ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第62話 それぞれの考え

 

 宿にお風呂が完成し、長年の夢だったお風呂に入られる様になったラシアの心はウッキウキだが、トイレの匂いが消えた時の様にメチャメチャテンションが上がっている訳でもない。

 

 理由はあれ。おやっさんと話した白の騎士の事がバレた時の事を考えておいた方がいいというヤツだ。セレットにも相談したが……お師匠さんはめんどくさい人間だそうだ。

 

 今は水晶の泉を調査中なので、この街に今はいないが……。

 

 後はたぶんだが遭難組、ノア、エリエス、ダード、ビエットもある程度は気づいているとラシアは思っている。

 

 装備は違うが手配書の特徴がラシアと同じだし、遭難組はラシアの強さを樹海で見ている。そこからラシア=白の騎士は簡単に出てくるはずだ。

 

 もう誰かに言っているかも知れないが……貴族が乗り込んできてお前白の騎士やろ! とはならないので、彼らの間で止まってると思いたい。

 

 そう考えて繋げていくと……手配書が優秀なのとラシアがやらかしてるので、割と繋がるのではないだろうかと悪い方に考えてしまう。

 

 ただ鎚系の装備の冒険者は多いし、長い髪の冒険者も多い。この辺はゲームでもあった髪の長さを変えるアイテムと色を変えるアイテムもあるので、身体的な特徴では絞りきれないはずだ。

 

「うーん……後はいつもの受付嬢さんが予想してそう。改めて考えたら……無理だな。噂は止められないしどうしようもない。知らん顔が一番だな。遭難組は分かってて黙ってくれてるだろうから……今度おいしい物でも作って差し入れしとこう」

 

 ラシアの目的は元の世界に帰る事。後はおやっさんと話した様に、私は知らないでおk。自分から名乗った訳でもないし、犯罪を犯したのならまだしも人を助けて文句言われる筋合いは無いのだ。

 

 目的は前と同じだが方向性が決まったので、ラシアは食器を片付けて一階に降り、ダンジョンに行くことをティアに伝えてからギルドへと向かった。

 

 ギルドは今日も平常運転だ。人は多いが王都に比べればマシだとダードが言っていた。最近は騎士達も交代で冒険者ギルドにいるとの事で、本当に人が多いと数日前に来た時に言っていた。

 

 こっちに戻ってくれば? と思うが、人が多い、物が多いは魅力の一つだろうなとラシアが考えていると後ろから急に名前を呼ばれた。

 

「ラシアの姐さんじゃないですか!」

 

 その言い方には聞き覚えがあった……知らん顔してこの場を離れようと思ったが……行く手は知らない冒険者に塞がれている。

 

 押しのけて逃げる事は簡単だが……それをやると目立つ。だからラシアは諦めて振り返る。

 

 そこには思った通りの連中がいた。ラシアが中央都市で酔った勢いでボッコボコにして沈めた冒険者達だ。そしてどういう繋がりか、樹海を抜けて王都まで送ってもらったモカルさんもいる。

 

「…………おひさしぶりです。さようなら」

 

「姐さんは相変わらずっすね。元気そうで何よりだ」

 

 モカルさんは困った様に笑い、Sランクの冒険者の男は爆笑している。

 

 ここで立ち話も邪魔になるので休憩所の様な場所に行き、話をする事になった。ラシア的には逃げたいので皆さんも用事があるでしょうからと言ったのだが、皆、用事が終わった後だったので逃げ道は塞がれた。

 

 そして席に着いて話に付き合う。ラシア達が樹海に落ちた後、セクハラ親父は中央都市に戻り、そこで冒険者達を雇って王都まで行ったそうだ。

 

 その時に雇った冒険者達がラシアに沈められた冒険者で、ラシアが樹海に落ちた事を知ったそうだ。

 

「まー姐さんが死ぬとは思ってなかったが……無事そうで何よりだ」

 

「どうも」

 

 商人のモカルもラシアに用があり、依頼の品が良かったのでまた依頼を出しておくのでできれば受けて欲しいとの事だった。

 

 ラシアもしばらくは古城を調べるので城で取れる物なら大丈夫だと伝える。

 

「流石はラシアさんだ。私の目に狂いはない。面白い物があれば査定しますので商会の方に来て頂ければと思います」

 

 スケベ親父がナンバー2の時点で曇っているのでは? と思っていると心を読まれたのか、あれはあれでかなりできる人ですよと豪快に笑った。

 

 ラシアは困りつつ苦笑していると、商人らしく忙しいようで「少し忙しいので先に失礼します」と言って何処かへといった。冒険者の方も一緒に行ってくれと思ったようだが普通にまだ座っている。

 

 ただ前より人数が少ないのとどうして、この街にいるのかが気になったのでラシアは尋ねる。

 

 やはりというか何というか……冒険者は危険な仕事なので何名か樹海で命を落とし、何名かは冒険者をやめて故郷に帰ったそうだ。後は入れ替わりもある事などで他のギルドにいった者もいるとの事。

 

「やっぱり色々あるんですね」

 

「まー俺を含めてですが五人もいるんで活動はできますね。ただ王都で家を借りるとなると高くつくので、しばらくはこのルインエルデでダンジョンに通う冒険者として活動っすわ」

 

 そういう、眼帯のおやっさん並みに厳つい男はSランクの冒険者のグオン。ラシアの攻撃にめげずに襲いかかってきた猛者だ。

 

 となりの小柄の男はAランクのフォルグという。ラシアから見ても二人は十分に強いので無理しなければ問題ないだろう。

 

「でも皆さんは外でモンスターを狩るタイプの冒険者でしたよね? それはしなくて大丈夫なんですか?」

 

「俺たち以外にもいますからね。一組二組減ったぐらいじゃ問題ありませんよ。騎士や聖騎士の連中もいますからね」

 

「それで、姐さんはどの辺で狩りをしてるでやんすか?」

 

 フォルグにそう聞かれたのでラシアは答える。自分だけ質問して答えないのもおかしいからだ。最近は古城に行ってボチボチやっていると答えると、自分達もそこを狩り場にしようかと考えていると言った。

 

 そしてグオンが周りを少し気にしてから自分達だけに聞こえる様に言った。

 

「……噂の白い騎士って姐さんの事ですよね?」

 

 ラシアは何も言わない。それが一番いいと思っているからだ。

 

「ああ。大丈夫でさ、こちらも何かしようとか言いふらそうって言うわけじゃない。俺たちを一撃で沈める人がどんな人かと気になっただけの話ですからね」

 

「じゃあ……そのまま思い出は美しいままでおいておいてください」

 

「美しい思い出にしたら痛すぎですがね。それで姐さん。古城に行ってるならどこか良い場所ないですか? 俺らは五人なんで無理せず稼げる所があればいいんですがね」

 

 そう言われてラシアは考える。バレてるなら、黙ってる方がメリットあると思わせればそのまま黙ってるんじゃね? だ。

 

 だからこの五人が安全にいける未開拓ゾーンを教えればギルドにも伝わるし、イタズラ妖精に飛ばされても帰還できる冒険者も増えるんじゃね? って話だ。

 

「余所で余計な事を言わないのなら……こちらの考えとか伝えますが乗ります?」

 

「乗りましょう」

 

 何というか……Sランクの冒険者だけあって判断が早い。ラシアがどういう人物なのかもある程度は見極めての判断だろう。

 

 そして話し合いが始まった。

 

 そしてその頃、王都にあるデルパロア家では騎士パルサーがエリゼの元にやってきていた。

 

 もちろん白の騎士の話であるし、助けられた二人は同級生で友人といった間柄だったからだ。

 

「それで? パルサー。あなたも白の騎士に助けられたと言う話だけど……どうして私に言いに来ないの?」

 

「なんで私がお前に会いに来ないとダメなのか! お前は馬鹿なのか?」

 

「その喧嘩買いましょうか!」

 

「お前のお父様とお爺様が凄いわけであってお前が凄い訳ではない! かかってこい!」

 

 友人と言えば友人なのだが……二人の関係は今のやりとりみたいな感じだ。

 

 エリゼは顔の傷が癒やされるまでは家の事もあり、学生時代は距離を取られていた。パルサーはそんな事は気にしないタイプなので、何かとエリゼに絡んでいた。

 

 今もその付き合いの延長といった感じだ。

 

「まぁまぁ。パルサー様も落ち着いてください」と言ってメイドのメニスが二人をなだめる。

 

「パルサー様。新しいお菓子を仕入れたのでどうぞ」

 

「これはかたじけない」

 

「メニス。お菓子が勿体ないわ。殺鼠剤でも出しておきなさい」

 

「エリゼ。お前は普段はそんな物を食べてるのか?」

 

 そしてもう一悶着始まったのでメニスは二人のやりとりを微笑ましく見守った。そしてようやく落ち着き、エリゼ側から白の騎士の情報を話し、ただお礼が言いたいだけだと伝えた。

 

「お前がそう思っていてもお前の両親はどう思っているかはわからんぞ」

 

「ええ、それは分かっているわ」

 

 それで納得したのかパルサーは古城の地下で出会って助けて貰った事を丁寧に伝えた。

 

「強さもあるが……あの城をあそこまで詳しいとなると凄いお方だな。騎士団でももう一度、地下聖堂に行こうと思っているが……仕掛けの解除が分からないからいけないと言った感じだ」

 

「ダンジョンには詳しくないからなんとも言えないのだけれど……どういった人なのか……男性か女性かも分からないし」

 

 エリゼがそういうとパルサーはエリゼが依頼している依頼書を取り出し説明する。

 

「お前はわからんかも知れないが……私は女だと思っている。声や髪とかではなく、鎧、このフルプレートの造りが女性用に近い。胸の部分の造りなどは隠せないし男用女用で違うからな」

 

「……髪の長さや色や声は変えられるものね」

 

「そうだ。だが性別は変えられないし体型は太るか痩せるかしかないからな。それで? デルパロアの方としては何処まで候補を絞っているんだ?」

 

「正直、全然ダメね。お父様も気になって探している様子だけど……騎士、聖騎士、冒険者。その辺りも調べているけど全然ね。そっちは?」

 

「こっちは騎士は消せるからな。候補は絞れる……エリゼ。これは独り言だが……探すなら冒険者を探せ」

 

「えっ? 調べはついてる感じなの?」

 

「お前は馬鹿か! 私がお前に教える訳はないだろうが!」

 

「カッチーーン! よしその喧嘩買った!!」

 

 本当の事を言えば騎士達もそれこそ父親のアゴットにも言ってないが、パルサーは気づいている。

 

 樹海で揉めたラシアという女があの白い騎士だ。握力で鎧を握りつぶすなど並みの冒険者にできる事ではない。しかも自身の槍を回収できない所まで投げるなど、上位の人間だ。

 

 初めてあった時に人ではない気配がした。だから槍を投げた。

 

 古城の地下で出会った時もその気配はしていた。だが……心は人だった。

 

私達を守り先を進む白い姿は子供の頃に夢にみた騎士そのものだった。

 

 どういう人物かはまだ分からない。だからこれから見定める。敵なのかそうでは無いのかをだ。

 

(敵でなかったらどうしよう……槍を投げた事を謝れば許してもらえるのだろか……)

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