ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第68話 持っていく物。捨てる物

 

 ラシアはリレッサの頼み事を聞いて、また古城に来ている。

 

 自身の寝室にある化粧台の小箱を取って来て欲しいとの事だった。そこに行くぐらいは簡単だし、どうせ古城ダンジョンには白い騎士が徘徊していると噂が流れている。本気装備で行けば何の問題も無いので引き受けた。

 

 もし騎士団とかいれば、あの後どうなったかも聞きたい。そんな事を考えながらラシアは古城を歩いている。

 

 なんというか、やはりこの装備は目立つのだろう。すれ違う冒険者にやたらと見られたりもする。

 

 まぁいいかと考えながら進んでいると、あのパルサーとかいうルーンランサーが近づいてきた。

 

 前とは少し雰囲気が違うなと思っていると、パルサーは頭を下げて前回助けた事の礼を言った。

 

「白騎士様……この前はありがとうございました」

 

「気にするな……助かったならそれでいい」

 

 それだけ言って去ろうとするが……辺りに人の気配が無いのを確認してからパルサーは兜を取り、頭を下げた。

 

「……貴殿が隠しているのは知っているが、一つ謝罪させてくれ。樹海では槍を投げてすまなかった」

 

 ラシアは驚き、変な声が出そうになる。だが……おやっさんにも言われていたが、何処かでは確実にバレる。

 

 バレているなら相手に敵意があるのか、何処までバレているのかを知るのが重要だ。

 

「……今は一人か? 時間があるなら着いてこい。話がしたい」

 

「わかった。ついて行こう」

 

 何もする気はないが、こんなうさんくさいヤツに着いてきて大丈夫かとラシアは思う。だがまぁ仕方がない。

 

 モンスターは普通にいるのだが……なんというか全体的に明るくなった古城を歩いて進んで行く。そして二人は王女の寝室に入り話をする。

 

 ラシアは先に兜を取る。

 

「ここは?……というかやはりお前か」

 

「ここは王女の寝室ですね。どうして分かったのかは聞きません。割と目立っていますから……見境無く攻撃してくる狂戦士には見えませんし、なんで攻撃してきたんですか? 謝罪は受け入れますが……」

 

 少し失礼な言い方になって悪いが……と言ってからパルサーは話し始めた。

 

 樹海で遠目から見た時の雰囲気というか気配が人の物ではなかった事。今は人の気配がするが……あの時は人ではなかったとの事。

 

「どういう事なんですか?」

 

「私にもわからない。私は昔から魔物と戦っているから人と魔物の気配は見分けがつく。目を瞑っていてもだ。ただお前の時はそうではなかった。……話せば人なのだが……すまなかった」

 

 自分のミスを認め、ちゃんと謝れる人はラシアは凄いと思う。自分も元の世界で周りにいた人間も、謝れない者は多かった。

 

 誰かが怪我をした訳でもないし、自分も槍を投げたりもした。だからラシアも謝る。

 

 無理に敵対する事はないからだ。

 

「その謝罪、受け入れます。こちらも槍を投げたりして申し訳ない」

 

「ありがとう。こちらもその謝罪を受け入れる」

 

 敵対関係でないのなら、ここからはお互いに情報交換だ。ラシアも聞きたい事はあるし、パルサーにもあるからだ。

 

 ただお互いに言えない事もあるし、言いたくない事もある。だからある程度の事だ。

 

「それで? 白の騎士、ここは?」

 

「ラシアで良いですよ。まぁこの鎧を着ている時に言われても困りますが……少し頼まれた事があったので」

 

 簡単に部屋の事を説明しながらラシアは頼まれていた化粧台の引き出しを開ける。ゲームならそんな事はできないのだが、もう良いかという心境で言われた通りに小箱を手に取りアイテムバッグに仕舞う。

 

 姫様の黒歴史だった場合が可哀そうなので中身は見ない。言われた通りの物なのでたぶん合っているだろう。

 

 後は……肖像画だ。壁に立てかけてあるそれを持って帰るだけ。写真などはないと思うので、リレッサが家族を思い出せるのは国王、王妃、王女が描かれたこの肖像画だけだろう。

 

 それもアイテムバッグに仕舞って、ラシアはその辺を調べているパルサーに質問する。

 

「そういえばこの前は逃げるように戻ったんですけど……何か問題って出てます?」

 

「……お前に国から捕獲要請がでたぞ」

 

「うそっ!? なんで!」

 

「ああ。嘘だ馬鹿め!」

 

 わりと本気で殴ってやろうと思ったが……殴ると聞きたい事が聞けないのでラシアは深呼吸する。

 

「特に問題は起きてないが……不可解な事は古城のあちこちであったな。お前がローリスを倒して消えた後だ。そこら中から白いモヤの様な物が出て、それが全て人の形になって空へと上がっていった」

 

 ラシアが先生やオリスメニタを倒した時と同じ物だ。

 

「私も玉座の近くにいたが……このローウェンテニアの国王と王妃だとは思うが、あの強き者に礼を言っておいて欲しい。リレッサをよろしく頼むと言って消えていったな」

 

「……なるほど。この城に捕らわれていた魂なんですかね?」

 

「かもしれないな。それ以降は全く見ないし、それが魂なのかも私にはわからないな。あと父さんからの伝言だ。いらぬ事を言われたくなかったら古城の地図をよこせ。との事だ」

 

 あれだ。リレッサの事は黙っててやるから、それに見合った情報をよこせという事だ。

 

「騎士団が賄賂とか買収とかいいんですかね?」

 

「思うところはある……だが頭の固い騎士ほど手がつけられない者はないからな。いいんじゃないか?」

 

 その辺りを含めて自分の事がどれだけバレているかを尋ねたが……騎士団では私ぐらいのものだろうと話し、貴族やその辺りでもまったくバレていないとの事だった。

 

 ただ自分でも分かるぐらいなので、接触が無いだけでバレてはいると思っておいた方が良いとの事だ。

 

「じゃあ……あの人食い令嬢にもバレてます?」

 

「なんだそれは?」

 

 ラシアがこの世界に来て初めて助けて、噂では親がモンスターで娘は人を食ってるとかいうデルパロアとかいうモンスターの事だ。その事を伝えるとパルサーは腹を抱えて笑い出した。

 

「本人は礼を言いたいそうだが……まぁやめとけ。親はシャレにならん」

 

「えっ? 知り合い?」

 

「同級生だ」

 

「ぐぁ!……世間が狭い!」

 

「近い内に行くからそれでからかってやるか! 褒め言葉は色々聞いたが……人食い令嬢……確かによく似合ってる」

 

 そしてラシアはいらぬ事を言わない様に頼み、数日のうちに大まかな古城の地図と各場所へのギミックの解除法を伝えると約束した。

 

 頭を悩ませるラシアをパルサーは笑う。

 

「理由無き力は暴力……そんなかっこいい白騎士様が同い年ぐらいだとはなー」

 

「ぐあっ! やめろ! それを言い出したら貴女も同じ様なものでしょうが! 恋する乙女みたいに白騎士さまとか言ってましたが!」

 

「ぐあっ!」

 

 お互いが過去の事を思い出して頭を抱える。そしてこれ以上の争いはやめようという事になり握手を交わした。

 

「というか……古城の地図と書いて送ったら逆探知されて私って分からない?」

 

「普通に分かるな」

 

「駄目すぎる……」

 

「仕方ない……取りに行こう。何処に住んでいる?」

 

 もうこうなったら人を信じる以外の選択はないので、ラシアはルインエルデの宿屋に泊まっている事を伝え、お願いだから人に言わない様に頼んだ。

 

 色々と不安だったが、バレた時点で詰みなのだ。

 

 暴力で解決する方法もあるだろうが……それを上手くする自信がないので本当にどうしようもない。迂闊な自分が悪いだけの話だ。

 

 いつものように、よほどの事があったら姫様を連れて何処かに逃げようと心に決めてラシアはパルサーと握手をしてから別れた。

 

 宿に戻るとおやっさんが食堂でたばこを吸っていたのでラシアは愚痴る事にする。

 

 もちろんバレた事だ。

 

「おやっさんの言う通り、バレてましたわ……」

 

「ダンジョンで殺したら次の日には死体が消えるからおすすめだぞ」

 

「流石は山賊……」

 

 飛んできた包丁をラシアは白刃取りで止める。

 

「で? どうすんだ?」

 

「なんかお偉いさんの娘だったから黙っててもらう様にお願いだけしときました。後はおやっさんと同じで他にもバレてるって思っとけとの事」

 

「まーやらかした事を考えると隠すのは難しいわな」

 

「初手でミスると取り返しつかないって終わってません?」

 

「ミミックに噛まれたと思って諦めろ」

 

 そんな事を話しているとラシアが帰って来た事に気がついたのだろう。二階からティア、リレッサ、セレットの三人が降りてきたのでラシアは戻って来たと挨拶をすませる。

 

 古城に行く前にセレットにリレッサの服を頼んで、町娘とか村娘に見えるようにお願いしていたのだが……

 

「駄目すぎる。姫様の姫力が高すぎて……どんな服を着せてもお忍びで遊びに来ている王族にしか見えない」

 

「姫力ってなんだ姫力って……ラシアみたいな事言ってるぞ」

 

「どうですかラシア。似合ってますか?」

 

 その場でくるりと回る姫様の姿を見てラシアは納得する。どう見てもセレットの言ってる事が正しい。

 

「姫様……もう少し姫力を落としてもらわないと。こう、似合いすぎて本当に何処の王族かと……」

 

「そんな事を私に言われてもですね……」

 

「姫様可愛い!」

 

 明日からは姫力を落としてもらう修行をしてもらう様にお願いしようと考え、ラシアは頼まれていた白い小箱を取り出した。

 

「ありがとうございます」

 

「でも姫様。大事な物なら先に手入れしないと簡単に壊れますよ?」

 

 まさに経験者は語るというヤツだが、姫様はそれなら話が早いと言って小箱を開けた。中にはとても美しいブローチが入っていた。

 

 それを、一つの恋の終わりのようにリレッサは床に叩きつけた。

 

 するとこの世に無かったかの様に崩れていった。

 

 一瞬だけだったがラシアには見えてしまった。一人の男性と今より美しく笑うリレッサが写っていた。

 

「ふぅ……スッキリしました」

 

 リレッサが決めた事ならラシアからは言う事はないので、次は家族との肖像画を取り出して渡した。

 

「姫様、それはちゃんと手入れしてもらってくださいね」

 

 家族との肖像画を大事に抱いたあとに花が咲いたような笑顔をラシアに向けてお礼を言った。

 

「ラシア。ありがとうございます」

 

「いっいえ。どういたしまして」

 

 先ほどブローチに写っていた笑顔より、さらに可愛い笑顔にラシアは心を奪われそうになったのは内緒の話だ。

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