ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第64話 命の形

 

 今日は古城の探索はお休みなので、ラシアはティアを連れてエルダーハンマーを買った武器屋に向かっている。

 

 何故か? 古城の生先(ブラッドナイト)に戦い方を学んでいたら……まともに攻撃を受けて武器破壊をされたからだ。

 

 その辺はゲームと同じでやっぱり武器にスキルがある武器もちゃんと存在する。

 

 ただ代わりの武器はある……不思議な事が起こったからだ。何度も先生に戦いを挑み、ようやく戦いのコツを学び、武器が破壊された時だった。

 

 代わりに使えと言わんばかりに先生が代わりの武器、ルインブレイカーというハンマーを投げて渡したのだ。

 

 驚きながらラシアが受け取るとブラッドナイトは消滅した。だがフロアを変えると同じ様にいたので、ストレス過多でおかしくなったのかと自分に問いかけた。

 

(……あれだ。異世界に来てしかもゲームのキャラになってるとかおかしすぎるから、おかしな事が四つや五つ増えた所で変わらないから気にしない方が良いな!)

 

 そんな事を考えていると目的の武器屋が見えて来たのでティアが元気よくラシアに話しかける。

 

「ラシアさん。大丈夫? よっぽどの時は言ってね!」

 

「頼もしい。私もこのまま人と話さないっていうのは無理だから……頑張るけど駄目な時はお願い!」

 

 二人は武器屋に入って行く。中に入ると受付の前にエルダーハンマーを勧めてくれた主人がいたのでラシアは頑張って話をする。

 

「おう。この前のべっぴんのねーちゃんか。今日はどうした?」

 

「はい。前に購入したハンマーが破壊され、新しいハンマーが手に入ったので……持ち手に前と似たようなグリップをつけてもらいたくて……来ました」

 

「なるほどな。気に入ってくれてありがてーや。というか武器破壊って何したんだ? グリップはすぐにできるが、気になるからあれば見せてくれるか?」

 

 ラシアは砕けたエルダーハンマーを取り出し、台の上にのせるとティアも鍛冶屋の主人もとても驚いて見ていた。

 

 壊れたのではなく砕けているので、本当に使い物にならない。武器の死だ。

 

「なんだ。冒険者同士で喧嘩したのか? スキルで武器破壊をくらうとまれにこうなるとは聞くが……」

 

「いえ……モンスターでも低確率で使ってくるヤツもいるので運が悪いとこうなります」

 

「なるほどな……ところでいらなかったらこの破壊されたハンマーくれ。また貴族に売りつける」

 

 別にいらないから良いかと考えていると、ティアが話に入ってくる。

 

「新しいハンマーのグリップ代と交換ならいいよ! だけどまたって事はこの前のメイスは売れたの?」

 

「おう。それぐらいで良いなら全然良いぞ。この前のメイスはすぐに売れたな。貴族様のお買い上げだ」

 

「だって! ラシアさんそれでいい?」

 

「じゃあそれでお願いします」と言ってティアの頭を撫でる。ラシアだけなら、いらないから処分してで終わってしまった話だったので流石は高性能AIだ。

 

「じゃあ、グリップを巻くからハンマー出してくれるか?」

 

 ラシアは言われた通りにルインブレイカーを取り出す。ただまぁ……普通にゲームでも持ってる人の方が少ないぐらいのレアアイテムだ。プラティディオンハンマーやイレイザーハンマーには見劣りするが、それでもこの武器屋にあるハンマーとは格が違うので主人はつばを飲み込む。

 

「おぉー……長い間、武器屋やってるが凄まじい武器だな。どうしたんだこれ?」

 

「えっ……先生から譲り受けた品で……」

 

「名品って感じはするわな。それで? グリップは前と同じ素材でいいのか?」

 

「少し長めに紐を垂らす感じでお願いします。紐の部分持って振り回したりしたいので……追加料金がいるなら払いますので」

 

 それぐらいなら全然いいぞと言って、主人はラシアが置いたルインブレイカーを持とうとするが……動く事は動くが両手でも持ち上げる事はできなかった。

 

「あんた……これを片手で持ってたのか!?」

 

「きのせいでは!?」

 

「そのハンマーってそんなに重いの?」

 

「確実に嬢ちゃんよりは重いな……」

 

 頑張れば動かせるがそれで腰でも痛めたらシャレにならないので、ラシアに頼んで動かしてもらい作業が終わるまで待ってもらう事になった。

 

 作業中にラシアは店内を巡り、ティアは主人のグリップの巻き方を見ながら世間話をしていた。ラシアにはとても真似できない事なので凄い事だと驚く。

 

 店内は比較的空いていて主人も話しかけられる事がなく中断されなかったので、作業はすぐに終わった。

 

「この重さの物を振り回すなら前と同じじゃ無理だからかなり良い奴を巻いといたぞ」

 

「ありがとうございます。追加料金っていくらになります?」

 

「ぶっちゃけ……この間のメイスでかなり儲けがでたからな。サービスしとくわ。今回のこれも売れそうだしな」

 

 と、とても良い笑顔で砕けたエルダーハンマーを指さした。

 

 ラシアは新調されたグリップを握り持ち上げると、手に吸い付く様にしっかりと握れた。

 

 軽く振ってみるが手からずれる事はなく本当に良い品というのが分かる。

 

「おぉ……これは本当にいいですね。ありがとうございました」

 

「おう。そいつを片手で振り回すべっぴんさんがいるって事の方が面白いからまた来てくれ」

 

 もはや言い逃れはできないのでラシアは顔を真っ赤にしてからハンマーをアイテムバッグに仕舞い、礼を言ってから武器屋を後にした。

 

「次はおじさんのところだね!」

 

「そうだよー。おやっさんの弟さんだからティアちゃんにしたら叔父さんだね」

 

 おやっさんの弟は医者をしているので病院へと向かう。ラシアもティアも何処かが悪くて病院に行くわけでは無い。まぁストレス過多ではあるが……

 

 古城で手に入れた書物の中に、ラシアも持っている死から蘇る薬、蘇生薬の上位である生命の秘薬という物があり、その事が書かれた本があったのだ。

 

 その書物は本当に興味深かった。いくらその二つの神薬があっても、死からは逃れられないと書かれていたからだ。

 

 ゲームなら蘇生薬はHP10%回復して復活。生命の秘薬はHP、MP満タンで復活というアイテムだ。

 

 だが本に書かれていたのは、そんな単純な話ではなかった。

 

 まず、魂が体に入っていなければ怪我は治らない。

 だから死んだ人間に回復薬を使っても治らない。

 

 逆に魂がまだ体に定着できる状態なら、魔法や薬で傷は治せる。

 だが身体の損傷が大きすぎる場合は駄目だ。

 

 血が足りない、体が欠けている、そういう死に直結する損傷があると、生き返ってもすぐにまた死ぬ。

 

 だから蘇生薬や生命の秘薬があっても、著しい損傷がある状態では復活できない。

 

 ただ例外もある。

 即死の魔法などで体から魂だけが切り離されたような場合は復活するらしい。

 体の器が無事なら、魂を引き戻して定着させられるからだ。

 

 つまり蘇生というよりは、この世に繋ぎ止める薬。

 最後にはそう書かれていた。

 

 この辺がこの世界だとどうなのかという事を聞きたかったので、おやっさんやセレットに聞くより弟さんが医者なのでそっちに聞いた方が良いと思ってた。

 

(まぁ……おやっさんもセレットさんも家族を亡くしているからかなり聞きにくいのはある)

 

 そして目的の病院にたどり着くと、思ったより大きな病院で街の人達の出入りがあった。

 

 受付で自身の名前を名乗ると、ティアが弟さんの名前を教えてくれたのでしばらく待つ事になった。

 

 そしてすぐに呼ばれて応接室へと入っていく。

 

「叔父さん。こんにちは」

 

「ティアちゃんこんにちは。ラシアさんお久しぶりです。この前はありがとうございました。今日はどうしましたか?」

 

「少し興味深い本を古城のダンジョンで手に入れたので医者側の意見を知りたくて聞きに来ました。時間は大丈夫ですか?」

 

 問題ないとの事だったのでラシアはその本を取り出し渡し、蘇生薬と生命の秘薬の事を尋ねた。

 

 その本を受け取り、弟さんはとても驚いたあとに興味深そうにその本を静かに読んだ。

 

 そして読み終わり、ティアには少し聞かせにくい話だったので部屋の外で待ってもらう様に頼んでからラシアに話をする。

 

「……生命の秘薬の事は分かりませんが、蘇生薬に書かれている事は本当の事ですね。ダンジョンでこの薬がたまに手に入りますが……生き返った人はほとんどいません。書かれている様に魔法などによる即死などです」

 

「体がないと魂が定着しないって事なんですよね?」

 

「はい。魂があってようやく怪我が治るので……生き返らないんですよね。ですから死んだ人に回復薬を使っても治らないのと同じなんですよ」

 

 なるほどとラシアは納得する。

 

「寿命で亡くなった人も体が限界が来ているので治りません。ただここに書かれている以外では心臓発作といった突発的な死は生き返ります。体に損傷が少ない物ですね。ですから病院にも蘇生薬は置いてあるんですよ」

 

 そう言って弟さんは棚の中から蘇生薬を取り出しラシアに見せた。

 

「入れ物が無事だから魂が入った後に治る感じなんですね」

 

「そういう事です。それでラシアさんはこの本はどこで、と聞こうとしましたが……古城と言っていましたね。よければ少しの間で良いので貸してもらえませんか? 気になる事がとても多く書かれているので」

 

 大体の内容は読んで分かっているし、医者の視点で見て何か分かった事があれば教えて欲しいのでラシアは快く了承するが注意される。

 

「私はラシアさんに恩もあり余計な事は言いませんが……この本にしてもそうですが迂闊に人に見せるのは避けた方が良いですよ。この本も相当な価値がある物なので」

 

「気をつけてはいるんですが……見せないという選択肢はなく、他の考えも知りたいので考えてはいるつもりです」

 

「分かりました。でしたら……私の方からは言う事はありませんね」

 

「こっちに来てからけっこう経ちますが……いまだにいろんな事に慣れませんね」

 

「私には慣れてくれた様でお話できる様になって嬉しいですよ。よく逃げられていたので」

 

「……申し訳ない」

 

 それから待っていたティアを招き入れて、世間話をした後に礼を言ってからラシアは宿へと戻った。

 

 宿に戻るとセレットの師匠とか言う人が酒場の方で騒いでいたのでラシアはそそくさと部屋に戻り考える。

 

 蘇生についてだ。現実なら死んだら生き返らないのでそれが普通なのだが……武器やアイテム関連で初めてゲームとの違いが明確に表れた物に戸惑いを覚える。

 

 ただ……ゲーム時代もラシアはソロでプレイしていて、死んだらデスペナをくらって街に戻されるので、死んだら駄目な所だけは同じだった。

 

「……これも試せる事じゃないしな。死んで生き返るならベルエドさんも生き返っただろうし他の冒険者もそうだもんな」

 

 今日はとても綺麗な満月の夜だった。魔力がある世界なので、月明かりに照らされ魔力が高まりキラキラと輝き、元の世界より明るくとても綺麗だった。

 

 考える事が多すぎて熱暴走しそうだったのでラシアは静かに外の景色を眺めていると、コンコンと部屋がノックされティアがやってきた。

 

「あれ? ティアちゃんどうしたの? 普段ならもう寝てるよね?」

 

「ラシアさん。お姫様の幽霊がでた!」

 

「はい?」

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