとデルパロア家のメイドがやってきた。そしてティーガーはロディーに、パルサーはデゴットに、フウコウはガロニアに呼ばれているとの事で全員がそちらへと行ってしまった。

 

 三人が向かった先には国王陛下もいるので、ラシアは直ちにその場から離脱する。

 

 ノアもグオンも国王陛下と話したいかも知れないが……そこだけはラシアのわがままを通してもらう。何があっても絶対に行かない、だ。

 

 だから行きたいのなら全然行ってもいいと伝えると、二人ともそこまで行きたくはないとの事だ。

 

「覚えてもらえたら名誉な事だとは思うけど……こう、何を話していいか分からない」

 

「こっちもそんな感じでさー。灰竜の事もあるんで、こちらからは行かなくてもいいかなーと」

 

 自分に気を使っている訳でもないので、ラシアは少し安心する。ノア達とクランの今後を話していると、リュートリア達がやってきて最初に挨拶をしたのはフリオールだった。

 

「相変わらず美しい。その白い鎧もよく似合っているよ。そういう訳で僕とお付き合いしてもらえないかな? ラシア君」

 

 怪我の痕などもあるが……リュートリアもフリオールも元気そうだなとラシアは思った。

 

「さっき話した時から思ったけどフリオが変わってない! ラシアさん無視していいよ!」

 

「ノア。この変なのは?」

 

「リュートリアの所の副マスター」

 

 互いのギルドの副マスター同士が話し始めたのを無視して、リュートリアがラシアに話しかける。

 

「ラシア。あなたXランクになったらしいわね」

 

「はぁ、おかげさまで」

 

 こういう時は本当にどう返していいか分からないので困る。リュートリアが大公に自分の事を話したのは知っている。それを恨んでいる訳ではないが、どう接すればいいかは難しい。

 

 リュートリアもラシアがこういう性格というのはある程度知っているのだろうが、何かこう話し方にトゲがあるのだ。

 

「あれだけデルパロア家に啖呵を切った割には普通ね」

 

 そこは切実に反論したい。ティーガーとパルサーがやったので自分もフウコウも関係ないと言いたいが……自分の為に怒ってくれたので無関係とは思わない。だから多少は言い返す。

 

「大公が直接言ってきたら謝りもしますが……他の人にどう言われた所でどうにでもなるので」

 

「へー。Xランクに上がったばかりの冒険者が言うじゃない」

 

 全ての人から好かれようとは思わない。その人が嫌いなら、ラシアは近寄らないタイプだ。リュートリアはたぶん自分とは逆で、気に入らない奴にも絡みに行くタイプだと思う。

 

 嫌いなら嫌いでいいが……自分を嫌いだと思っている人とラシアも話したくはない。

 

「リュートリアさん。そんな事を言いに来たんですか? 何かご用があるなら伺いますけど……」

 

「そうね。つまらない話はやめておくわ。貴女に宣戦布告しに来たという話よ」

 

 何言ってんだこいつはとラシアは思う。冒険者同士で揉めた所で何にもならないし、勝った所で負けた所で何かある訳でもない。

 

 好きにしてくれと思うし、別に負けてもいい。

 

 リュートリアはこの世界の人間で、ラシアは別の世界の人間でいつかは帰るのだから。

 

 ただ、どうしてそういう話になったのかは気になったので尋ねる。

 

「なんでそういう話になるんですか?」

 

「えぇ。先ほど国王陛下とお話した時に聞いたの。狩猟祭をやるとの事だから、そこでどちらが上かはっきりと決着をつけようと思ってね」

 

 ラシアはもう初心者ではないが……まだこの世界の初級者だとは思う。今言ったような狩猟祭とかいうのも知らないので、貴女の方が上ですと言おうとしたところで、国王陛下から話があるようなので、この場にいる者達に集まるように声がかかった。

 

 リュートリア達との話を中断し、ラシア達は声が聞こえる場所へと集まる。

 

 そして国王陛下の話が始まる。隣には大公がいたのでそこに目を向けると目が合った。

 

 とても良い笑顔で笑っている。

 

「この場にいる冒険者、貴族達には先に伝えておこう。先ほどの揉め事の詳細は聞かせてもらった。

 

 ここで何事もなく終わらせては遺恨が残ろう。そこで私は大公や騎士団長、聖騎士団長らと話をし、一つの事を決めた。

 

 貴族は自身が鍛えた冒険者がいる。冒険者も今まで鍛え抜いた力がある。それを使い競い、どちらが上かはっきりさせよ! だからこそ私はこの場で宣言する。Xランク以上の冒険者を主役とした狩猟祭を開催することを!!」

 

 国王の宣言に周りは歓声を上げる。グオンも叫んでいる。ノアも嬉しそうだ。

 

 だけど……ラシアだけは狩猟祭とは何ぞやという感じで、完全に蚊帳の外だった……




今回でこの章は終わり、次回から新章になります。
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