ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第215話 先へ

 王都では戦いが続き、夜明けと共に天使達は撤退した。

 

 目的の物を手に入れたからと思われたが……どうやらそうではなかったらしい。

 

 ロディーやデゴットがかなりの数の天使を倒し、戦女神を受け持ったのも大きいが、どういう理由があって撤退したのかまでは分からなかった。

 

 王都の中央で激戦が終わり、ドラゴンから降りるロディーにデゴット達が合流する。

 

「おい。ロディー、大丈夫か?」

 

「ちょっと強くなってたけど、あいつぐらいやったらなんとかなるな。大昔にもやり合ったことあるしな。自分の方も大丈夫そうやな」

 

「ああ、ラシアが増援を送り返してくれなかったら危なかったけどな」

 

「流石は隊長やな。姫様の方もなんかあった時のために、ルインエルデを拡張しといてくれたから避難もスムーズやったしな」

 

「頭が上がらんな」

 

「ホンマやな」

 

 と、二人は笑うが、その顔はまだ厳しいままだ。いくらシエルオーテス達が強くなっていると言っても、ロディーやデゴットの方が強い。

 

 ロディーもデゴットも、シエルオーテスを含む戦女神達を何度か撃破した。

 

 だが天使達と同じように復活し、戦場に舞い戻ってきたのだ。

 

 確かにシエルオーテスとロディーならロディーが勝つ。だがロディーは人であり、死んだら復活しないし、もちろん疲れもする。

 

 シエルオーテスは弱くはない。そんな相手と夜通し戦い、退かせた。

 

 そしてシエルオーテス達が去り際に、また来ると言っていた。ロディーは大きくため息を吐き出す。

 

 ボスモンスター名鑑を手に入れるまでは、何度でも天使達は来るだろう。

 

「二、三日やったら問題ないけど、それから先はしんどいかもな」

 

「今の調子ならなんとかなるが……どうして夜なんだろうな? 天使というぐらいなんだからアンデッドの類いでも無いだろうし」

 

「ホンマやな。ただ天使っていうだけのモンスターやさかいに、調子がええのは間違いなく夜やから、その加減もあるやろ」

 

「なるほどな。その辺もおいおい調べていかないと駄目か」

 

「まぁ偉そうに天使達も言うとったけど、攻めて来れるのは数日やから焦ってるのはあるで。数日もしたらラシア隊長帰って来るしな」

 

「後は連絡取れたらいいが、任せられてるからには任せてもらうか。どうしようもない相手ではないからな」

 

 そんなデゴットを見ながら、何のためにコアラ連れて行ってると思ってるねん、とロディーは笑う。

 

 デゴットはその意味が少し分からず、王都の兵士達に混ざって片付けを手伝っているコアラマンを眺めていると、その内の一人が消えた。

 

 デゴットがその意味を理解した時には、消えたコアラマンはキングの元に召喚されていた。

 

……

 

…………

 

「なるほどなるほど。流石はローウェンテニアの死神といったところか……読んでいた通りの展開であるな」

 

 下の階へ降りる階段近くで休憩し、軽食を取りながら雑談していたところにコアラマンが召喚された。するとキングが訳の分からないことを言い出したので、ラシアは『何言ってるんだこいつ』というような顔をする。

 

 ただ茶化しているような感じはしないので、コアラが変なこと言ってると流したりはしないのだ。

 

 ラシアがそのことを恐る恐る尋ねると、キングは割ととんでもないことを言い出した。

 

 王都が天使に襲撃されたということだ。

 

 ラシアは食べていた物を吹き出しそうになる。

 

「ん? ラシアよ。何をそんなに驚くことがある? 読み通りであろう?」

 

「違いますけど!?」

 

「陛下。そこは知らんってことにしとかんとややこしいことになるかもしれんから、ラシの反応が正しいんやで!」

 

「なるほど、そうであったな!」

 

 とりあえず、この二人が訳の分からないことを言い出したが……そちらは置いておいて状況の方を尋ねると、キング曰く小競り合い程度で特に問題は無いとのことだった。

 

「今のところは特に死者が出たなどの報告は聞かんな。ロディーやデゴット達が対応したと聞く。そこまで大きな戦いではないだろう」

 

「ってことは、やっぱりボスモンスター名鑑が狙いか」

 

「それは間違い無いであろうな。ただ、それよりロディー達が気にしていたのは、ダンジョンのように天使達がすぐに復活し戦いに戻ってきたことだな。これは我々コアラ族にもできないことである」

 

「どこまでコアラが全能か……」

 

 そこでラシアが思い出したのは、天使達は魂が本体なので、入れ物さえあれば復活するだろうということだ。その上で、確か外は満月だったはず。体があり魔力が上昇する月夜なら、多分だが簡単に復活しそうな気はする。

 

「なるほど。天使といえどもモンスターという枠からは外れられぬのであろうな」

 

 死者が出ておらず小競り合い程度なら戻らなくても良いとは思うが、少し悩んでいるとノアもグオンも気になるようで、どうするのかと尋ねてきた。

 

 確かに天使達は強いが、ロディーやデゴットもいる。その上でパルサーやフウコウ、お兄さんお姉さんズ、送り返した冒険者や騎士、聖騎士もいる。

 

 ラシアも気になるのは気になるが、多分戻ったところでできることはない。

 

 確かにこの世界にはゲームとの違いは多くあるが……超級ダンジョンに挑める者が天使に負けることは無いのだ。

 

 ラシア達がいる場所は、もう踏破が見えてくるような位置だ。実力だけで来たように思えるが、もちろん運もある。

 

 一度戻って次回来る時に、同じように安全とは限らないのだ。

 

 少し王都に対して冷たい気もするが……任せられる人達がいるのなら任せた方が良い。

 

 ラシアが来る前からこの世界はあり、人々は問題がある度に自分達で考え対応してきたからだ。

 

 だからこの場は任せる。ただ本当に危ない場合は帰るが、今は進むだけだ。

 

 後は早く聖銀鋼の鎧を直したい。今はリレッサの支援があるので大丈夫だが……それでも強いモンスターが出てくれば、熱が鎧の隙間に流れ込み、鎧の下で肉が焼ける音がして割と辛いのだ。

 

 回復してもらっているので大丈夫とは思うが……それでも早く直せるのなら直してしまいたいのだ。

 

「……小競り合い程度だったら戻ってもやることなさそうですし、このまま進みましょう。ルインエルデが狙われたら戻りますが、王都は強い人しかいませんから任せましょう」

 

「確かに……今回はパルサーもフウコウさんも来てないけど、二人とも強いもんね」

 

「猫怪人はともかくパルサーが強いのは間違いない。俺もXランクだが、Sランク相当の騎士か聖騎士には負けるだろうからな」

 

 ラシア的にはグオンの評価は相当高いので、そのグオンが負けると言うのだから確実に任せても大丈夫だと思う。

 

 この世界の人達が抱える火力不足の問題も、ロディーがいるので解決するからだ。

 

「ロディーとデゴットさんが苦戦するとなったら、戦女神でも出てきた時でしょうし、たぶん大丈夫そうですね」

 

 そのことをキングがコアラマンに伝えると、コアラマンの足下に魔法陣が現れ、王都へと召喚される。こちらの動向をロディー達に伝えるとのことだ。

 

 重要なのはボスモンスター名鑑を奪わせないこと。それだけだと思う。

 

 キングやフェリスロステが特別なだけで、モンスターはモンスターなのだから。

 

 ……

 

 …………

 

 片付けも終わり、もしものことを考えて入念に準備をしてから、ラシア達は下の階層へ降りていく。

 

 降りた先は十階層だ。獄炎のダンジョンは十三階層なので、もう一日もあればボスまで行ける距離になる。

 

 先ほどの階層までで手こずるモンスターがいないのであれば、道中で苦戦することはほとんど無い。出てくるモンスターの数が多いか少ないか、その程度だ。レベルはほぼ同じだからだ。

 

 ただ、この階層からは気をつけなければならない。それはキングが会いたがっているボスモンスター、ジェネシスライオンマンがいるからだ。

 

 総合的にはここのボスモンスターである炎神フレディムの方が強いが、ラシア的にキツいのはジェネシスライオンマンになる。

 

 こいつに関しては……ラシアがゲームでのソロ討伐は不可能だと諦めたほどに強い。

 

 モンスターの系統としては、ライオンマン→スターライオンマン→ファイティングライオンマンのさらに上位種という設定となる。

 

 ライオンマンのレベルが七十で、八十、九十と続き、ジェネシスライオンマンで百となる。

 

 元の世界でもライオンは百獣の王とか格好いい二つ名をもらっているので、ゲームでも強いのだ。

 

 では? コアラは? と聞くプレイヤーも多かったが、運営が答えなかったので謎だ。

 

 ジェネシスライオンマンは元から強いが、ラシア特攻を持っているのでソロでの討伐が不可能になる。

 

 まず一つ目の特徴は、戦闘開始と同時にクラッシャーオーラが展開されることだ。これは戦闘中にアイテムを使用しようとすると爆発してダメージを食らい、アイテムそのものも使用できないというものだ。

 

 この能力のせいで、回復薬連打でボスに挑んでいたプレイヤーには攻略がほぼ不可能になる。

 

 そしてもう一つがライオンマン系統の持っている能力だが、ソロで戦うとテンションが上がるのか超絶強化されるのだ。

 

 普通、逆じゃね? と思うがライオンマン系統はそうなのだ。元から強い上に、ソロで挑むと手がつけられなくなる。

 

 その代わりソロで挑み倒すと、ドロップアイテムを選ばせてもらえたりするのだが……公式の発表によると、全てのプレイヤーの中で倒した者は十人もいないとのことだ。

 

 だから戦う時は階層を降りる前に準備をしておく必要がある。時間湧きのボスモンスターが、降りてすぐにいる可能性もあるからだ。

 

 ただ、なんとなくだがこの階層にいる気はする。なんというか熱さの度合いというか、この階層に降りた瞬間に危険度が一気に上がった気がするからだ。

 

 普段、軽口を叩いているティーガーもキングも何かを察したようで、皆が静かだ。

 

 他のモンスターも怯えているようで、進んでも進んでもラシア達を襲って来るものはいない。

 

 そして……ちょうどこの階層の中央付近にある広い空間に、それはいた。

 

 炎より赤く、溶岩よりも熱い闘気をまとった百獣の王の姿をしたモンスターだ。

 

 明らかにラシア達を敵と認識し、先手を取り、その闘気を拳の形に圧縮して高速で回転させ、ラシアめがけてぶっ放した。

 

 ラシアはすぐにイレイザーハンマーで飛んできた闘気の拳を叩いて相殺するが、あまりの威力に後ろへ吹き飛ばされる。

 

「ラッ、ラシアさん。大丈夫!?」

 

 大丈夫だと言って立ち上がり、ラシアはすぐに構える。今の攻撃で分かったのは、間違いなく今まで戦ってきたモンスターよりも強いということだ。

 

 そしてこちらの番というところで、キングがジェネシスライオンマンに話しかける。

 

「貴殿が獣の神と聞く。一つ話を聞かせてもらいたい」

 

 返事が返って来るとは思えなかったが……意外なことに獅子の口は開かれ、返事が返って来た。

 

「言葉は無粋。お前達が勝てば答えよう」

 

 それ以上はどんな言葉を投げかけても答えは返って来なかったので、戦いが始まった

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