ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第46話 お茶会

 

 今日のラシアは機嫌が良いのと人が少ないのもあり、宿の一階の食堂でセレットのお茶会に付き合っている。

 

 ラシアを誘ったセレットはラシアとは逆に頭からテーブルに伏せて、とても疲れた様子だ。

 

 ラシアの機嫌が良くて、セレットがお疲れの原因はほぼ同じだ。

 

 三日前にトロッコVを倒して四階の地下から遺跡が出て来た事が原因だ。

 

 かなり貴重な遺跡だったらしく、古代のゴーレムやその辺りに関する物が見つかったそうだ。そのおかげでラシアが一人で時間湧きのボスモンスターの魔石を持ち帰ったとか、戦い後が凄まじかった事などは本当にどうでも良くなっていた。

 

 そしてラシアの計算通り、ほとんど遺跡を調べる時間が無いまま終了した。

 

 ダンジョンは一日経てば元に戻る。遺跡を調べてる内にダンジョンが戻ったら閉じ込められるからだ。だから中に何があったかは分かったが、ほとんど調べられなかったという事だ。

 

 ラシアが思うにはあの遺跡はゲームで言うところの隠し部屋だ。フロアの何処かを殴ったら部屋が出てくるヤツ。鉱山のダンジョンにそれがあるとは知らなかったが……ラシアの嘘を吹き飛ばしてくれるならそれでよし。

 

 気が向いたら床をぶち抜いて見にいくかも知れないが、そんな危険を冒してまで過去の物を見たいとは思わない。ラシアは今を生きて未来に進んでいるからだ。

 

 だがそうでもない人物も目の前にいる。研究者としての血が騒ぐがセレットは遺跡に行くことはできなかった。

 

 石鹸、高級石鹸、消臭玉の登録で忙しかったり宿で道具の販売をしていたりしていたからだ。

 

 冒険者ギルドから呼ばれた時には行っても間に合わない時間だった。だからラシアと一緒に行った冒険者達が調査した物を少しだけ持ち帰り、それを見たセレットがどうしても遺跡に行きたいと言ったが無理な話だ。

 

 街で使われている魔道具の技術の元になった物が大量にあるのでは? となり、セレットが突撃しようとして全員に止められた。

 

 そこで諦めたはずだったが……部屋に洗濯物を持っていった時に見つけてしまった。

 

 ラシアがティアにプレゼントした『壊れていない魔導エンジン』だ。

 

 壊れている物はそこそこあるが、壊れていない物は本当に貴重らしく、かなりしぶとくティアに交渉して欲しいとせがんでいた。

 

 ティアも浮いててきれいに光る球が気に入ったのか絶対にうんとは言わなかった。

 

 最終的にはおやっさんが介入しセレットが諦める形にはなったが……まだ諦め切れてない様子で唸っていた。

 

「ラシアちゃん……冒険者ギルドで売らなかったのは正解だけど……ティアちゃんにあげなくても良かったんじゃないかなー。私が欲しかったんだけどなー」

 

 口を尖らせて文句をいう人妻が可愛いと思うのは何か変な感じもするが似合っているので仕方が無い。

 

「あれってそんなに貴重な物なんですか?」

 

「動かない物とか壊れている物は多いけど、あんな感じで動いている物は本当に貴重。この街にはいないけど王都とかだとあれを使ってゴーレムとかの起動試験してるし、状態が良い物って本当にないからね」

 

「へー……けっこう高く売れそうですね」

 

「欲しい人なら言い値で買うんじゃない?……普通にギルドで売っても王都の一等地に家が建つよ」

 

「ぶふっ!?」

 

 ラシアは飲んでいる紅茶を吹き出しそうになり、ギルドで売らなかった自身の幸運を喜んだ。

 

 そしてまたしぶとく魔導エンジンが欲しいらしく、テーブルに埋まって悩み出したので、ラシアは別の事を考える。

 

 ボスモンスターを簡単に倒せた事だ。ほぼ間違いないと思うが、ラシアが人の気配を察知できる様になったのは、アーチャー職が覚えるパッシブスキルのフォーカスアップだ。

 

 ゲームの説明では感覚が敏感になりどうのこうので、運とクリティカルダメージが20%上昇する。

 

 ダード達が職とスキルの適性が合わなくて威力などは落ちていたが、ラシアの場合は素のステータスやダメージがでかい。スキル適性が無くて半分の10%になっていても、それだけでもかなりのダメージになる。

 

(ゲームの頃から使えたらいいなーと思ってたスキルだからありがたいな)

 

 そんな事を考えているとセレットが復活したようで、ラシアがまさか本当に一人でボスを倒せると思っていなかったと呟いた。

 

「セレットさん落石ですよ。落石」

 

「私はラシアちゃんと落石について語り合いたい気分よ……ラシアちゃん。失礼だけど人間やめてる?」

 

 本当に失礼だが……ラシア自身も自信が無い。話を聞けばZランクならいけるだろうとの事なので、まだまだ人間の範疇だなと自分に言い聞かせる。

 

「魔法とかも使い方しだいで凶悪なので戦い方次第だと思いますよ」

 

「そうかも知れないけどー。物理攻撃で破壊できる方が怖いかなー。魔力が無くなったら魔法って使えないからね」

 

「それを言い出したら、体力無くなったら攻撃できませんって話ですけどね」

 

 それもそうかと二人で笑い、話は続く。ボスつながりでノアやエリエスがいるクランがボス狩りに行って失敗したという話になった。

 

「娘や遭難組は大丈夫だったみたいだけど、一人亡くなったって」

 

「あれですね。ノアさんは無理しないイメージがあるんですが……どうしてそうなったんですか?」

 

 ノアが入っているクランのクランマスターが新しいボスモンスターの情報を仕入れて来たので倒しに行こうという話になったそうだ。

 

 明らかに格上の相手だったのでノアや数人のメンバーは反対したそうだが、多数決で決まり全員参加になったそうだ。

 

「まー……分からなくはないんですが、無理して行くような物なんですか?何人いるかは知りませんが儲けって出ます?」

 

「月齢の王を倒すのは冒険者からしたら名誉な事だからねー。私はあんまり行かないけど王の討伐に命かけてる人は多いね。ノアちゃんがいるクランは前は30人くらいって言ってたかな?」

 

「その規模全員参加で負けるって……コアラキングとかヤマタノオロチとかドミナトリクスとかその辺ですか?」

 

「ラシアちゃんってほんとモンスターに詳しいわよね。そんな上級の上澄みのボスじゃないよー。確かリュウモドキって言ってたね。ラシアちゃん知ってる?」

 

 その名前には聞き覚えがある。龍ではないが、下手なドラゴンより遙かに強いオオサンショウウオみたいな感じのモンスターだ。強さ的にはトロッコVと同じぐらいだが、毒とか麻痺とかの複合フィールドを作るのでラシア的にはリュウモドキの方が強い。

 

 あと気をつけることは、動きは遅いが攻撃全てが全体攻撃という事ぐらいだ。

 

「ん?……というか全体攻撃持ちのヤツ相手にダードさん達みたいな初級者連れて行くなよって話なんですが……」

 

「それで新しく入った子が亡くなったって……すぐに撤退したけど助からなかったそうよ」

 

 夢を追うのは良いことだが……死んだらどうしようもないので、その辺は熟練者が教えなくてどうするんだとラシアは思う。ラシアもロマン職で自分が好きだからこのステ振りでこの職だ。

 

 だけど絶対に人には勧めない。大変なのは分かり切っているから。先に悪い所を教えてそれでもやりたいなら答えるが……自分からは勧めない。

 

 苦行だしやめたらゲームも終わるから。

 

 その辺は現実のほうがひどいと思う。死んだらやり直しがきかないのだから、夢を追うのは結構だが……

 

「会った事も聞いたこともないですが……私の中でノアさんがいる所のクランの評価が絶賛値下がり中ですね」

 

「大きな声では言えないけどもっとひどい所もあるよー。ラシアちゃんの言いたい事も分かるけど人に言われてやめるぐらいなら冒険者なんてやってないって言うのも覚えておいてね」

 

「なるほど。やっぱり私には冒険者には向いてない感じです」

 

「冒険者に向いてる人って正直、死に近い人だからねー。向いてない方がいいかも」

 

 もう一度なるほどとラシアは納得する。そのクランで亡くなった人がどういう方かはラシアには分からないが……一人でいるより誰かの死が近くなるなら、ラシアはこのまま一人で良いなと思った。

 

 そこで話を終わらせても良かったが、鉱山のダンジョンで聖騎士達が使っていた帰還石の事をついでなのでセレットに尋ねる。

 

 ゲームだと店で普通に売ってたが……王都では売ってなかった。だが聖騎士達が使っているのでモンスターからドロップしたり作れるはずだ。

 

 アイテムバッグの中から帰還石を取り出しセレットに見せて質問する。

 

「セレットさん。こういうダンジョンから帰還するアイテムって売ってないので国が管理してたりするんですか?」

 

 セレットはその帰還石を難しい顔で手に取り見つめる。

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