ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第82話 クラン結成

 ラシアが騎士団長のデゴットと話をしていた頃……

 

 ティアは王都にある共同墓地に父親と来ていた。

 

 母親は、ティアが生まれてすぐに亡くなったと父親から聞いている。

 

 父親は何も言わずに、たくさんの文字が浮かび上がっている黒い大きな石の前に花を置いた。

 

 嬉しいような寂しいような、ティアには分からない顔をしていた。

 

 普段より綺麗な服を着ている。

 

「お父さん。今日はどうして連れてきてくれたの?」

 

「ん? 分からん。そんな気分だな。セレットと再婚した時も来たが……ティアを一度連れて来たかったからな」

 

「ここにお母さんがいるの?」

 

「いや。いないな。名前だけだ。いたら文句の一つと感謝の一つも言いたいが……いないからどうしようもない」

 

「そっかー……お母さんはどんな人だったの?」

 

 娘の一言に、父親の記憶が蘇る。

 

 ……

 

「そこの山賊! 私のクランに入りなさい! そして武器を鍛えてほしいの!」

 

「誰が山賊だ! 死ねっ!」

 

 ……

 

「貴方は……老け顔だからおやっさんって呼んだ方がいい?」

 

「お前はマジで一回ぶち殺すぞ?」

 

 ……

 

「見て見て! ロック何とかって岩を落とすスクロールを手に入れた!」

 

「おい。絶対に! ここで開くなよ!」

 

 ズドン……ガラガラ……

 

 ……

 

「ヘイ、頭! あなたはもっと女性の気持ちを考えて物言うべきね! いつか大変な目に遭うわ!」

 

「心にチ○コついてる奴の言う台詞じゃねーよな!」

 

 ……

 

「見て見て! メテオなんとか何とかいう岩が飛んでくるスクロールを手に入れた!」

 

「おい! 馬鹿女! この前のことを忘れたのか! お前床に穴開けただろうが!」

 

 ドゴーン! ……ガラガラガラ……

 

 ……

 

「やーい! 私の魅力に負けてようやく手を出したか! ばぁかめ!」

 

「……おい。お前らこいつ沈めるから手伝え!」

 

「へい、頭!」

 

 ……

 

「この子の名前はティアにしようと思うの……私にそっくりで可愛いでしょ?」

 

「アホか……俺似だろう! どっから見ても!」

 

 ……

 

「……ティアをお願いね。それから……ごめんね」

 

 …………

 

「かなり腹立つが……ラシアに似てるな。ムカつくところとかそっくりだ。お前のお母さんだぞ。あいつより美人だったな」

 

「そっかー」

 

 ティアはそれ以上何も言わずに目を瞑り、手を合わせた。父親もそれに合わせて目を瞑り、手を合わせた。

 

 会話をするように、長い時間目を閉じた。

 

 そして二人は、同じタイミングで目を開けた。

 

「よし……帰るか。って言ってもデゴッパチの家だがな」

 

「うん! 少し王都見てから行きたい!」

 

 迷子になるなよと笑いながら、父親は振り返り先を歩く。ティアもそれに釣られて振り返ろうとするが、一瞬だけ温かい風が吹いた。

 

 その風が吹いた方向に目を向けると、自分と同じ髪色の女性が立っていた。

 

『ティア。お父さんと、新しいお母さんと、お姉ちゃんと仲良くね!』

 

 そしてもう一度強風が吹き、その強さにティアが目を瞑ると、その女性は消えていた。

 

「おーい。ティア。何やってんだ。行くぞー」

 

「お父さん待ってー」

 

 今日は偶然にも、ティアの母親が亡くなった日だった。

 

 ……

 

 …………

 

 ラシアはデゴットに情報や魔石などを売って作ったお金を持って、冒険者ギルドの応接室に来ている。

 

 元の世界で千万円とか大金があったら、百万ぐらい課金してみたいとは思うが……この世界に課金要素はない。

 

 仮に貴族様に一千万セルを課金しても、たぶんそんなに変わらないので意味はない。

 

 大きくため息をつくと、ラシアの担当になった受付嬢がラシアからお金を受け取り、手続きを始める。

 

 そんな難しい手続きではなく、すぐに終わった。そして最後に受付嬢はラシアに一枚の紙とペンを渡した。

 

「ラシアさん。クラン名を書いていただけますか?」

 

「どんなのでも良いです?」

 

 問題ありませんとのことなので……ラシアは適当に書いていく。

 

「じゃあ……ラシア自由連合で」

 

「ダサいので却下」

 

 なんでもいいと言ったのにという感想の前に……冗談を言い合える仲になったことを嬉しく思うが……ストレスのせいもあるんだなーと思う。

 

「ラシアさんは今話題の白の騎士なんですから、その辺も含めてお願いします」

 

「名前など私が進んだ後についてくるので何でも良い! クラン名に意味などない!」

 

「……」

 

「すみません……LLLでスリーエルで大丈夫ですか?」

 

「それなら大丈夫ですね。それで登録させていただきます」

 

 ラシアが好きなアニメの組織名から拝借していじったものだ。決してラシア・自由(リバティ)連合(リーグ)ではない。

 

 そして無事に受理され、グオンからクラン合併の書類をもらっていたので、それもついでにやってもらう。

 

 これでクランの完成だ。十名からなるクランの結成となる。

 

 この人数だと家を借りた上で、その場所をギルドに伝えるのだが……急遽作ったものなのでそんな場所はない。今、寝泊まりしている宿を教えておく。

 

 本来ならこんなすぐにクランができるわけではないのだが……大公様のご命令なので、ラシアもギルド側も本当に早い。

 

 知らないところで色んな人が被害を被っているんだろうなーとラシアは思う。

 

「これで全ての手続きが終わったので、デルパロア様の方にも連絡を入れます。ラシアさんから伝えることはありますか?」

 

「お前、あんまり調子に乗るなよ? って言っといてもらえますか?」

 

「分かりました。明日の朝にはギルド前に二人仲良く晒し首になってると思うので、仲良く並びましょう」

 

 冗談ではなく、そんなことを言おうものなら確実にそうなる。だからラシアも受付嬢も同じタイミングで大きくため息をついた。

 

「あと、全体的にラシアさんの能力を見たいからだろうと思いますが、ラシアさんを含めて最低三人で行って欲しいとのことです」

 

「……ダンジョンも決まってないのに無茶では? しかも今日できたばかりですよ?」

 

「ラシアさん。諦めてください。前にも言ったアレです」

 

 国王の次に偉い人が他人の都合なんか知るはずもないってヤツだ。ラシアも受付嬢も、また同じタイミングでため息をつく。

 

 それから細々とした話し合いをして、ようやくギルドを出ることができた。何処のダンジョンに行けなどの通達はすぐに来るだろうから、待って欲しいとのことだ。

 

 ラシアは宿に戻りながら考える。無茶を言われた時のためだ。上級ダンジョンなら場所にもよるが……そんなに問題はない。

 

 だが問題は超級ダンジョン。ここはラシアが本来行くダンジョンだ。ゲームでもここ。

 

 差はあるが超級などどれでも一緒だ。モンスターが強く、アイテムをよく落とし、経験値が大量に入る。

 

 中級ダンジョンのボスより遙かに強い雑魚が出てくるのが超級。

 

 もしここに行けとか言われたら……どうすんの? って話だ。ラシアが思っている編成はラシア、ノア、グオン。これは何処でも確定。

 

 はっきり言ってラシア以外は耐えられない。グオンを装備で固めてギリギリとかそんなレベル。

 

 何がダメかというと……属性攻撃の検証が終わってないから分からないのだ。

 

 簡単な例だと、水魔法防御にお湯ぶっかけたらどうなるの? とかそんなの。たぶんかなり重要だから、時間をかけて調べたい。

 

 でも今は時間がないので本当に無理……。大公側から派遣される人物が超級に行ける人物とかなら……確実にノア達は死ぬので行かせられない。

 

 本当は嫌だが……姫様に出てもらうしかない。姫様の職業はアポカリプス。聖職者系の最上位職になる。

 

 そして元NPCだからゲームでよくある、プレイヤーが取れないはずのスキル取りとかもあるので確実に強い。だから本当の切り札。

 

 だけど……姫様には穏やかに生きてもらいたいので……というか姫を戦わせる騎士とか、給料もらって働かない社会人よりひどいわけで……

 

 頼むから超級はなしの方向でと考えていると、宿へとたどり着いたが……なんかグオンやダードといった者達が忙しそうに近くにある家に荷物を運び込んでいた。

 

 近くでおやっさんが気難しそうにたばこを吸って眺めていたので、ラシアはそのことを質問する。

 

「おやっさん。あれはどうしたの?」

 

「麗しの姫様の仕業」

 

 なんとなく言いたいことは分かったが……詳しく尋ねると、いつの間にか近くにあった空き家を安く売ってもらっていたそうだ。

 

 本来は寝泊まりだけさせる宿の二号店みたいな感じにする予定だったらしいが、ラシアがクランを結成し、合併したので、グオン達にここを使ってもらうとのこと。

 

 それから今まで宿で住み込みで働いていた者達も、ここから通うことになる。十分に広いのでいけるとのことだ。

 

 おやっさんは止めようとしたが、グオン達はSとA冒険者の集まりだから、いるだけで地域の防犯にもなる。

 

 それに宿の空いた部屋にはノアとティアが一緒に入って、家族が一緒にいる方が良いと正論を言われて言い返せなかったとのことだ。

 

「あー。おやっさんの部屋って狭いのに三人で寝てたもんね」

 

「グオン達も格安で一軒家借りられるし、従業員もグオン達に守ってもらえるだろ? 冒険者いるところに泥棒に入る馬鹿はいないしな……姫様に言い返すにしても隙がねぇ」

 

「へい。頭! これは何処に運びましょう!」

 

「誰が頭だ! 入り口の方にはこんどけ!」

 

 グオン達も基本的に厳つい顔なので、それがおやっさんを頭とか呼ぶともう似合い過ぎてそうとしか思えないとラシアは笑う。

 

「おう。ラシア。何笑ってるんだ。言いたいことあるんなら言え」

 

「……今晩はお楽しみですね?」

 

 ティアとノアが同じ部屋になるなら、おやっさんとセレットは二人だ。つまりそういうことだと納得していると……ラシアの目からお星様が飛び出た。

 

「はっ倒すぞ! このドアホが!」

 

「いった!! 本当のことなのに! 殴らなくていいのでは!」

 

 片付け等が終わってから、クランを立ち上げたことを皆に伝え、小さな祝勝会が開かれた。

 

 そして大公からの依頼はまだなので、その間にノアの装備などを整えることになる。

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