ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第47話 帰還石

 

 セレットは帰還石を手に取って難しい顔で眺めている。

 

 そしてようやく満足したのか、小さくため息をついた後、ラシアに向き合った。

 

「ラシアちゃんはこの石の効果を知ってるみたいだから教えるわね」

 

 いつも明るいセレットが暗い感じになっているので碌な事では無いのは分かるが、聞いておかないと駄目なのでラシアは頷いた。

 

「この石はね……世間体には宝石と同じ扱い。ただきれいな物として国が買い取ってるの。宝石と錬金すれば輝きが増すとかそういう理由ね」

 

「……」

 

「国がこの帰還石を使いたいからって言うのが理由。騎士とか聖騎士とか……減ったら困るXやZといった高ランクの冒険者に影ながら渡してるの。ラシアちゃんどうしてか分かる?」

 

 その質問にラシアは考える……店で売ってない、作り方を知らないとなると手に入れる方法はかなり限られる。

 

 モンスターからのドロップアイテム、もしくは宝箱だ。

 

 宝箱があるかは分からないので、そうなって来るとドロップアイテムになってくるが……今度は落とすモンスターが少ないのだ。

 

 ゲームを作った会社も、店で売ってる物をわざわざドロップさせなくて良くないか? と言う話なんだろう。

 

 ラシアの記憶だと五匹もおらず、その上で低確率だったはずだ。

 

「入手できる方法が少ないから、冒険者に嘘ついて買い取ってる感じですね」

 

「そういう事。高ランクがいくような所だと入手できるって聞かないし、今のラシアちゃんがいく様な場所で入手したって聞くから、高額で国が買い取ってるのね」

 

 分からない話ではない。換えのきく者と換えの効かない者。どちらに戻って来て欲しいかと言われたら後者であるのは間違いない。

 

 ただ冒険者は馬鹿では無い。夢を追い求めるが命の価値は分かっているはずだ。

 

 だから帰還石の本当の効果が分かれば誰も売らない。いくら高くてもだ。だから国が情報を管理して、冒険者から買い取れる様にうその情報を流す。

 

 自分達が確保できる様にだ。

 

「今回の様に見られたってなるとどうなるんですか?」

 

「ん? その辺は大丈夫かな。ラシアちゃんは元から知ってるからだけど、普通の人からすれば何って思ってギルドに尋ねてもそういうスキルって言われればそれまでだしね。そんな場面に遭遇する事ってそんなにないしね」

 

「他の国もそんな感じなんですか?」

 

「ええ。その辺りはほかの国とも協力して情報が流れないようにしてるわ。冒険者はともかく一般の人とかはそもそも知らないし、国の間を移動する事も滅多にないしね」

 

 少しモヤモヤするが……世の中そんなもんだろうとラシアは納得する。

 

 国には国の都合がある。モンスターや冒険者がやらかした時の鎮圧など色々な事があるだろう。

 

 どうでも良いとまでは言わない。関わった所で責任が持てないし、どうしようもないというのが本音だ。

 

 ラシアが余計な事を言って、冒険者達が帰還石の事を知り国に売らなくなる。聖騎士達の様に使用して帰還すれば助かったが助からなかった。

 

 それで国を支える様な強者が減って国力が低下した。今後も帰還石は手に入らない。

 

 黙っていた国が悪いのか、知らない冒険者が悪いのか、教えたラシアが悪いのか……

 

 たぶん答えは無い。

 

 だから余計な事は言わずに今まで通りでいい。

 

 トロッコVと同じだ。落石が落ちて潰されてそのままダンジョンの底に落ちていった。それでいい。

 

「セレットさん。それでこんなきれいな石拾ったんですけどいくらぐらいで買い取ってもらえるんですか?」

 

 その意図がセレットにも伝わったのか、苦笑する。

 

「出てくるダンジョンって入念に管理されてるから、鉱山のダンジョンで出たって事は言わない方がいいかなー。手に入る所だとギルド側からこんな石がでたら高く買いますよって教えてくれたはず。一個、百万セルとかで買ってくれたはずだよ」

 

「たっか!?……数個うれば大金持ちなのでは?」

 

 帰還石はゲームでも消耗品で必需品だったのでラシアは大量に持っている。狩りにいって毎回歩いて帰るのはめんどくさいし、店で大量に買えるからだ。

 

「……ラシアちゃん。これいっぱい持ってるの?」

 

 正確な数は言えないが……かなりの数を持っている事を伝えると、セレットは売って欲しそうな顔をしていた。

 

「セレットさん。ダンジョンいくんですか?」

 

「ん? 滅多なことではいかないけど……ノアちゃんが心配だからねー。ラシアちゃんに売ってもらってコソッと持たせておこうかと。もしもの時は投げて使ってみたいな?」

 

 その顔はいつものセレットの顔ではなく、娘を心配する母の顔だった。

 

 錬金の事でこれからも世話になるのは間違いないし……共犯者にもメリットがないと裏切られる事もあるだろう。だからラシアはアイテムバッグの中からもう一つ帰還石を取り出した。

 

「ではそのきれいな石はノアさんに。あと似たようなの拾ったのでこれはセレットさんがどうぞ。おやっさんとティアちゃんにもお土産あったのでセレットさんだけ無いのはどうかと思うので」

 

「えっ? ラシアちゃんいいの?」

 

「噂ではティアちゃんにあげた物は王都の一等地に家が建つらしいので……それぐらいなら無い様な物です」

 

「ラシアちゃんがたまにお金には困ってないって言ってたけど、本当だったのね……」

 

「売る所がないだけですからね。変な物を売ると足がつきそうなので、金欠と言えば金欠ですね」

 

「……探る様な感じになって悪いんだけど、ラシアちゃんって何処かの国のお姫様とか貴族様?」

 

 確かにお金になりそうな物は大量に持っている……が、どこからどう見たらお姫様に見えるのだろうかとラシアは思う。確かに容姿だけは整っているが、アイテムバッグの整理もしないし、人とも極力話さない人間をどうみたらそう見えるのかがとても疑問だった。

 

「セレットさん。金持ってて容姿が整っているのを貴族と言うなら大体の人がなれますよ」

 

「いや、なれないよー。ノアちゃんと同い年の割にはかなり落ち着いてるし、話し方もだけど全体的に丁寧なのよね。他の冒険者はもっとがさつだからね」

 

 その辺は元地球人で一般的な教育を受けたらそうなるんじゃね? とラシアは思った。ティアは元の世界で言う所の小六とか中一ぐらいだが、学校には行ってない。その割にはやたらと賢いとは思うが。

 

「でもお姫様とか貴族様がボスモンスター倒せないもんね」

 

「落石です。落石」

 

「そうだった。落石だったね」

 

 それからセレットはラシアに礼を言ってから二つの帰還石をアイテムバッグにしまった。

 

「あっでも。ラシアちゃんからもらったとか言ったらノアちゃんが使わないかも知れないからそういう感じの事は言わなくていい?」

 

「えっ? ノアさんてラシアが触ったものなんかいらないとか影で言ってるタイプですか?」

 

 滝壺まで飛び込んで頑張って樹海抜けたのに、そんな事を言われたら流石に泣く自信はあると思っているとセレットは慌ててそうじゃないと言った。

 

「違う違う。それは無いから大丈夫。ラシアちゃん的にノアちゃんはどう思ってる?」

 

 どう思ってると言われても、少し良い匂いのする同業者の先輩と言った程度の知り合いなので、少し変態っぽい感想になる良い匂いのするは省いて同業者の先輩とだけ伝えた。

 

 するとセレットはなんとも言えない顔をしながら質問を返す。

 

「うーん……同業者の先輩……こうもう少し何かないの? 友達とか友人とか……ノアちゃんが不憫で」

 

「セレットさん……そんな友達とか友人とか哲学の極み、みたいな事を言われても私にどうしろと……」

 

「ラシアちゃん……友達は哲学じゃないからね」

 

 人はなぜ生きるのか? 並みの哲学だろうと考えていると、買い物に行っていたおやっさんとティアが帰って来た。

 

「戻った」

 

「お母さん、ラシアさんただいまー」

 

 戻った二人にラシアとセレットが挨拶をすると、ラシアの隣にティアが座り、おやっさんがお土産で買ってくれたたぶんお菓子をテーブルの上に広げる。

 

「お母さん、ラシアさんお土産!」

 

 二人が礼を言って待っているとおやっさんがすぐに飲み物を用意し、セレットの隣に座った。

 

 そして四人でお菓子をつまみ、少し経った後におやっさんがラシアに頼み事をする。

 

「ラシア。お前は明後日って空いてるか?」

 

 しばらくはダンジョンに行く用事もなく、明日は王都の図書館に行くつもりだから明後日なら空いてると告げる。

 

「悪いがセレットと王都に行ってくるからティアの面倒見ててくれるか?」

 

「全然良いですけど、宿の事とかはできませんよ?」

 

「泊まってる連中は数日戻らんって言ってたし、俺がいなかったらいなかったで余所で飯食うから構わん。宿にいても良いし、何処行ってもいい」

 

 特に用事も無いし、ティアを見てるぐらいならたぶんなんとかなるのでラシアは分かりましたと告げる。

 

「悪いな。助かる」

 

「あっでも。外でご飯食べるとか面倒なので厨房借りていいですか? 自分で適当にご飯つくるので」

 

「えっ!? ラシアさん料理できるの!?」

 

「人と話す事に比べたら料理ぐらい簡単な物ですよ。お嬢さん」

 

「いや、どう考えても人と話す方が楽だろ……まぁいいが厨房を壊すなよ」

 

「じゃあ! ラシアさん明後日は朝から色々買いにいこう! ラシアさんの料理食べたい!」

 

「料理は任せて!だけどお店の人との会話は任せた!」

 

「わかった!」

 

 そんなラシアとティアのやりとりをセレットはなんとも言えない顔で見ながら思う。今のやりとりこそが友達と言う物ではないのかと……

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