翼竜を倒して解体が終わり、夕食も取ったので浮島の上にテントを張って休息となる。
このダンジョンには昼夜がないのでずっと明るい。そういうダンジョンでも人間は疲れるし眠くなるので休憩ができる時に休息する感じだ。
風が吹いているがその辺に蝶々が飛んでいる程度の風なのでテントを張っても飛んでいく事はない。
そんな事を寝ぼけながら考えていると交代の時間になりリレッサが起こしに来てくれた。
寒い空で翼竜にしがみつき戦っていたので想像以上に疲れていたのか、猫組は最初に休息を取らせてもらう事になった。
「ではラシア、後はよろしくお願いしますよ」
起きたのはラシアが一番遅かったようで、リレッサに「分かりました」と言ってから交代する。
本当に今更なのだが……自分が使っていたテントに誰かが入ると、未だに少し恥ずかしい。この辺は記憶のせいなのか、ラシアの体のせいなのかが本当に謎な所だ。
今からは猫組と支援職のレクトアが起きて見張りをする時間となる。
グオンはハーレムなので皆と一緒に寝ている。……というような事は無く、一人用のテントでお休みだ。流石に本人が望んだのでそうなっているという感じだ。
「おっ? おはよーさん。よう寝れたけ?」
「はい。思った以上に疲れていた様でよく眠れました」
「まぁ。あれだけの戦いで元気だったら人間やめてるからな」
「ラシアも人間だったから安心にゃ~」
「失敬な」
誰かがアイテムバッグから出したであろう椅子に座るとレクトアがコーヒーを淹れてくれたのでラシアはそれを受け取り礼を言った。
話す内容は翼竜の事だ。
今回の様な合同パーティーの戦いで、ドロップアイテムが何も出ない時より困る事がある。それはレアアイテムが出る時だ。
グオンが翼竜を解体していた時に体の中から宝箱が出てきたのだ。その中に入っていたのが激レアアイテムだった。
まずは翼竜のマントになる。これは身につけると空を飛べる様になり、風の属性攻撃を大幅に強化し、魔法攻撃を三割カットするアクセサリーだ。この翼竜のマント自体にも装備枠がついているので、今身につけているアクセの上に着けられるのがデカい。
そしてもう一つが翼竜の様な大型のドラゴンが落とす物で、ドラゴニッククオンタというアイテムだ。
これは騎乗ドラゴン専用の装備で、ドラゴンに身につけさせる事でブレスの性能が強化される物になる。このアイテムは他の職だと恩恵は全くないが、竜に乗っているとほぼ必須クラスのアイテムになるのでゲームでは割と高値で取引されていた。
ラシアが魔石をもらう事は決定しているので、残りのアイテムをどう分けるかが問題になってくる。
ラオメやレクトアは天風ダンジョンの情報と踏破の実績が手に入るから別にいらないと言うが……流石にそういう訳にはいかない。翼竜との戦いでラオメが使っていた盾は壊れたりしているからだ。
こういう問題があるので、クランメンバーだけで行くかソロで行く方が楽なのだが、それだと今度は踏破できないから世の中ままならないものだ。
ドラゴニッククオンタはティーガーで良いかなーとラシアは思う。グオンは前回の獄炎のダンジョンで獅子王の籠手をフレディムからもらっているし、今来ているメンバーで竜に乗っているのはティーガーとグオンしかいないからだ。
「騎士団とか聖騎士ってアイテムの分配ってどうしてるんですか?」
「基本的に何か依頼があって行く時は国の物になるな。儲けは無いが分配などで悩んだりしないから楽なのは楽だな」
「なるほど」
「後は今回みたいに休暇中について行ったり、許可とって行く分には冒険者と一緒の扱いやな」
「ぶっちゃけ、儲けだけ考えるなら冒険者やってる方が儲かるにゃ。ワッチも所属は錬金術師の方ににゃるから帰ったらガロ婆に全部渡して分けてるにゃ。装備とかは全部もらえるけども、変わった物、珍しい物は没収にゃ」
「色々あるんですねー」
出ないより出た方が良いのは間違い無いが、出たら出たで精算をどうするかが本当に悩ましい所である。
売れば良いとは思うのだが、次手に入るか分からないし、手に入ったアイテムの性能なども分からなければ二束三文で買い叩かれる事もあるだろう。
ドラゴニッククオンタとかはまさにそんな感じだ。竜に乗っている人も殆どおらず、性能をまともに知っている者はラシアぐらいなので物の価値が分かってない人もたぶんいる。
「そう考えると……用途不明の激レアアイテムとかが倉庫に眠ってたりするのでは?」
「それはありそうですね。ラシア様、よかったら聖騎士や教会の倉庫とか見に来ますか? 用途不明な物が突っ込まれていますよ」
「聖騎士って聖職者に当たりそうなので片付けとかしてそうなイメージありますけどそういう物なんですね。時間ができたら是非見に行きたいです」
「ラシアー……ティーガーが聖騎士にゃ。そんな連中がちゃんと片付けるとか思ったらダメにゃ」
「ウチはちゃんと片付けとるわ! そうなってくると、こないだのボスモンスター名鑑やないけど危険なアイテムもいっぱいありそうやな。血塗られた契約書とかもそんな感じやしな」
アイテムの中でプレイヤーに害を与える物は実はそんなにない。人を魔物に変えるシチューと血塗られた契約書、ボスモンスター名鑑が有名所で、後はPVP用に状態異常を付与したりするぐらいの物だ。
だけど問題は、ゲームの中で換金用アイテムとかクエストで使ったりする様なアイテムだ。
ゲームやる人ならたまに見る、説明欄に書かれている言葉がなんか殺意高い系だ。
それをこの世界で使用する事ができたらどうなるのかな? という感じだ。
例えば「竜も一滴で殺すほどの毒薬」と書かれていたり、「それは別の世界の可能性」とか「冥府の王と会話できる」とか。そういう事が書かれていて、説明の内容がゲームにもクエストにも特に関係してこないヤツだ。
毒に関しては昔の人達が試して使ってそうな気はするが、危険っぽい事が書かれているアイテムに関してはかなり謎だ。そういうアイテムは覚えてないのも多いが出てくる所も殆ど無いので気にした所でどうしようも無い事ではある。
そんな話をしながら見張り続け……リレッサ達が起きると準備をして、また天風のダンジョンを進み始める。
この天風のダンジョンは獄炎のダンジョンと同じで時間湧きのボスよりもボスの間にいるボスモンスターの方が強い。だけど翼竜を倒したからと言ってダンジョンを進むのが楽になる事は無い。
翼竜との戦いでもそうだったが、モンスターに襲われると全方位、360°どこからでも狙われる事になりかなりキツい。モンスターのレベルも全てが九十超えでこちらは空中戦が不得意だからだ。
翼竜を倒したラシア達を苦戦させる敵こそハニワ達だ。
なんというか、土偶がスーパーロボット系ならハニワはリアルロボット系だ。基本武装はビームライフルならぬマジックライフルとマジックサーベルで、ハニワハンマーとかも持っている奴がいる。
だからラシアはこいつらを見る度言いたい。ガ○ダムだろうと! 基本的にハニワには色々な形の奴がいるが、名前はハニワだ。武装が何処かで見た事のある奴がちょいちょいいる。
赤い奴は三倍の速度で動いて当ててくるのでたぶん間違い無い。
これだけならまだ余裕を持って対処できるのだが……このハニワの女の子型モンスターであるハニワちゃんが問題あり。
無茶苦茶速度が速いのでラシアですら攻撃を当てられないのだ。ではほぼ必中の追尾系の魔法で攻撃したら良いのでは? となるが……
「何このハニワ!? 魔力を持った残像とでもいうの!?」
ノアの言う事が正解で、このハニワちゃんは動く度に残像を残す。魔法とか撃ってもその残像に向かって飛んで行き、当たらない。
「ほんだらウチの番やな! ニジオ行くで! リボルバーボックス」
そう言ってティーガーが虹竜のブレスを連射するが……必中効果がある攻撃でも当たらないので数を増やした程度では通用しない。ちなみにニジオは虹竜の名前。
「にゃったら! 追尾攻撃にゃ! ホーミングダガー!」
「フウコウさん! それ駄目です!」
「にゅうん?」
フウコウのスキルで放たれた十本のダガーがハニワちゃんの本体を狙って勢いよく飛んで行く。
だがハニワちゃんの方が速いので追いつけず、ハニワちゃんはフウコウを狙って接近する。
この行動はアニメとかで自動追尾の攻撃を躱す時によく見るアレで……自動追尾の攻撃を放った本人にぶつけるやつだ。
あまり来ないダンジョンなのでラシアはついさっきまでその事を忘れていたが……フウコウに向かってハニワちゃんが突進した後に急激に方向を変えたので、フウコウの放ったダガーは全て本人に返ってきた……
「にぎゃーーー!」
もう少しでフウコウに直撃するという所でラシアはハンマーを投げて、ホーミングダガーを粉砕し仕切り直しだ。
「助かったにゃ……ラシアありがとにゃ!」
「どういたしまして」
それからさらに戦闘は激化し、リレッサが大量の天使を召喚して逃げ道を塞ぎ、なんとか倒す事ができた。
そしてそこからは順調に進んでいく事ができた。ラシア達がボスの間にたどり着くと……風と雷を纏って宙に浮かぶハニワがいた。
「誰かが入って来たと感じていたが……これは懐かしい顔だな!」
炎神フレディムが喋るのだから風雷神ウィンディアも喋るよねとラシアは思いながら戦闘態勢へと移行する。
明らかにウィンディアも戦闘態勢だからだ。