火竜や様々なモンスターを撃破し、二階層で色々採取した結果……現状では獄炎ダンジョンの攻略は無理だという結論になった。
溶岩によるフィールドダメージも何とかなる。熱さも氷水のお陰で大丈夫なのだが……モンスターの攻撃に問題があった。
まぁモンスターの攻撃と言うよりも聖銀鋼の鎧に問題があると言った方が正しい。
二階層に降りて初っぱなに戦った火竜からブレスを受けた時に分かった事だ。ヒビの入った部分は応急処置したはずなのに……まともに熱が抜けてくる感じだ。
かなり軽減されてはいるが鎧の中で肉が焼ける音が聞こえ……かなり熱かった。こんな所では脱げないので帰って確認となるが、二階層でこんな感じなら踏破は無理になってくる。
「たかだかレベル七十ぐらいの火竜のブレスでこれだもんな。ちょっと対策考えないとマジで無理だな」
鎧の事を含めておやっさんに相談する事を決めて、ラシアは帰還石を使い冒険者ギルドへと帰還した。
そしてまだ全然元気なのでいつもの受付嬢のところに行き、魔石の買い取りや世間話を始める。
「お帰りなさい、ラシアさん。早かったですね。下見はできましたか?」
「はい。獄炎は四階層から本番みたいな所があるので、一階層、二階層ぐらいだったら上級と同じぐらいで大丈夫ですよ」
この短時間で超級ダンジョンの二階層まで降りたのかと受付嬢の頭は痛くなる。
「それで言っていたお土産ですけど、花と宝石どっちが良いですか?」
本当にお土産を持ってくるとは思っていなかったし、超級ダンジョンで取れる宝石とかなんか色々とやばそうなので、受付嬢は「花でお願いします」と伝えた。
ラシアは頷き、アイテムバッグの中から植木鉢に入った花を取り出す。ただそれは花と言えば花だが、茎の部分は炭の様に黒く、葉は溶岩より赤い。何より特徴的なのは花の部分で、火がついている様にゆらゆらと揺らめいていた。
「ラシアさん……これは?」
「ちょっと珍しい花で火炎草ですね。もっと下の階層に行かないと取れないはずなのに生えてたので持って帰って来ました。花の部分は火っぽいですけど熱さはないですよ」
そう言ってラシアが花の部分に触れたが……火傷する事も無く少し温かいぐらいだった。
ラシアが持って帰って来たアイテムは拠点とかに設置できる家具アイテムの類いで、ゲームでも行けば毎回取れる様な物でもなく低確率で生えているものだ。
熱くもないので言ってたお土産にちょうど良いと思って持って帰ったのだ。ちなみに言ったら気を遣いそうなので言わないが、ゲームでの価値だと出そうとした宝石より火炎草の方が遙かに高い。
長年受付嬢をやっている彼女ですら、こんな物は見た事がない。きっと高価な物なのでお断りしたいが……受付嬢も受付嬢で花とかが好きなので、断るという選択肢は無かった。
「ラシアさん。ありがとうございます。なんですが、こんな物をもらっても何も返せませんよ?」
「何か返してもらおうと思ってないので大丈夫です! 長く元気よく受付嬢をやってもらえればと!」
受付嬢が王都にいるギルド職員に話を聞いた時……ラシアはちょくちょく見るが、ギルド職員と話をしている所は見た事がないと言われた事がある。
普通なら冗談の類いかと思うが……それが目の前のラシアなのだ。
しかも最近はクランマスターになってメンバーに受付をさせるので、本当に自分以外のギルド職員と話してる所を見ないのだ。
普通ならそれで冒険者をやって行くというのは不可能な事だと思うが、それができるからZランクになれる冒険者なのかなと受付嬢は思う。
「元気な間は頑張りますので……ラシアさんもお体には気をつけてください」
「何か凄く呆れられてる気がする!」
そして魔石やいらないアイテムを売却してラシアは宿へと戻った。
宿に戻っておやっさん達に帰った事を伝え、鎧の下がどうなっているか確認する為に部屋へ向かう。いつも飲んでる回復薬だと傷跡も全部消えてしまうので、今回は傷跡を残して確認できるよう、一つランクが下の回復薬を飲んで痛みだけ取っている。
部屋に戻るとリレッサが部屋の掃除をしていた。
「ラシア。戻りましたか? 超級ダンジョンの下見に行ったと聞きましたが。大丈夫でしたか?」
心配させるつもりはないが……今の状況だと確実にリレッサの力を借りる事になるので、ラシアはあまり思わしく無かった事を伝え、鎧を脱いだ。
鎧を脱ぐと、思っていた以上では無かったが、それでも肌で感じていた通り、ひび割れの部分から熱が抜けてきた様で、ヒビと似た形の焼け焦げた跡が体にはついていた。
大丈夫ですか? と言ってからリレッサがすぐに最上級の回復魔法を唱えると焼け焦げた跡は綺麗に消えた。
「ありがとうございます」
「無茶をしたつもりは無いとは思いますが……気をつけないと駄目ですよ」
「ご心配を……おかけしました」
「それで? どうして今のような事になっていたんですか? 立派な鎧は着ていたでしょう?」
ラシアにも初めての体験だったので、その事をリレッサに詳しく伝える。フィールドダメージなどは問題なかったが、火竜と戦った時に受けたブレスでこうなった事や他のモンスターの魔法でも熱が抜けてきたと。
「なるほど……その辺りは私には分かりませんが、完全にその鎧は直ってないのですね」
「はい。完全に直っていたら大丈夫だとは思うんですが……私もその辺は分かりませんので後でおやっさんに聞いて見ようかと」
「それが良さそうですね。私も掃除が終わりましたし、一階へ行きますか?」
「えっと……流石にずっと熱い所にいたので先にお風呂に入ろうかと……」
そうラシアが答えるとリレッサは少し考えた後に言った。
一緒に入りますかと……
今までのラシアならびっくりして慌てるが、もうリレッサとの付き合いも長いのでからかっているのはよく分かる。
なので今回はラシアがからかう番だ。
「じゃあ、一緒に入りましょう」と言ってラシアはリレッサの手を取った。
するとやっぱりからかっていたようでリレッサの顔が赤くなっていく。
「ラッらしあ!?」
「リレッサ。一緒に洗いっこしましょう!」
ラシアが言った事を想像したのか、耳まで赤くなった後にじっ冗談ですよ! と言ってリレッサは逃げてってしまった。
人をたまにからかうのに、からかわれるのには慣れていないんだーと微笑み、着替えなどを用意してラシアはお風呂へと向かった。
……
…………
ゆっくりお風呂へ入り獄炎の疲れを取り、食堂へ向かうとノアも帰って来ていた様で、まだ少し顔の赤いリレッサを不思議そうに見ながら話していた。
「リレッサ。顔が赤いけどどうしたの? お酒でも飲んだの?」
「いえ。ラシアがからかって来るので……」
「最初にからかって来たのは姫様ですからね!?」
そんな話をしながらラシアはおやっさんの所へ行って軽食を頼み、近くにいたセレットにもダンジョンであった事の話をした。
「そういう訳で、おやっさんかセレットさん。なんか知らないです?」
「修理じゃなくて応急処置だからな。そういう事もあるとは聞いた事はあるが……俺は体験したことねーからなー。壊れたら買い直すからな。というかその辺に売ってる鎧なら炎系の魔法で熱は抜けてくるからな。対策してねーと」
「なるほど魔法耐性が低い感じなんですねー」
「それはラシアちゃんが言うみたいに魔法耐性が低いのもあるんだけど、ちゃんと理由があるのよ」とセレットが言ってラシアに教えた。
もの凄く簡単に言うと、魔法防御とか耐性を持つ鎧は、その上に同じ形の見えない鎧があるとの事だ。
修理で本来の形に戻るのならそれも修復されるが、今の聖銀鋼の鎧の場合は違う金属で塞いでいる状態だ。
物理的な攻撃なら何にも問題はないが、その隙間から魔力が抜けてくる。いくら応急処置とは言え、聖銀鋼の鎧は凄まじい防御力を誇るので並の魔法なら全く問題は無い。だが、やはり超級のモンスターと言うだけあって、補修した所から抜けた攻撃がラシアを傷つけた。
「なるほど……たかだか一階層とか二階層のモンスターの攻撃で抜けてくるとなると、かなりきついなー」
「たかだかって言うけどラシアちゃん。超級ダンジョンの一階層と二階層だからね」
「まぁ魔法に関しての抵抗は落ちるからその辺気をつけて行けばって感じだな。物理に関しては変わらないはずだからな」
できる事なら一人で踏破してやろうと考えていたが……確実に無理になったのでメンバーを考えて行かないと駄目だなーと、話をしているノアとリレッサの方を向く。
「となると、姫様には来てもらわないと無理か。ノアさんは炎メインだからちょっとキツいかも」
「私でも超級ダンジョンに行かないのに……ノアちゃんが行ってるのを見ると少し感慨深いわねー」
「どうしてです?」
「それはもちろん後の世代が育ってるなーと。まぁラシアちゃんがいるから行けるって言うのもあるけどね」
「ノアさんもグオンさんも優秀ですからね。その内行けるとは思いますけどね~」
「グオンちゃんはともかくノアちゃんはまだまだかな~ラシアちゃんがいなかったら危ない事って何度もあったしね」
それは確かに否定はできないが、命の危機さえなかったら十分にやって行けるとは思う。ただセレットが言うようにミス=死なので、冒険者が育たない面もあるのは確かだ。それに超級ダンジョンに行かなくても食べていける。
そんな事を話しているとダンジョンに行っていたダード達も無事に戻ってきて、ラシアが買い取ると言っていた雪見茸もたくさん採れたそうだ。