ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第35話 実験の準備

 

 宿の確保にも成功し生活の基盤ができたので、ラシアは中級ダンジョンに来ている。

 

 中級ダンジョンはダンジョンの中で一番、種類も数も多い。切風のダンジョンや潮騒のダンジョンと、名前に由来した特性がある。

 

 そんな中でラシアは、ゲームなら中級になったばかりの者がよく来る鉱山のダンジョンと呼ばれる場所に来ている。

 

 ここと繋がっていなかったらどうしようかと思ったが、ちゃんと王都のポータルと繋がっており、ルインエルデとも繋がっていた。

 

「……なぜここが人気ないのか。いや、人いなくていいんだけどさ」

 

 このダンジョンに行こうとしたら、いつもの受付嬢に少し驚かれた。強さ的にはちゃんと苗木のダンジョンの上になるのだが……暗いし狭いしイマイチ人気がないとの事だった。

 

 ゲームならこのダンジョンはお金に困った時に来る金策ダンジョンなのだ。

 

 魔石の他にも錬金術師が錬金する時に使うアイテムを多く落とすし、武具の強化に使うアイテムも落とす。

 

 この世界だとどうかは分からないが、ゲームだとある程度まで武器や防具を強化すると壊れる確率が発生するので、強化するアイテムはいつでも欲しいし、いつでも売れる物だった。

 

 その辺りの実験と金策を含めてラシアは鉱山のダンジョンに来ている。

 

 このダンジョンは五階まであり、五階がボスだが踏破するのが目的ではないので、襲ってくるモンスターがいない一階と二階で出会ったら倒す感じだ。

 

 確かに道は坑道のように狭く暗いが、迷わないように正しい道にはランタンがついているので迷わない。

 

 歩いていると一匹のモンスターがフラフラと歩いている。このダンジョンの代名詞でもあるスカルピッケルだ。

 

 骨に乾いた皮がくっついて、ヘルメットとツルハシを持ったモンスターだ。ラシアを見ても襲ってくる事はなく、近くの壁にツルハシを叩きつけるだけ。

 

「……働きながら死んだ鉱夫って感じかな。現代だとスカルパソコンとかになるんだろうか?」

 

 初めて見た時はかなりビビったが、それでも慣れてくるものでラシアはエルダーハンマーを叩きつけ、一撃で葬り去る。

 

 スカルピッケルが塵になると魔石と銅色に輝く塊が残った。これがラシアが狙っているアイテムだ。

 

 ブロン鋼、シルバ鋼、ゴルディ鋼、リハル鋼、ヒヒイロ鋼。

 

 この五つが武器を強化するアイテムで、武器は十段階まで強化できる。ブロン鋼は二まで、次はシルバ鋼が四まで、ゴルディ鋼が六まで強化できるといった具合だ。

 

 このスカルピッケルはリハル鋼を落とす確率は1%だが、数も多いので狩っていればそのうち落ちる感じだ。

 

 倒しては探してまた倒す。すると次は別のモンスターが現れる。

 

 虫型のモンスターで鉱石コロガシというモンスターだ。こいつも襲ってくるモンスターではなく、でっかいフンコロガシだ。

 

 ウ○コの代わりに鉱石を固めた物を運んでいるので、倒すと鉱石類がランダムで手に入る。

 

 スカルピッケルと同じ様にハンマーで倒すと魔石と転がしている部分が残り、その部分を割るとアイテムが出てくる。

 

「おー灰結晶か。錬金できるなら石鹸つくれるな。粘液ダンジョンとか泥沼ダンジョン行ったら、汚れとかいう状態異常になるからいるんだよな」

 

 人見知りで人のいない場所だと独り言が出てしまう。

 

 このダンジョンの一層と二層に出てくるのは三種だけ。スカルピッケルと鉱石コロガシと、石の塊が飛んでいるシディアンだけで、どれも似たような物を落としお金になる。

 

 攻撃もしてこない。見つけたら殴って倒すだけだ。モンスターといえども命なので作業とは言いたくないが……そんな繰り返しの中でラシアは王都で売っていた物を思い出す。

 

 この世界はゲームではなくたぶん現実なので仕方ないが……ゲームの中にはない物も売っているし、逆にゲームの中であった物が無かったりする。

 

 こっちに戻ってからおやっさんに聞いたが……さっき言っていた石鹸がそうだ。

 

 この世界にも石鹸はあるが……作り方は現実に近い作り方だ。詳しくは知らないが、灰汁を作って油をぶち込んで、混ぜて加熱したらできるみたいな事をおやっさんは言っていた。

 

 ラシアは一般人なので石鹸の作り方は知らない。

 

 だがゲームの錬金で作れる石鹸の作り方は覚えている。アルケミストが錬金釜に灰結晶+きれいな水+油脂を入れてスキルの精錬をしたらできあがり。

 

 これで『汚れ』の異常状態を落とすアイテム『石鹸』ができるのだ。

 

 汚れの異常状態になると回復アイテムが使えなくなり、裂傷とか毒状態が発生するので必須アイテムなのだが……王都では全く見かけなかった。

 

 それで気になって色々と見て回ったが……見かけないアイテムがかなり多い。

 

 死亡状態から復活するアイテムは仕方ないとして、石鹸や階段がランダムなダンジョンを見つける正路丸とか、食べたらステータスに補正がかかる食事アイテムの類いを全く見かけなかった。

 

 今は中級だから全然大丈夫なのだが……上級、超級とか行くと絶対に必要な物なので、売ってないなら自分で作らないと駄目になってくるからだ。

 

 金策しつつその辺りの実験もできればいいなーというのが今回の目的だった。

 

 あとは武器の強化。6までは変化がないのだが、リハル鋼やヒヒイロ鋼などを使い+7に入ると武器が光り始める。

 

 その辺から壊れるのでそこで止めてると言えばそうかもしれないが……王都にいた上位職の人達の装備は光っていなかったので、その辺りも要検証。

 

 ラシアの聖銀鋼の鎧とメテオドライブハンマーは当たったばかりなのでまだ未強化。プラティーとかは+10なのでこんな暗いところで出すと松明代わりにもなる。

 

「誰かいたらシャレにならないから不用意には出せないけど……おっ!リハル鋼。やったぜ」

 

 ラシアの場合はクリティカル特化型なので運の要素にもかなりステータスを振ってある。そのためドロップアイテムにも補正が少しかかっている。この世界ではどういう風に適用されているのかは不明だが。

 

 そしてゲーム中に存在しなくてこの世界特有のアイテムもある。

 

 それがダンジョン時計と呼ばれる物で、懐中時計の様に蓋を開けると外の時間が分かる代物だ。

 

 基本的にダンジョンは時間が変わらず、外とは切り離された空間だ。だから外の時間が分からない。

 

 それを解決するのがダンジョン時計。

 

 太陽が昇っている内は黄色い色に染まっており、夜になると紺色になっていく。

 

 今ラシアが見ている色は紺色になり始めているので、外の時間は夕方と分かる代物だ。

 

「……嫌だけどこんな便利なアイテムあるならもっと街を見た方がいいかもしれない……でもなーそれはそれで命の危険があるしなー」

 

 今日の狩りはここまで。しばらくはこのダンジョンに通うつもりなのでダンジョンに泊まる必要もなく帰還する。

 

 結構倒したし色々出たからいくらになるかなーとウキウキでラシアは帰還する。

 

 だが……そうは問屋が卸さない。

 

 戻っていつもの受付嬢に査定してもらうと、まともな金額になったのは魔石ぐらいだった。

 

 強化に使う物は売るつもりがないので出さなかったが……錬金のアイテムに使える物ばかりだったのでラシアは驚いた。

 

「えっ……少なくないですか?」

 

「いえ。炭坑のダンジョンならこんな物ですよ?……ブロン鋼やシルバ鋼なら買い取りますが、ラシアさんが持って来た物はギルドとしては用途不明の素材として扱っていますので」

 

「じゃあすみませんけど魔石だけお願いできますか?」

 

「分かりました。少々お待ちください」

 

 その間にラシアは考える。いつもの受付嬢が嘘を言っているとは思わないので……思う事は二つ。錬金術師が個人で買っているか……スキルと同じでこの世界では発見されていないとかそういうアイテムだ。

 

 回復薬とかはゲームと同じで作り方も同じ。だから他のアイテムもあるが発見されていないか、秘匿されているとかそんなものだ。

 

(おのれ……錬金術師ども!……って思ったけど、自分で作るか人雇えば大金持ちになれるんじゃね?)

 

 と、思ったがお金も一つの力だ。過ぎた力で大公の娘を助けて命を狙われるのに、その上に金持ちになってさらに狙われたら命が幾つあっても足りないなとラシアは思った。

 

「まー。自分で使う分だけでいいか」

 

「ん?なにがですか?お待たせしました。本日は七万セルになります」

 

「ありがとうございます。こう、大金持ちになれそうなんですが……なったとしてもやりたい事と違うなと思いまして」

 

「なるほど。樹海から帰還できる実力があるんですから健全に行くのが良いと思いますよ。正直、Sやそれより上のランクになると恐ろしい額のお金が動きますので、目的はしっかり見た方がよいかと」

 

 さすが自身が話す人間TOP3に入り込むだけの受付嬢だけあって良いこと言うなとラシアは思う。

 

 ラシアの目的は帰りたいだけで、お金持ちになりたい訳ではないからだ。

 

「……たしかにそうですよね。今、色々実験してるので面白いものができたら持って来ます」

 

「はい。危ない事だけはしないでくださいね。それと……ラシアさんはBランクになったので冒険者達が集まって作る小規模なギルド、クランという物に加入できます。かなりの数からお誘いが来ていますがどうしますか?」

 

「何が悲しくて知らない奴と話さないといけないのか……全部断っておいてください」

 

「いつもどおりですね。ノアさんの所もありますが?」

 

「ノアさんは良くてもノアさんの知り合いは私の知らない人なのでいらないです」

 

「……こう樹海に落ちて大変だったと聞きますが、変わってないので安心しました」

 

「過去と他人は変わらないのでそんなもんですよ」

 

 今日は少し空いていたので二人はしばらくそんな感じで雑談を楽しんだ。

 

 ……

 

 …………

 

「先輩……さっきの人、ラシアさんでしたっけ?」

 

「そうだけど……何かあったの?」

 

「いえ、あれだけ喋ってるの初めて見たので……こう私達、ギルド職員内で明日は雨では?と話題になっているので……」

 

「私も似たような所あるから話しやすいんじゃないかしら?一度話しかけてみたら?」

 

「試してみようとする主に男性職員は多いんですけど……話す前に逃げられるそうで……」

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