ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第78話 お前の都合は知らん

 

 冒険者ギルドからの呼び出しとか言われても……心当たりしかないので行きたくない。

 

 無視で良いかと思ったら、騎士団長の娘さんから行ってこいとラシアは言われてしまった。

 

「こちらにも多少は情報が入ってくるから言っておく……今回の呼び出しは間違いなくラシアが危惧してることだ。どこまで関わっているかは分からんが……ギルドに迷惑をかけたくないと思ったら行っておけ」

 

「ぐっ……逃げるに逃げられねー」

 

「ただ、重要案件のはずなのにセレットさんに頼んだのだ。そこまで緊急なことではないし、重要なことでもないかもしれん。カモフラージュかもしれないがな」

 

 仕方ないと諦め、ラシアは冒険者ギルドに向かうことにする。

 

「あっ、でも騎士団とローウェンテニアの関係が知りたいので……どうしよう」

 

「今日は非番だからな。ティア姫様と遊んでおくから行ってこい。流石に明日の朝とかにはならないだろう」

 

「じゃあ……すいませんけど行ってきます」

 

 肩を落として、ラシアは冒険者ギルドへと向かった。そんなラシアを皆は不思議そうに見送る。

 

「もっとこう嫌がるか、行かないかと思ったが……案外素直に行ったな」

 

「んー、ラシアちゃんも色々と思うところがあったんでしょうねー」

 

 パルサーとセレットが真面目な話をしているのに、ノアはお姫様に興味津々だった。

 

「リレッサさんって何処の国のお姫様ですか?」

 

「皆が慕って姫様と言ってくれるだけで、特に姫ということはありませんよ? 話し方などは、実家が厳しかったからというのが大きいですね」

 

 ノア以外は心が一つになる。『どう見ても姫様です』と。

 

 ただやはりティアの姉というだけあって、ノアも誰かの百倍くらいはコミュニケーション能力が高い。だから敵意や悪意がないと分かると、すぐに友達になろうとする。

 

「リレッサさん! よかったらお友達になってくれませんか?」

 

「えっ? 私がですか?」

 

 その言葉に悪夢が思い出されて、セレットはドキッとする。

 

「ノアお姉ちゃん。私も姫様のお友達になった!」

 

「えーいいなー。リレッサさんどうですか? こう見えて私は冒険者で魔法使いですからね! 色々とお話できますよ!」

 

 そう言って屈託のない笑顔を向けるノアに、リレッサはそれを吹き飛ばすような笑顔を返す。

 

「ええ。喜んで。ノア、これからよろしくお願いしますね」

 

「笑顔がまぶしい! ラシアさんが静かな太陽なら、リレッサは煌めくお月様!」

 

「ティア。お前の姉さんは凄いな……もう姫様を呼び捨てだぞ」

 

「昔は賢かったけど、最近はアホの子になった!」

 

 パルサーとティアのやりとりに、友人になった二人以外は力強く頷いた。そしておやっさんが厨房からノアに質問する。

 

 軽い日常会話のつもりだった。クランは上手くやっていけてるのか? という他愛のない質問だった。

 

 家族に嘘はつけないし、これからのこともある。

 

 だからノアは、皆に分かるように丁寧に伝えた。

 

 死を体験したこと。

 

 またラシアに救ってもらったこと。

 

 夢から覚めたこと。

 

 そして……今を生きていること。

 

「だから今は次を探してる感じかな~。お母さん。綺麗な石、ありがとうね」

 

「どういたしまして」

 

 そこで少しパルサーから忠告が入る。その話はここで止めておくから、石のことは本当に誰にも言うなよということだ。

 

 ノアも冒険者になって長い。パルサーの言ったことをある程度だが理解したのだろう……静かに分かったとだけ伝えた。

 

「そういうわけで……これからお世話になるからおじさん。よろしくね! ……あれ?」

 

 振り返った先にいたはずのおやっさんが、いつの間にかいなくなっていた。

 

 どこに行ったのかな? と辺りを見渡すと、リレッサが少し難しい顔をして悩んでいた。

 

「リレッサ。どうしたの?」

 

 その仕草に見覚えがあったのはティアとセレットだ。

 

 悪いことはよく当たる。止める前に爆発的な魔力の奔流があり、その後に高位の天使が召喚された。

 

「ノアちゃん姫様を止めて!」

 

「お姉ちゃん! 姫様を止めて!」

 

 セレットとティアが慌ててリレッサにしがみつく。ノアが訳が分からず慌てていると、階段からコツコツと音がする。いつの間にかおやっさんが二階に上がっていたのだ。

 

「ちょっとあなた! 姫様を止めてぇ!?」

 

 おやっさんの姿を見た全員が言葉を失う。

 

 それもそのはずだ……現役時代の装備だろう。立派な装備に身を包んでいた。

 

 そして静かに姫様に話しかける。

 

「なぁ……姫様。この世はよー。娘に怪我をさせたり……せっかくできた友達に怪我をさせる馬鹿が多くていけねーよなー」

 

「ほんとですよねー。しかもおとがめなしとか、神様にでもなったのかと思いますよね。うふふ」

 

「ほんとだよな。あははは」

 

 二人は誰が見ても分かるほどブチ切れ状態だ。

 

「カチコミだ! おらぁぁぁぁ! 俺の娘を傷物にして許してもらえると思ってるのか!!」

 

「私の友人を死の淵に立たせる蛮族など! この世に必要ありません!!」

 

 セレットと、流石のティアも一瞬で頭が痛くなる。

 

 悪夢が忘れ物を取りに来た感じで、また来たからだ。

 

 だけどこのまま放っておくと、確実に王都に行く。だからすぐにノアに頼んだ。

 

「ノアちゃん! 姫様は私達が止めるから、お父さんをお願い!」

 

「わっ、分かった! おっ、おじさん落ち着いて! 私は大丈夫だから! というか力つよっ! ダード君! ビエット君! エリエス! 手伝って!」

 

 三人は慌ててノアに加勢するが……さすがはおやっさん。なかなか止まらない。

 

「離せ! 俺はノアのお父さんだぞ! その首刎ねてモンスターの餌にしてくれる!」

 

「おやっさんこんなに強かったのか!?」

 

「力が強い!!」

 

「ぐぇっ!」

 

 四人がかりでも引きずられるが……リレッサの方も大変だった。

 

「ええぃ! セレット! ティア、離しなさい! 全ての民を助けることはできません! ですが私は、私を友と呼んでくれる者は助けたいのです! 離しなさい!そのような狼藉者! 生かしておけばまた繰り返しますよ!」

 

「姫様! 大丈夫だから落ち着いて!」

 

「姫様! お姉ちゃんは元気だから!」

 

「ノア! 離せ! 俺を行かせろ!」

 

「お父さん! 私は大丈夫だから! お願いだから落ち着いて!」

 

 そんなことになっている家族を、パルサーは静かに見守り、オロオロする天使達に話しかける。

 

「こういう時は止めるのが正しい家臣なのか、突き進む王を支えるのが正しいのかは迷うところだな」

 

「パルサーちゃん! お願いだから手伝ってー」

 

 皆が絆を深めている頃、ラシアはいつもの受付嬢と、冒険者ギルドの応接室に来ていた。

 

 本来ならギルドマスターなどが出てくるところだが……ラシアが人見知りなのは分かっているので、いつもの受付嬢に任された感じだ。

 

 二人とも難しい顔をしている。ラシアはこの雰囲気を和らげるために冗談を飛ばす。

 

「もしかして……この前の焼き菓子の感想ですか?」

 

「……とても美味しかったですよ。ありがとうございました」

 

 慣れないことはするものではない。そこで会話は終わってしまった。

 

 重い空気が流れる中、受付嬢は大きく息を吐き出してから、先に気になっていたことを質問する。

 

「どうしてメイド服なんですか?」

 

 あっと思うが仕方がない。ラシアは服も少ない上に、着の身着のままで冒険者ギルドに来たのだから。

 

「とても似合っているから良いんですけどね……では改めまして、本日はお越しいただきありがとうございます。今日のことをお伝えしますので、質問があればどうぞ」

 

 一つはラシアが一番危惧していたこと。

 

 もう白の騎士ということが、冒険者ギルドには伝わっているということだ。

 

 驚きはあるが……仕方がないという諦めの感情の方が近い。

 

 ただ全員が知っているわけでもなく、ラシア担当の受付嬢と、ギルドマスターやサブマスターなど上の役職の人だけが知っているという情報だった。

 

「強いのは分かっていたんですが……まさか白の騎士とは思いませんでしたよ。ラシアさん……魔石の買い取りとか、かなり計算して出していたでしょう……」

 

「なんのことでしょうか!?」

 

「はぁ……私とラシアさんの仲なので、ぶっちゃけて良いですか?」

 

「……どうぞ」

 

 さすがはラシアの、この世界で話せる人ランキングTOP3。なんか面白いと思っていると、かなりぶっちゃけてくれた。

 

 デルパロア大公から、ラシアが白の騎士という情報が入ってきた。

 

 どこから調べたかは知らないが……魔力による証明済み。それが本当かどうかの証明として、錬金術師ガロニアの署名あり。

 

 そして、どういう人物……というより、どれほどの戦闘能力があるかを見極めたいらしい。

 

 そのため、すぐにSランクまで上げ、大公の息のかかった者達とパーティーを組ませて討伐に向かえとの命令だ。

 

「一言だけいいですか?」

 

「どうぞ」

 

「無茶苦茶すぎません? 私とかギルドのこととか考えてないんですか?」

 

「うふふ。やだなーラシアさん。そんな国王の次に偉い人が、他人の都合とか考えるわけないじゃないですか」

 

「あはは。ですよねー」

 

「「……はぁ」」

 

 ただ良いこともあると、受付嬢はラシアに伝える。

 

 まずはどういう者か見極めるのが先。だから大公の息のかかった者には、ラシアへの接触や他に言いふらすことなどは禁じるとのことだ。

 

 これは冒険者ギルドにも当てはまり、他の冒険者などに情報を流してはいけないと決まった。

 

「それって……大丈夫というか? 意味あるんですか?」

 

「あります。私がまだ働いていない時ですが……確か先代のギルマスは大公の情報を流して首を刎ねられたと聞きますので……冒険者ギルドはビビりまくりです。ちなみにギルマスと副マスターは寝込みました」

 

「色々とすみません……でも急にランク上げて大丈夫なんですか?」

 

「正直、賄賂で上がっている者はいますね。ランクのわりに弱い方などはそうです」

 

 案外、こないだのマネキンもそうなのかなーとラシアは思う。

 

「ですが……白の騎士、ラシアさんがやったことが全て同一人物の仕業なら、実力的には問題ないとギルド側は判断しています。水晶の泉、灰の砂漠……勇者ローリスの単独撃破などなど」

 

 ……トロッコⅤはバレてないな! ヨシッ! とラシアは思う。

 

「後はガロニア様の護衛であるガーゼン様にも尋ねたところ、自分では相手にならなかったと言質は取ったので、ランクを上げることに問題はありません。単独で上級のボスを倒すとか、Xランクより上の所業ですからね」

 

「顔が分からないからなんとも言えないんですが……余計なことを言いやがってって感じですね」

 

 その言葉の意味が分からない受付嬢はラシアを心配した後に、一つだけ問題があることを伝える。

 

「ただ一つだけ問題があります。Aより上のランクになるには、クランに入っていることが前提条件になります……」

 

「はい?」

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