ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第80話 相談事

 

 ラシアはパルサーとグオンに、冒険者ギルドであったことを話し始める。

 

 お金に関しては、帰還石を十個も売れば余裕なのだが……あいつもっといっぱい持ってるんじゃね? となったら大変なので売れない。

 

 そんな感じで、魔石とかを足がつかずに売れるところなんかを聞いたら、先にグオンが「それはやめておいた方が無難だ」と言った。

 

「えっ? やっぱり買いたたかれたりする感じですか?」

 

「それはないですが……俺だったら冒険者ギルドで売れないってなると、そういう所を見張るので、相手が大公なら確実に監視の目があるでしょう。監視されてるならの話ですがね」

 

「めんどくさっ! ……というわけで。売る物はあるんですが売れないので……どこかないですか?」

 

 グオンが考えていると、パルサーがあると言った。

 

「この際だ。ラシアが白の騎士というのは分かっているからな。私から父さんに話をつけよう。家は貴族だからな。金はある。何億とか欲しいという話ではないのだろう?」

 

「余裕を持って……七百とか八百万セル欲しいところです」

 

「姐さん。クラン作るのにそんなにいりませんよ? 王都で作るなら別ですが……」

 

 ラシアが何も言わずにダード達を見ると、それでグオンにも伝わったようで、あぁっと頷いた。

 

「それなら……私だけでも何とかなるが。騎士団として白の騎士と話がしたいからな……特にあの古城から帰還した時の方法を父さんは知りたいらしい。その情報だけでお釣りが来ると思うがどうする?」

 

 ラシアは少し考えてから質問する。貴族がどういうものか分かっていないし、それこそ騎士団、聖騎士のことも分かっていないからだ。

 

「なるほどな……騎士団にいる私が言うのも本当におかしいが……あまり変わらない」

 

 国のためなら何でもするのが騎士。

 

 正義のためなら何でもするのが聖騎士。

 

 命令系統などの違いはあるが、本当に違うのはそれぐらいだろうとパルサーは言った。

 

「騎士も聖騎士もお互いを良くは思っていないが……どちらも国のため、民のためには働いているからな。お互いが認めてはいる。喧嘩しながらでも協力はするぞ」

 

「今までの話を聞いてると、聖騎士って頭おかしいイメージがあるんですが……」

 

「九十九人まともで、一人とんでもない馬鹿がいたら馬鹿の集団と思われるのと一緒だ。変な奴が目立つ」

 

 絶対に口には出せないが、騎士団はパルサーが担当かとラシアは思う。

 

 今はまともだが……樹海で攻撃してきた時は、騎士団は頭おかしい集団だと思ったからだ。

 

「お前が将来的にどっちにつくかは分からないが……騎士団としては聖騎士に取られたくないからな」

 

「私は冒険者としてですね……」

 

「どちらにしても、お前の力も知識も凄いものがあるからな。できれば騎士団に協力してもらいたいという考えだ。古城の地図もそうだしな」

 

「私の場合は表に出たくないからあれですけど……どれぐらいの発見だったんですか?」

 

 その質問にパルサーは笑い、グオンはとても困ったように笑った。

 

 国王陛下から勲章が授与されたとのことだ。

 

「私ではなく父さんだがな。あれのおかげで騎士団の評価は上がっている。実際に出てくるモンスターも、全て正確に記載されていたからな」

 

「俺も勲章まではもらえませんでしたが……Xランクに上がってもいいと評価はもらいましたからね。断りましたけども」

 

「勿体なくない? って思ったけど……冷静に考えてレベルが違うから無理か。……馬鹿にしてるわけじゃないんですよ」

 

「その辺は分かっているので大丈夫ですよ。ダンジョンの超級とか上級の上澄みはレベルが違いますからね」

 

 勲章が欲しかったわけでもないし、国王陛下に褒められたいわけでもない。チヤホヤされたい……のは少しあるが、ラシアはテーブルに倒れ込む。

 

 自分が悪いのは仕方がない。

 

 ただ、どうして人助けして、たまに調子に乗ったぐらいで、ここまで苦労しなくてはならないのだろう。

 

 運は良い方だと思う。ルインブレイカーも手に入った。オリスメニタから激レアアイテムも出た。

 

 それがなくてもリレッサが助かり、ノアは二度も助かった。運は本当に良いと思う。

 

「なんかこう、この世の中はもっと私に優しくしてくれても良いと思う。たまに調子には乗るけど、お前調子に乗るなよがキツすぎる!」

 

「運が良いからバランス取ってるのか? 私には分からないが」

 

 そんなことを言っていると、いつの間にか復活していた姫様がラシアの背後に回り、その頭を撫でた。

 

「ひっ、姫様!?」

 

「よしよし。ラシアが頑張っているのは私が知っていますからね。私が褒めてあげますよ。よしよし……」

 

 最初は恥ずかしかったが……心地の良い手の動きがラシアを癒やしていく。

 

「うへへ……」

 

「姫様にかかれば百獣の王も台無しだな……というか、そのアホ面を引き締めろ。真面目な話だぞ」

 

「アホ面となんですか! …………姫様。パルサーも頑張っているので、よしよししてあげてください!」

 

「分かりました。私に任せなさい」

 

「やっ、やめっ!」

 

 全てが終わった頃には、パルサーは顔を真っ赤にしていた。

 

「はっ! 姫様にかかれば豹も所詮は飼い慣らされた猫ということですね」

 

「……爪や牙を抜かれた百獣の王が言う台詞ではないな」

 

 火花を散らす……肉食獣を見て、グオンは理解した。隣で静かに笑っているリレッサこそが最強なのだと……

 

 そして二人は、すぐに不毛な争いをしている場合ではないと理解して話を戻す。

 

「脱線させてすみません……話戻っていいですか?」

 

「……こちらもすまなかった。戻そう」

 

 そしてそれから少し話は続き、今なら家に父親であり騎士団長のデゴットがいるだろう。一度聞いてこようという話になった。

 

「今なら父さんも家にいるはずだ。一度戻って予定を聞いてこよう。明日また来る」

 

「ありがとうございます。なんですけど……騎士団とローウェンテニアの関係は?」

 

「どう考えてもこっちの方が重要だろう」

 

 かなり聞きたい案件ではあったが……パルサーの方が正しかったので、ラシアは色々諦めた。

 

「ああ、それと明日もメイド服着ておけよ」

 

「どうしてですか!?」

 

「誰が見てるか分からないからな。メイド服なら新しいメイドが来たと思われるだろ」

 

 ふとパルサーがメイド服好きなだけでは? と思ったが、流石に違うだろうし正論だったので、ラシアは了解すると、パルサーはすぐに帰っていった。

 

「はぁ……パルサーさんと話するようになったから騎士団がまともに見えるだけで、あんまり変わらないのか……グオンさん的にはどう思います?」

 

 そう尋ねると、冒険者目線で見てもその通りとのことだった。命までは奪われなくても、冒険者同士の小競り合いで腕を切り落とされるとかは普通にあるとか何とか。

 

「うーん。げっそりするほどディストピア!」

 

「まあ刃物持ってる奴に加減なんかしたら大怪我しますからね。騎士団とか聖騎士が来てやめない方も悪いでさ。それで姐さん。一つ提案があるんですがいいですかい?」

 

「提案ですか?」

 

「おい。ダード、ビエット、エリエス。お前達もこっちに来い」

 

 三人を呼んで、グオンはラシアに考えていたことを告げる。

 

 それは…………ラシアがクランを立ち上げたら、合併しないかということだった。

 

 もちろんラシアがクランのトップとしてだ。

 

 クランは一番強い者がなる。これが基本だ。知識がないならある者が支えればいいが、強さだけはそうもいかない。王ではなく強者なるものだからだ。

 

 ラシアは戸惑い質問する。ラシアにしかメリットがない気がするからだ。

 

 いわばグオン達が積み重ねてきたものが、丸々ラシアのものになる。

 

 それに対して……グオンにそこまでのメリットはないように思えるからだ。

 

 そのことを伝えると爆笑された。

 

「姐さんは自分の強さは知っていても、自分の価値が分かってなさ過ぎでさ」

 

 ラシアは考える。自分が白の騎士だということもグオンは知っている。先ほどの話で、その危険性も知っている。それを踏まえた上でラシアの下に入ると言っているのだ。

 

 グオンにはグオンの考えがあって、ラシアを利用しようというのならそれでもいい。自分もグオンを利用して帰れるのならそうする。

 

 だけど思う。グオンには夢があって冒険者をしているのだから、その夢は何なのだろうと。

 

 そのことを尋ねると、グオンはきょとんとした後に考え答えた。

 

 誰も見たことない世界を知りたいと。それが夢で、自分は冒険者になったと。

 

「まー今まで忘れてたんですけどね。そういえばそんな感じで冒険者になったなーと」

 

「軽すぎる……私の所に来てもたぶん碌なことないですよ?」

 

 だけど強くはなれるとグオンは言う。どこに行くにしてもまずは強くなりたい。先ほども言ったが、自分が弱かったからXランクになるのを断ったからだ。

 

 ランクだけ上げて適正で狩れば良いと思うが、依頼などで断れない場合もある。グオンの強さはここ一年変わってない。

 

 そんなところに現れたのがラシアだ。

 

 利用すると言えばそれまでだが……この壁を破れるなら教えてもらいたいからだ。

 

「他のクランメンバーには言ってますか?」

 

「姐さんをクランに誘おうと考えていましたし、もし姐さんが作るならそっちに移るかとも相談していましたからね。この三人は姐さんにほの字だからおkでさ」

 

 顔を赤くして惚れてないとダードは反論するが、まあバレバレだ。

 

 ラシアは考えるが……いつも一人で考えて失敗するので、リレッサとノアに意見を求めた。二人とも少し驚くが、先に意見を言ったのはリレッサだ。

 

 グオンを静かに見ながら言った。

 

「言ってることも態度もおかしなことはないので大丈夫です。ラシアにしてもクランの知識も欲しいでしょうし、グオンにしてもスキルなどの知識も欲しいはずです。お互いが損をしない関係なら良いでしょう」

 

「なんかリレッサに全部言われて私の言うところなくない!? というか、私の意見っている?」

 

「いりますよ。私がクラン立ち上げたら入ってもらいますし」

 

「……嬉しいけど無理では!?」

 

 ノアの言う通り、ラシアが最終的に行こうとしているダンジョンは無理だが、ノアやグオンとパーティーを組んで行けるところなどいくらでもある。

 

 ラシアは強いだけなのだ。クランのことなど本当に分からないし、白の騎士だということを知っている人も少ない。

 

 だから戦い以外のことで支えて欲しいのだ。

 

 そのことをノアに伝えると、冒険者を引退することも考えていたが、私に任せて! と冒険者を続けることが決まった。

 

 後はラシアが決めるだけ。

 

 ノアやグオンに迷惑をかけることもあると伝え、クランを立ち上げ、合併することを決めた。

 

 そして次の日にまたパルサーがやってきた。

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