ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第81話 良くも悪くも

 

 パルサーはラシアがいる宿に向かいながら、昨日のことを思い出していた。

 

 学友であり、ラシア曰く人食い令嬢のエリゼ・デルパロアが来ていたからだ。呼んだ覚えはないのだが、愚痴と白の騎士のことで来たのだろう。……あとたぶん暇だったのだ。

 

 大公の娘だが、エリゼ自体が偉いわけでも強いわけでもないので待たせておけばいい。先に用事があるのは父親のデゴットだ。

 

 書斎に行きノックをすると、すぐに返事があったので中に入る。ずっと騎士が騎士団の宿舎にいるわけでもないが……家にいる時まで仕事をしなくてもいいと思うが、忙しいので仕方がない。

 

「父さん。明日は空いているか?」

 

「うん? パパと遊びに行こうというなら時間作るが、それ以外なら忙しいから無理だな」

 

 絶対に暇だろうとパルサーは頭に血管を浮かべるが、ラシアを……白の騎士と騎士団が接触できる機会ができたのだ。ふざけている場合ではないので宿であったことを告げた。

 

「……よくやった! と素直に褒めたいところだが、お前はラシアがホワイトナイトって分かった時点で俺に教えろよ! 行動するかは別として、早くに知っておいて損はないんだぞ」

 

 パルサーがデゴットにラシアが白の騎士ということを伝えたのは本当に遅かった。というよりも言ってなかった。

 

 パルサーが髪を切ったりと身だしなみを整え出したので、デゴットが男か? となり、密偵を使い調べさせたところ、ラシアの名前が上がってきたのだ。

 

 そこから白の騎士だというのが分かるまでは、時間がかからなかった。

 

「それで父さん。どうする? 駄目なら時間を改めるが……」

 

「お前はそういうところ直せよ! 確かに忙しくはあるが……ホワイトナイトから話を聞く方が重要だ。大公も動いたからな。その娘さんと話しとけよ」

 

 パルサーは父に礼を言ってから部屋を出る。騎士団にとっての利益になる話なので礼を言う必要はないのだが……まあ良いかと考えて、エリゼがいる場所をメイド達に聞きそちらに向かう。

 

 呼んでいないのに来る奴は放っておいても良いのだが……親が面倒なので、パルサーはノックもせずに応接室に入っていく。

 

「おい。人食い令嬢が何の用だ?」

 

 一緒に来ていたメイドのメニスはとても困ったように笑ってからパルサーに挨拶をし、エリゼは血管を浮かべる。

 

「誰が人食い令嬢よ。誰が! そんな腹立つこと言われたの人生で初めてだけど!」

 

 普段人と話さないくせに面白いことだけは言うなと、パルサーはラシアを思い出して笑う。

 

「私が思いついたのではない。まぁ下々の者がお前に持つ印象といった感じだな。それで? お前も白の騎士の正体は分かったのだろう? どうするんだ?」

 

 そう尋ねると、整った顔の眉間に皺が寄り、一息つくために紅茶を飲んでから言った。

 

 接触禁止だと。

 

 父親であるデルパロア大公からエリゼに直接言われたとのことだ。こちらが先に見つけたのだから、どういう人物か見極めるまでは接触禁止だと。手紙によるやりとりも全て禁止とのことだ。

 

 文句があるなら出ていけとのことなので、エリゼからは何も接触できなくなった。

 

「デルパロア様も思ったよりは……娘思いといった感じか」

 

「どこがよ! お礼を言いたいだけで追い出されてたまるか!」

 

 パルサーは思う。

 

 大公やそれこそ……リレッサやラシアに比べるとエリゼは劣る。大公の娘ではあるが……色々と足りないのだ。

 

 エリゼにはラシアが白の騎士ということを遠回しに何回も伝えた。それでもたどり着けずに、大公の後手に回った。

 

 これが大公やリレッサなら一瞬で答えを見つけるだろう。自身の父親ですら見つけたのだから。

 

 甘いのだ。ラシアはそういうことはしないが、あれだけの戦闘力があるのだ。お礼を言われるために会う流れに持ち込み、そのまま人質として捕らえることも容易だろう。

 

 隣のメニスが戦えると言っても自分より弱い。ラシアが本気なら守れない。その辺りも調べが及んでいないのだろう。

 

「それで? デルパロア様が動くのは分かったが……お前はどうするんだ?」

 

「そこはわがままを通してもらったわ。白の騎士様に聖騎士から狩りに行く要請が出たでしょう? そこに私の友人でもあるティーガーにも出てもらうわ。父の方は聖女ロワンテに出てもらうとのことよ。両方Xランクの上位だから、そこまでする? って感じではあるけどね」

 

「腹黒聖女と馬鹿虎か……碌なメンバーではないな」

 

「はぁ……貴女が行ってもそんなに変わらないでしょ。その二人がその二つ名なら、貴女は狂犬のパルサーでしょうに」

 

「はっ倒すぞ! この食人のエリゼが!」

 

「その不名誉な二つ名はやめなさい! 何処の馬鹿が言い出したのよ!」

 

 ……

 

 …………

 

 そんなことを思い出しながら宿に着く。エリゼには暇なら今日は来いと言っておいたが、忙しいとか言っていたのでたぶん来ない。だから駄目なのだ。

 

 息を吐き出してから気分を入れ替え、パルサーは宿の扉を開けた。

 

「おい。ラシア。父さんの了解は取ったぞ。今日の午後だ」

 

 ラシアもすぐ近くにいたので答えた。

 

「ありがとうございます。なんか持っていく物とか気をつけることってありますか?」

 

「特にないな……強いて言えば、お前が玉座で使ったアイテムを持ってくるぐらいだな」

 

「じゃあ、大丈夫ですね」

 

 そんな話をしていると、隣でテーブルを拭いていたリレッサが、自分も行きたいと言い出した。

 

「姫様は冒険者登録をしていて、ギルドのポータルを使えるのですか?」

 

「いえ、使えないのでもしものことを考えて王都とここをゲートで繋いでおこうかと思いまして。ラシア、どうですか?」

 

「そうか……姫様の職はアポカリプスになるからゲートポータル使えるのか。その辺は実験したかったので助かりますけど、変な所に出たら余計に目立ちませんか?」

 

「パルサーは貴族とのことなので、家のエントランスか広い所に出ればいいでしょう」

 

「そうか。行きはスクロールで行けば位置を記憶できるか」

 

 そういうことですと姫様は笑うが、パルサーや周りの者達はまったく理解ができないので、二人の世界に入るのはやめて欲しいと思った。

 

 そして少し休憩して、そろそろ向かうタイミングでおやっさんがラシアに質問する。

 

「ラシア。姫様が行けるなら俺とティアも行けたりしないか?」

 

「ん? 行けますよ。帰りも普通に帰ってこれるはず。私がこの前部屋に出た感じで。おやっさんも王都に用事あり?」

 

 そうラシアが聞くと……一度で良いからティアを墓参りに連れて行ってやりたいとのことだった。

 

「共同墓地だけどな。さすがにここから馬車で王都までは行けないからな」

 

「もっと軽い話かなと思ったら……想像以上に重たい話が飛んできた! 私は大丈夫だけど、パルサー宅に知らない人が出て大丈夫です?」

 

 パルサーもラシアの言っていることがイマイチ理解できないが、それを許せる権限ぐらいはあるので、ラシアに大丈夫だと伝えた。

 

 そしてパルサーの家にはパルサーを含めて五人が行くことになり、セレットやノアは留守番となった。

 

 ラシアはアイテムバッグの中から白紙のスクロールを取り出す。これはグリミックなどが落とす物で、中級職が使える魔法をどれでも一回なら使えるという物だ。

 

 使用方法を説明し、パルサーの家の広い場所を想像してもらってから、パルサーにゲートポータルと唱えてもらうとラシア達はその場から消えた。

 

 目を開いた先は、パルサーが想像した自身の家のエントランスだった。

 

「ここは……我が家か?」

 

 これで他人の家なら絶対に捕まるなとラシアは思うが、急に現れたラシア達を見てメイド達が腰を抜かしながらもパルサーの名前を呼んだので、たぶん大丈夫だろう。

 

 そして少し落ち着いてから、ラシアとパルサーはデゴットの所へ向かうことになり、おやっさんとティアは中央墓地に向かうことになった。

 

 リレッサは手持ち無沙汰になるが、メイド達と世間話をして待っているということになり、それぞれがその場所へと向かった。

 

 ……

 

 …………

 

 そして、デゴットの凄まじい笑い声が館に響き渡る。

 

 もちろんラシアのメイド服姿を見てだ。

 

「がはははははははははっ! あのホワイトナイトがメイド服か! ひぃーひぃー! がはは! 腹痛い! よく似合ってるが……白いメイド服にしてホワイトメイドにしても良かったんじゃないか! がははははは!」

 

 バンバンと何度も机を叩き本当に楽しそうだった。

 

「パルサーさん。まさかこのためにメイド服で来いと?」

 

「流石にそれはないが……殴ってもいいぞ」

 

「ホワイトナイト! 笑ったのは謝るがご主人様とか言ってくれ! がははははははっ! あーおもろ!」

 

 謝った後にそんだけ爆笑したら意味ないのではと思うが……不機嫌にされるよりは全然良いので、ラシアとパルサーはデゴットが落ち着くのを待った。

 

 そして本題へと入る。

 

 ラシアは売る物はあるが、それを売れる所がないこと、デルパロア大公から色々と目をつけられたことを話した。

 

「まぁ大公だからどんな人間か知りたいわな。金の方は……我が家が買い取ってやるが、玉座の間から帰還した方法を教えろ。それが条件だ」

 

 ラシアも教えるつもりでパルサーに白紙のスクロールを使わせたのだ。転移魔法のことも知りたいのでちょうど良い。

 

 ラシアはアイテムバッグから白紙のスクロールを取り出して説明する。

 

「なるほどな」

 

「この白紙のスクロールってそんなにレアなんですか?」

 

「いや普通にあるぞ。騎士団では属性のエンチャントとして使っている」

 

 白紙のスクロールは要は魔法を覚えるのと同じで、魔法名が分からないなら使えないのだ。

 

 ただ騎士団でもゲートポータルが使えるプリーストなどはいたはずだが、その辺がずっと疑問だったので尋ねる。

 

「プリーストやその上のアークプリーストはいるが、魔法名を知らなかったからな。覚えられない。これで聖騎士共が使っていた魔法が分かったからな! 強く出られる!」

 

 そんな感じでずっと隠しているのは無理なんじゃね? とラシアが考えていると、パルサーが少し教えてくれた。

 

 その辺は本当に徹底したらしい。騎士団が秘匿しているスキルもあるし、聖騎士にもそういう物がある。その一つがゲートポータルとのことだ。

 

 思うところはあるが……良いところも悪いところも含めての伝統なのだから、部外者が口を出すことではないなと思う。

 

「私の方はお金もらえたらなんでも良いですね。ですけど、できたら冒険者の方にも情報を流してもらえたらと思います。帰還方法が増えるだけで死者も減るので」

 

「それいいな。さすがホワイトナイト。今のうちに買い占めて発表したら高値で売るか! 騎士団も金欠だしな」

 

「うぉい! 騎士団! 正義は何処いった!」

 

「俺が正義だ!」

 

 そして様々なことを話し合い、お互いに損がないように調整した。

 

 ラシアはアイテムなどを買い取ってもらい、余力を持って一千万セルの大金を入手した。

 

 それで話し合いも終わり、デゴットも仕事に戻ったので、ラシアもパルサーと一緒に退出する。

 

 だが、少しタイミングを狙う。

 

 デゴットが難しそうな資料を見ながら紅茶を含んだタイミングだ。

 

「では、ご主人様。失礼いたします」

 

「ぶふっ!」

 

 作戦は成功だ。デゴットは紅茶を吹き出した。

 

「おい! ホワイトナイト!」

 

 ラシアとパルサーは無視してエントランスへと向かう。するとおやっさんとティアも墓参りが終わったようで戻ってきていた。

 

「パルサーさん……色々とありがとうございました。今度暇な時でいいので、ローウェンテニアと騎士団の関係を教えてください」

 

「色々と忙しいからな。仕方がない。また行こう」

 

 姫様にゲートポータルを宿へと繋いでもらい、もう一度礼を言ってからラシア達は宿へと戻った。

 

 そして翌日を迎え、ラシアはクランを設立した。

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