ラシア達が絶冬のダンジョンに潜っている間に掘削令嬢ことリドル嬢が白の国と様々な交渉をし、その結果は上手くいったとの話だ。
と言ってもラシア達が絶冬のダンジョンを踏破できたらその条件を飲もうと言っていたようだ。ものの数日でラシア達が踏破し帰って来たので、大口を叩いていたのが仇になったようだ。
ただしなんやかんや言っても友好国で同盟国なのだ。リドル嬢もラシアがこんなにすぐ戻ってくるとは思っていなかったのでかなり無茶なことをふっかけていたが……もう一度話し合ってお互いにある程度のところでちゃんと折り合いをつけた。
話し合いの内容は詳しくは知らないし、国と国とのやりとりなのでラシアもあまり興味はない。ただ絶冬に出てくる全てのモンスターとその能力、ドロップアイテム、出現階層、その全てを記載して提出した。とても価値のある一品に仕上がっている。
あと騎士や聖騎士としてパルサー、ティーガー、ラオメ、レクトアがダンジョンに潜っているので、絶冬のダンジョンの情報はこの白の国だけに収まらず、王都でも共有されることになる。
ラシア的には攻略サイトとか見ればすぐに得られる知識だったので、そこまで価値の高い情報ではないと思うが……この世界の人の目線で考えれば、もの凄く価値のある情報だなと思う。
この国の国王にしてもシロにしても踏破したことにとても驚いてはいたが、それ以上に感謝と喜びの方が大きかった。
この城は城でもあるが、この街の病院のような役割もあるようで、違う塔では普通に住人の病気や怪我の治療などをしているそうだ。城の中が暖かいように病棟の方も暖かく、年間を通してけっこうな量の魔石を消費するのだそうだ。
この国にも昔はちょくちょくラオメが来ていたそうで、この国は貴族が少ない国だと教えてくれた。
あと、リドル嬢は元の世界の基準で考えると高校生ぐらいなのだが……国相手にそこまで話し合いができるのは本当に凄いなーとラシアは思う。
自分が高校生ぐらいのときには友人と遊びに行ったり彼女とデートしたり青春してたなーと……
「まぁ……そんな記憶はないですけども」
「ラシアさん。どうしたの?」
城の窓から外を見ているとノアに話しかけられたので、ラシアは誤魔化して違うことを伝えた。
「いえ、シヴァリーにギャルラシアこと黒ラシアがどうして出たのかを聞くのを忘れたなーと。まぁそこまで重要なことでもないので、まぁ良いかという感じですね」
「こう、実はラシアさんは知らない間に双子だったとか?」
「自分が知らない間に双子がいるとか面白いですけど、なかなかに恐怖ですね。それで? 王都にいつ帰還するかは決まりました?」
「うん。まだラオメさんとレクトアさんがシロさんと話しているけど、今日のお昼過ぎか夕方には帰れるんだって」
「雪見てるだけで寒いので……終わったらさっさと帰りたいんですが皆さん元気ですよね」
そう言ってラシアが窓から別の方向を見ると暇なクランメンバーやフウコウ達は雪合戦などして遊んでいる。
王都でも雪は降るそうだが、それでもここに比べるとそこまで積もらないそうだ。ここまで雪が積もっているので楽しいようだ。
そんな彼らを眺めていると……フウコウは相変わらずのようで屋根の上から落ちてきた雪に巻き込まれ埋もれてしまった。
「フウコウさんが相変わらず過ぎる……」
「……ほんとですね。今度、フレディムみたいな友好的な魔神種に会ったらなんでフウコウさんはあんな感じで不幸なのか聞いてみても良いかもしれない」
「理由があって治ったらいいんだけど……不幸じゃないフウコウさんはフウコウさんじゃないと私は思う!」
「言いたいことは分かります。標準語を話すティーガーさんみたいな」
「そう、そんな感じ!」
そんな感じの話をしていると、昼食に招かれラシアは行きたくはないがこれも付き合いなので頑張って向かうことになった。そこでもう一度この国の偉い人達に感謝を伝えられた。
そしてようやく帰還の時間となり、皆が城の中庭に集まった。リドルもフェリスロステへの報酬として、白の国での農業に関する書物を大量に手に入れたとのことなのでたぶん大丈夫だろう。
こちらに来たときと同じでメンバーは誰も怪我することなく、欠けることもなく無事に踏破できたので、今回の遠征は大成功と言えるだろう。
そう考えながらラシアが今回のパーティーを見渡すと、少し変わったところもある。それはレクトアの装備が変わっていることだ。来るときは明らかに聖職者らしい帽子を被っていたが……今はペンギンハットという帽子を被っている。
絶冬でモンスターと戦っているうちにいつの間にか出ていて、フウコウが回収していたそうだ。
今回のレアドロップと言えば雪ちゃんの犬ぞりとペンギンハットぐらいで他は魔石とかばかりなので……まぁ全体的にはあまりよろしくない結果だ。だが聞けた情報のことを考えるとそんなものかなという感じだ。
精算も時間があるときに終えていて、そのときにノア、エリエス、レクトアの三人がペンギンハットを取り合い、レクトアが勝ったといった感じだ。
「ワッチには……あの帽子の可愛さが分からないにゃ……」
お隣で呟いたフウコウの言う通りで……帽子のはずなのに目の部分は動くし定期的に口も開く変な帽子なのだ。でもアイテムバッグに入るのだからアイテム扱いなのだ。
それと雪ちゃんの犬ぞりだが、白の国には手に入れたことを報告してない。
白蛇様(ちゃん)ことシロがいる国だ。雪ちゃんももしかしたらいるかもしれないし、今後、進化して現れるかもしれない。
武力や防衛に困っている国ではないので、余計なことは言わずに黙ってお持ち帰りだ。
そしてもしものことがあっても対応できるようにラシアが持っておくこととなった。何かがあってもラシアなら問題なく破壊できるからだ。
出した後にアイテムバッグに仕舞えないことがあったら大変なので、今はちゃんとラオメが仕舞っている。
「では、王都に繋がるゲートポータルを出しますが、大丈夫ですか?」
皆が頷いたので、リレッサは王都へと繋がるゲートポータルを開き、そして皆が別れの挨拶を交わしてゲートポータルへと入っていった。
そして王都へとたどり着く。王都へと帰ってくると……襲われていたりすることもあるだけに、ラシアは少しホッとしながら王都の地を踏んだ。
無事にたどり着いたのでリドル嬢の護衛もこれで完了となり解散となる。
「ラシア様。ご依頼を受けてくださりありがとうございました」とリドル嬢が丁寧に頭を下げる。
貴族相手にどう返事をしていいのか未だによく分からないのでラシアは「どういたしまして」とだけ言うことにとどめておいた。
「もしよろしければわたくし、いえエンブレント家から指名の依頼を送ってもよろしいでしょうか?」
「あまり難しいのは困りますが……簡単なもので時間があるときでしたら」
「……超級ダンジョンを幾つも踏破しているラシア様、LLLの皆様方に難しい依頼があるんですの?」
「そこは適材適所というものがありまして、モンスターを倒したりするのは得意ですが、今回は別として護衛をしたり採取したりなどの仕事は苦手ですね」
「なるほど……わたくしももう少し冒険者の皆様方について勉強をする必要がございますわ」
「その方が良いかもしれません。すれ違って得することもないので」
「分かりました」と言ってリドル嬢はもう一度深々と礼をしてから帰っていったので、他のエンブレント家の者達もラシアに丁寧に頭を下げて帰っていった。
「国との交渉をやりきった功績もデカいけど、一番の功績はラシと会話できるようになったことやな。これはかなりデカいで」
「それは確かにあるな」
「ないですが! 二人とも何を言ってるんですか。大げさな」
「いや……そんなんあるねん。今回の遠征でウチはラシがメンバー以外と話してるところを見たことないで?」
「私もないな」
「ワッチもないにゃー」
「私もないですね」
「私も私も!」
このメンバー達は本当に失礼だとラシアは思う。ちゃんと向こうの国王陛下とはちゃんと会話している。
「大丈夫です。問題ありませんって話しましたよ!」
それだけはちゃんと話したし完璧に覚えている。少しの問題はあるかもしれないが依頼はちゃんとこなしたし向こうも笑顔で見送ってくれたはずなので業務上の問題はないはずだ。
……あるけどいけるはず。そう思っていると全員から本当になんとも言えない顔をされた。
「やっぱり何でもそうやけど力持ってるって大事やな。笑い話で済むもんな」
「それはあるな。あと今回のような外交はリレッサに任せておく方が無難だろう。流石はローウェンテニアの姫君というだけのことはあったしな」
「自分のできないことをできる仲間に任せて何が悪いという話になってきますが?」
「おみゃーの場合は会話したくない方向に頑張ってるだけにゃ」
このまま話していてもラシアの負けは決まっているので、ラシアはリレッサに頼んで宿に繋がるポータルを開いてもらった。
「ラシア殿。また数日のうちに行くと思うから、そのときはよろしく頼む」
ラオメにそう頼まれたのでラシアは頷いた。皆に別れを告げてからようやく宿へと帰還した。
そして数日かけてゆっくり疲れを取った後に、ティーガー達が遊びに来たのだった。