ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第213話 名将

 獄炎のダンジョンに挑んだ冒険者達だが……帰還することになった。もちろんラシアが責任をもって全員しばいた……という訳ではない。

 

 迷っている者達をティーガーが少し離れたところで説得した。

 

 騎士団とか聖騎士の内部事情もあるので、ラシアは内容までは分からない。

 

 ただ……気になっているのはティーガーが言っていた「大丈夫、ラシの考えは分かっとる」という台詞だ。

 

 だいたいこういうことを言う奴は分かってないし、ティーガーには前科がある。

 

 リレッサにゲートポータルを出してもらい、戻っていくパーティーを見ながらラシアはティーガーを問い詰める。

 

「ティーガーさん。絶対に間違ってそうだから聞きますが、変に勘ぐって変なこと言ってませんよね? 私は中身一般人ですよ?」

 

「心配性やなー。大丈夫やで? ウチとラシは親友やからな。変な勘違いとかしてへんで」

 

 いつから親友になったんだと思うが……別の世界から来たことも言ってあるし、中身が別人だということも伝えた上で仲良くしてくれているのだから、親友と言われればそうかもしれないが……

 

 そもそも親友とは何か? となってくると、人は何のために生きて何処へ向かうのか? とか、死んだ先には何があるのか? とか、そのレベルの哲学になってくる。

 

 それは今考えることではないのだ。

 

 今、聞かなければいけないことはティーガーが余計なことを言ってないかということだ。

 

 第二王女の陣営から来ている凄腕の冒険者が「危ないから帰ってください」「分かりました。帰りますので貴方達も気をつけて」となって帰る方がおかしいのだ。

 

「そういう訳でティーガーさん。何を言いました?」

 

「大丈夫やって。ここの踏破はどう頑張っても無理なのと、王都には強者がおってもらわんと天使とかの心配あるやろ? なんか起こったらあかんから帰れぐらいやで?」

 

「嘘くせー……」

 

「嘘ちゃうわ! でも戻って貴族に聞かれたら、ウチらに襲撃されたって言ってもええでとは言うといたで。死ぬよりマシやしな」

 

「いや、それぐらい良いですけども……」

 

「心配せんでも大丈夫やって!」

 

 そこまで言うのなら大丈夫とは思うのだが……どうして街に戻るのにリレッサから支援を受けているのだろうと思うし、騎士や聖騎士については、こう、王族に謁見するみたいにリレッサに礼を言っている。

 

 ボタンの掛け違いみたいな違和感しかないのだ。そんなことを思っているとキングに少し注意される。

 

「ラシアよ。気になるのは分かるが、気にしないことも大事だぞ。それに今は油断できない場所のはずだ。細かいことは後にした方がいい」

 

「キングよ……そうは言いますが……家臣が間違った方向に進んだらどうすんの!?」

 

「悪い方向に行くなら殴ってでも止めるが、良い方向に行くなら放置であるな。王は家臣の全てを知る者では無いのでな」

 

「ラシはホンマに心配性やなー。大丈夫やって」

 

 これ以上は気にしても仕方なさそうだし、キングの言うことが正しい。ここは超級ダンジョンの獄炎なのだ。

 

 ラシアでも油断すれば死ぬような場所で、他のことに気を取られている余裕なんか無いのだ。

 

 だからラシアは気持ちを切り替える。

 

 誰かが怪我するとか死ぬとかもってのほかだ。今はダンジョンの攻略に集中しなければならない。

 

 リレッサが全ての者達を王都に送り返し、休憩も終わったところでラシア達は踏破に向けて再度進み始めた。

 

 ……

 

 …………

 

 その頃、王都に送り返された者達だが……ティーガーが言っていた通りになっていた。

 

 白の方角からは火の手が所々に上がり、そこら中に天使が飛んでいた。

 

「チッ……外れることを祈っていたが、流石はローウェンテニアの死神様か……」

 

 ダンジョンから戻ってきた者達はすぐさま戦闘態勢に入りながら、ティーガーと話していたことを思い出す…………

 

「まず先に言うとく。ラシがあそこまで考えてた理由やけど、もう王都に天使が来るか、来てるかのどっちかやで」

 

 騎士も聖騎士も、ゼレストニアがこちらの世界に呼ばれたことは報告で聞いていた。そして時が来れば攻め込まれることも想定していた。

 

 そのために少しでも時間がある内に次の国王を決め、国の守りを固めておこうという考えだ。

 

 天使達がいつ攻めて来てもいいようにだ。

 

 それが自分達がダンジョンに来ている時だとは思わなかった。

 

「天使が攻めてくるタイミングやけど、今が一番ベストやな。国王不在で国が荒れとるのと、ラシ、姫、キングがダンジョンにおるからな」

 

「そうだが……それが分かるってことは国から情報が出てるってことになるだろ?」

 

「そもそも情報に関しては止められへんってのはある。ラシにしても姫にしてもキングにしてもマジで目立つからな」

 

 確かにと聖騎士の男は納得したが……思うことはある。どうして攻めてくると分かっているのにダンジョンに行ったのかということだ。

 

「そらもちろん、天使釣るためやろ。ウチでも天使とかシエルオーテスとかと戦えるからな。ゼレストニアは除くけども、ラシ、姫、キングがおらんでも何とかなる。おかんもデゴット様もおるから、ここで徹底的に戦うんちゃうか?」

 

「なるほどな……」

 

 ティーガーの話は続き、そこで問題になっているのがこのパーティーだ。このパーティーにいる騎士と聖騎士は、どちらもティーガーより強い。もしものことを考えると、ダンジョンにいるのはマズいということだ。

 

 ラシアもその辺りを考えて(考えてない)パルサーやフウコウ達を連れて行かずに、最小限でダンジョンに行き、天使を釣るための餌になっているのだ。

 

「まー、自分らがもう一回ダンジョンに入ってるとは思わんかったやろな。下見って言うて自分ら追い返しに行ったのに、またダンジョンに向かってるとは思わんしな」

 

「ん? あの空から謎の大岩落とす犯人ってラシア様だったのか!?」

 

「そらそうやろ! 普通のモンスターやったら自分ら倒せるやんけ! 騎士とか聖騎士の上位勢を追い返せる奴ってラシぐらいやろ。ほんで王都守ってほしかった連中がここにおるから難しい顔してたんやで」

 

 確かに顔を見られれば問題も出てくる。その上、正体を隠したまま自分達に恐怖を与えて追い返せるとなると……できる人物は限られ、ラシアぐらいしかいないのだ。

 

 そこで彼らは帰ることを決め、戻る時にリレッサから作戦を伝えられる。

 

「王都の中央や城辺りでロディーが精鋭部隊と戦っているはずですが、皆様はそちらには向かわないでください。貴族街へ送ります」

 

「分かりましたが……ロディー様の応援に向かわなくても?」

 

「ロディーなら大丈夫です。ラシアの部下ですからね。狙うは貴族街にいる天使達です。彼らは確実にボスモンスター名鑑を狙っていますからね。そちらにも騎士や聖騎士はいるでしょうが、激戦区に行っている可能性もありますからね」

 

「わ、分かりました」

 

 そしてリレッサはその者達に支援をし、ゲートポータルを王都へと繋いだ。そして出た先は言われていたように貴族街だ。ここからでも火の手が上がっているのがよく見える。

 

 ここまで天使の動きを読んでいたというのなら、この辺りは静かだが……確実に天使がいるということになる。

 

 リレッサに言われた通りにそのパーティーが天使を探すと、すぐに見つかった。本当に少人数で屋敷を襲撃し、何かを探しているようだった。

 

「ラシア様もリレッサ王女殿下もここまで読んでたのかよ……ローウェンテニアってどんな国だったんだよ!」

 

 獄炎のダンジョンから帰還してすぐだが、そのパーティーの戦いが始まった。

 

 ……

 

 …………

 

 王都の中央付近は復興も終わったばかりだったが……もうほとんどの建物が壊れ、炭に変わっていた。

 

 ロディーとシエルオーテス達、天使との戦いの結果だ。

 

「もう少し、自分の国は大切にした方が良いぞ?」

 

「気にすんな。お前ら倒す方が重要や。国で重要なのは人であって家ちゃう。民が死んでなかったらそれでええ」

 

 シエルオーテスは盾の戦女神というだけあって、本当に防御が強固である。耐えるだけならロディーの攻撃にも耐える。

 

 だが他の天使達はそうはいかない。

 

 この国でラシアの次に強い人間は誰かと聞かれたら……ロディーになるだろう。ゲームのレベルで考えても95は超えている。レベルだけなら100のリレッサの方が上だが、戦えばロディーが勝つだろう。ロディーは戦闘職だからだ。

 

 そしてラシアのお陰で、相棒であった隻眼の竜も復活している。

 

「ほんまに鬱陶しいな! ヴォルカニックフレイム!」

 

 ドラゴンの体が赤く発光した後、凄まじい火力の炎が吐き出される。

 

 いくら天使達が束になって襲いかかっても、ロディーの火力の前には簡単に炭になって消えていく。

 

 まさに一騎当千の強さを持つ。ロディーが戦っていたお陰で、他の騎士達により住民の避難もできている。

 

 そして今は守るべき王もいない。遠慮などしなくていいのだ。

 

「ドラゴンニックパワー!」

 

 ロディーはスキルを使い、自身を強化しシエルオーテスに接近する。

 

 ローウェンテニア時代には竜に乗り、竜騎兵の部隊にいたのだ。天使達がいくら空中戦が得意だと言っても、それと遜色ない程度には戦える。

 

「オーバーテイル!」

 

 魔力をまとい、肥大化したドラゴンの尻尾を力の限りシエルオーテスに叩きつけると、ガードは間に合ったがそのまま地面に叩きつけられた。

 

 そして追い打ちと言わんばかりにドラゴンブレスを撃ち込み、辺り一面は火の海となるが……ロディーはまだ気を抜けない。死んでないのが分かっているからだ。

 

「流石に強いが……ラシアの一撃の方が重いな」

 

「まぁ……それはそうやろな」

 

 腕は変な方向に曲がり、熱で皮膚は焼けただれているが……回復魔法によりその傷は一瞬で治癒され、シエルオーテスは空へと舞い戻る。

 

 それだけなら……ロディーも楽なのだが、ここがダンジョンの中かと錯覚するように、天使達もすぐに湧いてくる。

 

「流石に鬱陶しいな」

 

「降伏するなら命だけはもらってやるぞ?」

 

「いらんわボケ!」

 

 今は有利でもこのままではじり貧かと思っていると……

 

「ロディー様! 住民の避難、全て完了しました! 援護に入ります!」

 

「よし。流石はパルサー! ええタイミングや! ここで潰すで!」

 

「はっ!」

 

 ロディーの戦闘にパルサー達精鋭も加わり、王都での戦闘は激化していった。

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