ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第166話 都市の調査

 ラシアは宿を出て、食料を探しに行く。

 

 この街から人が離れて、もう数週間は経っているのだろう。宿に残っていた食料は駄目になっている物が多く、外で探すことになった。

 

 ティーガーもついてきているが、明るい空とは対照的に二人の表情は暗い。

 

「……あかんな。なんぼ考えても無理やな」

 

 ティーガーの言いたいことは分かる。

 

 妖精というか、女王フェリスロステの倒し方だ。

 

「私には思いつきませんから……国のお偉い人が何か考えてくれればと思いますけどね……」

 

「無理やな。紙をいくら集めても落石は防げんのと一緒やからなー。力で押し切られたら作戦も何もないしな」

 

「ですよねー」

 

「ウチらの国のことまで考えてくれてありがとやで。こないだの天使達と一緒で、倒してもすぐに復活するパターンやろ? あの女王様が」

 

「たぶんですけどね。試せることではないので難しいところですが……この世界にはこの世界の魔法技術があるので、もしかしたらどうにかなるかもしれませんが……」

 

「試すようなことちゃうしな。海の向こうで火事があっても、大変やなーって話やからなー」

 

 元の世界にもそんな言葉があったなーと思いながら、ラシアが考えるのは妖精達のことだ。

 

 ゲームでの台詞だが、フェリスロステの言葉を思い出してしまう。

 

 生きたいと思うことに罪はあるのか?

 

 動物や虫、植物もそうだが、種族として繁栄し生きようとしているだけなら、そこに善も悪もない。

 

 人を中心に世界が回っているわけではない。だが人に害を与える動植物なら、駆逐しなければならないこともある。

 

 それでも動植物からすれば、生きているだけでなぜ殺されなければならないのか、となる。

 

 モンスターにしてもそうだが……妖精や天使のように言葉を話し、知性まであるなら話は変わってくる。

 

 戦争のようなものだ。

 

 どこかでお互いの落とし所を探さないと、底のない沼にはまっていく。

 

 しかも今回に限っては、強者側からの提案だ。

 

 国を作るから、よかったら仲良くしてね。喧嘩さえ売ってこなければ何もしないよ。

 

 そういう話だ。

 

 嘘の可能性もあるが……今は本当にどうしようもない。

 

 国へ戻って「妖精を倒す」という話になるなら、ラシアも応援だけはする。

 

 逆に、付き合いのない国が滅んだだけだから問題なし、という判断になるならそれでもいい。

 

 中身が一般人のラシアからすれば、国と国の話など分からない。

 

 それが人と妖精の話となれば前代未聞で、はっきり言って無理なのだ。

 

「こうなってくると、今のところできることはほとんどないなー。とりあえず何か食える物探して、今日はゆっくりしよか。街を調べたりするんは明日でええやろ」

 

「そうですね」

 

 ラシアは返事をして空を見上げる。

 

 妖精達が楽しそうに飛びながら遊んでいた。

 

 そこだけを見れば、平和だなーという感想しか出てこない。

 

 そして空き家や近くにあった畑から食べられそうな物を確保し、宿へ戻った。

 

 宿に戻り、皆で協力して簡単なシチューなどを作っていると、外で遊んでいた妖精達が気になるのか、窓から料理をしているラシア達を覗き込んでくる。

 

 窓際に座る妖精を見ていると幻想的で可愛げがあるのだが……全員がレベル80を超える強者だとは、知らない者なら思うまい。

 

 あと嫌いとまではいかないが……何が苦手かというと、妖精はめちゃくちゃ喋る。

 

 今も……。

 

「ラシアが料理してるー」

 

「おいしそー!」

 

「私達の分はー?」

 

「ないのかなー?」

 

「あるのかなー?」

 

 といった感じで、わりとうるさいというか何というか……そんな感じだ。

 

 他のメンバーは妖精達にも少し慣れたようで、もう普通に話している。

 

 皆さんの環境適応力はすげーな、というのがラシアの感想だ。

 

 ティーガーやノアなどは本当にコミュニケーション能力が高いので、相手が妖精だろうと気にせず話している。

 

 そして夕食を食べ終えると、妖精達がやってきて「私達の分は?」と言いながら集まり始めた。

 

 残ったシチューをあげると、妖精達は喜んでどこかへ持っていった。

 

 こうやっている分には……無害なのだが、何とも扱いが難しいのが妖精達だ。

 

 そしてシチューをもらった妖精達が他の妖精達へ自慢したらしく、「何かないの?」と別の妖精達まで集まり始めた。

 

 追い払おうかとラシアは考えたが……集まった妖精達による「何か残ってないの?」の大合唱が始まった。

 

 ラシアは諦めて、別の物を作ることにした。

 

 小麦粉と卵があり、水もある。

 

 簡単にパンケーキとかでいいんじゃね? と思いながら、ラシアは作り始めた。

 

 卵は、街の人が残していった鶏の物を使った。

 

 パンケーキの焼けるいい匂いがすると妖精達が集まってきたので、適当にその辺へ並んでもらい、皿に載せて渡す。

 

「このまま食べられるのー?」

 

「あるなら蜂蜜とかかけてもいいですね」

 

「分かったー!」

 

 返事を聞いて、ラシアが再び焼き始めると……ノアが。

 

 というか、仲間達全員が並んでいる。

 

「皆さん。さっきご飯食べたのでは?」

 

「えっと……美味しそうだったから?」

 

「そやな!」

 

 考えることは多いので……遊んでいる場合ではないとも思う。

 

 だが根を詰めて考えても仕方がないかと、ラシアは色々と諦めてノア達の分も焼いた。

 

 するとノア達の分の蜂蜜を妖精達が持ってきてくれたので、またどういう立ち位置なのか分からなくなってくる。

 

 ちなみにここでもフウコウの不幸体質は遺憾なく発揮され、焼いたそばから妖精達にパンケーキを奪われた。

 

「ふっ、不幸にゃ……」

 

 何とか一枚は食べることができたが……日が沈み夜になり始めたので、妖精達もどこかへ行った。

 

 ラシア達も部屋へ入り、休息を取った。

 

 そして日が昇ってから女王フェリスロステに会いに行き、この街を調査する許可をもらってから調査開始だ。

 

 調査といっても都市を滅ぼした犯人は分かっているので、もう終わったようなものだろうとラシアは思っていた。

 

 だが案外そうでもないと、パルサーが教えてくれた。

 

「原因が分かっているから楽に思うが、そうでもないぞ。妖精達がやったにしても、何があって人と揉めたのかはまとめないと駄目だしな。それに妖精をダンジョンで見た者や、戦った者はいるが……会話をして街を作ろうとする妖精など聞いたことがないからな」

 

「なるほど。私としては昨日言った感じですが……パルサーさんはどうですか? 国益とかもあるので、気持ちの問題でいいですが……」

 

 人のいない街を眺め、時折何かを書き込みながらパルサーは質問に答える。

 

「ずっと貴族をやっていると……頭のおかしい者もよく見る。モンスターはな……人と違って殺して食べて終わりだ。だけど人間には、それより下がある。死なないように痛めつけ、命を弄ぶこともある。そうなると……モンスターより人の方がタチが悪い」

 

「…………」

 

「妖精達が……どういう生き物かは分からない。人に近いのかも分からないし、モンスターに近いのかも分からない。ただ……それが正しいとは言えないが、相手が誰であれ会話で済むなら、それでいいと思う」

 

「まー。私が入院した時の話じゃないですけど、殴って解決だとモンスターと同じですからね」

 

 そういうことだと言って笑うパルサーの顔を見て、ラシアも少し笑ってしまう。

 

 初めて会った時は槍を投げられたが……今では普通に話もできる、良い友人のような関係になっているからだ。

 

 そんなラシアを不思議に思ったパルサーが、その理由を尋ねる。

 

「いえっ……初めて会った時のパルサーさんを思い出していただけですよ。それと、その時に比べて何というか……可愛くなったというか、綺麗になったというか。そんな感じですね」

 

「なっ!?」

 

 パルサーの顔が耳まで真っ赤になり、聞こえないほど小さな声で呟いた。

 

「……ほっ、褒めてくれるのはありがたいが……頼むから初めて会った時のことは、わっ、忘れてくれ……」

 

 そんなパルサーを可愛いと言いながら、その頭をわしゃわしゃしてラシアが遊んでいると、ラオメとレクトアがやってきた。

 

 本当に人はいないようで、どこを探しても見つからなかったという。

 

 ただ鶏や牛といった家畜は残っており、畑などもそのままだそうだ。

 

「ここに妖精の国を作るというのなら……物流や交易なども行うと思うのだが、女王陛下はどうするのだろうな?」

 

「ラオメさんは賛成という感じですか?」

 

「私は現実主義だからな。他国のことまでは知らない。自分が仕える国に災害が来ないのなら、当然来ない方を選ぶ。盾は守る物だが、守れる人数には限りがあるからな」

 

 ラシアがなるほどと頷いていると、隣にいるレクトアの意見は少し違った。

 

「賛成か反対かと言われれば……反対です。ただ、生きとし生けるものには生きる権利があります。妖精達が生きたいということには賛成ですが、国を作るとなると争いは避けられないでしょう。そして争う相手が私達程度なら……虐殺になってしまいますから」

 

 それも一つの意見だなとラシアは思う。

 

 武器を持って殺しに来る相手へ加減をする必要はないし、禍根が残れば戦いはずっと続く。

 

 本当に難しい話だ。

 

「まぁ、私達は調査隊ですから。妖精のことなどをちゃんと伝えて、後は判断してもらいましょう。変なことを言い出したら、妖精の国に亡命したらいいんですよ」

 

「それでいいのか、次期聖女……」

 

 呆れてため息をつくラオメに、ラシアもパルサーも頷く。

 

「いいんです。それでラシア様、すぐではありませんが、明後日かそれ以降には地星のダンジョンに入りたいので、フェリスロステ様に許可をもらってもらえますか?」

 

 ラオメやレクトアが頼んでも大丈夫だとは思うが、ラシアが行った方が話は早い。

 

 そのためラシアを含めた四人で、すぐにフェリスロステがいるであろう場所へ向かった。

 

 そして事情を説明すると、すぐに許可は出た。

 

 ただ簡単な頼み事を一つされた。

 

「この辺りには小麦や野菜といった物の畑がまだ残っています。家畜なども残っているので、それを資源として活用しようと考えています。ラシア達はまだ街の調査をするのでしょう? その時に、家畜の飼い方や作物の育て方が載った書物を探してほしいのです。妖精達が食べたパンケーキと言いましたか? ああいった物を私達で作ってみるのも面白いと思いまして」

 

「それぐらいなら問題ないので大丈夫ですが、見つからなかった場合は口頭でも大丈夫ですか?」

 

「はい。問題ありません。小麦を使った料理などがあれば、教えてもらえればと思います。植物を育てたりするのは、妖精が得意とするところですので」

 

 ラシアは分かりましたと答え、その場を後にする。

 

 そして外へ出てから今の話を皆へ伝えた。

 

 街を調査しながら農業や家畜について書かれた本も探すことになり、ラシア達は図書館や本が置いてありそうな場所へ向かうことになった。

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