ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第20話 王都へ

 

王都に行くことになり頭が痛いラシアだが……遠出する時は女性冒険者はトイレの問題とかその辺はどうしているのだろうかという感じだ。

 

 ノアの店で水分とか固形物を吸って固める道具は教えてもらったが使い捨てだし、値段的にそこそこお高いのである。

 

 転生前の男の体ならその辺ですれば良いだけの話だが……今の体だとそういう訳にもいかない。

 

 かと言ってノアやこの前知り合ったエリエスにトイレの事を聞きにくい。

 

 ラシアの体は女だが中身は男だからである。

 

 そこが一線で超えたら駄目な所だろうと、ラシアは勝手に思っている。

 

「お金かかったけど多めに買ったから大丈夫だろ」

 

 などと考えるが、冒険者の装備は構造的にすぐ脱いだり着たりできる仕様でもない。だからたぶん全員が排泄物関係は似たような感じで処理してるんだろうと考える。

 

「男のままでも嫌だけど、女性の体ってのも大変すぎる……割と胸とか邪魔だし」

 

 無い者からすれば激怒しそうな発言だが、元の世界の体と違いすぎて今の体にはなかなか慣れないラシアだった。

 

 そして生まれてこの方キャンプなどした事もないのに、モンスターがいる場所で野営とかどんな拷問かと思う。

 

 まったく知識がないので図書館で調べたり宿のおやっさんに聞いたりはしたが、火は良いとして警戒はどうやるの?って話だ。

 

 聞いたら聞いたでおやっさんは「火つけて起きてればなんとかなる」しか言わないので、全く参考にならない。

 

 まだ出発までは早い時間だったが、これ以上悩んでもやる事もないので部屋を出る。

 

 この世界に来てからずっといた宿だったが、長い時間あけるので借りている宿は一旦解約だ。

 

 王都の宿でトイレや風呂が良い所があればそちらを拠点にしても良いだろうと思うが、まずは行ってからだ。想像だけでは何もできない。

 

 一階に降りるとティアが座りながら勉強をし、カウンターではおやっさんが皿洗いをしていた。

 

 そして降りてきたラシアに気がつくと話しかける。

 

「おう。もう行くのか?」

 

「はい。少し早いですけど……やる事やったので」

 

 おやっさんが何か言いたそうだったので、勉強しているティアを見てあげているとようやく話しはじめた。

 

「ティアの事は本当に助かった。それだけはもう一度礼を言っておこうと思ってな。ありがとう」

 

「おやっさんの弟に話したのは減点ですけど大丈夫ですよ。ティアちゃんも良い子ですし」

 

「ラシアさん。戻ってくる?」とティアが尋ねるので、そこは誤魔化さない。ラシアにも大事な事があるからだ。

 

「王都しだいかな?住みやすい所に住みたいからね」

 

「そっかー……ラシアさん気をつけてね。私を助けてくれてありがとう!」

 

 何も言わずにラシアは頭を撫でる。

 

 そんなラシアとティアを見て宿のおやっさんはラシアに一つ頼み事をする。それはノアの事だ。

 

「ラシア……悪いがノアの事を頼むぞ」

 

「私はCランクでノアさんはAなので大丈夫なのでは?」

 

「ノアじゃクリスタルリザードは倒せんし、俺よりも弱い。それに俺はお前に勝てるとは思わないからな」

 

 話し方に少し違和感がある。こういう時は流しては駄目だとラシアの直感が告げる。

 

 王都までの道のりは引率するAランクがいれば楽だと教官は言った。その上でそれより強いラシアもいる。それが分かった上でのおやっさんの忠告だからだ。

 

「何か良くないことがありそうなんですか?」

 

「まぁな。噂がある。少し前にここから離れた所にドラゴンが召喚された。お前は魔物を召喚するアイテムは知ってるか?」

 

 ゲームでもあったアイテムだ。使えば使用者のレベルにあったモンスターがランダムで召喚される。店などには売ってないがダンジョンに登場する魔物が落とすレアアイテムがある。

 

「血塗られた契約書でしたっけ?」

 

「お前……本当によく知ってるな。まぁそれはいい。それでドラゴンが呼ばれたって話だが、呼ばれたモンスターは基本的に使役できないからな。誰かを襲おうとするなら通り道に何匹か召喚しとけばいいと思わないか?」

 

 ラシアの中で少しつながった。大公の娘が襲われていたのはそういう事だ。だが迂闊な事は言わず聞かず、どうしてそう思ったのかと尋ねると、少し前に大公の娘が襲われそれが掲示板にある白の騎士の事だと言った。

 

 召喚されたモンスターを倒し大公の娘を助けた。その人物を探している。

 

 それが依頼の真相だ。

 

「なるほど。だからもしもの時はノアさんを頼むと」

 

「ああ。基本的に生息域ではないモンスターは何処かに行こうとするが……もしもの時は頼む。もうすぐしたら娘になるからな」

 

 上級以上のモンスターが出れば守りながら戦うのはまず無理だ。必中の範囲攻撃などがあるからだ。ただグランドドラゴン程度ならゲーム中のレベルなら50代後半なので召喚者もそれぐらいになる。

 

 だから本当によほどの事が無い限りは大丈夫だとラシアは考える。見捨てる訳ではないが、助けられる方法の方が多いだろうと思いおやっさんに告げた。

 

「わかりました。できる範囲でですよ。私の命を捨ててでも助けてこいって言うのは無理なのであしからず」

 

「そんな奴は冒険者にはならねーよ。聖女様か聖騎士様だけだな。まぁそれは良いが頼んだぞ」

 

「りょーかい。良かったねティアちゃん。もしかしたらおねえちゃんになれるよ」

 

「えっ!?ほんとっ!」

 

「うらっ!アホなこと言ってないでさっさといけ!遅刻すると怒られるぞ!」

 

 アイムバッグの中から二、三個ほどティアに飴をあげて手を振ってラシアは宿を後にする。

 

 そんな二人はラシアを見送る。

 

「ねぇねぇ。おとうさん。その白の騎士ってラシアさんだよね?」

 

「たぶんな」

 

「どうして自分から言わないんだろ?」

 

「わからん。ただティア。一つ覚えておけ。もしラシアに戻って来て欲しいと思っているなら余計な事は誰にも言うなよ。誰でもそうだが言われたくない事、聞かれたくない事の一つはあるもんだ」

 

「わかった!もう聞かない!……それで私はお姉ちゃんになるの?」

 

「……それも聞かれたくない事の一つだと思っておけ」

 

 今日も親子は平和である。

 

 あのおやっさんにノアに似た美人の、少しのほほんとした感じの人がどうやったらくっつくのだろう。前に混乱無効化のアクセサリーを買いに行った時にいた人がたぶんそうだ。髪の色と目元がノアそっくりだった。世の中は不思議だとラシアは思う。

 

 おやっさんの職は分からなかったが、アルケミストの上位職のハイケミストだと思う。戦闘力も十分あるし、薬の製造もできる万能な職だ。そんな人が宿屋のおやじとくっつく。何か弱みでも握られてるのでは?と超失礼な事を考えていると待ち合わせ場所へとたどりついた。

 

 ノアともう一人、男性が立っており荷馬車の準備もできていた。

 

 今回は三組が出発し別ルートだが、他の二組は先に王都に向かっているのでラシア達は最後の組になる。

 

 ラシアはノアに挨拶をする。

 

「おはようございます」

 

「おはようございます。ラシアさんまだ少し早いですよ?」

 

 特に用事も無くやる事もやったので早く来ましたと伝え、隣にいた男性の方を見る。

 

「おーー……本当に美人だな。ノアが嘘言ってるのかと思ったがそうでもなかったか」

 

「いきなり失礼すぎる。ラシアさんこちらは私と同じAランクのベルエドです。他の組もそうですが今回は中級の護衛を一人増やして王都に向かおうという感じです。基本的に一人ですが今回は荷物も多いので試験的に一人追加です」

 

「なるほど。それは助かりますね」

 

「おう。ラシアって言ったな?俺にまかせとけ。王都についたら酒でもついでくれ」

 

 ラシアは困った様に笑うが、ただの振りだ。さっきおやっさんが言ってた事の加減だろう。クレイハウンドやクビカミキリ程度のモンスターならノアだけで十分だ。

 

 それ以上強いモンスターがいるならもっと強い人達を呼ぶ。だから何かはいるが……何がいるかは分からないから警戒しているのだろうとラシアは納得する。

 

 何もなければそれでいいが……とラシアはため息をつく。

 

「盛大にため息つきますね。王都行くの嫌なんですか?」

 

「はい。人の多い所は苦手なので……」

 

「今からそんなんだとむこう行くと死ぬな。こことか途中の都市だと十万人くらいだが、王都は七十万人くらいって聞くからな」

 

 この街にそんなに人いたのかとラシアは驚くが、王都の人の多さにも驚く。だが元の世界の言葉で木を隠すなら森という言葉もあるので、案外住みやすいかも知れないと考える。

 

(トイレだけはどうにかならないかなー……ファンタジー小説であるみたいにトイレにスライムぶち込むとか……無理だろうなー。ゲームと一緒ならスライム強いし……)

 

 そんな事を考えているとエリエス達がやってきた。今日はフル装備の様でラシアの想像通りにダードは盾を装備していた。

 

「すみません!早く出たつもりでしたが遅れましたか?」

 

「いや大丈夫だ。そこのラシアも早く来ただけだ。これで俺を含めてラシアにそこの剣士で前衛が三人か。そこの盾持ち名前は?」

 

「ダードだ。おっさんは?」

 

「まだ25だ。ベルエド兄さんだぞ。ノアと同じAランクの中級だ。荷物の加減で付き添いが一人増えたが気にするな。それでノアとそこの二人で後衛が三人か」

 

 エリエスとビエットが挨拶をする。

 

「まぁこの感じなら大丈夫か。少し早いが……行商の方に声かけて出るか。少し行ってくる」

 

 そう言ってベルエドが近くの建物に入っていったのでラシアは改めてパーティーを見直す。

 

 何というか……支援職がいない。グランドプリーストみたいな上位職はいなくても大丈夫だが……せめて殴って回復できるモンクとかプリーストはいるだろうとは思うがいないのである。

 

(冒険者ギルドでも攻撃職に比べて少ないから人気ないのか?でも歩いてる兵士とかパラディンだと思うけどその辺どうなんだ?そういえばエレメンタラーとかエンチャーターみたいな職もいないよな?王都に行けばいるのか?)

 

 ラシアも含めてだからこのルインエルデに冒険者は本当に攻撃職が多いので、その事をノアに聞こうとしたタイミングでベルエドが商人と思われる男達と一緒に帰って来た。

 

「よし、少し早いがこっちはいつでもいけるそうだからもう出るぞ。俺たちAランクがいると言ってもお前達のサポートだ。いつでも戦闘に入れる準備をしとけよ」

 

 確かにその通りだ。モンスターが今から襲撃するから準備しててね、なんてことは言ってくれるはずがないのでラシアはアイテムバッグの中からエルダーハンマーを取りだし背中に担ぐ。

 

 その姿にベルエドは口笛を吹き、同じ前衛のダードは驚き質問する。

 

「ラシア。そのハンマー重くないのか?」

 

「ダード!ラシアさん!ねっ!ラシアさん!」

 

 同業者に呼び捨てにされたぐらいで怒る事もないので大丈夫ですとエリエスをなだめる。

 

「重くないと言えば嘘になりますが……戦闘では問題なく振れるので大丈夫です」

 

「へー流石はラシアだな」

 

 そして全員の準備が整ったので王都への旅が始まった。

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