ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第54話 死者の縄張り

 

 ラシアはとりあえず……でっかいGや汚物系モンスターがいるエリアは抜けた。

 

「う○こスライムとかゲームで初めて見た時は馬鹿にしてたけど……現実で見ると恐怖以外のなにものでもないな……」

 

 アイテムバッグの中を漁り、セレットに作ってもらった消臭玉を使用すると、鼻についていた凄まじい匂いは消え、少しだけ気分が明るくなった。

 

 下水道のエリアを抜けただけで、ここからが本番な所はある。

 

 ラシアがいるエリアは地下墓地の一番下の階層。

 

 地下墓地というだけあって、ここからはアンデッドや不死系のモンスターばかりが出始める。

 

 スケルトンソルジャーやレイスやバンシーといった感じだ。強敵と言うほどの強敵はいないが、気をつけなければならない事もある。

 

 レイスやバンシーといった怨霊みたいなモンスターには、エルダーハンマーみたいな無属性の武器だとダメージが通らないという事だ。

 

 ゲームでの話なので、その辺どうなの? という感じでラシアは試してみることにする。

 

 自分達の縄張りに急に現れた命の匂いを嗅ぎ取ったのか、白いモヤの様なモンスターが現れ始める。

 

 レイスだ。

 

 ラシアはレイスが形作られる前にエルダーハンマーを力一杯振るが、何の手応えも無く、ハンマーは宙を切り、不気味な風切り音が鳴ったぐらいだった。

 

 そして次は自分の番だと言わんばかりに実体化して攻撃を仕掛けるが、ラシアも難なくそれを躱す。

 

「アカシックコンタクト!」

 

 エルダーハンマーに魔法陣が描かれ、物理攻撃が魔法攻撃に変換される。

 

 先ほどと同じ様にラシアがハンマーを振ると、次はモンスターを殴った手応えがちゃんとあり、湯気が消える様にレイスは消滅し、魔石だけが転がった。

 

「魔法攻撃に変換すれば倒せるな……戦闘中にスキル切れても大変だし属性武器で戦うか。こんな所に人いないだろうし」

 

 ラシアは魔石とエルダーハンマーをアイテムバッグにしまい、その名を叫ぶ。ストレス過多だからだ。

 

「リジェネクティブハンマーーーーー!」

 

 ラシアの叫びにモンスターが集まり始めるが、勢いそのままにハンマーで地面を叩きつけると、HPを回復させる聖なる属性のフィールドが展開される。

 

 そのフィールド内にいたモンスターは飛んでいようが関係無くダメージをくらい、魔石だけになっていった。

 

「おー……楽だ。怪我とかしてないから回復しないけど、こう精神疲労とかも回復して欲しい。異世界に来てから癒やしがない……なんかいっつも気はってるな」

 

 今回に関していえば自分が悪いのだが、ストレスで髪の毛とか抜けたらどうしようと考えながらラシアは地下墓地を進んでいく。

 

 今度はスケルトンソルジャーが現れる。骨が剣と盾を持っているモンスターだ。朽ちた騎士やレギオンに比べれば動きは遅い。

 

 簡単に躱し、ハンマーをたたき込むと蒸発するようにスケルトンソルジャーは消えて、魔石が残る。

 

 たぶん人骨だとは思うのだが……モンスターといえども何か罰当たりな気はするので、今更だがスカルピッケルとか元人間設定のモンスターは倒すのに少し抵抗がある。

 

 今はまだ骨や腐った系のゾンビなのでいいが……ガッチガチの人型の魔物が出たらどうするのが正解なのだろうとラシアは思っている。

 

 モンスターなので言葉は話さないし、倒せば魔石も落ちるだろう。

 

 だがまともに人の形をしている者を倒せるのかという不安があった。

 

「その辺はおやっさんに相談してみるか。こっちの世界の人は気にせず倒しそうだから意味ない気がするけども……女の子系モンスターとかどんな感じかは気になるな」

 

 少し遠回りにはなるが、人の形をしたモンスターが出るエリアは避けて行くのが無難だと考え進んでいく。

 

 この地下墓地エリアはかなり広い上に二階層ある。ラシアがいるエリアは下層だ。

 

 聖属性の武器を装備していて、そこまで強い魔物は出てこないので進めるが、楽と言うわけではない。狭い上に暗いので、かなり警戒していないとスケルトンアーチャーの矢が飛んできたり、レイスやバンシーが壁越しに攻撃してくる。

 

 しかも魔法なんかも普通に使ってくるので、全体的にめんどくさいエリアなのだ。

 

 だけどこのエリアはラシアがやっている様に聖属性の攻撃がやたらと通るので、ソロでは無理だがゲームだとパーティーを組んで聖職者のレベル上げをする人が多かった。だが……全く見ない。

 

「ゲームじゃない、ゲームじゃない。ほんとの事さー……あれだな。ゲームと比べても仕方ないのは分かってきたけど……聖職者って何処でレベル上げてるんだろ……もしかしたらこのエリアの入り方とか知らないのかも知れないな。正規のルートでもややこしいし。」

 

 ようやく地下墓地の上層エリアへと抜ける階段を発見する。ダンジョン時計を見ると夜になるような時間だが……こんな所で休憩できる場所もないので先に進む。

 

 階段を上がりきるとラシアの顔に大きな鎌が振り下ろされた。

 

「あぶなっ!」

 

 即座に躱すことができたが、目の前には大きな鎌を持ち、ボロ布をまとったスケルトンが浮いている。

 

 このエリアに出てくる死の使いというモンスターだ。イメージ的には死神みたいな感じのモンスターだが、さほど強くはないのでラシアはハンマーをたたき込み、即座に倒す。

 

 あれがレベルアップすると死神というモンスターになって少し面倒だからだ。

 

 死の使いは下層にもいるが配置数が少ないので、狩り場に人がいればあんまり出会わないモンスターだ。レアアイテムはあるが他のモンスターも落とすので、それを狙う人はいない。

 

 下層と上層はほぼ同じなので、壁に埋められた人骨を見てテンションが下がりながらラシアは進んでいく。

 

「……これ、魔石とか調子に乗って拾ってるけど一度に全部出すのは避けないとダメだな。中級が稼げる量は遙かに超えてる」

 

 目立ちたくないなら売り方も考えないとダメだなと考え、戻ったらおやっさんかセレットに足がつかずに売れる所を相談しようと考える。

 

 ……

 …………

 

 時間的にはそろそろ深夜にさしかかる時間になった所で、ようやくラシアは地下墓地を抜ける事ができた。

 

 地下聖堂。

 

 ここまで来れば距離的に地上には近い。だがエリア的にはまだまだ遠い。

 

 ラシアは大きく息を吐き出して聖銀鋼の鎧に着替え、リジェネクティブハンマーからプラティディオンハンマーに持ち替える。もしもの事を考えてだ。

 

 この地下聖堂には時間湧きのボスモンスター、聖女オリスメニタがいる。

 

 トロッコVみたいなボスモンスターがいるならこいつもいる。

 

 ゲームの設定では勇者の仲間だった人物だ。勇者に裏切られ、滅びゆく城で自身の身が炎に包まれても人々の平和を祈ったとかいう、ガッチガチの聖女。

 

 ただその祈りが通じたのは邪神だった為、死の淵から蘇った際に魔物と化した。

 

 死してなおその祈りは残ったので、この地下聖堂では全て聖属性のモンスターが出てくる。

 

 この辺りは人もいないので、たぶん討伐されていない。探せばいるだろう。見たら逃げるだけだ。かなり広い大広間みたいなエリアなので、見かけたら一発でわかるだろう。

 

「はっきりいってここの腐ったロリコンより強くてエロい。お前聖女か?って衣装を着てる……個人的にはかなり見たいけど……取り巻きが強いので会いたくない。会っても逃げる」

 

 倒せなくはないが……ラシアがさっき言っていた人型だからだ。ゲームだとプレイヤーと同じ様なグラフィックで、光る羽と首輪がついているだけのモンスターだ。

 

 フル装備に身を包んだラシアは辺りに気を配りながら進んでいく。前方に人影が見えたなと思った瞬間、光が一直線に飛んで来る。

 

 それも問題なく躱せるが……スカルプリーストという骨の聖職者だ。

 

 音に釣られてボスモンスターが寄ってきたら面倒なので、ラシアは即座に接近し静かに叩き潰す。

 

 気をはって気配を探っているからだろう……ラシアは人の気配を感じた。

 

 聖女か? と思ったが、数人の人の気配があった。

 

 こんな場所に人が来るのか? と思ったが、高ランクなら問題なく来られる場所ではある。ラシアは気配を殺しながら近づき、確認する事にした。

 

 静かに接近すると、そこには数人の騎士達が座っており、とても疲れた様子だった。

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