ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第33話 不思議な人

 

 ノアは荷物運びを手伝っている。

 

 死んだと思われた娘が帰ってきて、母親に抱きつかれ泣かれ、父になるおじさんと妹になる女の子にとても喜ばれた。

 

 それはもう一週間も前の話だ。

 

 今は引っ越しを手伝ってとこき使われている。

 

 冒険者は何でも屋に思えるが、危険を伴う何でも屋であって引っ越しを手伝う為にいるわけではないのだ。

 

「お母さん!これどうするの!何年前の物!?」

 

「んー……たぶん。この街に来た時からあったかな~。まだ使えるから置いといて」

 

「じゃあ捨てとくね」

 

「高いからだめー」

 

 こんな調子だから片付かない。何処にやったかは覚えてないが、アイテムとしては覚えているのでノアがゴミだとしても錬金術師の母親からすればゴミではないのだ。

 

 この街に来た時に母が購入した店舗とも、片付けが終わったらお別れだ。

 

 少しさみしい気持ちもあるが、三日前に母が宿屋のおやじさんととうとう再婚したのだ。

 

 この店舗を売り払って宿屋の一階で小さく作った物を販売するそうだ。

 

 宿の方も現在そのつもりで改装を始めているらしい。

 

 気の良いおじさんだとは思うが母とくっついたのは娘のノアでも分からない。

 

 ノアを生んだとは思えないほど若く見えるし、それこそその手の誘いは貴族や商人、上流の人達からも多かった。

 

 母親が良いならノアから言う事はないが……不思議だなとは考える。

 

(元冒険者同士って気が合うのかな?……私もいつか結婚とかする事あるのかな……いや相手もいないしないな)

 

 宿のおじさんもそうだが、冒険者同士でくっつく事はけっこう多い。それが吊り橋効果なのかは分からないが、パーティーを組むにしても命がけなので、気が合うとそのままくっつく。

 

 そんな事を考えていると、何故かラシアの事を思い出した。

 

(ラシアさん。いい匂いしたなー。ちょっとくせ毛の綺麗な髪でさらさらだし……)

 

 ラシアの事を考えていると母親に話しかけられる。

 

「ノアちゃん。もしかして?恋してる?」

 

「ぎょばっ!!」

 

 変な事を考えていた上に変な事を聞かれて、とても驚き変な声をあげてしまう。

 

「漁場?」

 

「違うから!お母さんが変な事いうから!」

 

「えー。変な事言って無いよ。ノアちゃん可愛いし年頃だからそろそろいい人見つかったのかなーって思っただけ。引率……遭難して王都に行ったでしょ?その時に可愛い後輩でもいたのかなって?」

 

「年下の男の子は二人いたけど……そういうのはないかな……」

 

 ベルエドの事は思い出すと悲しくなる。

 

 冒険者は死者に引っ張られないようにする。よほど親しい者以外は思い出さないのが鉄則だ。

 

 後を追っても先に行った者が悲しむだけだから。

 

(でもそれはそれで悲しいから次に王都に行ったら花でも添えておこう)

 

「でも、ノアちゃん。そういう子達を見て可愛いと思わないの?樹海から帰って来られたなら将来有望じゃない?」

 

 うーん……と腕を組み、ノアはダードとビエットの事を考える。

 

 ダードは熱い感じの男の子で、ビエットは冷静に周りが見える理性的な男の子。このまま行けば確実にイケメンになると思われるのだが……

 

 二人ともラシアにホの字だ。

 

 本人達は否定していたが見る目はまさにそれ。ダードは胸をよく見てるしビエットはお尻を見ている。

 

 当の本人は見られているとか気づいてないが……

 

(あーでも……ラシアさんが誰かとくっつくのは、なんか嫌だなー)

 

「ノアちゃん……恋してるよね?」

 

「……してません!」

 

 このまま話を続けると、めんどくさい事になるのは間違いないのでノアは話を変える。

 

「お母さん。割と真面目な話なんだけど、魔法の威力とか魔力とかその辺の能力が劇的に上がる装備って多いの?話には聞いた事もあるし装備した事もあるけど、こう目に見えて変わる様なの」

 

 急に話の方向を変えられて母親は戸惑うが、そっちの方が本職だ。ノアの目が本気だったので真面目に答える。

 

「あるよー。上級ダンジョン……んー超級に出てくるモンスターの素材とかで作った物なら変わるかな?お母さんは上級までだったけど……それでも身につけている時と身につけていない時はわかったかな?ノアちゃんの装備もそんな感じじゃない?」

 

「こう……常に魔力が回復し続けて、魔法の威力が倍ぐらい上がって、怪我とかも回復させながら、身体能力も向上するみたいな感じの装備ってあるの?」

 

「えっ?うーん……お母さんもそこまで武具には詳しくないけど、それは無いんじゃないかなー?あっ。でも効果は失われてるけど城に保管されてる国宝の鎧とかそんな感じの効果があったはずだよ。それを身につければ凡人でも英雄になれるって伝説あったし」

 

 ノアは腕を組み唸りながら考える。ラシアに借りたあのローブだ。

 

 装飾も見事な物ではあったが……そんな事はどうでも良い。

 

 あのローブは普通の装備ではない。物によっては魔力が回復しやすくなる物もあるし魔法の威力が上がる物も確かにある。

 

 だがあって一つか二つだ。しかも性能が良い物ほど値段も高い。装備を作る時に使用する魔物素材が高いからだ。

 

 あのローブは効果が幾つもついていた。枝にひっかけて手を切った時があったがそれもすぐに治った。普段なら素早く感じるモンスターの動きもゆっくりに見えた事から身体の能力も上がっていたのだろう。

 

 ラシアを疑う訳ではないが、何処かの国の宝とでもいった方が正しいような装備だった。

 

 そんな装備を持っていて、どこにでもいるウィザードに貸し与えるラシアは何者だろうとノアは思う。

 

(悪い人ではないのは間違いないけど……不思議な人だ。絶対に高いナイフをダード君とビエット君にあげてたし)

 

 そしてローブの事を思い出すと……ラシアが横に寝ていた時の事を思いだし、また顔を赤くする。

 

「ノアちゃん……」

 

「何も言って無いから!」

 

「そうじゃなくて……そういう装備に心当たりあったの?」

 

 誤魔化す誤魔化せないではなくどう説明して良いのかが分からないのでノアは、樹海で遭難したときにラシアから借りたローブの効果が凄かったとだけ伝えた。

 

「そっかー。噂のラシアさんかー。私も一度会ってるけど、ちゃんとお話したいなー」

 

 母の台詞にノアは金色であかい髪の人を思い出す。

 

 戦闘においては他の追従を許さない鬼神の強さも誇る。私達を樹海に落としたバスタースワローもラシアが倒したと言っていた。

 

 自身が目覚めて、一度夜にノアでは倒せない魔物が群れ襲ってきた事があったが、ラシアは簡単に倒した。ハンマーで殴るだけならまだ理解できるが、握り潰したり引きちぎったりと純粋な力業だ。

 

 それだけ強いのに本当に用事が無い時以外は人との会話を避ける。自分に自信がないようにだ。

 

 ノアも仲良くしたいと思ってはいるが中々に難しい。

 

「ラシアさん。人と話すの嫌いみたいだから無理だと思うよ」

 

「でも娘を助けて貰ってるからちゃんとお礼言いたいのよねー。ティアちゃんは良く話す面白いお姉さんっていってたよ?」

 

「えっ?よく話す?あのラシアさんが?どうやって…………いや。確かに初めて会った時はティアちゃんと話してた気がする……なんで!?」

 

 確かに初めて会った時はかなり喋っていた。たぶん樹海にいる時よりも多かった気がする。頑張って異常状態の説明をしていた記憶がある。

 

 そんな事を思い出すと妹になったティアに嫉妬心が少し湧いてくる。

 

「ぐあっ……ティアちゃん。どうやってラシアさんと仲良くなったんだろ。王都が拠点になると人が多すぎて会いにくい……」

 

「んー……それだけ人が苦手ならこっちに戻ってくるんじゃない?王都って人多いし。それにお風呂とかトイレにこだわりがあるみたいって聞いたけど、そういう所ってかなり高いからね。一泊で十万セルとかすぐに飛ぶから……かなりの高位冒険者じゃないと無理かなー」

 

「あー……たしかに。私もそうだけどクランとか入って皆で家借りたりするもんね」

 

「そういう事。強いかもしれないけどBランクじゃまだ稼ぎに限界があるから、一人だと王都を拠点にするのは無理かなーって思う。割高だしね~。今度出会ったらノアちゃんが入ってるクランにラシアさん誘ってみたら?一人じゃ大変だしね」

 

 あの強さだから誰も反対する人はいないが……どう考えてもラシアが頭を縦に振るのが想像できない。

 

 本当に嫌そうに「絶対に嫌です」と言う所しか想像できないノアは大きくため息をついた。

 

「ノアちゃん…………難しいって顔してるねー」

 

「断られる未来しか想像できない……」

 

「ノアちゃん……嫌われる事したの?」

 

「してないよ!」

 

 そんな事を話していると父親になったおじさんと妹になったティアがやってきた。

 

「お前ら……いつまでやってんだ。片付けろ」

 

「お姉ちゃん!おばさん!手伝いにきたよ!」

 

「「あっ……」」

 

 それから家族になった四人で片付けの続きが始まった。

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