ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第146話 三組の動向

 全てのエリアを一通り回り、時間湧きのボスと通常のボスを倒す予定だが……今の進み具合だと、時間湧きのボスは無理かもしれないというのがラシアの感想だ。

 

 ゲームと比べてモンスターは強くなっていることもあるが、弱くなっていることも多い。人の方はその逆で、個々の力が多少足りなくても連携で補うため、ゲームより強く感じる。

 

 適正レベルではない所で狩りができるのは、そういうことだ。

 

 だけどこの天城ダンジョンの天使達は、人の強みを使ってくる。天使達同士で連携してくるのだ。

 

 ゲームのようにキャラクターを見かけたら襲ってくるわけでもない。支援を使って仲間を強化し、前衛は前に出て後衛は後ろ。支援はちゃんと支援する。

 

 これが厄介なことこの上ないのだ。天使達も戦いの定石が分かっているのか、先に支援役や後衛のリレッサ、レクトア、ノアを狙ってくる。

 

 見た目の違いはあるものの、PVPエリアにいるような感覚になってくる。

 

 まぁこの辺りは古城ダンジョンに出てくるモンスター達も人に似た戦い方をしていたので、ある程度は想定済みなのだが……全体的に強い。

 

(これなら……竜の巣か古代のダンジョンに行く方が楽だったかな? いや、あっちはあっちで、ほぼ全体攻撃持ちと魔法反射持ちだから無理か……)

 

 このダンジョンは全体攻撃持ちがほとんどいない代わりに、個々の能力が高い感じになっている。

 

「どやー。パル。フウコ。生きとるかー?」

 

「問題がないとは言い難いな。初めて戦うモンスターだからな。間合いが分からない時がある」

 

「……ラシアはともかく、お前達は初見なのになんでそんなに余裕あるんにゃ……」

 

 猫組の三人は、ちょうど適正レベルか少し足りていないぐらいなので余裕はある。

 

 ノアとグオンもレベルは足りていないが、グオンは竜の素材で作った装備を、ノアは国宝ローブを身に着けているので、かなり余裕ができている。

 

 リレッサに関しては、ラシアが装備をコーディネートしている上、ラシアと同じぐらいのレベルなのでかなり余裕がある。

 

 ダード、ビエット、エリエスの三人にとってキツいのは分かり切っている。そのためダードとエリエスは防御一択。ビエットは闇属性の弓のおかげで攻撃に参加できている。

 

 グオン組では、フォルグ、パドロワ、ゲニツ、エンセトの四人もなんとかついて来られている感じだ。怪我もするが、リレッサとレクトアがいるので回復薬を使わずに済んでいる。

 

 あと意外なのは、お兄さんお姉さんズの四人だ。一番苦戦しているのは彼らだった。

 

 ラシアとリレッサの次に強いのは間違いないが……レベルとスキルに対して、装備がついて来ていないのだ。武器はともかく、防具に関してはパルサーと同程度で、ドラゴン装備のグオンより下といった感じだ。

 

 だから攻撃をまともに受けると、盾が凹んだり鎧が欠けたりする。強いのは間違いないので、攻撃を受けるより先に倒してはいる。ただ本人達も、防具の見直しが今後の課題だと話していた。

 

「やはり、装備の見直しは必須か……」

 

「だが騎士団も聖騎士も、鎧に関してはある程度決まっているから難しい所ではある」

 

「一人だけピンクの鎧とか着られないですからねー」

 

「そんな鎧があるのかは気になるな」

 

 そういえば装備の色を変える染色薬みたいなものがあったなーとラシアが思っていると、また新しい天使型モンスターが現れ、戦闘再開となる。

 

 出て来たのは腕無き天使、顔無き天使、心無き天使だ。

 

 疲労具合も考え、もしもの時は撤退も頭に入れておかないといけないなとラシアは思いながら、戦いが始まった。

 

 ……

 

 ラシア達がそんなことになっている頃、エリゼとそのメイドのメニスは、リュートリア達や他のZランク、Xランクの冒険者達と竜の巣に来ている。

 

 自分自身が邪魔になるのは分かっているが……あそこまで言われたのなら、やってやるといった感じだ。

 

 周りが優秀なのもあり、現在は竜の巣の五階層まで来ている。

 

 目的はダンジョンの踏破だけではない。ラシアが見つけた騎乗用ドラゴンの情報を入手するためでもある。

 

 騎乗用ドラゴンについて分かっているのは、竜の巣にあるということだけだ。今後のことを考え、国は迂闊に情報を出さない方針らしい。

 

 もちろん父であるデルパロア大公は知っているが……。

 

「気になるなら自分で探してこい。場所は竜の巣だ。頑張れよ」

 

 で終わってしまった。

 

 今は休憩中なので、そんなことを思い出す余裕がある。竜の巣には、エリゼ達が休憩しているような場所がいくつかある。

 

 ダンジョン自体がやたらと広いので、先人達が少しずつ開拓してきた場所が情報として残っているのだ。

 

 ゲームで言うなら、セーブポイントではなく、MMOで安全にログアウトできる場所だ。

 

 竜の巣の踏破には普通に何時間もかかる。そのため、このような休憩所みたいな場所がいくつもあるのだ。

 

 そんな場所で休憩しながら、自身の配下であるリュートリアに質問する。

 

「どう、リュートリア。騎乗用のドラゴンの場所は分かりそう?」

 

「駄目ですね。ラシア達が戻って来た時間で考えると……この階層までにはあると思います。もう過ぎたかもしれませんが……」

 

「なるほど……」

 

 エリゼは少し考えた後、協力してもらっているリュートリアより格上のZランク冒険者達にも質問するが、似たような意見だった。

 

「まー、こっちとしては白獅子を食事会で見ているからなー。あの強さなら、もう一階層ぐらいなら行って戻って来られるとは思う。今の所、一番怪しいのは二階層の祠ぐらいだしなー」

 

「確かにそうね。変わったものといえば……あれぐらいね。でも途中で隙間から見えた、空を飛んでいた鯨は?」

 

「仮にそうだったとしても、呼ぶ方法が分からないからな。どうにもできないといった感じだ。捕まえるといっても、どうやってとなるだろう?」

 

「確かにそうね……。メニス、貴女の意見は?」

 

「そうですね……ラシア様が侵入方法を発見した箱船ダンジョンと同じで、もしかしたら特殊なアイテムが必要かもしれません。ですから騎乗用のドラゴンは諦めるのも一つの手かと。何かを探しながら戦うのは、かなり骨が折れますので」

 

 自分が足を引っ張っているのは、エリゼにも分かっている。これ以上、冒険者や護衛に負担をかけても碌なことにはならないのは分かり切っている。

 

 だから当初から計画していた通り、次のプランへ切り替える。

 

 騎乗用のドラゴンが見つからなかった場合は、この竜の巣ダンジョンを踏破する。本来の目的はそちらだ。

 

 自分を含めた総勢は、S、X、Zランクの冒険者達を合わせて四十人を超える。超巨大なパーティーになっている。

 

 アイテムなどもデルパロア家が支援している。これで踏破できないはずがないのだ。本当に危ない時は、自分だけこういう安全なエリアで待っていれば良いだけの話だ。

 

「そうね……今から騎乗用のドラゴンを探すのは諦めて、言っていたようにこの竜の巣ダンジョンの踏破に移りましょう! ここさえ踏破すれば私達の勝ちよ!」

 

 どこかの誰かさんが気にしていないだけで、未踏破のダンジョンを踏破するということは、冒険者にとっても騎士にとっても聖騎士にとっても、本当に名誉なことなのだ。

 

 歓声が上がった後、エリゼ達は行動を始める。

 

 ただリュートリアには、少し不安が残っていた。エリゼのこともあるが……自分達で本当に踏破できるのかという心配だ。

 

 年々、冒険者の実力が下がってきているのは分かる。自分もXランクにはなれたが……まだまだ騎士団の狂犬や聖騎士の紅虎には勝てる気がしないからだ。

 

 もちろん、ラシアにも勝てる気はしない。

 

 ただ……これだけの強者を集めても踏破できないというのなら、誰が踏破できるのだろうとリュートリアは思った。

 

 それと同じ頃、エンブレント家の令嬢も休憩を取っていた。

 

 こちらもデルパロア家と同じか、それ以上の人数を集めて古代のダンジョン踏破へ向けて動いていた。

 

 デルパロア家と違う所は二つある。

 

 この場に集まっている冒険者は、全てエンブレント家が手塩にかけて育てた者達であり、皆エンブレント家に恩がある。だからラシアやエリゼが率いる陣営に比べ、遙かに忠誠心が高い。

 

 そして……もう一つの違いは、すでに被害が出ていることだ。

 

 現在は五階層。Sランク以上の冒険者で構成された集団だが、古代のダンジョンはラシアのいる天城ダンジョンや、エリゼのいる竜の巣と同等か、それ以上に難易度が高い。

 

 だからSランク冒険者の数人が、すでに犠牲になった。

 

 ただ幸運なのは、古代のダンジョンではモンスターが進化しないことだ。モンスターといっても陶器のような無機物で、ゲームでも進化の設定がないからだ。

 

 だからモンスターが進化し、パーティーが総崩れになる事態は防げた。どうにか立て直せたといった感じだ。

 

「踏破されていないとは聞いていましたが……なかなかにモンスターが手強いようですね」

 

「はい。ですが……やられてしまった者達には申し訳ありませんが、高ランクの私達であれば問題はありません」

 

 エンブレント嬢に分かるのは、モンスターが強いかどうかぐらいだ。冒険者達の見立てが本当かどうかを判断する材料は少ない。

 

 だから我が家が育てた冒険者を信じるだけだ。

 

「分かりました。貴方達を信じましょう。余程の時は、即座に撤退することも頭に入れておいてください」

 

「分かりました。ここは未踏破のダンジョンです。ここさえ踏破すれば、私達の勝利は間違いないでしょう」

 

 エンブレント嬢は力強く頷く。

 

 親が強いだけのデルパロアに、何ができるというのだ。自分達が勝ち、ドラゴンの情報を知り、力を付けていけば、自分の世代でデルパロア家など叩き潰せる。

 

 それにいくらあの白の騎士ラシアが凄かろうと、一人でできることなど知れているのだ。

 

 だからこの勝負は必ず自分達が勝ち、エリゼ・デルパロアを確実に潰す。

 

 この狩猟祭で様々な思惑が交差し、戦いはさらに激化していった。

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