ツテがあると言っていた人物は、Sランク冒険者のグオンだ。
中央都市でボッコボコにしておいて、都合の良い時だけ相談するとか……人として終わってる気もするが……仕方がない。
知り合いでランク高めの冒険者は、グオンぐらいしかいないのだ。
「グオンさん。おはようございます。少し相談したいことがあるので、時間もらえますか?」
ギルドにちょうどいたグオンにラシアは話しかけるが……グオンも他のクランメンバーも、驚きの目でラシアを見る。
「……そんな目で見ないでください」
「いやね。ラシアの姐さんから話しかけてくるなんて何事かと思いやしてね。それで? 相談とは喜んで聞かせてもらいましょう」
そう言ってくれたので、ラシアはダード達、遭難組のことを話した。
いたクランのこと。自分のことを悪く言われて怒って抜けたこと。そして、自分が言えたことではないが、クランに入らないメリットなどないことだ。
中央都市でグオン達もダード達を知っているので、話は早かった。
「まぁ。冒険者だからそんなもんって言えば……そんなもんだが。姐さんの言ってることも正しい。上を見るなら、どうしてもクラン加入は必須だからな」
「そういうわけで、人を募集していて、人付き合いを学べて、良識あるクランって何処かないですか?」
グオン達は、とても良い笑顔で答えた。
ウチのクランだと。
ラシアは少しびっくりするが、考える。
案外、というか、結構ダード達に合っているのではないか。グオン達は殴って大人しくなる体育会系だし、ダード達もそんな感じだ。
商人のモカルさんとも話をしていたので、商人との付き合いも学べるだろう。そしてなによりグオンが強い。酔っていたとはいえ、ラシアの攻撃に耐えるぐらいだからだ。
あとはダード達に話して、決めてもらうだけ。
だからラシアは、頭を下げてお願いした。
「そういう訳ですみませんが、お願いできますか?」
「姐さんに頼まれたら仕方ねえ。後はあの三人を見て判断しますわ。駄目そうなら切りますが、それでもいいですかい?」
「はい。皆さんには皆さんの生活があるので、話だけでも聞いてもらえればと」
「了解しやした。後で姐さんについていくので、少し待っててもらっていいですか? 騎士団の連中と打ち合わせがあるんで」
その辺はよく分からないが、頼んでおいて自分だけ帰るというのもおかしな話なので、世間話をしながら待つことにする。
ラシアが聞きたかったのは、古城の見張り塔で稼げたのか、その辺のことだ。
記憶を読んで転写できるとかいう魔法を試してみたかったので、セレットに頼んで紹介してもらい、かなり正確な古城の地図をパルサーに渡した。
その時に、グオン達には見張り塔の行き方などを教えてあることや、白い騎士がラシアだと気づいていることも伝えたので、なんだか付き合いができたらしい。
騎士団側も、地図の確認と、何処まで冒険者ギルドに情報を流すのかを、冒険者目線で聞きたかったらしい。
だから、グオン達とパルサーの付き合いはちょうど良かったそうだ。
「まぁ正直いいますが……姐さんのおかげでびっくりするぐらい稼げてますね。今、五人しかいませんが、全員が装備買い直してまだ余裕があるぐらい金がありますからね」
「ん? でもそれだと、仮にダードさん達が加入したらしんどいのでは? 彼らでは古城は無理ですし」
「その辺は大丈夫でさ。俺らも、ずっと古城に潜るつもりはないですし。もう少ししたら俺たちでも無理な所に行き始めるので、Xランクの連中と交代って感じですわ。金のこともありますが、騎士団の連中と付き合いができたのが本当にデカいっすからね」
色々あるんだなーと思いながら他のメンバーとも話していると、グオン達の待っていた相手がやってきた。
それはラシアも知っている人物だった。
「なにかライオンみたいな奴がいると思ったらラシ子か」
ラシアが振り返ると、そこには騎士団のパルサーが立っていた。少し髪を切って整えたようで、何というか、男勝りな感じから男装令嬢のような雰囲気になっていた。
「誰がラシ子か。パルサーさんでしたか。お元気そうでなにより。というか髪の毛切ったんですね。似合ってますが……私がライオンなら、貴女は豹とかその辺ですね」
「ふふん。そうだろうそうだろう。似合っているだろう。ライオンより豹の方がかっこいいからな。私は豹でいい。というかラシアがどうして人類と話しているんだ?」
「用事があるからですよ!」
やたらと機嫌が良いパルサーを無下にするのも悪いので、ラシアはこんなことがあったと答える。
すると、面白そうだから話が終わったらついていくということになった。
来るなとも言えないので、グオンとパルサーの話が終わるのを待つ。話は古城のことだ。
内容は、何処まで冒険者達に探索させていいかというものだ。
これはアイテムを国や騎士団が独り占めするためではなく、死人を減らすためである。騎士団はラシアが地図を渡してから、確認のために一通り古城を回った。
地図は正しく、出てくるモンスターも正確だった。だからこそ、冒険者が無理をすれば確実に死ぬ場所も幾つもある。
その辺りの簡単な打ち合わせだ。
ちなみにリレッサに、自分の城が荒らされるのは気にしてないのかと尋ねたが、滅んでいるし、一番価値のあるものはティアが持っているので問題ないとのこと。
あとは宝物庫だが……厳重に国が管理するとのことだった。
リレッサは王女なので何が入っているかまでは詳しく知らないが、危ない物も入っているとは聞いていた。そのことはパルサーに伝えてある。
ラシア的にはどうでもいいが……実際に、持ち出すとヤバい物がいくつか出てきたそうだ。冒険者には宝物庫への行き方は伝えず、仮に見つけて持ち出したら……クランまとめて全員死刑という、かなりキツい刑が決まったとかなんとか。
「地下墓地、下水道エリアは入れるようにしても良さそうだな。オリスメニタがいたら危ないが……月齢の王がいるダンジョンは何処でもそうだしな」
「逆に姐さんが行ったとか言ってたメイドの休憩室とかは封鎖が良さそうだ。一匹ならまだしも、五匹で来られたら俺らでも無理だ」
「確かにな……しかもあの見た目だ。ダンジョンから連れて帰ろうとする馬鹿がいるかもしれん。ラシアからは意見はあるか?」
「先生のいる修練所はどうするんですか? 襲っては来ないけど……ボスを除くと一番強いから、迂闊には近寄らない方がいいのでは?」
「あそこは解放している。というか、入っても先生に挑めない」
その辺を詳しく聞くと、先生は騎士達の特訓相手にちょうどいい存在らしくほぼ騎士団が占領して挑む間がないそうだ。
範囲外に出れば襲ってこないし、全ての武器を使用できる。どれを使わせても高レベルでこなすから……騎士達が喜んで行っているとのことだ。
「なるほど……さすが先生。危なくないんですか?」
「モンスターのはずだが、とどめを刺すようなことはしないな。私から見ても死んだなって時でも、急所を外して外に吹っ飛ばしている。まあ……どうして私達の剣術や体術に精通しているのか、というのはあるがな」
色々あるんだなーと思っていると、パルサーも先生に認められたようで、槍をもらったとのことだった。
少し話が長くなったが、宿に戻ると遭難組も帰ってきていたので、面接が始まった。
ラシアは姫様が見当たらないことに気づき、おやっさんに尋ねる。この辺の話し合いがあるので、おやっさんの代わりにティアを連れて行ったとのことだった。
「おやっさん。大丈夫?」
「余計なことはするなと言っといたからいけるだろ……ティアもいるし」
余計じゃない事ならしていいという訳ですね、と言いそうな姫様が簡単に想像できたが……まあいいかとラシアが考えていると、面接が終わったようで、ダード達三人がラシアに頭を下げてきた。
「……ラシア。すまなかった。俺達が迂闊だった。それから、ここまでしてくれてありがとう」
「えっと……遭難もした仲ですし、私のために怒ってくれたのも嬉しかったですから、そこまでかしこまらなくても……でも新しいクランが決まって良かったです」
「ああ。グオンの所でこれから頑張ってみようと思う」
その話にパルサーが少し助言をする。
「ラシアのような強者が、頭を下げてまで頼んだ意味は忘れるなよ。それと……上に行くなら言葉遣いは直しておいた方がいい。私はいいが……貴族相手に今みたいな話し方をすれば首が飛ぶぞ」
その言葉に辺りが静まり返る。
「そんなに驚くことではなくないか?」
そういうパルサーに、ダードが代表して答える。
「お前! 樹海でラシアに攻撃した狂戦士のくせに貴族だったのか!?」
「おい!こらクソガキ! 誰が狂戦士だ! 見間違いだと言っただろうが! そういう話し方を直せと言っているんだ! お前の脳みそは猿か!」
「誰が猿だ!」
「貴族が猿だと言ったら人も猿になるんだよ!覚えておけ!」
喧嘩になってもダードがボコられるだけなので、放っておいて大丈夫だ。
その間に、ラシアはグオンに礼を言いにいく。
「無茶を言ってすみませんでしたが……ありがとうございました」
「こっちも人が欲しかったのもありますし、姐さんのことを知っているならちょうどいいですからね。あとはダードやビエットはともかく、エリエスはかなりの魔法使いだと思うので、こっちとしてもありがたいです」
「なるほど」
「エリエスから、姐さんにスキルの相談をしたと聞きましたが……その辺もお詳しい感じですかい?」
「それなりには……」
「でしたら、今度時間がある時でいいので相談に乗ってもらえますかい? 伸び悩んでいる奴が多いんで」
自分だけ頼んでおいて断るほど人間が終わってないので、分かる範囲でなら相談に乗りますとラシアは答える。
そしてダードはパルサーにボッコボコにされて決着がつき、明日から早速ダード達の実力を見るために、グオンのクランで狩りに行くことが決まった。
そしてこの場にいなかったセレットは……自身の師であるガロニアの元で冷や汗を流していた。
「さてと……セレット。お前が住んでる所にいる冒険者のラシアって奴が、白の騎士だろう?」
「……さっさぁ~。どうなんでしょうねー」