ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第45話 トロッコファイブ!

 

「熱き血潮のー彼方からー。五人の戦士がやってくるー♪。ピッケルレンジャー!ゴーゴーゴー。トロッコファイブー!ウォウゥウオー……」

 

 時間湧きのボスモンスターとにらみ合う中でラシアは歌っていた。

 

「……いや。何か反応しろよ。お前らが実装された時にCMで流れた歌だぞ」

 

 こういうネタ的なモンスターもいるのは、トロッコVのおかげで分かったが、元の世界とのつながりはあるのだろうかとラシアは考える。

 

 体の構造……作りにはゲームに出てくるゴーレムに似ている場所が見受けられるが、どう見ても戦隊物のロボの配色なのでそういったつながりが気になる。

 

 ゲームを元にこの世界が作られたのか、この世界を元にゲームが作られたのか? とは思うが、可能性は無限にあるんだろうなとラシアは考える。

 

 目の前にある事が正解。他の可能性は考えるだけ無駄。全てを否定するのは不可能だからだ。

 

「もしかしたら……元の体は死んでて神様のいたずらで無限にある世界からゲームに似た世界に転生させてもらったって可能性もあるんだよな……もしくは寝てる時に見てる夢とか……実はこっちが本物の世界で元いた世界が夢って事もねって話もある」

 

 そして元の世界の温かいご飯とお布団やゲームを思い出し、いつものおうち帰りたいと呟いた後に相棒の名前を叫ぶ。

 

「相手はトロッコV!こい!プラティディオンハンマァーーー!」

 

『おう!知っているボスとは言え、ここは異世界だ!油断するなよ相棒!』(幻聴)

 

 辺りを照らす様に白く輝く巨大なハンマーが現れ、ラシアは相棒を強く握る。

 

 トロッコVがラシアに向かって強大な拳を力強く叩きつけようとするが、ラシアは簡単にそれを打ち返す。

 

 その衝撃でラシアより遙かに大きいトロッコVだが、簡単に吹き飛ばされ尻餅をつく。

 

 今の攻撃で何となく分かったのは、いつも着ている軽装とエルダーハンマーではトロッコVを倒すのは無理だという事だ。

 

 ゲームだと時間湧きのボスモンスターなので、レベルが似たような相手でも攻撃力やステータスは遙かに高い。それはこの世界でも同じ様で、レベルだけならバスタースワローやキッチョウよりは弱いが強い。

 

 今の攻撃も、軽装でまともに食らえばかなりのダメージを負うはずだ。戦うとなったら倒す。

 

 加減して時間をかけて倒す意味などない。誰かに一人で戦っている所を見られるなどもってのほかだ。

 

 ラシアは即座にトロッコVに飛び乗り、巨大な白く銀色に輝くハンマーを振り下ろす。

 

 坑道の奥底まで爆発の様な打撃音が鳴り響く。

 

「固い!」

 

 ラシアの一撃の重さは相当な物で、聖騎士達の攻撃で傷がついていたか分からないトロッコVの装甲も簡単にひしゃげ、いびつな形へと変わっていく。

 

 ロボ相手に痛みがあるのか倒される恐怖があるのかは分からないが、左腕辺りが光った後に巨大な盾を呼び出してラシアの攻撃を防いだ。

 

 そしてそのまま盾で殴る様にラシアを吹き飛ばし立ち上がった。

 

「時間湧きのボスモンスターだけあってマジで固いな。HPもあるならアホほど多いし……」

 

 ラシアに殴られて大きく穴の空いた盾を見たあとに、今度は右手が光り始める。そして大きな剣が現れた。

 

「……いやこの坑道でそれ振ったら駄目では?」

 

 モンスターがそんな事を気にする事はない。大きく剣を振りかぶるとヒーローにでもなったつもりだろうか、ラシアめがけて振り下ろす。

 

 躱すことは可能だが……周りはひどい事になり始める。

 

 岩は吹き飛びそこら中で落石が発生する。

 

 当たればたぶんひどい事になるが、鎧の性能のおかげで身体能力もかなり上昇しているので攻撃を見切るのは簡単だ。

 

 いくらボスモンスターやラシアと言えども、攻撃が石や壁に当たれば明確に弱くなるという事だ。これはメリットデメリットになる。阻害されれば100%の力が出ない。

 

 だがラシアがたまにやってるように飛ばした小石でダメージを与える事もできる。

 

 ゲームではできなかった事もできるし、逆にゲームでできた事もできないといった感じだ。

 

 現実でできる事にゲームの設定がのってると考えた方がいいなとラシアは思う。

 

 だからできる事は増える。

 

 モンスターの攻撃にあわせてカウンターを狙えば簡単にダメージが増す。

 

 ラシアに攻撃をあわせられたトロッコVは簡単に転がされ、殴られた場所は大きく凹んだ。

 

 しかもその部分は関節部だったので凹んだ事で関節が曲がらなくなり、立つのに少し手間取っていた。

 

 時間をかけても良い事はないのでラシアはここが決着のチャンスだと考える。

 

『相棒!今がチャンスだ!これで決めろ!』(幻聴)

 

「おっしゃっーーーーーーーー!」

 

「シュトルクトゥーア!オーバーーリリーヴ!!」

 

 ラシアのあかい髪は舞い上がり、目は命の輝きを増す。

 

「ギガンテックハンド!!」

 

 ラシアの細くきれいな腕は体よりも太くなり、鎧もギチギチと音を上げ始める。

 

 だが、トロッコVも意地を見せる。立てないながらもラシアに向かって力の限り剣を投げつける。

 

 ドゴン!鈍い音が坑道内に響くが……ラシアにダメージはない。簡単にその強大な剣を片手で受け止めたからだ。

 

 そしてそのまま力任せに握り潰す。

 

「いくぞ相棒!サンライトコンタクト!!」

 

『おう!!』(幻聴)

 

 暗い静かな鉱山だったが太陽が出現したかのような光に包まれ、その光はラシアのプラティディオンハンマーを磨き上げる。

 

「ステイク……パルス……エシュピー……はぁぁぁぁぁぁ! コル・クール・パル!」

 

 太陽の光の中に透明な杭が現れ、それはトロッコVを指定する。

 

 ギルドの医者が言っていた。ストレスを発散した方が良いと。

 

 だからラシアは力の限り叫ぶ。

 

 ストレス発散と鬱憤を込めて!

 

「トロッコVよ! 太陽に沈めぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 太陽の輝きを思わせる巨大なハンマーが振り下ろされ、透明な杭がトロッコVに打ち込まれる。

 

 全てが光に包まれる。

 

 そしてゆっくりと溶け始める。そこに太陽が出現したかの様にだ。

 

 静かできれいなのはそこまでだ。

 

 次の瞬間全てがはじけた。音が音を吹き飛ばす様な爆発音が発生し全てを吹き飛ばした。

 

 ……

 …………

 

 目の前の大惨事から目をそらす様にラシアは考えていた。

 

 色々とおかしい。調子に乗ったのは自分だが……使った技の火力がおかしい事だ。ゲームでもトロッコVなら倒せたが瞬殺というのは難しいので……といった感じだ。

 

 足下にはラシアの攻撃に耐えきれず崩落し、古代っぽい感じの遺跡が見えている。トロッコVはほぼ蒸発し、いない。

 

 だが……どういう訳かアイテムと魔石は残っている。ゲームと同じドロップアイテムで見た目が変わる鉱山ヘルメットと、まったく使い道のないレアアイテム。壊れていない魔導エンジンだ。

 

 こっちは主に換金アイテム。0,05%とかいうふざけた確率なのに出たところでただの換金アイテム。

 

 ソフトボールぐらいの球体で幾何学模様が光ってるだけ。売っても足がついたら嫌なので、魔導エンジンはティアに、鉱山ヘルメットはおやっさんへのお土産だ。

 

 ダンジョン時計を確認する。まだ昼前だ。

 

 誰も来ないとは思うが……このまま放っておいても駄目な感じはする。ラシアがソロでボスを倒したというのは避けたいが……時間湧きを逆算されたら将来的にバレるかも知れない。

 

 だから考える。所々に底も見えないほど深い穴が見える。辺りは崩落しまくってる。色々溶けてる。

 

 下にある遺跡も気になるので……報告だ。ダンジョンは一日経てば元に戻るからだ。

 

 大きな発見があれば多少の嘘は誤魔化されると考えて、ラシアは聖騎士達と同じ様に帰還石を取り出して使用する。

 

 光がラシアを包んだあとにポータルで戻ってくると同じ場所に戻され、ギルド内だ。

 

 ここからがラシアの腕の見せ所だ。慌てていつもの受付嬢の所に行って事を伝える。

 

 聖騎士達がトロッコVと戦っていた事、倒せなくて撤退した事、その後で自分が襲われたが、幸運な事に巨大な岩の崩落があってトロッコVがそれに潰された事。

 

 それで……爆発が起きて鉱山のダンジョンの四階に謎の遺跡が現れた事。トロッコVから魔石は回収したが、足下が重みに耐えきれず他は深い穴に落ちていった事。

 

 あとは信じてもらう為にトロッコVの魔石を取り出して心の中で謝る。

 

 まったく自慢にならないしあまり使わないが……ラシアは嘘が上手い。命と生活がかかっているならなおさらだ。

 

 それからの行動は速かった。トロッコVの魔石を見せた事で信憑性が高まり、一時間もしない内にギルドにいた高ランクに依頼が出され調査が決定した。

 

 ラシアも協力を申し出て、すぐに鉱山のダンジョンの四階へと向かい目的の場所へと向かった。

 

「こりゃ……すげーな」

 

 あまりの惨事に高ランク冒険者は言葉をなくすが……ダンジョンが作り直されるまでの時間は少ないので、すぐに遺跡の調査が始まる。

 

 ラシアの仕事はここまで。一人で戻る事を心配されたが、逃げるのは得意だと言ってすぐに走ってその場から逃げた。

 

 ギルド内はバタバタしていたので混乱に乗じてラシアは宿に戻った。

 

「後は……天に祈るだけか……上手くいってくれよー」

 

 と言っていると調理場の奥からおやっさんが現れた。

 

「お前……目立ちたいのか目立ちたくないのかどっちかにしろ。セレットも呼び出されてたぞ」

 

「ぐっ……調子に乗ったのは間違いないんですが、あそこまで破壊できるとは……思わなかったので……」

 

「何やらかしたのかはその内入ってくるから聞かんが……」

 

「しばらく必殺技は封印したほうが良さそうっすわ……あっそうそうおやっさんのお土産」

 

 そう言ってラシアは先ほどのドロップアイテムをおやっさんに渡した。

 

「なんだこれ?」

 

「鉱山ヘルメット。しらない?」

 

 おやっさんもボスモンスターのドロップアイテムというのは知らなかったみたいでその話をしようとすると、ティアが元気よく二階から降りてきた。

 

「ラシアさんおかえり!おとうさんが何か被ってるけど似合ってる!」

 

 厳つい顔に鉱山ヘルメットだからやり手の鉱夫みたいで確かに似合ってると思いながら、今度はティアにお土産を渡す。

 

「はい。ティアちゃんお土産。なんか浮いてて光ってるから部屋のオブジェクトに」

 

「なんか光ってる!ラシアさんこれもらっていいの!?」

 

「爆発するとか聞かないし浮いてて光ってるだけだからいいよー……でもあんまり人には見せない方が良いかも」

 

「わかった!ラシアさんありがとう飾ってくる!」

 

 おやっさんは魔導エンジンの事も知らない様子だったのでラシアに軽く尋ねる。

 

「なんだあれ?」

 

「私も詳しくは知らないっすね。危険な物では無いはずです」

 

「お前な……まぁいいか。ヘルメットの礼だ。なんか作ってやるが喰うか?」

 

「お腹ぺこぺこなんで、なんかガッツリしたヤツお願いします」

 

「あいよ」と言っておやっさんは調理場へと消えて行き、ラシアは食事を楽しんだ。

 

 この後の事だが……ラシアの作戦はかなり上手くはまった。

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