ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第140話 海底神殿

「水没ダンジョンって、ずっと水没してへんやんけって思っとったけど、ちゃんと水没してたんやなー」

 

「あっちのルートだと海辺の洞窟って感じですからね」

 

「しっかし、ラシは色々知ってるなー」

 

 そう話すティーガーの目の前には、海の底に沈んだ巨大な神殿が広がっている。ラシア達が進んでいるルートでは、五階層から海底にある神殿がダンジョンになるのだ。

 

 確かゲームの設定だと、大昔に栄えた国があったが、海の神様と大地の神様の怒りを買って海の底に沈められたとか、そんな感じだったはずだ。

 

 この辺はローウェンテニアにも伝わっていたようで、リレッサもおとぎ話だとは思っていたが、本当にあるとは思っていなかったらしく感動していた。

 

 このメンバーでならほとんど問題はないのだが、ここからは少し注意が必要になってくる。七階層はボス部屋で、ボスはクジラマンなのだが、今いる五階層と六階層には、たまーに超級ダンジョンに出てくるモンスターが一匹だけ湧く。

 

 海王・ポセイ丼。

 

 ボスを除けば、水属性で一番強いモンスターがこいつだ。ゲームでも、フィールドに必ず一匹湧くわけではなく、本当にランダムで出現するモンスターだ。

 

 基本的に、この狩り場を適正とするプレイヤーでは勝てないので、尻尾の生えたどんぶりが見えたら即座に撤退するのが基本だ。

 

 そのふざけた見た目とは裏腹に、破格の性能を持つ武器のトライデントをごくごく稀に落とすので、高ランクプレイヤーは見かけたら倒す。

 

 だけど……この海底神殿は、かなり人気がない狩り場だ。理由は……

 

「にゃ? ラシア! モッ、モンスターにゃ?」

 

「うげっ……ビエットさん! ゲニツさん! そいつは触れたら爆発するので、矢で攻撃してください!」

 

 言われた通りに二人が攻撃すると、矢が刺さった瞬間に爆発した。

 

「あんなモンスターもいるのか……乱戦になると大変そうだな」

 

「見た目の派手さはありますが……イクラマンの爆発ダメージは、そこまで強くはないですね」

 

「今のモンスターはイクラマンというのか。なんというか、なかなかに気味が悪いな」

 

 パルサーが言ったことが正解で、この海底神殿に出てくるモンスターは全体的に気持ち悪いのだ……。

 

 マウスマンとかラビットマンは、簡単に言えば獣人だ。で、このダンジョンに出てくるモンスターは、ファンタジーでいう半魚人みたいな存在になる。このゲームにはオークがいないのと同じで、サハギンもいない。

 

 だから半魚人みたいな立ち位置で、カツオマンとかマグロマンとか、魚の名前にマンが付いた奴がいるのが特徴で……魚の体に人間の手足が付いていて、はっきり言って全部気持ち悪い。

 

 さっきのイクラマンも、バスケットボールぐらいの大きさのイクラに人の足が付いていて、バタ足で泳いで来るのでガチ目に気持ち悪い。

 

 そんな感じで不快感たっぷりなのが、この水没ダンジョンだ。

 

 シャークムーンとかクジラマンは普通に格好いいので、デザイナーさんの違いが出ている感じだ。シャークムーンとかはフィギュアになったりもしているほど人気がある。まぁ……シャ○ームーンのパ……リスペクトだ。

 

 後衛には、イクラマンを見かけたらすぐに攻撃するよう頼んでおく。イクラマンの爆発はHPをパーセンテージで削るので、高レベルほど実際に受けるダメージが大きくなるのだ。

 

 ゲームだと一割ほど食らうので、この世界で考えたら、もしかすると大怪我になるかもしれない。遠くで爆発させるのが一番だ。

 

 進化先は、イクラマン→サケマン→サケカス→イクラードンとなっている。強いのは強いが、全てこの海底神殿の五階層と六階層に出てくる。

 

 あとは、こういう海が関係するダンジョンは広く、モンスターの種類や数が多い。そのため特定のモンスターを狙って狩るのには向いていない。だけどその分、プレイヤーが来ないわりにレアアイテムが多く出るのも特徴だ。

 

 出てくるモンスターのことは全てグオンに伝えてあり、今回の指揮もグオンに任せてあるので、ラシアは少しゆっくりめだ。

 

 警戒はしているが、ティーガー、パルサー、フウコウ、騎士団のお兄さんズも戦闘に参加しているので、今のところは問題ない。

 

 姫様の様子を気にしたり、皆の戦い方を見たりしていると、ビショップとアークパラディンのお姉さんズに話しかけられる。

 

 ちなみに名前は、ビショップがレクトアさんで、アークパラディンがラオメさん。レクトアさんの方は次期聖女みたいな立場らしいが、前の聖女ロワンテがやらかしているので、そんな称号は全く欲しくないとのことだ。

 

「戦闘中に話すことではないが……ラシア殿とリレッサ様に少し聞きたい。スキルのことだが、前にラシア殿が箱船ダンジョンで使っていた物があっただろう? 騎士団や聖騎士でも使用を考えているが……使用するなら、いくらか払った方がいいか?」

 

 何を使ったかなーと考えていると、二人がちゃんと覚えていたようで、挙げたのはダブルマジック、ギガンテックハンド、イレイザープレッシャーだった。

 

 イレイザープレッシャーはイレイザーハンマーの固定スキルなので覚えられない。ダブルマジックを使ってくるモンスターは、どこかにいたはずだ。ギガンテックハンドは、この前ダード達に説明したのと同じで、名前が分からないパターンだ。

 

 ラシア的には全然使ってもらっても良いのだが……リレッサが先に、どうして自分にも聞いたのかと二人に質問する。

 

「はい。リレッサ様がローウェンテニアの王女ということは、私達騎士団や聖騎士の上層部には伝わっています。ローウェンテニアのことは分かりませんが、スキルという物はいわば個人やクラン……突き詰めていけば、その国の資産です。ですからラシア殿は王女直轄の騎士と聞きましたので、リレッサ様の許可が必要かと思いまして」

 

「あとスキルは、未発見の物や習得が難しい物ほど価値が高いですからね」

 

 ラシア的にはそこまで深く考えていなかったが……やはりスキルも一つの資産というか、少し軽く考えすぎていたことを反省する。

 

 ただ……リレッサに関しても、ラシアと似たようなものといった感じだ。この世界のように職の概念を無視してスキルを覚えることはできないが……それでもローウェンテニアは全ての職のスキルが解明されていた世界なのだ。

 

「私個人の考えとしては……独占するよりは分け与え、皆に使ってもらった方が良いと考えています。この世界とローウェンテニアでは少しズレがあるので、多くの人に使ってもらい、その使用方法などのデータを集めたいところではありますが……皆さんの考えも分かります」

 

 リレッサの言ったことは、本当に重要なことなのだ。そう思いながら戦闘しているノア達の方を見ると、その理由がよく分かる。

 

「援護するよ! フレイムフィールド展開!」

 

 ノアを中心に炎のエリアが展開され、味方のフウコウも中に入っている。ゲームなら、味方にも攻撃力と魔法攻撃力の上昇効果が適用されるが……

 

「あつっ! 熱いにゃ! ノア! お前何するにゃ!」

 

「ごっ、ごめん! まさか私の近くにいると思わなくて!」

 

 みたいな感じで、ゲームとの違いが出ているのだ。この辺は本当に色んな人に使ってもらい、データみたいなものが欲しい。色んな考えの人が色んな使い方をするから、新しい使い方も出てくる。

 

 もちろん……悪用もされる。

 

「ラシアはどう思いますか? ローウェンテニアはもうありませんし、私も血筋としては王族ですが、滅んだ国の王女というのもおかしな話だと思うので」

 

 ラシアは少し考える。前にティーガーが言っていたこともある。大公とかに絡まれた時、逃げるのに使えるかもしれない。切り札は多い方が良いとは思う。

 

 だから難しいところではある。いくらか払うと言われても、お金には困っていないからだ。

 

「……そうですね。使ってもらっても構いませんが、不用意に広めるのは避けてもらえればと思います。お金などはいりませんが……私達が困った時に助けてもらえればと思います。いくらローウェンテニアの騎士や姫といっても、この国では立場が弱いので。あとは……使用した後に不都合みたいなものが出たら、教えてもらえればと思います」

 

 レクトアとラオメは少し話し合った後、ラシアに礼を言った。今すぐ使うことはないが、その辺を含めて騎士団長のデゴットや聖騎士長のロディーと一度話を詰めようと言ってくれた。

 

「その二人なら、ラシア殿も話しやすいだろうからな」

 

「お手数かけます……」

 

「お手数をかけているのはこちらだからな。ラシア殿はもう少し自信を持っていいぞ。あとはリレッサ様の支援魔法についても伺いたいので、その時はご同行をお願いします。支援魔法に関しては全然研究が進んでいないので」

 

「分かりました。が……もう王女ではないのですが。どうして様付けなのでしょうか? 普通の冒険者なので、ノアのように呼び捨てでも問題ありませんよ?」

 

「さすがにそれは不敬すぎて……立ち振る舞いがもう王族なので」

 

「あのティーガーでさえ、リレッサ様と話す時は様付けで、わりと畏まっているところから察してください」

 

「ラシア。私が街娘になるのは、なかなか遠いようですよ」

 

「それは無理じゃないですかねー……街にいる王族の娘を街娘とは言いませんので」

 

 そんなことを話している間に、次の階層へと向かう階段が見えてきたので、ラシア達はそのまま先へと進んで行った。

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