ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第138話 水没ダンジョン

 狩猟祭二日目を迎え、ラシア達LLLは本格的に動き始める。昼前から。

 

 宿がある地区で祭りをやっているので、一日ぐらいはティアと一緒に回りたかったが、負けると大変なのでさすがにそろそろ動く感じだ。

 

 そしておやっさんやセレット、ティアに行ってきますの挨拶をしてから、グオンが借りている家へと向かうが……なんか人が多い。

 

 デゴットはおやっさんと朝まで飲んでいたというのは聞いているし、ロディーもルインエルデに泊まったというのは聞いているが……それに加えて騎士団がチラホラといる。

 

 それだけならデゴットとロディーの護衛かなーとラシアは思うのだが、いるのがこの前、箱船ダンジョンに行った騎士団のお兄さんお姉さんだ。

 

 ラシアが思ったのは……何かしらの理由をつけて付いてきそうだ。

 

「ラシア……お前、遅くないかにゃ? もうすぐ昼にゃー」

 

 この世界に目覚ましがないのが悪いと思っていると、ティーガーがフォローしてくれた。

 

「こういう時は焦っても仕方ないからなー。本来の力を出すつもりやったら、いつも通りが一番ええやろ」

 

「なるほどにゃー」

 

「知らんけどな!」

 

「お前マジで一回引っ掻くにゃ!」

 

 フウコウは猫怪人だが、かなり人に近い。爪とかその辺の構造はどっちに近いのかなーと思っていると、デゴットから話があった。

 

「ラシア。悪いがこいつらも連れて行ってくれ。足は引っ張らんと思う。一応、騎士や聖騎士は狩猟祭に参加してもいいが、どうせ出るならお前のところのクランで出たいとのことでな」

 

「……私的にはありがたいんですけど、騎士団の上澄みのお兄さんお姉さんが参加して大丈夫なんですか?」

 

 そこで言葉を合わせたように四人は新兵ですが? と同時に言い、全員が嘘つけと心が一つになった。

 

「まぁ新兵は冗談だが……騎士団でも聖騎士でもラシアは有名だからな。パルサーやティーガーだけ参加するのはズルいとなってな。行きたい奴は戦えということになった」

 

「どうしてそうなった?」

 

「それで厳正な戦いの結果、この四人が残ったという感じだな。まーラシアも知ってる奴だから大丈夫という話だな」

 

 ラシア的には本当にありがたい話なので喜んで了承すると、全員からかなり意外そうな顔をされた。

 

 水没ダンジョンの方は大丈夫なのだが、天城ダンジョンの方には少し問題がある。攻撃面ではティーガー、パルサーもいて、リレッサの支援、ノアの魔法もあるのでたぶん問題はない。だが防御というか、守りに関しては少し不安が残る。

 

 リレッサの支援があるので大丈夫と思うかもしれないが、そのリレッサが問題なのだ。ゲームではリレッサとダンジョンに行くイベントが存在する。

 

 リレッサはNPCなので、プレイヤーと比べるとスキルやステータスが少しおかしい。天使召喚と支援系のスキルを両方使えるので異常に強いのだが、設定上は一国の箱入り娘で姫だ。MPは多くても体力は少ない。

 

 それがこの世界でも適用されているなら、守りの面に不安が残る。だから水没ダンジョンの踏破程度で苦戦するなら、天城ダンジョンに連れて行くのは無理になってくる。

 

 だからついて来てくれるというのなら、とてもありがたいことなのだ。

 

 あとはノアは大丈夫だが……ダード達遭難組にしても、適正レベルを遙かに超えている場所へ行くことになるので、強者に来てもらえるなら本当に助かるといった話だ。

 

 まぁそれを本人達の前では言えないので、デゴットには濁してラシアは伝える。

 

 そこでダードからデゴットに質問が入る。

 

「そういうのって他のクランから文句出たりしないんですか?」

 

 パルサーにたびたび注意されているので、ダードの言葉遣いもマシになったなーとラシアが思っていると、デゴットが答えた。

 

「大丈夫だ。冒険者も騎士も聖騎士も、文句があるならかかってこいで済む。立場が強い者には効かんが……こちらには騎士団長と聖騎士長がいるからな。仮に言ってきてもラシアがしばいて終わりだな」

 

「なるほど」

 

「ダードさん……なるほどじゃないですからね」

 

 世の中の全てが会話で解決するとは思わないが……この世界の人達は喧嘩っ早いというかなんというか、まぁ言葉が通じないモンスターが相手なので、それも仕方がないのかなとラシアは思う。

 

 それから簡単にだが全員が自己紹介をして、デゴット達と別れてからラシアは冒険者ギルドへと向かった。

 

 街は祭りで、この都市から狩猟祭に参加する高ランク冒険者はほとんどいないので、周りから歓声や応援が届きなんとも恥ずかしい感じになる。

 

 しかもティーガーやグオンがドラゴンに乗っているので、やたらと目立つのだ。

 

 ラシアは中身一般人なのでこういうのに慣れない。だから聖銀鋼の鎧に魔力を流して顔を隠す。

 

 そんなことをしているうちに冒険者ギルドへたどり着いた。いつもの受付嬢がラシアの担当なのは、もはや暗黙の了解らしい。受付に並んでいた冒険者たちもさっと散り、ラシアはすぐに受付を済ませることができた。

 

「今更なんですけど……ラシア様って呼んだ方がいいですか?」

 

「絶対にやめてください。なんでそんな話になったんですか?」

 

「いえ。ダンジョンで人が乗れるドラゴンを見つけてきたり、単独で踏破したり、デルパロア家の食事会に呼ばれたりと色々あるので」

 

「大公さんちは行かないとダメだったから行ったまでです。他は……Xランク冒険者なら誰でも可能と思いますよ」

 

「そうだったらもっと騎乗用のドラゴンがいると思いますけどね。では今まで通りで大丈夫ですか?」

 

「是非今まで通りでお願いします」

 

「分かりました。現在は狩猟祭になっていますが、業務の方は通常と変わらないので、用紙の方に記入をお願いします」

 

 向かう場所は水没ダンジョン。ここは七階層まであるので、急ぎで行けば一日あれば行けるが、二日ほど見ておくことにして、ラシアは用紙に二日と記入する。

 

 ちなみにリレッサには、前からいつかはダンジョンの攻略を手伝ってもらうかもしれないと伝えてあったので、いつの間にか冒険者の証明書を取得してくれていた。だからラシア達ともパーティーを組むことが可能だ。

 

 ラシアが遭難した時のような、王都まで二週間ぐらいかけて行くやつはまだやってないとのこと。

 

 用紙に全てを記入し、受付嬢に渡した。

 

「他の冒険者の皆さんは……高ランクになると王都に行くんですが、ラシアさんはずっとここですね」

 

「王都って人が多いだけでそこまで便利ではないので、ここでいいですね。では行ってきます」

 

「分かりました。ラシアさんの優勝を応援していますので頑張ってください」

 

 軽く手を上げてラシアはポータルに向かう。冒険者がいるのは当たり前だが、騎士や聖騎士がラシアに従っている。それは本当に凄いことなのだが、本人が人見知りなのがまた……

 

 受付嬢がそんなことを考えていると、また隣から後輩に話しかけられる。

 

「あのグオンさんと聖騎士様が乗ってるドラゴンって、王都の冒険者にもいないらしいですよ」

 

「召喚獣とはまた違うって、ロディー様から冒険者側に通達があったわね。確か全部で三頭って話だから……ロディー様、ティーガー様、そしてグオンさんしか今は乗ってないわね」

 

「おう……これだけ人が多い国で三頭ってなんか凄いですね」

 

「将来的には増えるかもしれないって話だけど、見つけたのはラシアさんだから、ラシアさん次第みたいなことはロディー様が言ってたわね」

 

「……ラシアさん、重度の人見知りなのに想像以上に凄い人なのでは?」

 

「まさに今更ね」

 

 そんなことをしている内に、ラシア達は水没ダンジョンへとたどり着く。

 

「前のクランにいた時ぶりだな。ここのボスってなんなんだ?」

 

 ダードがそう尋ねると、前はよくこの辺に狩りに来ていたグオンが答える。

 

「たしか月齢の王がシャークムーンで。ボスが……ホン・マグロマンだったはず。で、姐さんはそのボスのドロップを狙ってるって話だな。てか、お前覚えとけよ」

 

「いや。アイテム狙ってるのは知ってるけど、ボスは知らないからな。それでラシア、合ってるか?」

 

 リレッサや急遽来てくれた騎士団と聖騎士のお兄さんお姉さんの隊列を考えていたが、話は聞こえていたのでラシアは答える。

 

「そっちじゃないですね。水没している方に行くので、出てくるのは時間湧きじゃなくて……月齢の王がブルーマーリンで、ボスがクジラマンですね。ボスより強いのがたまに道中に出るので、そこだけ注意ですね」

 

「へー。そんなところもあるのか。楽しみだな」

 

「命の危険があるのに楽しみとか……ダードさんも冒険者向きな性格してますよね……ん?」

 

 今の話におかしいところはなかったと思うのだが……なんというか反応が両極端だった。ダードのようにこの水没ダンジョンに来たことが少ない者、ない者は似たような感じだが、何度も来たことのある者達はそんなところあったか? というような反応だった。

 

 そこまで行けば分かるのだが……ラシアが思ったのは、今から行くフロアも、もしかしたら開拓されていない場所なのでは? ということだった。

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