ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第137話 狩猟祭一日目

 本日から狩猟祭が開催され、王都は凄まじい熱気に包まれているとかなんとか。

 

 ダンジョン都市ルインエルデも凄い熱気だ。この前から宿がある地区で祭りをするとかなんとか話があったのだが、どうせやるなら狩猟祭に合わせた方が儲かる……じゃなくて賑わうんじゃね? ってことで、狩猟祭に合わせて祭りが開催されたからだ。

 

 本来なら一日目からダンジョンに入って、モンスターを狩りまくったりするところなのだが……ラシアとフウコウ、グオンは正座中だった。

 

 一日目から動かない理由は、狩り場が混むとか人が多いとかではなく、今後のことを考えて、リレッサにダンジョン攻略を手伝ってもらうかもしれないと話したからだ。

 

 ラシア的には姫にダンジョンに入ってもらうなどどうかと思うが、リレッサはもう姫ではないのだ。だから危険はあるが、一つの選択肢として冒険者という道があっても良いと思う。

 

 まぁそれもリレッサの受け売りだ。ラシアが悩んでいたのは、自分が元の世界に帰るためにリレッサを利用するのはどうなのかなーということだった。

 

 そのことを説明したら、リレッサはわりと軽く言った。

 

「私はラシアに頼られて嬉しいですよ?」

 

 そう言われたので、散々悩んだ挙げ句、その力を借りることにした。

 

 前から祭りの日はリレッサと回ったり、宿で何か作って売ったりすることを約束していたのだが、狩猟祭のせいでそれが潰れそうになってしまった。

 

 リレッサよりラシアの方が楽しみにしていたし、命に関わることではないので、狩猟祭の一日目からは動かずに、たこ焼きやらこの前作ったフィッシュフライなんかを作って売る予定だった。

 

 で、正座の理由だが……二日目からダンジョンに向かうと言ってあったのだが、借りている宿も近いので、ラシアがフィッシュフライを作ると聞いてフウコウが料理を食べにやってきた。

 

 作っている間に、近くの宿がダーツ? みたいな感じで尖った物を投げ、刺さったら景品がもらえるとかそういう感じのものをやっていたので、待っている間にフウコウが参戦した。

 

 ラシアはそこで不幸の連鎖を初めて見た。

 

 投げる→外す→弾く→どこかに飛んでいく→狙ったかのように近くにいたグオンの灰竜の鼻の中に刺さる→さすがのドラゴンでも鼻の中は痛い→軽く暴れる→宿の壁を壊す→おやっさん怒る→現在。

 

 といった感じだ。

 

 ラシアとグオンが悪い要素は全くないと思うが……これが不幸の連鎖なのだろうとラシアは色々と諦めた。

 

「よし、アホ共。応急処置は終わったからさっさと働け。ラシア、その猫に餌やるなよ」

 

 三人は返事をして立ち上がる。ラシアはフィッシュフライの続きを作るだけなので、リレッサとティアに任せてあった厨房へと戻る。

 

 フィッシュフライのままだと歩きながら食べづらいので、パンに挟んで販売する感じだ。これはサンドイッチなのかバーガーなのかは分からないが、わりと好評なので何でもいいかなという感じだ。

 

 ラシアが揚げて、リレッサが味付けしてパンに挟んで、ティアが販売する感じだ。ティアも普段からリレッサやナットンに計算を教えてもらって勉強しているので、お金のやり取りぐらいなら間違えることはなくなっている。

 

「うーん。こういうことの方が性に合ってるのか楽しい。冒険者やめてこういうことしたい」

 

「ラシアさん。楽しいね。冒険者は楽しくないの?」

 

「冒険者は仕方なくやってる感じかなー。しなくて良いのならしないかな」

 

「色々あるんだねー」

 

「そうなんすよ。お嬢さん色々あるんですよ」

 

 そんなことを話している内に、フウコウが頼んでいた分ができたので、お金を払ってティアからフィッシュフライバーガーサンドを受け取って食べていた。

 

 遠目から見ても尻尾が立ってガツガツと食べているので、好評なのだろう。

 

 ちなみにおやっさんは外で屋台みたいなのを作って、ナットンとたこ焼きを焼いている。びっくりするぐらい似合っているので、本当にたこ焼き売るの初めてですか? というぐらいの貫禄はある。

 

 セレットはいつものように弟子達と道具屋の方で色々と販売したり錬金したりしているが……祭りというだけあって凄まじく忙しい。だからガロニアやその弟子達も手伝いに来ている。

 

 その辺はラシア的には意外だったが、フウコウやセレットが言うには、孫や弟子が死んで少し思うところがあったのだろうとのことだ。だから最近では、おやっさんとも話をしている。まぁ面白いぐらいに会話はぎこちないが。

 

 そんなことを考えていると、外からおやっさんの嫌そうな声が聞こえてきた。

 

「うげっ……デゴッパチと……なぜロディー様がこんなところに?」

 

「よう山賊。その顔、久しぶりに見たが……元気そうだな。というかこの前家に来たのなら声をかけろよ!」

 

「お前が俺に挨拶しろ! めんどくせー!」

 

「なんや? デゴットはこの宿の主人と知り合いか? ちなみに私はラシア隊長に会いに来た」

 

「そうだなー。パルサーとティーガーみたいな関係か?」

 

「なんや。仲良しか」

 

「違います!」「ちゃうやろ!」

 

 今の声で、パルサーとティーガーが来ているのも分かった。

 

 そしてデゴットはおやっさんと世間話をしているようで、パルサー、ティーガー、ロディーの三人が入ってきた。簡単に挨拶を済ませたので、ラシアは質問する。

 

「来てくれても何の問題もないんですが……皆さん貴族なのだから、王都の祭りに出ている方が美味しい物を食べられるのでは?」

 

「そうでもないで。王都はアホほど人多いし露店も多いからなー。美味いところは美味いけど滅多に当たらんからな。こっちでなんか食べる方が正解やで。たこ焼きとかあっちには売ってないしな」

 

「最近ではこちらで人運びの馬車をやっている者達が、王都でサンドイッチの店を出したと聞いて見てきたが……買うのにかなり並ばなくてはいけないのでやめたところだ」

 

「ラシア隊長が料理してる姿が……こうイメージと違うというかなんというか。まぁ似合ってるからええんですけども。……とりあえず、このフィッシュフライバーガーサンドを三つお願いします……それはともかく姫様が料理してる」

 

「もう姫ではありませんからね。料理の一つや二つできますよ」

 

 ロディーは、自分の隊の隊長と元とはいえ守るべき王女がメイド服で料理しているのを見て、なんとも言えない表情をしているが……もう元の国はないので、そんなものだろうと色々諦めたようだった。

 

 そしてできあがるまで少し時間がかかるので、ティーガーはフウコウを見つけて絡みにいった。

 

「おっ? フウコおるやんけ!」

 

「にぎゃ! ティーガーにゃ! こっちくんにゃ!」

 

「そんな嬉しいこと言われたら行きたなるやろ! そんな嫌がらんと仲良うしようや!」

 

「お前といるとろくなことがないにゃ!」

 

「フウコがそれ言うのが爆笑やな!」

 

 猫組だけあって、たしかにティーガーも猫っぽいなと思っていると、パルサーが気になっていたことを質問する。

 

「ラシアが狩猟祭にあまり乗り気ではないのは分かるが……ゆっくりしていてもいいのか? 確かにこちらの陣営は武力に関しては他を圧倒するが、ラシアも狩猟祭は初めてで、クランマスターになって間もないだろう?」

 

 確かに心配なところはあると思っていると、隣でお茶を飲んでいたロディーが答えた。

 

「それに関しては全然大丈夫やな。武力で圧倒してる時点で余裕やな」

 

「そうなんですか? 私やティーガーみたいな急遽入ったメンバーもいますし、いつも通りというのも難しいのでは?」

 

「狩猟祭のルールで、気に入らんかったら他の冒険者しばいてええってルールがあるやろ? よっぽどの時はラシア隊長が全員しばいたらええねん」

 

 ラシアとパルサーの意見が一つになる。絶対にダメなのでは?

 

「大丈夫や。国王陛下と大公に確認はしてきた。ちゃんとラシア隊長が全員しばいたらどうなん? って聞いたら、それはそれでおもろいからおkとのことや」

 

「それはただの武道大会とかそんなのでは?」

 

「ラシア隊長。狩猟する方が、自分も狩猟されると思ってないのがおかしいんや。される方が悪いし、全然おkやで」

 

 それは違うだろうとラシアは思う。狩猟とは猟であって、戦いではないのだ。狩られる方から反撃されることもあるだろうが、罠や知恵を使い安全に狩るのが狩猟だ。同じ土台に立つのが戦いなので、全然違うという話なのだが……

 

「なるほど……その考えならラシア隊長が安全に他の冒険者を狩れば良いだけの話やな」

 

 ラシアがこれは駄目だと思っていると、フィッシュフライが揚げ終わったので、リレッサにソースをかけてもらい、ティアがそれを三人のところに運んでいった。

 

 フウコウに絡んでいたティーガーも戻ってきて話に加わる。

 

「でもおかんが言うように、他の冒険者を倒すんは全然ありやで。ウチも大公に確認したけど、機嫌良うにどのダンジョンにどの冒険者が行くとか情報を教えてくれたで」

 

「なんで調べてるねんって話ですね」

 

「そら闇討ちでもするんちゃうか? まー冗談はおいといて。ラシの勝ちは確実やからな。他がどれだけできるか見てるんはあるやろな。自分、前にパルと箱船ダンジョン行って、初見で未発見の場所を踏破したやろ? 狩猟祭やったら、あれで優勝レベルやからなー」

 

「えっ? そうなんですか」

 

「そうなんです。だから陛下も大公もラシが優勝するのは見込んでる感じで、他がどうやるか見てる感じやなー」

 

「負けたら面白そう」

 

「それして得するのは大公やけどな」

 

「……あの野郎。それでLLLが負けたらデルパロア家専属とか言い出したのか」

 

「まぁ祭りやからなー。その辺の都合はほとんどの連中が知らんし、王都では誰が勝つかで賭けもあるな。ちなみにラシの人気はかなり下やから、おもろいことになっとるな。デゴット様あたりが賭けとった」

 

「騎士団ってなんか常にお金無いイメージあるんですが……国から資金出てないんですか?」

 

 そういうこともないが、税金を無駄に使うわけにもいかないので、騎士団も聖騎士もわりと金欠気味らしい。そうパルサーが答えた。

 

 国の軍事担当がそれで大丈夫かと思うが……有事ではない時でもお金は要るものなので、ラシアはそんなものかと納得する。

 

 そしてそれからもリレッサ達とフィッシュフライ等を作って販売したり、パルサー達と世間話や狩猟祭の話をしたりして時間が流れていった。

 

 翌日にはパルサーとティーガーもラシアのクランに参加して狩りに行くので、その日はちょうど宿が空いていたこともあり、泊まることになった。

 

 騒がしくもあり楽しい一日が終わり、ラシア達はまず、水没ダンジョンの踏破に向けて動き出した。

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