ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第145話 空の城

 ラシア達は空中戦へと突入していた。激闘だ。

 

 襲ってくるモンスターは空鯨も狙ってくる。一定以上のダメージを受ければ空鯨は死亡し、空にある城へ行けなくなる。ゲームなら再度アイテムを使えばやり直せるが……現実ではそうならないはずだ。

 

 だからラシア達は、襲ってくるモンスターを倒していく。

 

 ただゲームと違い、幸運なこともあった。ほとんど空鯨を攻撃せず、ラシア達ばかりを狙ってくるので、その辺だけは少しありがたい。

 

 ただ楽かと言われると、そうでもない。

 

 出てくるモンスターは軍艦ツバメ、その進化形の戦艦ツバメといった、空を飛べるモンスターばかりだ。

 

「ラシア! バスタースワローだ! こっちに来たぞ!」

 

「了解!」

 

 ダードが言ったように、遭難組の因縁の相手でもあるバスタースワローなんかもいる。

 

 今回は遠距離攻撃ができる者もいるし、この前のような不意打ちでもない。ラシアも全力を出せる上に支援もかかっているので、多少遠くても数少ない遠距離スキルで堕とせる。

 

「ハンマァーマグナム!」

 

 ラシアの白金色のハンマーが光った後、固められた魔力のエネルギーが撃ち出され、一撃でバスタースワローを破壊する。

 

「さすがは……ラシアだな! しっかし、魔石とか勿体ないな」

 

「こればかりは仕方ないですね」

 

 あとこのエリアの悪い所だが、落ちていく素材などを回収できないのが少し勿体ない。

 

 グオンの灰竜とティーガーの虹竜は空を飛べるので、死ぬ気で行けば回収できるだろうが……空中戦が大得意な魔物を相手に、同じ土俵で戦うなどやらなくて良い戦い方なのだ。

 

 今のところは大丈夫だが、数人には戦わずに空を見て、モンスターを探してもらっている。

 

「いたにゃ! 姫様、右下の方向にゃ!」

 

「分かりました。キャッチポータル」

 

 フウコウがモンスターを発見し、リレッサが魔法を使用すると、遠くにいたモンスターが即座に目の前へ転移させられる。そこをフウコウが倒す。

 

「にゃんか……ド派手なカラスにゃー」

 

「まだいるかもしれませんので、引き続きお願いしますよ。フウコウ」

 

「任せろにゃー」

 

 リレッサとフウコウが倒した魔物は、サンバガラス。カラスがサンバを踊るような、ド派手な姿をしたモンスターだ。

 

 戦闘能力はそこまで高くないが……このエリアでは一番の要注意モンスターだ。

 

 こいつが使う固有魔法に、サンバでサンバというものがある。

 

 これが凶悪で、ダメージや異常状態を与えるわけではないが……食らうと範囲内にいる三人が、決められた時間だけ踊り始めるのだ。

 

 ゲームでは踊っている間、一切操作を受け付けない。ただ本当に踊り続けるだけ。

 

 その間もモンスターは動けるので、一方的に攻撃される。何もできないまま踊りながら死んでしまうのだ。

 

 それはゲームの仕様なので、この世界だとどうなるのかとは思うのだが……万が一リレッサが踊り始めてしまったらと考えると、そんな姿は絶対に見たくない。

 

 だから戦力を減らしてでも、サンバガラスを最優先で倒す。

 

「姫様! またいたにゃ!」

 

「分かりました」

 

 あとはリレッサが召喚している天使達も、デコイの役割をこなしている。魔物の攻撃が分散されているので、戦闘が楽になっている部分もあった。

 

 モンスターが襲ってくるのは全部で三回。今は二回目を終え、次の襲撃までは少し余裕があるので、皆は休憩中だ。

 

 空鯨はもう、雲よりも高い所を飛んでいる。

 

 眩しいが寒さや風はないので、魔法か何かがラシア達を守っているのだろうなーと思う。

 

 景色もゲームとよく似ていて、遠くには雲より高い木――竜の巣が見えている。

 

「うーん。なんかの拍子に空鯨があっちまで行ったら、ここから竜の巣に行けるのかな?」

 

「えっ? ラシアさん、あれってこの前行った竜の巣?」

 

「そうですよ。見た目だけで、中身は違うかもしれませんけどね」

 

「なるほどー。大きな木だね」

 

 そして三度目の襲撃も無事に切り抜けると、ようやく空に浮かぶ城が見えてきた。

 

 ここからが本番だ。

 

 空鯨が浮遊城に横付けすると、ラシアはすぐに飛び降りて警戒する。ゲームなら、この場所にも普通に天使がいたりするからだ。

 

 今回はいなかったので全員に降りてもらうと、空鯨は一鳴きした後、どこかの空へと飛んでいった。

 

「ここが天城ダンジョンか。今まで行ってた所は草原と丘やったけど、こんな所があったんやなー」

 

「綺麗な所ではあるが……怖い感じはするな」

 

 パルサーの言葉に全員が頷く。

 

 風が流れる音だけがする、本当に静かな場所だ。

 

 このダンジョンには下へ降りる場所もあるが、全体的には古城ダンジョンによく似た造りになっている。古城ダンジョンよりは狭いが、出てくるモンスターは完全に上位互換なので注意が必要だ。

 

 全員に白紙のスクロールを渡し、闇属性のダークネスという魔法を付与してもらう。ダードとエリエスは防御に回りながら、他の者を軽く支援する感じだ。

 

 このダンジョンまで来ると、ダードとエリエスが前線で戦うのはたぶん難しい。だがどこまで通用するのかは見ておきたいので、連れて来たといった感じだ。

 

 ラシアも本気だ。プラティディオンハンマーに闇属性を付与し、白金色のハンマーは黒金へと変わる。

 

 準備を終えたところで、天使達も気づいたのだろう。斥候と思われる者達がやって来た。

 

 目無き天使。足無き天使。今回現れた天使型モンスターの名前だ。

 

 その名の通り……肉体の一部がないのが特徴だ。ただ半透明のオーラというか、魂みたいなもので失われた部分を補っている。

 

 目無き天使は眉間の少し先に、一つの大きな半透明の目玉が浮かんでいる。足無き天使は、ラシアの体よりも太い二本の足を、半透明のオーラで形作っている。

 

 少し前に行った海底神殿に出てくる魚マン系のような、コミカルな気持ち悪さではない。危険を感じる怖さや不安が湧いてくる造りになっている。

 

 初手はラシアだ。即座に接近し、一撃で目無き天使を叩き潰す。

 

 人型に近いので……とても嫌な感覚が残るが、この天使達は設定ではローウェンテニアがあった世界への侵略者とか、そんな者だ。

 

 背に羽が生えた碌でもない奴。それが、この天使型モンスター達の正体だ。

 

 目無き天使が倒されたので足無き天使が動くが、それよりもパルサーの方が速い。

 

 天使の体に槍を突き立てようとするが、簡単に足で受けられた。

 

「なっ、何!?」

 

 そのまま体をひねり、蹴りをパルサーに叩き込もうとしたタイミングで、アークパラディンのラオメが割って入る。

 

 大きな盾で足無き天使の凄まじい蹴りを受け止めた。

 

 爆発でもしたような凄まじい音が響き、その衝撃でパルサーとラオメが軽く後退する。

 

 そしてラシアが攻撃しようとしたタイミングで、ティーガーの声が聞こえた。

 

「おっしゃ! ウチの番やな! ドラゴンテイル!」

 

 虹竜の尻尾が輝いた後、鋭く振り抜かれる。足無き天使の腹にまともに叩き込まれ、その体を吹き飛ばした。

 

 そして飛ばされた先にはアトラスとヘッジが待っており、二人の剣と槍が足無き天使の体を貫いた。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

 

 ラシアが近寄ると、特に怪我をした者はいなかったが、まともに蹴りを受けたラオメの大きな盾には足形が付いていた。

 

「あれぐらいやったら大丈夫やけど、数で来られたら怖いな。ラシに聞いた通りやと、まだまだ色々おるんやろ?」

 

「はい。種類は多くないですが……数はいますね。この船着き場はモンスターが少なめなので」

 

「なるほどなー。今の感じで分かったけど、気抜いたら死ぬな。ちゃんと水没ダンジョンより上って所やな」

 

 皆が頷く中、パルサーからダードとエリエスに忠告が入る。

 

「ダードとエリエスは、本当に命を守れよ。即死以外ならなんとか回復できるから、気は抜くなよ」

 

「ああ。分かってる」

 

「はいっ! 分かりました」

 

 少し隊列を見直していると、フウコウから質問が入る。それはリレッサが召喚する天使と、ここに出てくる天使の違いだ。

 

 その辺りは、元の世界の天使とゲームの世界の天使の設定が少し混じった感じになっている。

 

 リレッサが召喚する天使は、第九天使の設定や名前から来ていて、ローウェンテニアに力を貸してくれる天使という設定になっている。

 

 セラフィムとかケルビムとか、そんな感じだ。だからスキルを取れば、リレッサでなくても召喚できるはずだ。

 

「召喚する方は、人に力を貸してくれる天使って感じですね。下位だとアークエンジェルとプリンシパリティーとか、その辺が召喚されると思うんですが……」

 

「にゅうん? 見たことはあるけど、姫様の天使もその系列にゃん?」

 

「そうです。レクトアさんならビショップなので、その辺にも詳しいのでは?」

 

 レクトアもビショップで天使のことには詳しく、その辺りを教えてくれた。ただレクトアの知る限りでは、召喚できる最高位はドミニオンまでとのことだった。

 

 天使召喚もスキルなので、上位の召喚がまだ開拓されていないだけなら、そこまで驚くことではなかった。

 

「……にゃんか。ラシアと姫様だけで国が落ちそうにゃ」

 

「「無理です」」

 

 ラシアとリレッサの声が一つになってから、天使の話は続く。

 

「で、ここに出てくる連中は天使の姿をしていますが……侵略者ですね。モンスターとも人とも、全く生態が違うとかそんなんだったはずです」

 

「にゃんでお前ぐらいしか知らないのに、そんなに自信がないにゃ」

 

 ゲームの設定だからとは言えず、ラシアが困っていると……また別の天使が現れ、再び戦闘へと入る。

 

 ラシア達は天城ダンジョンの攻略を進めていった。

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