ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第210話 二つの炎

 ラシア達は一日かけて獄炎ダンジョンの四階層まで降りきり、目の前には五階層の入り口が見えている。

 

 獄炎のダンジョンは確かに超級だが、四階層までは比較的モンスターが弱い。上級の上澄みと同じぐらいなので、ゲームでも超級に挑める者達なら難なくここまで来られる。

 

 メンバーもラシア、リレッサ、グオン、ノア、キング、ティーガーとなっていて、人数は少なく感じるが精鋭ばかりなのでかなり楽だ。

 

 溶岩が流れるようなダンジョンなので足場が少ないのもあり、大人数になると不利になるというのもある。

 

 超級ダンジョンで野営というか休憩って不可能じゃね? とラシアは思うが、ティーガーが騎士団とか聖騎士がよく使う魔除けのアイテムを持って来てくれていた。

 

 そのアイテムはゲームにはなく、結界のようなものだ。四方に置くと人の魔力が外に漏れず、特に魔力で認識するモンスターからはかなり発見されにくくなるとのことだ。

 

「まぁ、流石に場所が場所だけにブレスとか魔法とか飛んできたらアウトやから、警戒はしとかなあかんやろうけど、無いよりはええやろ」

 

 さらに、ティーガーの設置が終わると囲われた中は暑さが軽減され、かなり涼しく感じる。

 

「しっかしキツいなー!」

 

「凄い熱いよー。焼き肉の気持ちが分かったかもしれない」

 

 ここまで一日というハイペースで降りてきた上に周りは溶岩だ。リレッサの支援魔法で熱やフィールドダメージはかなり軽減できる。それでも戦闘中に切れたら、場合によってはすぐに再支援をかけられない時がある。

 

 その時は我慢になる。クーラードリンク……ではなく氷水を使ってもいいが、だいたい一時間ぐらいで効果が切れる。メンバー全員に切れる度に使用していたら、はっきり言って数が足りない。

 

 グオンやノアがダード達に聞いて雪見茸をかなり集めてきてくれて、氷水を作ったが……全然足りないのだ。

 

 だから下見で使う分には良いが、踏破を考えて進む場合は無駄に使用できないのだ。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」

 

 そう声をかけると、熱い以外は大丈夫とのことだ。全員がアイテムバッグの中から水を取り出し飲んでいる。

 

 キングもクッキーを売って儲かったお金でアイテムバッグを買ったが問題なく使用できているし、リレッサの方も問題は無い様子だった。

 

「姫様も大丈夫そうですね」

 

「はい。確かに熱いのは熱いですが、我慢できないこともなくモンスターの強さも今のところは問題ありませんからね。心配事としては……キングの方が心配ではありますね」

 

 その言葉に全員が反応し頷く。言いたいことはよく分かる。キングはコアラなので全身がふわふわの毛で覆われているのだ。しかも最近、風呂にも入っているので毛並みがふわふわしている。

 

 どこからどう見てもめっちゃ熱そうなのだ。

 

「王様系のモンスターってどれも耐性高かったと思うけど、キングは大丈夫そう?」

 

「うむ。確かに入った当初は熱く感じたが、リレッサの支援のお陰であろうな。今はそこまでではないな」

 

「なるほど。よっぽど危なくなったら言って。体冷やすアイテムとかあるから」

 

「うむ。心遣い感謝する!」

 

 メンバーの状態にも問題がないと分かったので、本格的に休憩に入る。ここで一番活躍するのがキングだ。

 

 取り巻きの家臣であるコアラを召喚できるので、見張りをやらせれば全員が休憩できるのだ。

 

 数体のコアラの騎士とコアラウィザードを配置につかせ、警戒は問題無しだ。

 

 戦闘になってもその二種類は普通に七十代後半のレベルがあるので、一撃で倒されることはない。仮に戦闘になったらキングが呼び戻すか加勢すれば良いだけの話なので、本当に助かる。

 

「うーん……人もキングみたいな取り巻きの召喚を覚えたい」

 

「ポータルがあるのだから、その系統を調べれば似たような魔法は作れるかもしれんぞ。ただ、我と同じようなことができる=攻め込むのが楽になるのでな。扱い方には気をつけねばな」

 

「技術が進んだその先が良いものとは限らないといったところですね」

 

 ゲートポータルにしろ他の魔法にしろ、この世界では法でも魔法技術でも対策が取れていない物は本当に多いのだ。

 

 そんな話をしながら軽食を取っていると、グオンが五階層からはどういう感じで進んでいくのかとラシアに尋ねた。

 

「一気にモンスターの強さが変わりますから、五階層が一番気をつける感じですね」

 

 五階層からは本当に本番で、一気に出てくるモンスターのレベルが九十代まで上がる。この五階層を先に進むことができなかったら、獄炎のダンジョンの踏破は不可能だ。

 

 ただし、五階層からボス部屋まで出てくるモンスターは同じで、数の多い少ないはあるが……五階層から下れる実力があれば、ボス部屋の近くまでは降りていくことができる。

 

 途中で出てくるジェネシスライオンマンは除く。

 

「気をつけることはそれぐらいですね。ノアさんも貸したローブで全然耐えられますし、次の階層からはよくモンスターの魔法や攻撃を見ておいてください。覚えられる物が多いので」

 

「うん。分かった! このラシアさんの国宝ローブのお陰で全然耐えられるからいけそう!」

 

「国宝じゃないですけどね」

 

 そう言って皆に見せびらかすようにノアがクルクル回り、リレッサがパチパチと手を叩く。確かに似合っているし、クランメンバーで使いこなせるのはノアぐらいだ。ラシアもリレッサも職が違うので装備はできるが、使いこなすことはできない。

 

 エリエスが将来的に着ても良いが、防御型のエリエスより攻撃型のノアの方がそのローブは使いこなしている。

 

 クランの持ち物にしてもいいが……これから先メンバーを増やすつもりもないので、その内ノアにプレゼントしてもいいかなーというところだ。

 

 聖女オリスメニタのブーケもリレッサ専用になっているし、ノアにも世話になってるからだ。

 

 そして皆が休息に入って少ししてから、ティーガーが近くで面白い物を発見した。それはラシア達と同じような休息場所の跡だった。

 

「撤退した人達の物でしょうかね?」

 

「そやろな。変わったモンスターが召喚されても次の日には消えるから再度挑んだんやろな。全滅したって話も聞かんし、王女陣営もやるやんけ」

 

 ティーガーはそう言ってうんうんと頷くが、ラシアはそうは思わない。

 

 馬鹿にしているとかではなく、この世界の人達は純粋に強いので、これぐらいならやれると思っているからだ。

 

 ロディーは少し違うかもしれないが、デゴットにしても重いと言いながら自重で宿をぶち破るハンマーを持てるのだ。

 

 レベルで考えても九十代以上は確実にいる。デゴットよりレベルは低いかもしれないが、戦闘においてはアトラスやラオメの方が自分より強いとデゴットは言っていた。

 

 だから本気で行けば、超級を踏破できる者ぐらいは普通にいると思う。というか、すでに踏破している者がいて、公にしてないのかなーとラシアは思っている。

 

 ティーガーやパルサーを見ていると本当にそう思う。冒険者は無理かもしれないが、騎士や聖騎士は本当に強いからだ。

 

 この前のカグヤちゃんDXのテイムもそうだ。普通なら蒸発するが怪我人だけで済んだとか言っていたし、ティーガーも天使に対して対策はあると言っていた。

 

 天使の方が超級のモンスターよりレベルだけなら弱いが、知恵がある分、脅威度は高いとラシアは思っている。隣でノアにクッキーをあげているコアラのことはとりあえず置いておく。

 

 この世界でのモンスターの脅威度を考えれば、踏破はできなくても最低限、超級ダンジョンで戦える強さがないと簡単に国が滅ぶ。というのがラシアの感想だ。

 

 それができない国があったから、妖精の国と天使の国ができたのだ。

 

「まーた。ラシは難しい顔をしてなんか考えてるな」

 

「まー……色々ありましたけど、騎士団とか聖騎士の皆さんはお強いなと」

 

「なるほどな。それにはちゃんと理由があって、性格ややってきた行動にもよるけど、強い冒険者は声かけるからな。騎士とか聖騎士にならへんかーって。ラシも声かけられたことあるやろ」

 

「ありますね。最近はもっと酷くて騎士団長やらないか? って言われましたね」

 

「そんな感じやな。LLLは全員、声かけられてるんとちゃうか? グオンとかおかんがかなりアプローチしてるしな。ノアとかも騎士団の魔法兵団が声かけてるとは聞いたで」

 

 グオンが竜騎兵団を作りたいロディーに誘われているのはよく聞いていたが、ノアの方は初めてだった。ノアの方を向くと少し困ったように頷いていて、本当の話のようだった。

 

 凄く光栄なことだけど、グオンと同じで冒険者やってる方が楽しいから冒険者で良いとのことで、リレッサの方も聖騎士のレクトアがいる聖支援団から熱烈なアプローチがあるとのこと。

 

「姫様は聖職者の最上位職ですからね。いらないって言う人はいないというかなんというか……」

 

「私の場合は宿の手伝いも地域の相談に乗ったりとやることがありますし、有事の際には手伝いますから無理に所属する必要がないんですよ」

 

 なるほどーとラシアは納得しながら、良い方向に向かっているなと感動する。

 

 これで自分が元の世界に帰ってもLLLのメンバーはたぶん大丈夫だからだ。

 

 そんな安心感に身を任せながら体を休ませ、踏破へ向けて次のエリアへと動き始めた。

 

 そして……ラシア達が五階層へたどり着いた頃、王都では動きがあった。

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