ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第43話 ボス見学

 

 ラシアの本日の予定は鉱山ダンジョンだ。

 

 金策になるし、錬金や武具強化の材料が取れるからだ。沼地のダンジョンの実験で汚れ状態を治すのに石鹸は必要無かったが、宿で使う分には好評だ。

 

 汚れもよく落ちてきれいになるとの事なので幾つあってもいいだろう。

 

 高級石鹸に関してはおやっさんが手を怪我した時に洗ったら怪我が治ったので、変な奴を見る目で見られたが……。

 

 今回は討伐では無いが、時間湧きのボスを見に行くので準備は念入りだ。アイテムの効果も魔法の使用もモンスターの行動も違う。だからボスモンスターも確実に違いがあるはずだ。

 

 倒す必要はないが、ボスを狙っている人がいて遠目からでもそれを確認できたらいいといった感じだ。

 

 ただ、近くに人の気配が無いなら倒す。レアアイテムとか欲しいからだ。

 

 準備を終えて部屋を出て一階へと降りると、用事があった様でセレットが待っていた。

 

「ラシアちゃーん。ダンジョンに行く前で悪いけど少しお話いい? もしかしたら数日は帰って来ないでしょ?」

 

「大丈夫ですよ」と言って椅子に座り、ラシアはセレットの話を聞く。

 

 少し難しい話で、錬金術師の間では新しく作られた物には著作権の加減とかがあるので、レシピとかそういうのをギルドに提出して登録しておくとの事だ。

 

 秘匿する物も多いが、登録しておくと他の冒険者がそのアイテムを作ろうとしたら一定額をギルドに払って制作権を買うとの事だ。

 

 そしてその一割が登録した錬金術師に入ってくるらしい。

 

 一度登録しておくとギルドが守ってくれるので、錬金して作った物を市場で売ったりするのは制作権を買った者だけになる。

 

 制作権は月に一度払うだけなので、続けて払うなら月額の料金になり売れ行きで料金も上がるとのことだ。

 

「そういう訳でラシアちゃんの名前で登録していい? レシピが簡単だから弟子達の練習にもちょうど良いからねー」

 

 どうも石鹸はあるが、錬金で作る石鹸と高級石鹸のレシピは無かった様なので、使い勝手がよく便利だから他の人が登録する前に確保したいとの事だ。

 

 登録するのは良いとは思うが……自分が見つけたわけでも無く攻略サイトに載ってた知識で金儲けはしたくないのが本音だ。

 

 そもそもゲームなら店に売ってた訳で……有名な錬金術師のセレットが言うのだから、それなりに売れるだろう。

 

 ラシアは目立つ事は避けたいし、他人の知識で俺TUEEEをしたい訳でもないので断った。ただ条件付きなら登録していいと付け加える。

 

「私ではなくセレットさんの名前で登録するならいいですよ。私は富も名声も求めていないので」

 

「うーん……でも結構な金額になると思うよ?って思ったけど……ラシアちゃんならすぐに稼げるかー」

 

「こないだの話ですが、名前が出るのは避けたいので……それに足がつかないなら売れる物は割とあったりするので……」

 

 そういえば娘のノアが凄まじい性能のローブを持っていたと言っていたのをセレットは思い出し、少し悩んだ後でその条件を呑む事にした。

 

「じゃあ、私の名前で登録しとくから石鹸を錬金したい時は私か弟子に声かけてねー。それなら制作権を買わなくていいからー。個人でやってもバレないけどモラルの問題になってくるからね」

 

「分かりました」とラシアは返事をし、弟子の練習に使うならもっと簡単な物があったと思い出す。

 

 灰結晶と乾燥ハーブでできる消臭玉というアイテムだ。乾燥ハーブはその辺で売ってるし、灰結晶は今から行く鉱山ダンジョンで手に入る。

 

 効果は匂いが消えるだけ。鼻の良いモンスターは遠くからでもプレイヤーを襲ってくる。それをさせないようにするためだけのアイテムだ。

 

 終盤ならまったく必要のなくなるアイテムだ。レベル上げが鬼畜なのでモンスターを避けるなんてもってのほか、モンスターウェルカムだからだ。

 

 そして大事な事を思いつく。これをトイレに入れたらどうなるのかという事だ。

 

 アイテムバッグの中からアイテムを取り出し、セレットに頼んで錬金してもらう。

 

 このアイテムもこの世界に無かったようだが……それは後でいい。

 

 ラシアはトイレに行って蓋を開けて消臭玉を投入する。

 

 効果は劇的だった。

 

「――――――――――――――――トイレの匂いが……

                        消えた……!」

 

 ラシアは異世界に来てこれが一番嬉しかった事かも知れないと、手を高く天に突き上げ喜んだ。

 

 そして効果がどれだけ持続するかは分からないので、セレットに材料を渡して幾つか作って頼み事をする。

 

「セレットさん。すみませんが匂いが出始めたらこの消臭玉を入れてもらえますか? 私もトイレに使うのは初めてなので」

 

「分かったけど……ラシアちゃんってそんなに笑えたのねー」

 

「ふふっ。良いことあれば笑えますよ。消臭玉も登録するのでしたらセレットさんの名前でお願いします。こっちなら材料も少ないのでお弟子さんの練習向きだと思うので」

 

「では、セレットさん。いってきまーす」

 

 手を元気よく振ってラシアは冒険者ギルドへと向かった。

 

 そんなラシアを見てセレットは思う。ラシアが毎日あんな感じで機嫌良かったら、落ちない男はいないだろうなーと……

 

「ノアちゃんが恋するのも分かるわね。ラシアちゃん美人系で笑うと可愛いは反則だと思うなー」

 

 そんな事を考えていると誰かがトイレに入った様で、驚いた後に走ってやってきた。

 

「お母さん!トイレの匂いがしないよ!」

 

「ん? ラシアちゃんのおかげー」

 

 母と娘がそんな話をしている間に、ラシアは冒険者ギルドへとやってくる。いつもの受付嬢に笑っている事を驚かれながら手続きをこなす。

 

「そういえば、中級から時間湧きのボスが出ると思うんですが、その辺の情報ってあったりしますか?」

 

「時間湧き……あぁ月齢の王ですか。ありますよ。と言うよりも倒したクランが魔石とかアイテムを販売して、そこから逆算してそろそろ出るかな? ぐらいになりますけど」

 

「ちょっと鉱山のダンジョンにトロッコVを見にいこうと思うので情報あります?」

 

 見にいくって観光じゃないんですからと小さくため息をついた後に、受付の奥へと入っていった。

 

 しばらく待っているとすぐに戻って来て「ここ最近は倒された形跡がありません」と言った。

 

「ですからたぶんいると思いますよ。クランによっては魔石とか素材をずらして売って月齢の王を独り占めする所も多いですが、鉱山のダンジョンはあまり人気ではないのでいると思いますよ」

 

「なるほど。じゃあちょっと見に行ってきます」

 

「ラシアさんなら大丈夫と思いますが……お気をつけて」

 

 元気よくりょーかいと言った後に、そういえばこの前に上手くいったらプレゼントしますと言ったのを思い出したので、アイテムバッグの中から高級石鹸を取り出しそれを小さな袋に入れて渡した。

 

「これよかったら使ってみてください。匂いのついてる石鹸で試供品なので手とか洗って使ってみてください。でも知り合いの錬金術師がその内登録に来ると言っていたので内緒で使ってくださいね」

 

「わかりました。個人で使ってみて感想をラシアさんに伝えるようにします」

 

「はい。それでお願いします。では行ってきまーす!」

 

 先ほどと同じ様に手を振ってご機嫌でダンジョンに向かうラシアを受付嬢が眺めていると、横から後輩に話しかけられる。

 

「……今日のラシアさん。すっごい機嫌良さそうでしたね。あんなに笑ってる所初めて見ましたよ」

 

「私も初めて見たわね」

 

「なんか良いことあったんですかねー。おっ?男共が魅了されてら」

 

 後輩が言ったようにラシアが通った後は初級冒険者達が顔を赤くしていた。

 

「女性冒険者も赤くなってるから男女問わずでしょうね」

 

 そんな事を言われている間にラシアはポータルを抜けて鉱山のダンジョンにたどり着く。

 

 相変わらず人の気配が全くしないなと呆れるが、いない方が良いので片っ端からスカルピッケルや鉱石コロガシを狩っていく。

 

 石鹸も重要だが消臭玉の方が遙かに重要だからだ。

 

 目的のトロッコVだが……サイズ的に考えてバスタースワロー並みにでかいので、この狭い鉱山のダンジョンの一階や二階にはいないだろうなーとラシアは考える。

 

 三階からは拓けた場所が幾つも出てくるので、三階、四階の何処かにいるだろうと考えダンジョンを進んで行った。

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