ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第60話 お茶会

 

 今日はノアがやってくる日だ。

 

 糞虫(イタズラ妖精)に最下層エリアに飛ばされたラシアは、昨日の夜には宿に戻る事ができた。

 

 遅かったなといったおやっさんに理由を説明すると爆笑されたが、本当の事なので仕方が無い。

 

 浴槽も手入れしたら十分すぎるほど使える物だったので、それを使って中庭に浴室を作る事が決まった。

 

 ラシアが古城にいる間におおかたの作りは決めたらしいので、明日には完成するそうだ。

 

 戻ってくるだけならもう少し速く帰って来られたが、セレットがなんか取ってこいというので別塔にある魔法舎に寄ってお土産を探していた。だから少し遅くなった。

 

 ゲームのグラフィック的には、錬金術師が使う錬金釜によく似た変わった釜があったので、それをお土産にした。使えるかは知らないが、使えなかったら花でも生ければ良いだろうという考えだ。

 

 一応は喜ばれ、弟子達とよく話し合っているのでいいだろう。

 

 そして昨日の夜、戻ってくる間にクッキーを焼く材料は買ってきたので、今日は焼いてノアが来たら食わせて終わりという感じだ。

 

 今は朝なので、ラシアはいつも着ている装備と服を中庭で高級石鹸を使って洗っている。ダンジョンから出れば状態異常は治るのだが、状態異常ではない匂いとかは残るので、流石に下水道エリアにいただけあって匂うからだ。

 

 服はあまり持ってなかったが、アリス達――あのメイド達からレア装備アイテムのメイド服とアリスのカチューシャをもらったので、手入れして身につけている。

 

「カチューシャは別に装備しなくてもいいか」

 

 綺麗になった装備を部屋の日の当たる所に干してラシアは食堂へと向かう。

 

 そろそろクッキーを焼く準備をしないと駄目なのと、おやっさんの片付けが終わった感じだからだ。

 

 この宿の冒険者は食堂で朝飯を食べてからギルドに向かう事が多く、時間もまちまちなので、調理場が空くのは朝十時とかそのぐらいになる。

 

 おやっさんにはさっき降りた時にメイド服姿を見られているので特に何も言われる事はないが、ティアとセレットはいつもの服以外のラシアを見るのは初めてなのでテンションが高めだ。

 

「ラシアさん可愛い!」

 

「ラシアちゃんって……元が良いから何着ても似合うわね……ちょっと私と買い物いって奥様とか言ってもらえない?」

 

「嫌ですよ。どんなプレイですかどんな」

 

「えっ……こう、綺麗なメイドを雇う貴婦人みたいな感じをやってみたくならない?」

 

「奥様……わたくしも忙しいので、お戯れはほどほどに」

 

「そうそう! ラシアちゃん。そんな感じで王都とかいかない?」

 

「行きません」

 

 自分でも確かに可愛いとは思うが……言うなればアバターが可愛いだけの男だ。だから容姿を褒められても少し複雑な気分になる。

 

 そんな事をやっていると奥から片付けが終わったおやっさんが現れ、厨房を使ってもいいと言った。

 

「というかさっき見た時も思ったが……そのメイド服どっかで見たことあるんだよな」

 

「そら、おやっさんよ。古城にいるメイドの正装だから」

 

 それで思い出したようでおやっさんはあいつらか! と驚いていた。

 

「見たことあるはずだ。あのクソメイド共をしばいて服剥ぎ取ったのか?」

 

「そんなおやっさんみたいな事はしません。ヒューマンテイマー倒したら、たまにメイドの思い出ってアイテムが出るから、それをアリス達五人に使うんです。最後にもう一度ヒューマンテイマー倒すと、アリス達姉妹は襲って来なくなるんですわ」

 

「まじか!? おれが冒険者の時に言えよ!」

 

「マジッすわ。それでこの服はメイドの休憩室で寝てたらアリス達がくれた」

 

「古城でモンスターが襲って来ない場所があるとか初めて聞いたぞ……」

 

「そうそうそれ。おやっさん。古城ってどの辺ぐらいまで開拓されてるか、後で教えてほしい」

 

「おう。教えてくださいご主人様って言ったら教えてやろう」

 

「奥様、旦那様がその様に申していて困っていますが……」

 

「ねぇねぇ! ラシアさん私だとなんていうの?」

 

「お嬢様か……ティア様かな?」

 

「お嬢様がいい!」

 

「では、お嬢様。今から焼き菓子を作ろうと思うので手伝って頂けますか?」

 

「わかった!」

 

 そんな感じでラシアのメイド服姿は好評だった。おやっさんはセレットの道具屋を手伝い、ラシアはティアと二人でクッキーを作る準備を始める。

 

「ノアお姉ちゃんっていつぐらいに来るの?」

 

「いつぐらいに来るんだろ? 来なかったら来なかったで用事ないから……私達で焼いたお菓子を食べれば良いだけだからどっちでも良いかな?」

 

 数日前に見ているので元気だったらそれでいいのだ。

 

「じゃあー……来ない方が良いかも!」

 

「本人の前でそれを言うと泣くと思うから言わない様にね」

 

「わかった!」

 

 前に会った時にリュートリアからノアと狩りに行かないように釘を刺され、喜んでと答えたら半泣きになっていたのだ。妹にそんな事を言われたら……ノアはきっと泣くだろう。

 

 クッキーの生地を作って並べ、窯の余熱で焼いていく。朝からおやっさんが料理を作っていたので、その残り火で十分だ。

 

 初めてチャレンジしたときは炭になった。火力が強すぎたのだ。

 

 ティアと話をしながら焼き加減を調整していると……ラシアの気配察知が反応する。

 

「ん……? なんか多いな。この感じは……ノアさんと遭難組かな?」

 

「ラシアさん。お姉ちゃん来たの?」

 

「残念そうにしない。この感じだと四人ぐらいで来てるから、おやっさんとセレットさんに言ってきてくれる? 私はここから離れられないから」

 

「わかった!」と返事をしてティアは厨房を出ていった。

 

 そしてしばらくしてから外が騒がしくなったので、ラシアの予想通りノア達が来たようだった。

 

「ラシアさん! お姉ちゃんと他の人も来たけどだいじょうぶ!?」

 

「感じ的に知ってる人だから大丈夫。違ったら厨房から出てこないから大丈夫」

 

 先に焼いて冷ましていたクッキーを二人で味見してなかなか良いできだったので、それを持ってノア達がいる食堂へと向かった。

 

 食堂へ行くとラシアの気配察知が当たっていた様で、ノアとエリエスとダードとビエットの四人がいた。

 

「皆さん。元気そうで何よりです」

 

 普通に挨拶したのだが……メイド服のラシアが珍しい様で、ノアとエリエスはテンション高めで可愛いを連発し、ダードとビエットは顔を赤くしていた。

 

 そしてようやく落ち着き、ラシア達、遭難組は久しぶりの挨拶を済ませた。

 

「ラシアさんが! 可愛い! その姿のまま私と王都に買い物いこう! そしてノアお嬢様とか言ってほしい!」

 

「言いませんよ」

 

 やはりあの母にしてこの娘ありだなーとラシアは思う。ノアに焼いたクッキーを食べてもらい黙らせてエリエスやダード達に話をふる。

 

 元気そうなのが分かれば良いのだが、エリエスに関しては魔法の事が気になったのでその事を尋ねる。すると、BランクやなりたてのAランクと狩りに行く時は大活躍だそうだ。

 

「ラシアさんのおかげです! マッドフィールドで足止めしてもらって、ビエットの様な遠距離組に攻撃してもらえれば安定しますからね」

 

「それは良かった」

 

「こいつの場合は火力も出てるからなー。正直ビエットの火力ぐらいだといらないぐらいだ」

 

「ダード……それは貴方も似たようなものでしょう」

 

 ちゃんと特化させて方向性をしっかりさせれば、低ランクでも火力も出るし戦える。話を聞くとダード達もクランでスキルなどを教えてもらって、剣士なら剣士、弓なら弓で上げていってるとの事だった。

 

 確かに……前に別れた時より男の顔つきになっている様な気がする。男子三日会わねばなんとやらだ。

 

 エリエス達とそんな話をしていると、ノアと一緒に焼いたクッキーを食べていたティアがラシアにとても驚く。

 

「ラシアさんって私とお父さんとお母さんとノアお姉ちゃん以外と喋れたんだね!」

 

「いやいやいや……受付のお姉さんとも話すよ!」

 

「でも、お母さんの弟子さんとか雇いだした人の名前ってしらないよね?」

 

「……ぐっ。言い返せない」

 

 ノアには困った様に笑われ、ダードにはお前やっぱりラシアだなっと呆れられた。

 

「そういえばラシアって最近はどこで狩りしてるんだ? クランの上の人達はお前の話ばかりしてたぞ。絶対強いとかフリオが一目惚れしたとか言ってたぞ」

 

「フリオールさんにラシアさんは合いません。と言うか私の時も言ってましたしね。麗しのレディーとか」

 

「あれはどこかの馬鹿が仕掛けを動かしたせいで……良い迷惑なんですよね」

 

 ラシアがそう言うとノアがむせたので、ラシアは飲み物を用意してあげてから話に戻る。

 

「最近は古城のダンジョンにいますね。まぁこのメンバーなので言いますが中に入って色々漁ってます」

 

「まーラシアならいけるか。俺達はまだまだ無理だな」

 

 前なら俺達も行ってみるかとダードなら言いそうな感じだったが、ちゃんと強くなっていた。

 

「どこか俺達、三人でいけそうな所ってあるか?」

 

「最近は鉱山ダンジョンに行っていますが人が多いので……」

 

「かと言って三層は無理なので難しい所です」

 

 三人の質問にラシアは少し考えてから答える。

 

「ダードさん達の事ですから……それなりに稼げつつ経験になりそうな所ですよね?」

 

「おう。そんな感じだ」

 

「だったら……土属性の武器と矢を持って、水没のダンジョンの二階層と三階層。三階層は少しきついと思うので、エリエスさんにアースアーマー張ってもらって二層で狩りをする感じですね」

 

 三人は知らなかった様だがノアは知っている様であそこかと言っていた。

 

「私は火属性だから相性悪すぎていけないけど稼げるの?」

 

「お化け貝から真珠出ますし……二階層でもたまにスカルパイレーツが出るので、剣士系のスキルの強打とか覚えられると思いますよ」

 

 この辺は、エリエスとの事件でモンスターからもスキルを覚える事はできると検証済みだ。

 

 沼地のダンジョンよりも少し敵が強いが……モンスターの攻撃が基本的に魔法攻撃なので、先の事を考えて魔法に慣れておくなら間違いなくここだ。エリエスのアースアーマーがあるので死ぬことはないだろう。ただし三層まで。

 

「四層行くとシーサーペントとかシードラゴンが出てくるので行っては駄目ですよ」

 

「確かに四層って儲かるとか聞くけど行く人ってあんまりいないって聞くなー」

 

 そんな事を言いながら黙々とクッキーを食べるノアをティアが注意する。

 

「ノアお姉ちゃん。食べ過ぎ!」

 

「食べ過ぎじゃないよ! 今日はラシアさんが私のために作ってくれてるんだよ!」

 

「そんな事ばかり言ってるとラシアさんに嫌われるよ!」

 

「なんで!?」

 

 クッキーはまだ焼いてあるし、帰りのお土産の分もあるので好きに食べれば良いとラシアが思っていると、ダード達の方でも相談が始まり一度行ってみるかという話になった。なので、出てくるモンスターや行動を詳しく伝え、楽しくお茶会の時間は過ぎていった。

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