ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第58話 おみやげ

 

 ラシアがなんとか無事に帰ってくると、ティアが宿の前に退屈そうに座っていた。

 

 そしてラシアの姿を見つけると、嬉しそうに走って飛びついた。

 

「ラシアさん! おかえり! 遅かったから心配したよ!」

 

「ティアちゃんただいまー。八割は私が悪いんだけど、二割に馬鹿がいて大変だった……」

 

 宿の中に入るとちょうど昼で、道具屋もいつもの様に繁盛し、なんかやたらと機嫌が良いおやっさんに出迎えられる。

 

「おう。戻ったか。飯はどうする? いるなら作ってやるから食堂で喰え。話が聞きたい」

 

「助かるんですけど……なんか機嫌よくないですか?」

 

 面白い事があったからなとおやっさんは笑い、奥へと向かった。

 

 ラシアは先に部屋でシャワーを浴びようとするが、セレットと目が合うと少し困った様に笑い、おかえりを言った。

 

「ただいまなんですが。おやっさん機嫌良さそうですね」

 

 弟子達が道具屋を片づけていたので聞こえない様に部屋の隅に呼び、話をする。

 

「えっとね……ラシアちゃん数日前に騎士の人達助けたでしょ? 噂の白い騎士で」

 

「はい……」

 

「その白い騎士が騎士を助けたっていうのを聞いてから、あの人、ラシアちゃんの帰りを楽しみに待ってたからねー」

 

「ぐっ……良い趣味してますね」

 

「冒険者って悪く言えば冷たいからねー。メリットが無くて人を助ける事って無いのよ。下手すれば自分もそうなるでしょ?……なんか無償で助けたのが面白かったみたいでね」

 

「こうですね……別に死ななくても良いかなと思いまして」

 

「ラシアちゃん。あのね……良いことしたんだからもう少し自信持っていいのよ? そんないたずらして隠す子供みたいな反応しなくても」

 

 それは確かにそうなのだが……と思うが、セレットも困った様に笑うのでラシアは少し恥ずかしくなり、そそくさと二階へ上がり自分の部屋へとたどり着く。

 

 それから準備をしてシャワーを浴びて汚れと疲れを落とす。

 

 さっぱりしてから食堂に行くと料理は完成され並べられ、おやっさんは調理器具を洗い、ティアもそれを手伝っていた。

 

「おやっさん。ありがとう。頂きます」

 

「おう。味わって喰え」

 

「私も手伝ったからおいしいよ」

 

 この固いパンもいい加減慣れたなと思いながら食べ、お腹が少し満足し始めたタイミングでおやっさんが椅子に座り尋ねる。今回は何をやらかしたんだと。

 

「どこかのラシアって奴は……もう助けないとか言ってた記憶があるんだが……どこのラシアなんだろうな~? 冒険者ギルドでは大騒ぎだぞ。白の騎士が古城のダンジョンに出たってな」

 

「ぐっ……本当に何処のラシアなんでしょうね。というか騎士達はここから古城に行ってたんですか? 通達はやくない?」

 

「そら噂の白い騎士だからな。騎士としてもどういう人物か見極めたいわな。騎士団長のデゴットが王都に帰還後すぐに、古城から繋がる都市に白い騎士か似たような奴を見かけたら確保する様に命令を出したらしいぞ」

 

「……あのおっさん。そんな偉い人だったのか」

 

「特徴で引き留めるようにしているとか言ってたが、よく帰ってこれたな?」

 

 確かにやたらと混んでいたが、引き留められるような事はなかったのでラシアは自分の幸運を喜んだ。

 

 そしてティアは今の話を聞いても驚いていない。ラシアが白の騎士だと言う事も分かっている様だ。なので、古城のダンジョンであった事を話しはじめる。

 

 奥まで行ったらどっかの誰かにオブジェクトを動かされて閉じ込められ、大変な目にあった事。その道中で騎士達を見かけて助けた事などだ。

 

 その話を聞いて先に反応したのはティアだった。

 

「やっぱりラシアさんが白の騎士だったんだね」

 

「私が…………私がホワイトナイトだ。…………って自分から名乗った記憶も無いし命狙われてるしなんか恥ずかしいから言わないでね」

 

 言わないよとティアが元気よく言う頃には、ラシアも食べ終わっていた。おやっさんはさらに機嫌よさげだった。

 

「前に言った……持って生まれた物ってあるって話だな。いやー久しぶりにいい話を聞いた」

 

「こう目覚めが悪いんすわ! 目覚めが!!」

 

「下手したら自分が目覚めなくなるけどな。というか何を恥ずかしがってんだよ! 人を助けてるんだぞ誇れよ!」

 

「……どうやって?」

 

「おれが知るか」

 

 疲れた上になんか恥ずかしいので、ごちそうさまを言ってから部屋に戻ろうとした所で、古城から色々パクって来たのを思い出す。

 

「あっそうだ。ティアちゃんおやっさん。お土産あるの忘れてた」

 

「お土産ってなんだよ。ギルドで売って帰れよ」

 

 おやっさんの文句をよそに、ラシアは持って帰って来た立派な王女クラウンをティアの頭に乗せた。日の光が当たらないダンジョンとは違い、少しでも日が当たるとこの世の物とは思えない程美しい輝きを見せた。

 

「ラシアさんこれもらっていいの!!」

 

「いいよー。ギルドでダンジョンの拾得物は冒険者の物って習ったからお土産」

 

「お前……どこでパクって来たんだよ」

 

「古城にある王女の寝室」

 

 呆れているおやっさんを無視して、喜ぶティアを見てラシアも喜ぶ。自分の目に狂いはなかったと、ラシアは思う。やっぱり年頃の女の子なので、ああいう物が好きなんだろうなと納得する。

 

(たぶん売ったら凄まじく高そうな気はするけど……まぁええやろの精神)

 

 そして次はおやっさんの番だ。古城の調理場から持って帰って来た鍋などの調理器具を並べていく。

 

「使い方が分からん物もあるけど……使えそうなら使って。包丁とかもあったけど前に+10できたから他の物の方が良いかなと思ってやめた」

 

「……なんか俺がしらない金属の鍋がある。……それは良いがこの縦長の鍋は使いやすそうだな!」

 

「ステンとかアルミじゃない? その長い鍋は寸胴鍋。おやっさん、シチュー作る時とか釜だからそれが良いと思って持って帰って来た」

 

「これはいい! 料理がはかどりそうだ」

 

 様々な調理器具を見てテンション上がるおやっさんをラシアとティアは微笑ましく見守る。

 

「どう。使えそう?」

 

「ああ。手入れしたら使えるな。礼をいう」

 

「どういたしましてー。じゃあ私は部屋でやる事あるから戻ります」

 

「ラシアさん! ありがとう大事にするね!」

 

 ラシアは手を振ってから部屋へと戻っていった。

 

「ティア。そのもらったクラウンそこに置いとけ。手入れする」

 

「お父さん。手入れって何?」

 

「ああ。ダンジョンから持ち帰った物ってそのまま使うと壊れるんだ。モンスターが使ってるなら別だがな。なんか知らんが壊れる」

 

「そうなんだ。じゃあお父さんお願い」

 

 おやっさんはティアからクラウンを受け取り、注意深く見るのをやめる。長年、冒険者をやってきたが……こんな見事な物は見たことが無い。だからこれはおもちゃの冠だ。

 

 それ以上は考えるのをやめてアイテムバッグの金床と鍛冶用のハンマーを取り出す。そして前に鍛冶をした時と同じ様にブロン鋼を取り出してクラウンの上に乗せて叩く。

 

 するとブロン鋼はクラウンを膜で包むように溶けて消えていった。

 

 そして本来の輝きを取り戻したのか、中央にある宝石は光を集めるように輝きを増した。

 

「……おとうさん。これもらって大丈夫なのかな?」

 

「お前は賢いから先に言っておく。俺が今までで見た中で一番高そうな雰囲気はある。陛下や王妃が身につけている物を見たことはあるが……これには見劣る。部屋ではいいが外でつけるなよ」

 

「わかった!」

 

「しっかしあいつは何処でこんなの見つけてくるんだ?」

 

 と、おやっさんは増えた調理器具を嬉しそうに手入れを始める。

 

 二人がそんな事をやっている間に、ラシアは浴室から持って帰ってきた浴槽に水を入れ、お湯にして、お風呂に入れる準備をしていた。

 

 もちろんシャワー室は狭いので部屋にはみ出す感じだが……濡れたら後で拭けば良いのだ。

 

「よっしゃーーー!」

 

 ラシアは服を脱ぎ捨ててお風呂に入る。

 

 お湯を作るのは簡単だ。イレイザーハンマーの水と氷を司る方でアクアフィールドを展開し、浴槽に水をはる。火と熱を司る赤い方で温度調整すればおk。

 

「あーーーーーーー……」

 

 ラシアは久しぶりの風呂の気持ちよさに夢心地になる。

 

 ぴしっ!

 

 だが人の夢と書いて儚いと読む言葉がある。

 

 夢は覚める物。人は夢を追いかけても夢の中では生きられないからだ。

 

 ピシピシッ!

 

 古い浴槽は水圧に耐えきれず亀裂が入る。

 

 そして……バッカーーン!!

 

 ダバーーーーーーーーー!!

 

「あーーーーーーーーーっ!」

 

 ラシアの叫び声と共に、一気にお湯があふれ出した……

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