ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第49話 動き出す事

 

 おやっさんとセレットは王都にある錬金術師ギルドの本部に来ている。ここから新しい錬金アイテムが生まれたり研究されたりと、世界の錬金術の全てが集まっていると言って差し支えのない場所だ。

 

 二人がここに来ているのは簡単に言えば結婚の報告だ。

 

 セレットに錬金術を教えた人物がここで働いているからだ。

 

 おやっさん的には苦手と言うより頭が上がらない人物なので、あまり来たくはないが仕方が無い。

 

「ラシアちゃんみたいな顔になってるわね」

 

「……一緒にすんなと言いたい所だが、あいつがよく言ってるおうち帰りたいが分かるわ……」

 

 ようやく手続きが終わり、王都の冒険者ギルド並みに広い建物の中を二人は進んで行く。

 

 そして色鮮やかで重厚な扉の前に来ると、セレットがノックをして自分の名を告げた。

 

 すると中から返事があり扉はゆっくりと開いた。

 

 中には年老いた錬金術師とその付き人の錬金術師がいて、その人物が扉を開けた。

 

「ガロニア先生。こんにちは」

 

「誰かと思ったらセレットかい。ルインエルデで店を出したとは聞いていたけど元気そうだ」

 

 そう言って豪快に笑うのは女性でこの国の錬金術師でトップ3には入る実力の持ち主だ。

 

 数々のアイテムや魔道具を作り出し、錬金術師と言えばガロニアの名が上がる。そんな人物である。

 

 その人物を先生と慕うセレットが有名なのは必然だった。

 

「それで?久方ぶりに会ったと思うが何のようだい?」

 

「私達ー再婚したのでその御報告」

 

「……どうも」

 

「ほー……そいつはいい話だ。セレットが選んだんだから私は何も言わないが……あんたはもっとしゃんとしな!私の弟子と結婚したんだよ!」

 

 流石のおやっさんも自分の年齢の倍あって今も現役バリバリのガロニアには頭も上がらないし苦手意識もある。

 

 そんな二人をみてセレットは今朝もこんな感じのやりとりを見たなと笑う。

 

 ガロニアが二人に茶を準備してから世間話だ。

 

 ノアは錬金術師にならないのか、とか人が増えたとか店の経営はどうだ、等の世間話だ。

 

 そんな話の中でガロニアがセレットに会ったら聞こうと思った事を三つ尋ねた。

 

 一つは廃坑にできた水晶の泉。

 

 一つはダンジョンにできた灰の砂漠。

 

 最後の一つは鉱山のダンジョンで見つかった遺跡だ。

 

 おやっさんとセレットは心の中でなんとも言えない顔をする。ウチの客が犯人で同一人物ですとは言えないからだ。

 

「水晶病の治療なんかも見つかったそうだが……その辺は私の専門外だからね。どうでも良いことではないけどそれは置いておくよ。セレット的にはどうだった?」

 

 変な事を言えば感づかれて面倒なので、おやっさんは何も知らない振りを決め込み、セレットは少し考えてから答えた。

 

「水晶の泉と灰の砂漠は原因不明ですねー。灰の砂漠はサンプルあるからいります?」

 

「セレットは持っているのかい?ルインエルデの冒険者ギルドに少しで良いからよこせと言ったんだけど……貴重だから無理と言われたんだよ」

 

「先生の少しは全部と同じだから……」

 

 困った様にセレットは笑い、小瓶に入った灰の砂をガロニアに渡した。

 

 ガロニアは興味深そうにその小瓶を眺める。

 

「ほー……実に面白い。ありがとう。これは後で要研究だね。それで?遺跡の方は?セレットにも話は行ってるんだろう?」

 

 そこに関してはセレットもまだ心残りがあるようで、古代のゴーレム関係の遺跡が最も有力だと話した。

 

「私も行ってみたいんだけど……鉱山のダンジョンの床をどうやってぶち抜いて行くかが大問題でして……」

 

「ん?だったらどうやって出現したんだい?月齢の王のせいでとは報告にあったが?」

 

 セレットも直接見た訳でもないので説明ができない。ラシアがぶち破ったとも言えないので、落石が直撃してトロッコVが爆発して吹き飛んだぐらいしか言えないのだ。

 

「ほー……見つけた冒険者は幸運だね」

 

「そういう事ですねー」

 

 それからも話は続く。錬金術師のトップと言っても問題ない人だ。迂闊な事をいって嗅ぎつけられたらたまった物ではないとおやっさんは無言を貫く。

 

 そんな事になっているとはつゆ知らず、ルインエルデではラシアとティアがお昼ご飯を楽しんでいた。

 

「カツドンは夜にしようと思ってるからカツサンド。上手くできてよかった」

 

「ラシアさんこれ美味しい!サンドってなに!?」

 

 サンドイッチの事だが、異世界にサンドイッチがあるのか?という話になってくるので適当に話をつくる。

 

「あー……私の国では大昔にサンドって名前のウィッチがいて、魔導書を読みながらご飯が食べられるようにパンに何か挟んだ食べ物ができたの。だからそういう感じでパンに何かを挟んで片手で食べられる物はその人から名前をもらってサンドイッチって名前」

 

「おお!なるほど!ラシアさん良く知ってるね!おいしい!」

 

 嘘ついて褒められるのもどうかと思うが……美味しいし、まぁ問題ないかとラシアは考える。

 

「お昼からはクッキー焼いたりタレ作ったりしようか。ティアちゃんは窯の火の入れ方って分かる?」

 

「たまにやってるから分かる!まかせて!」

 

 ラシアとティアが楽しそうに遊んでいる間、おやっさんは頭を悩ませていた。

 

 それはガロニアが持って来た人捜しの依頼票だ。詳しくはこう書かれている。

 

 この騎士を探しているので情報提供を求む。エリゼ・デルパロア

 

 ここまでなら前と同じだが……今回は絵がついている。白黒だがとてもきれいに描かれておりこんな見事な鎧があるのか?という程の精巧な姿が描かれていた。

 

 その白い騎士に描かれている髪の毛がどう見てもラシアなのだ。長い髪は多いが少しくせ毛のきれいで長い髪は少ない。

 

 おやっさんは軽く頭痛を覚えながらガロニアに尋ねる。

 

「この依頼書ってどうしたんですか?ダンジョン都市にもありましたが……絵付きは初めて見るので」

 

「ん?デルパロアの嬢ちゃんが本気で探してるそうだ。記憶関係の魔術師を呼んで部下の記憶から噂の白い騎士の姿を転写したんだとよ」

 

「へぇー……王都でも噂が出てるんですか?ダンジョン都市は少し落ち着いて来ましたが」

 

「私らみたいな……権力者というか昔からいる連中が気になってるぐらいだね。野蛮な話だとデルパロア家にどう殺されるとか、噂通りなら聖騎士か騎士の隠し球か……余所の国から来たとか……王家直属の騎士とか、噂は絶えないね。そっちの近くであった事だろ?何か無いのかい?」

 

 どこから来たかも分からない、人と話すのが嫌いな変な女ですとは……恩人なので流石に言えない。

 

 ちょくちょくやらかすが、基本的に人を避けるので、ダンジョン都市では本当に白い騎士関係の話は下火だ。街にはいないと思われているのが現状なので、おやっさんはその事をガロニアに告げる。

 

「何処かに隠れているんだろうけど……どこなんだろうね。まぁデルパロアに狙われてるなら隠れてるのが普通なんだけど……」

 

 手配書は何枚もあったのでおやっさんはラシアに見せるために一枚ほどもらった。

 

 それからも雑談は続き、思った以上に話が弾みいつの間にか暗くなり始めていた。

 

「もう夕方か……セレット。そろそろ帰るぞ。明日の仕込みもあるからな」

 

「確かにそうね。じゃあ。先生そろそろ帰るから今日はありがとう」

 

「ああ。元気そうなお前を見れて良かったよ。元気でおやり」

 

 そして思い出したかのようにセレットは一つ質問する。

 

「先生。そういえば最近の錬金釜って壊れる物?嘘か本当か知らないけどそういう話を聞いたから」

 

 ガロニアは即座に答える。古い物なら壊れるが最近の物は事故防止で本当に壊れないとの事。

 

「むかしは事故が多かったが……今の釜なら壊れない。オリハルコンより固いしドラゴンのブレスにも余裕で耐えるね」

 

「だよねー。先生ありがとう。また来るね」

 

「ああ。また会おう」

 

 頭を下げて部屋を出て行くのを見送ったあとに近くに控えていた弟子の一人にガロニアは声をかける。

 

「ベニユッド。ルインエルデで何処か空いてる家を買ってきな。少し移るよ」

 

「はい。かしこまりました。ですが、理由をお聞きしてもよろしいですか?」

 

「ああ。錬金釜が壊れる事なんてあったらいけない事だからね。それはセレットも知ってるはずだ。その話題を出したって事は……そういう事があったって事だ。後はセレットの新しい旦那。依頼書を一枚だけ持っていった。情報が欲しいなら数枚持っていくはずだ。一枚なら特定の誰かに見せる為だ。たぶん何かあるよ」

 

「分かりました。護衛や弟子はどうしますか?」

 

「来たい奴だけにしときな。向こうで買う家はあんたに任せる。その辺の兼ね合いは好きにしな」

 

「もしガロニア様の勘違いだった場合はどうしますか?」

 

「その時はその時。向こうには水晶の泉もあるし、建物がいらなくなったら若い錬金術師の寮にしてもいい。私は急ぎの仕事だけは終わらせておく。後は頼んだよ」

 

 こういう行動力の高さこそ今でも現役で戦い続けるコツなんだろうなと弟子のベニユッドは思い、すぐに行動を始める。

 

 そんな大変なことになっているとは思わず、おやっさんとセレットは王都からダンジョン都市へと戻ってきていた。

 

 時間があればノアの所に顔を出そうと思っていたが、夜も遅くなっているのもあるし娘だからといってクランに顔を出すのもどうかと思ってやめた。

 

「未だにあの人は苦手だ……八十過ぎてる人間の気配じゃない」

 

「悪い人じゃないんだけどね~」

 

 そんな話をしながら家にたどりつくと嗅いだことの無い良い匂いが漂ってきた。

 

「あっ!お父さんお母さん!おかえりーラシアさん!帰って来たよ!当たったね」

 

「おかえりー」

 

「おう。戻った」

 

「ただいまー。良い匂いするけどラシアちゃん何か作ったの?」

 

「カツドゥンっていうラシアさんの国の料理だって!美味しいよ!」

 

「ドンねドン。おやっさんもセレットさんもご飯食べてなかったら作るけどどうします? まぁ私達もタレ作りで難儀して先ほど食べ終わったばかりですが……」

 

「じゃあ、珍しそうだしそれでお願いー。話し込んでいたからご飯食べてないよ」

 

「ラシアの料理か。面白い味わってやるか!こちとら料理人だ、不味かったら不味いって言うからな」

 

「えぇー……なにこのめんどくさい客は……まぁいいか。少しかかるのでそのテーブルの上の焼き菓子でも食べててください。それは美味しいですよ」

 

「ラシアちゃん……お菓子も作れるのね」

 

「私とラシアさんで一緒に作った!」

 

 その後の展開だが、ラシアが焼いたクッキーはとても好評で、カツドンも食べたおやっさんはお前は料理もできたのかととても驚いていた。

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