ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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十五章 終わりに向かって
第235話 魔物の集まる宿


 コアラの王様は宿に寝泊まりしているのでもちろんいるのだが……妖精の国との交易がちゃんと始まったので、フェリスロステが遊びに来ている。

 

 もちろんローウェンテニアの王女ことリレッサもいる。人とモンスターの垣根をなくして数えれば、ここの宿には王族が三人もいるのだ。フェリスロステの護衛としてヘッジ、ラオメ、レクトアも来ているがフェリスロステの方が強いので三人も座ってお茶を飲んでいる。

 

 そして+αで土偶こと炎神フレディムも遊びに来ていて、人外にモテるティアと一緒に遊んでいるので……こう、脳がバグる。

 

 そんな中でラシアは何をやっているのかというと、話は数日前に戻る。リレッサが市場で珍しい物を見つけてきたので、ラシアが確認すると小豆だった。

 

 そして久しぶりに鯛焼きでも食べたいなーと言った所、鯛焼きってなんぞや? となった。そこで説明すると……キングが別に魚の形でなくとも外はコアラの形でも良いのではなかろうか? とか言い出した。

 

 確かにその通りなので、コアラの顔にして売る? とラシアが尋ねた所……キングの行動は凄まじく速く、ラシアにデフォルメしたコアラの顔のイラストを描かせた後にぱぱっと図面を引いて、いつもの鍛冶屋に持っていった。

 

 鍛冶屋は最近、王都から剣とか盾のグリップに革を巻いたりする仕事が多く来ていて、ちょっと飽き気味だった。なので喜んでノリノリで型を作ってくれる事になった。その型が完成したのが本日で、ラシアはあんこと生地を作って鯛焼きならぬコアラ焼きを作っている。

 

「なんか……ウチの宿にもモンスター増えたな」

 

 この辺がおやっさんの凄いところで……客として来るなら王様でも女王陛下でも王女でもこんな感じなのだ。

 

 外でロディーを見る時はちゃんと畏まっているが、宿の客になったらいつも通りだとかなんとか。

 

 ちなみに風雷神ウィンディアもダンジョンから出てきたが、王都にティーガーをしばきに行って、今はティーガーに乗せられて、竜騎兵団とティーガー、グオン達を王都の空で鍛えているとかなんとか。

 

 あと、天風のダンジョンのドロップなどの精算だが、ラシアは個人として翼竜から出た魔石をもらい、ティーガーの元にドラゴニッククオンタが行く事になった。ラシアは竜には乗らないし、グオンも獅子王の籠手があり、戦力強化を考えるならティーガーの元に行くのが一番良いという考えだ。

 

 盾の壊れたラオメには翼竜の外皮などを分配した。そのままでは使えないので翼竜の盾にする為、今は素材を工房に持ち込んで設計やらなんやらやっているとの事だ。

 

 あとは他のメンバーだが……変わったアイテムなどは無い。それでも超級のダンジョンなので換金アイテムや魔石などをギルドで売って赤字にはならず、それで我慢してもらった。

 

 天風で戦っている時に色んなアイテムが落ちていくのが見えたが……取りに行こうにもどこからが即死のラインか分からないので、行けるはずがない。本当に勿体なく感じるがこればかりは仕方が無い。

 

 そして目玉商品。商品では無いが翼竜のマントの行方だが……ラシアがもらっても揉める原因にはならないが、有効活用するという事に決まった。

 

 このアイテムを使いこなすとなると空中戦ができて戦闘能力が高い者が持つのが一番という事になる。

 

 だから翼竜のマントは新設された竜騎兵団の隊長が持つ事になった。シンボル的な物があった方が良いだろうし、これから先、竜騎兵団が続く限りは翼竜のマントを隊長が引き継ぐ形になる。

 

 少し勿体ない気もするが、国の防衛も強化されるし皆が納得してくれたのでそれでよし。

 

 まぁ……ロディーがその翼竜のマントをめちゃくちゃ欲しがり、聖騎士長をやめるとか言い出すハプニングがあった。だが、デゴットが「ラシアに勝ったらいいぞ」と言った所、ロディーは素直に諦めた。

 

 そして非公認だがロディーの屋敷を借りて、正装に身を包んだリレッサが授与式みたいな事をやったりして竜騎兵団の忠誠心等が色々と上がったとの事だ。

 

 事の顛末としてはそんな感じだ。本当にレアアイテムが出ても困るし、出なくても困るのはままならないなと思っていると、ようやく鯛焼きならぬコアラ焼きが焼けた。ラシアは皆の元にそれを持っていく。

 

「ラシアさん! 食べて良い?」

 

「いいよー。ちょっと中のあんこが熱いから気をつけてね」

 

 このやりとりだけ見るなら違和感は無いのだが……横を見るとコアラとか妖精とか土偶まで食べてるのだから、何かこう世界の終わりを感じさせる雰囲気がある。

 

 そしておやっさんもセレットもティアの近くに座り家族団欒で食べ始めた(ノアは遊びに行っている)ので、ラシアは土偶ことフレディムやキングの近くに座った。

 

「うむ。これなら我にも作れそうであるな。そういう訳でラシアよ、公園で販売しようと思うがよいか?」

 

「全然いいけど、天風のダンジョンでウィンディアが言ってた『ダンジョンは滅んだ世界の記憶』という話はどう思う?」

 

「うむ。まさにその通りであろうな。我は自分が死んだ時の記憶を持っているし、そこのフレディムから聞いた時にそうであろうと思っていたのでな」

 

「なるほど……というか土偶様がダンジョンから出てきていいのか?」

 

 ラシアがそう言ってフレディムの方を見るとちゃんと口を開けてコアラ焼きを食っている土偶がいるので本当に面白い話ではある。

 

「そらーあれよ。おうちは大好きだけどたまには外で違う物を食べたくなる感じだ。食べなくても死なないが美味しいとは感じるからな」

 

「ラシアみたいですね」とリレッサは言う。

 

「言い返せない……それはそうとフレディム的にはウィンディアの言ってた事ってどうなの?」

 

「ん? オレは魔神種の中でも最弱! 最初に死んだから分からん」

 

 これに関しては嘘つけとラシアは思う。ゲーム内での数値になるが数々の高火力モンスターを抑えてトップに立つのが炎神フレディムだ。獄炎のダンジョンで戦わなかったのは本当に良かったなーと思えるぐらいには強い。

 

「オレもハニワが言ってる事が正解かとは思うが確認のしようがないしな。生き返った時に変な記憶を入れられたって可能性もある訳だからな」

 

「えー……そんな事言い出したら、昨日の自分と今日の自分は実は別人とか言う説も通るのでは? 実は今日の朝に生まれて、昨日までの記憶は嘘とかもあり得る事になる!」

 

 ラシアがそんな事を言っているとナイフでコアラ焼きを小さく切って食べていたフェリスロステに笑われてしまった。

 

「ラシア。話は変わりますが私の城に猫が迷い込んで来たので城で飼うことになったんですよ。その話を聞いてどう思いますか?」

 

「え? 食べては駄目ですよ?」

 

「……ラシアはたまに失礼な事を言いますが、その事はこの際置いておきましょう。その猫を飼い始めたという話が嘘かどうか、ラシアには分かりますか?」

 

「流石に分かりませんし、飼っているのなら猫飼ったのかーですし、嘘だったら嘘だったのかーで終わる話ですよね?」

 

「まさにその通りです。ウィンディアが言っている事も私が言った猫の話も、規模が大きいか小さいかの違いで変わりはないのです。猫の話も城まで行って確認するような事でも無いです。ダンジョンの事もラシアが一生を捧げれば解明できるかも知れませんが……そこまでする必要はあるのか? という話になるでしょう? ラシアの目的はダンジョンを解明する事でしたか?」

 

 それは確かにフェリスロステの言う通りだった。ラシアの目的は元の世界に帰る事であって世界の不思議を解明する事ではない。帰る為に役立つ知識であるならば気にした方がいいかも知れないが……ウィンディアの話が本当でも嘘でもあまり関係無いのかも知れないと思った。

 

「って事はセレットさんが前に言ってた様にスキルとかもダンジョンから出てきた感じか」

 

「オレとかウィンディアとかの魔神種はダンジョンの内外を普通に移動できるし、大昔にマウスマンにやられかけてた人間に魔法とか教えたことあるからその辺から広がったのかもな~」

 

 かなり重要な話をしているのに炎神フレディムがこんな感じで適当なので……ラシアもこう何でもいいかという様な気分になってくる。

 

「お前がコアラ焼きを焼いている間に妖精女王に話は聞いたから、目的地の深淵まで行ってみる事だな。今の所……順番通りだしな。次は絶冬に行ってこい。その次は聖陽だ」

 

「まーた思わせぶりな態度だよ……順番通りとは何ですかね? 土偶様」

 

「はっはっはー。お供え物もなしに答えてもらおうとはいかんなー。オレはおかわりを要求する」

 

 人に何かをねだる神様は邪神の類いだと思うが、魔神だし仕方ないのかとラシアは色々と諦める。

 

 そしてラシアセンサーでノア達が帰って来る気配を感じたので、ラシアはおかわりを焼くことにした。

 

「ラシア、人が増えそうですから私も手伝いましょう」

 

 リレッサに礼を言って二人で準備を始めると……なんというか飛行機のジェット音の様な音が聞こえてきた。

 

 異世界に飛行機とは? と思っているとその音は凄まじい勢いで接近してきた。

 

 そして……その音の主が宿の一階の壁をぶち破り着弾した。

 

 慌てて皆がそこに駆け寄ると、目を回したティーガーと虹竜がおり、その上にはウィンディアが立っていた。

 

「あーはっはっはっは! 馬鹿め! 魔力も体力も満タンの私が負ける訳がないだろうが!」

 

「……よし。ラシアは正座な」

 

「おやっさん! 私悪くなくない!?」

 

「どう見てもお前の友達だろうが! とりあえず……姫様、キング、手伝ってくれ。この宿を壊したアホンダラをしばいて正座だ」

 

 リレッサとキングが頷くと、面白そうという理由でフレディム、フェリスロステ、ラオメ、レクトア、ヘッジが参戦する事になった。

 

「おい! 人間、それは卑怯じゃないか!」

 

「俺は頼んだだけだぞ。断るのはこいつらの自由だ。戦いってのは総合力だ。卑怯もへったくれもあるか! 誰にも味方してもらえないお前が悪い! 宿を壊したのも悪い!」

 

 そしてウィンディアはボッコボコにされラシアと一緒に正座させられた。

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