ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第14話 踏破に向けて

 

 ティアとノアの店で買い物してから約一週間が経ち、ラシアはようやく気力が回復したのでダンジョンに二度ほど潜って勉強していた。ささっと進んでも良いが、まだダンジョンに慣れていないのであえてゆっくり進む。

 

 初級者ならダンジョンの中で眠ることも考えないと踏破できない。

 

 ラシアなら殴れば倒せる。だから時間はかなり短縮できる。だが、そういう所を勉強しないと中級や上級で本番を試す訳にはいかない。だから苗木ダンジョンで試しておかないと、と考えている。

 

「今は浅いから一日あれば行けるけど……後からが無理なんだよな。基本的に踏破しないと行き帰りあるし」

 

 宿に空けた穴はちゃんと夕方には直り、新しい工法と何かで部屋の外から聞こえる音も少し静かになった。部屋も一番広い所を貸してくれたので、トイレ以外は言う事がなかった。

 

「いや……あるな。寝床が固い。なんか敷き布団とかその辺の材料になるような魔物いたような気がする」

 

 宿から少しずつ慣れた道を通って冒険者ギルドへ向かう。

 

 目的の場所に着くと色んな人がいて、様々な種族が冒険をしている。この前助かった魔法使いもいた。よく見るとラシアが回復アイテムを投げつけて回復させた者も二人いる。

 

 三人でパーティーを組み、そのままダンジョンへ入っていった。

 

 皆が強いのか、ラシアが弱いのかは分からない。きっと彼らにも色んな事情があって止まれないのだろう。

 

 冒険者は死ぬ。それが当たり前と思えるほどに。

 

 ラシアは違う。この世界の住人ではないからだ。だから無意識に言葉が出る。

 

「私は……そんなに激しく生きられないな」

 

 少し離れた場所を見るとノアもいた。どうやら仲間とパーティーを組んで一緒に行くようだ。向こうもこちらに気づいたようだったので、ラシアは軽く会釈してから受付へ向かった。

 

 受付もいつもと同じ人だ。多少は慣れたので少しくらいの話はできる。いつも同じ態度で接してくれたからこそ、ラシアが歩み寄れた感じだ。

 

「おはようございます。ラシアさん。今日もダンジョンですか?」

 

「はい。そろそろ先の事も考えて、ダンジョンで寝たりする事も計画中です。基本的に日帰りなので」

 

「そうでしたか。でしたら階段付近でしか寝る事は基本無理だと思っておいてください。誰かしら冒険者がいるので、モンスターが来ても何とかなります」

 

「なるほど」

 

「中級に上がる時に詳しい説明はあります」

 

 ゲームだと階段がランダムに出るダンジョンもあったが、その辺はどうなっているのだろうと思った。だが当分先の話なので、まあいいかと考える。

 

「そういえばラシアさんがこの前助けた方々が三人でパーティーを組み、苗木ダンジョンを踏破しましたよ」

 

 さっき見かけた三人の事だ。この街から入られる初心者ダンジョンと苗木のダンジョンは、戦闘が全くの素人なら踏破に時間がかかる。

 

 だが元騎士であったり、外でモンスターを倒していたり、戦闘の才能がある者なら踏破にそれほど時間はかからない。

 

 早い者で十日。遅い者でも二ヶ月もあれば踏破できる。

 

 モンスターが進化するという危険はあるが、ミスが死に直結する事が少ないからだ。

 

 周囲に注意すれば音は拾える。防具を装備すれば怪我は防げる。怪我をすれば回復薬を飲む。

 

 無理はしても無茶はしない。それさえ守れば基本的には踏破できる。

 

 だからダンジョンに潜り始めて一ヶ月と少し経っているラシアは、比較的ゆっくりめだ。戦闘云々よりダンジョン初心者なので仕方ない事だが。

 

「って事はあの何人は中級にもう行くんですか?」

 

「まだ無理ですね。ランクで言うとBランクから中級に入れます。それまでは苗木のダンジョンで経験を積んでもらいます。すぐに中級に行っても待ってるのは死だけですので」

 

 ゲームだと中級ダンジョンが確か一番下は十五から始まり六十までが中級だった。

 それ以上は上級、超級、そして超弩級と続く。超弩級はエンドコンテンツやコラボ、記念ダンジョンなのでこちらの世界では関係なさそうだ。超級が最大になるのだろう。

 

 そして中級からダンジョンには罠が出現し、モンスターは状態異常を使い始める。

 

 だからチュートリアル的な意味合いで苗木のダンジョンのボスは状態異常を使用してくる。

 

「まあ今の感じだとまだ早そうですね。罠も出始めますし、状態異常もありますし。そもそも敵が強い。一番低い所でも廃坑のダンジョンですよね?スキル使ってドッグマン……せめてラットマンを一撃で倒せないとキツいかな。固いですし」

 

 ポータルを見ながら何気なく言った事だったが、受付嬢はとても驚く。

 

「前から少し思っていた事ですが……ラシアさんはダンジョン……いえ、冒険者に詳しいですよね?多重で冒険者にはなれないはずなので、似たような事をしていましたか?」

 

 しまったと思った時にはもう遅い。ラシアは何とか知恵を絞り考える。

 

「えっ……あー……モンスターを狩ったりしていて、冒険者の方と話す機会も多かったので詳しくなりました。あと気になったら図書館で調べるようにはしているので」

 

 嘘は言っていない。ゲームでモンスターは狩っていたし、ノアとも話した。図書館で調べているのも本当だ。

 

 怪しむというよりは、不思議な者を見る目でラシアは見られる。そこからはいつも通りに手続きをこなし、ラシアは苗木のダンジョンへ向かった。

 

 ポータルに入って行くラシアを受付嬢が見ていると、同じ職場の後輩に話しかけられる。今日は少し空いているからだ。

 

「ラシアさんでしたっけ?毎回思いますけど……不思議な人ですね」

 

「そうね。でも確実に上級でやっていけるほどの実力はあるわよ」

 

「えっ?そうなんですか……と思ったけど、そうですよね。あの大きさのハンマー持って装備もあるのに足音しませんし……」

 

 ラシアは目立つつもりはなく静かにしているが、それでもやはり目立つ。

 

 一番は容姿の問題だが、動作にブレがないからだ。軽装とはいえ鎧を着て、その上で背中にはハンマーを背負っている。重量にしてもかなりの重さだが、普通に生活している時と変わらない。

 

 それに二人が前に見ていた時の話だが、重量系の装備で身を包んだタンク型の冒険者とラシアがぶつかった事がある。その時ラシアは微動だにせず、相手が尻餅をついた事があった。

 

 だから受付嬢や一定の冒険者の間では、かなり強いヤツという評価になっている。

 

「弱かったらあんな武器振れないでしょう」

 

「そうなんですよ。あれと似たような大きさの武器を他の冒険者に触らせてもらったんですけど……私は持てませんでしたよ」

 

 受付嬢達がそんな話をしているとは露知らず、ラシアは苗木のダンジョンへ入っていく。

 

 今回はダンジョンで寝泊まりも考えた上で踏破も視野に入れている。攻略したからと言って入れなくなる訳ではないので、先にクリアしておくのも良いだろうと思ったからだ。

 

「確か……ボスはオールド・アイとかいう色味の悪い大きな目玉だったな」

 

 大きな目玉に触手のような物が生えているモンスターで、ラシアがやっていたゲームでは薄い本によく出てくるとして有名だった。

 

 強さはウルフマンより遥かに弱い。ボスまで余裕をもって行ける者なら苦労なく倒せる。

 

 ただゲームでは今後の事を考え、チュートリアル的な意味合いもあり、オールド・アイは必中スキルを持っている。

 

 そしてその目に睨まれると異常状態になる。スキルの効果が乗り確実に状態異常になる。

 

 ラシアが警戒しているモンスターの簡易版だ。ノアに聞いた話では即死や本当に危険な状態異常は使ってこないらしい。対策さえしていれば問題はないという事だ。

 

 だがいくら経験者の話と言っても、他人の話を全て信用する事はしない。

 

 だから即死、腐敗、狂化といった異常状態耐性を持つアクセサリーをアイテムバッグから取り出し装備する。

 

「ゲームだとアクセって二つまでしか装備できないけど、現実だとどうなんだ?」

 

 装備できるならクリティカルダメージ上昇系は全部持っているのでロマンが広がるな、と考えながらダンジョンを進み始めた。

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