ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第32話 王都バルザエイン

 

 長い旅がようやく終わりを迎える。

 

 王都バルザエイン。

 

 この国で最も大きな都市だとノアが教えてくれた。

 とても大きな城門をくぐり、ラシア達は中へと入っていく。

 

 あまりの大きさにラシアもダード達も、初めて来た者は圧倒される。

 

 そして門を渡った所で商人達とはお別れだ。商人達は仕事があり、ラシア達は冒険者ギルドに行かなければならないからだ。

 

「いやー。ラシアさん。貴女はとてもお強い。商会の方から依頼の指名をする事があると思いますので、その時はどうぞよろしくお願いします」

 

 社交辞令かは分からない。ただ馬車に乗せてもらった事もあるので無下にはできない。だからラシアはありがとうございます、とだけ言っておいた。

 

 そしてその商人達を護衛していた者達とも別れてから冒険者ギルドへと向かった。

 

 王都の中は最大の都市というだけあって本当に人が多い。樹海の中で木とこんにちはするよりも多い。

 

 そこら中に人、人、人、人。長い間ほとんど他人を見ていなかったラシアにすれば、本当にしんどい場所だった。

 

 ただ余裕は無いが発見も多かった。ダンジョン都市ルインエルデに比べて、人が多いぶん他の種族も多い。

 

 獣人やエルフはもちろんの事だが、たぶんドワーフと思われる者達や翼の生えた翼人なんかもいた。珍しい所ではリザードマンの様な者達もいる。

 

 本当に広く大きく活気のある都市だなとラシアが思っていると、ようやく目的の建物が見えて来た。

 

 冒険者ギルドだ。

 

 ラシアの感想はルインエルデと比べてだが……デカい!

 

 横にも縦にもデカい! 入っていくと中も広く、受付も細かく分けられている。

 

 黒い石板を切り出したような掲示板は似たような物で、所々に設置してあった。

 

 中にいる冒険者は多すぎて人に見えなくなってきたのでラシアは考えるのをやめた。

 

「ラシアさん。顔色が悪いけど大丈夫ですか?」

 

「いえ。だいじょばないです。人と話すのも苦手ですが……人が多い所に行くと酔うので」

 

「ラシアはよくそれで冒険者やってるな……」

 

 ビエットに心配されダードにラシアは呆れられていると、ようやくノアが受付へとたどりつく。

 

 受付嬢の制服はルインエルデと同じ物なんだーとラシアが考えていると、受付嬢が驚きの声を上げているのが聞こえた。

 

 たぶん死んだと思われていて戻って来たのだ。それは驚かれるだろうなと皆は苦笑する。

 

 そしてしばらくノアと受付嬢の話が続いた後にラシア達は呼ばれた。

 

「皆さん。生還おめでとうございます。……Aランクの方が引率していたとはいえ、良く樹海から帰って来られましたね。ではお疲れの所、申し訳ありませんが皆様のランクを上げるので、登録証をお願いします」

 

 登録証は体に身につけている物なので、誰もブレスレット型のそれを無くしてはいなかった。

 

 登録の更新が終わるまで少し時間があったので話を聞くと、ラシア達と途中まで一緒だった行商は無事で、一度中央都市まで戻り、その時にラシア達が滝壺に落ちて死んだ、行方不明になったと言う事が伝わったらしい。

 

 だから死亡したと思われていたノアが登録証を出し、生きて生還したのでとても驚かれたという感じだ。

 

 ベルエドがモンスターにやられて死亡したというのも行商達が見ていたので、冒険者ギルドが運営する共同墓地に名前が刻まれているそうだ。

 

「おめでとうございます。これで、ラシア様、ダード様、ビエット様、エリエス様の四人はBランク冒険者となります。樹海で倒された魔物の魔石や素材があれば買い取りしますが、どうしますか? 先に診療所に行きますか?」

 

 体に不調な所はないが、ずっと森の中にいたのだ。ギルド側の好意で見てくれるとの話だ。

 

 だから先に数がある魔石や使える素材を出してから行こうという話になった。

 

 素材や魔石に関しては山分けだ。帰って来る時の馬車の中で話し合った事だ。

 

 ラシア一人で倒した、ノアが一人で倒した。

 それでも嘘では無いが目立ちすぎる。

 だから全員で協力して倒したという事にしていた。

 

 実際にビエットが先を歩いてくれないと帰られなかった。ダードがラシアのサポートをし、エリエスが警戒してくれなかったとしても同じだ。

 

 ラシアの役割は倒すだけ。

 

 全員がそれぞれの役割をこなしたから帰って来られたのだ。

 

 誰かが役に立たなかった等は無い。だから皆で分ける。それが一番良い。

 

 日中は襲ってくる魔物は少なかったが、夜はやはり多かった。だからかなりの量の魔石や素材がラシア達のアイテムバッグから出され、受付嬢は応援を呼んで対処にあたっていた。

 

 少し時間がかかりそうなのでその間にラシア達は診療所に向かう。これだけ大きい冒険者ギルドなので建物内にあるそうだ。

 

 ノアが先を歩き案内してくれる。

 

 ラシアは少し心配な事がある。滝壺に落ちた時にノアの体に何かが刺さっていたのだ。引き抜きはして今は元気だが、体内に破片などが残っていたらどうしようと不安だった。

 

 診療所に着くと思ったより人は少ない。怪我なら回復魔法で治るし、体内に破片や何かがあっても取り除いて回復させれば傷は塞がる。だから診療所の待機時間は短いそうだ。

 

 医者であろう男性に魔法をかけられて全員がチェックされていく。ノアにも悪い所がなくラシアはほっとするが……ラシア本人が医者から注意される。

 

「体は健康そのものだが……きみは少しストレスが溜まりすぎているね。そのままだと不調が出るかもしれないから適度に発散する事をオススメするよ」

 

「はい……」

 

 異世界でストレス発散とかどうやるんだろう? とラシアは思う。

 

 皆に苦笑いされながらもう一度、受付へと向かった。

 

 魔石の換金などは終わっており、一人頭、百万セルほどになるそうだ。

 

 結構な金額にラシアも驚き、ダード達も驚くが、それでいい。山分けだ。

 

 ダード達も装備を新調しないと駄目だし、ラシアは言うほどお金に困って無いからだ。

 

 これで王都の冒険者ギルドでやる事は終わりだ。

 

 他の冒険者の邪魔にならない様に端の方に行き、これからの事を話し合う。

 

「ラシア悪いな。装備も買わないと駄目だから助かった」

 

「僕やエリエスはアイテムバッグを購入したりしないと駄目ですし助かりました」

 

「ラシアさん! ありがとうございます!」

 

「いえ。大丈夫ですよ」

 

「冒険者は金欠と仲良くやっていく者だから無駄遣いしないようにね。一応はこれで遠征は終わりだね。ダンジョン都市に戻ってもいいし、王都を拠点にしても良いし。ここのポータルに入れば色々と繋がるからね」

 

 ダード達やノアは一度、ルインエルデに戻るそうだ。行方不明だったので教官や母親に会いに行くとの事だ。

 

「私はお母さんとかおじさんとティアちゃんに会いに戻るけどラシアさんはどうする? 助けてもらったから改めてお礼が言いたいけど……」

 

 冷たく言うつもりは無いが、感謝は一度で十分だとラシアは思う。

 

「私はとりあえずは王都に残ります。住みやすいならここを拠点にしようと考えているので」

 

 ノア達は引き留めない。長い間一緒にいてラシアがどういう性格か分かっているからだ。

 

「わかった。じゃあラシアさんも元気でね。冒険者だからまた会うと思うけど、もう一度だけ言わせて。私を助けてくれてありがとう」

 

 その台詞がティアと重なる。

 

 血は繋がってないのに似てるのは何か面白いなとラシアは笑う。

 

 笑うラシアが珍しいのか、その表情を見てノア達は少し顔を赤くした。

 

「また会いましょう。人が多いので駄目ならルインエルデに戻るかも知れませんし……宿の場所を聞きたいんですが……トイレが綺麗でお風呂がある宿ってどこかありますか?」

 

 ラシアの笑顔に少し見惚れていたノアが話しかけられて慌てながら考える。

 

「えっ……えっと。このギルドを出て二つ目の交差点を右に行った所ね。ちょっと高いけどね」

 

「ありがとうございます。では皆さん。また会いましょう」

 

 別れの挨拶を済ませてラシアは冒険者ギルドを後にする。

 

 そんなラシアを見送りエリエスがぼそっと呟く。

 

「ラシアさんって普段、笑わないし話さないから急に笑うとドキッとしますよね。超絶美人ですし」

 

「わかる。同性だけどちょっとドキドキした」

 

 こういう時は変なことを言うとめんどくさい事になるのでダードとビエットは頷くだけにしておく。

 

「ダードもビエットも先に言っておきますが……ぜったいに釣り合い取れないからラシアさんを狙おうとしない方がいいですよ」

 

「だれもそんな事思ってねーよ!」

 

「はははっ……」

 

「釣り合い取れる人いるのかなー……」

 

 そんな事を話しながら四人はポータルからダンジョン都市へと戻っていった。

 

 皆がそんな事をやっている間にラシアは酒を買って共同墓地へと来ていた。

 

 誰もいない静かな場所だ。黒い石に名前が浮かび上がっているだけ。目的の名前を探すとベルエドの名前が書かれていた。

 

 王都に行ったら酒でも注いでくれと言っていた。

 だから備えられている花の横に酒を置き、ラシアは手を合わせ目を瞑る。

 

 長い時間ではなかった。

 

 ラシアは振り返り歩き始めた。

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