ロマン職は異世界から帰りたい   作:庶民ザウルス三世

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第98話 報告

 

 ラシアは王都の町中を歩いている。理由はあれ。深緑のダンジョンの中にある村のNPCがいなかったからだ。

 

 あの司祭は、人をモンスターに変える魔法というか方法を知っている。そんなNPCがこの世界で人になっていたらと考えると……

 

 ここでラシアの人付き合いの希薄さが出てくる。相談できる人が少ないのだ。

 

 おやっさん、セレット、姫様に相談したら……とりあえずパルサーの所に行ってこいとなったので、パルサー宅に向かっている。

 

 ティーガーやロディーでも良かったが……申し訳ないが、まだ信用できない。どちらかが連れ出したとかもあると思う。

 

 それを言い出したら……騎士団もそうでは? となるかもしれないが……そうなると誰も信用できないし、社会人に必須な小松菜ができないのだ。

 

 困ったら、できる奴に投げる。ほうれん草も大事だけど、社会人になったらこっちも大事だから覚えておいて欲しい。一人でできることはたかが知れているのだ。

 

 ラシア的にはこの案件は任せる方向でいきたい。知らない世界で一人のNPCを探すとか無理だ。

 

 何が駄目かというと……あの司祭は自分が神だと思っていること。何をやっても許されると普通に思っている。思っているというより、それが当たり前。

 

 あの村もその司祭が作った設定だ。人を魔物にするとか、その逆も実験している場所。

 

 村の人がどうして人を食べるのか? ほぼそれが完成していて失敗作の成れの果てで人と魔物の間だからという設定。

 

 白ナマズは戦闘型。設定上は未完成。

 

「……異世界に来たら俺つぇぇぇして問題はすぐに解決、みたいな話は何処へ行った?」

 

 そんな文句を言ってため息をついていると、ようやくパルサーの屋敷が見えて来た。流石はパパが騎士団長というだけあって家がデカい。爵位はどれぐらいなのかな? とは思うが、爵位を持ってるだけで凄いので失礼が無いように注意したい。

 

 門を守っている兵士に新しいメイドか? というような顔をされるが……メイド服を着ている冒険者です。

 

 名を名乗り、パルサーかデゴットがいるなら取り次ぎをお願いするように頼むと、兵士達もラシアのことは聞いていたようで、ものすごく丁寧に対応された後に屋敷へと走っていった。

 

「なるほど……流石は白の騎士様。まさか誰もメイドの姿をしているとは思っていないでしょう」

 

 服が無いからですとは言えないし、言ってはいけない雰囲気がある。だからそれに乗っかっておこうとラシアは思う。

 

「ふふっ……そういうことです」

 

 内心はどういうことです? と思っていると、先ほどの兵士が戻って来た。デゴットが話を聞いてくれるそうだ。

 

 ラシアは兵士に礼を言って、その後ろをついて行く。前に来た時も思ったが……丁寧に手入れされている綺麗な屋敷だなと思う。

 

 大きな扉を抜けて兵士について屋敷の中を進んで行くと……

 

 ドレスを着たとても綺麗な女性が、階段の上から兵士に話しかける。

 

「慌てていたようだが……誰か……きたぁっ!?」

 

 ラシアを見た瞬間に、大慌てで何処かへと行ってしまった。

 

(パルサーさんに似てたけどお姉さんかな? ……姫様と渡り合えそう……まぁパルサーさんも美人さんだし。この家の遺伝子は強いな)

 

 なんてことを考えているとデゴットの書斎にたどり着き、兵士が声をかけると中から返事があったので、ラシアは中へと入っていく。

 

 兵士はデゴットとラシアに頭を下げて、持ち場へと戻っていった。

 

「うーん……何回見ても面白いが……お前さんの立場を考えると笑っていいレベルじゃないんだよな。ラシア殿かラシア様って言った方がいいのか?」

 

 パルサーからこの前の話を聞いたのだろう。こればかりは仕方が無い。言ってない方がおかしいのだ。

 

「昔のことを持ち出しても仕方が無いですし……この世界にはこの世界のルールがあるのでラシアで大丈夫ですよ。敵対されても困りますけど、デゴットさんの方が目上で社会的な信用もありますから」

 

「なるほどな……じゃあ今まで通りで良いか?」

 

 はい。それでお願いしますとラシアが言うと、溜めていたものが噴き出したかのように、デゴットはラシアのメイド服姿を見てまた大笑いした。

 

 そして落ち着くまで待って話に入る。

 

「あーおもろ。それで? お前さんの扱いというか方向性はある程度話し合ったから聞くか? というかそれを聞きに来たんだろ?」

 

「あー……それは凄く聞きたいんですが、別件ですね。デゴットさんは深緑のダンジョンの中にある村を知っていますか?」

 

「あそこか……知っているし行ったこともある。管轄は聖騎士だがな……行方不明者の関係か? というかラシアなら白ナマズの正体を知ってるだろ?」

 

 騎士団のトップが知らないというのはおかしい話なので、話が早い。司祭のことを尋ねると、話もしたことはあるし、何度も見たことがあるとのことだ。

 

「まさか……あの狂人がいなくなってるとは言わないよな?」

 

「……昨日、村の方に行ったらいなくなっていて、フウコウさんにも聞いたら見たことがないとのことなので、今日は来ました。フウコウさんはガロニアって方に雇われている冒険者ですね」

 

 あまりの出来事に、デゴットは頭に手を当てて悩む。そして……大きく息を吸い込んだ後にキレた。

 

「あの! アホどもがぁぁぁぁ!」

 

 あまりの声の大きさに部屋の窓ガラスが割れ、話は一時中断となった。

 

 何事かと大慌てでパルサーがやってきた。

 

「とっ、父さん! どうした!」

 

 肩で息をしているデゴットはとりあえず冷却させておいて、ラシアはパルサーに挨拶をしてから、深緑のダンジョンで見たこと、あったことを伝えた。

 

「なるほどな……私は行ったことは無いが、話としては聞いている。だが司祭がいるとは聞いたことがない……司祭だろう? そんなに危ない人物か?」

 

「えっと……デゴットさん、何処まで話して大丈夫です?」

 

「全部話していいぞ。俺もラシアの意見は聞きたい」

 

 ラシアはパルサーに、ゲームでの知識にはなるが全てを話した。教会の地下に色々あること、その全てが司祭の作ったものだということ……いつからいなくなっているかも分からないこと。

 

「フウコウさんが知らないとのことで、おやっさんとセレットが知っているとのことなので、ある程度は絞れるとは思いますけど……」

 

 ラシアの話を聞いて、パルサーの頭も痛そうだ。なんというか仕草がデゴットにそっくりなので、親子だなーと思う。

 

「父さん。どうする? すぐに騎士団を招集させるか?」

 

「いや……焦って動いたところでだ。お前もここで話を聞いて、自分なりに考えておけ……よく教えてくれたのはいいが、どうやって連れ出したんだ?」

 

「その辺はどうなんですか? ゲートポータルがあるからコソッと連れ出せるのでは?」

 

「騎士団はゲートポータルの存在を最近までは知らなかったが……ダンジョンから人やモンスターを連れ出す時は、この世界の人間が連れてポータルを抜けないと、この世界には連れてこれない」

 

 それを聞いて、ラシアは少し思ったことがある。ゲームでも帰還石やゲートポータルでダンジョンから街に帰る時はプレイヤーだけ。街にはモンスターもNPCも連れて行けない。その設定がこの世界にも生きているのだろうという感じだ。

 

 じゃあ、リレッサは? となるが、もしかしたら先に冠の中に入っていた魂を連れてきたので、セーフ扱いになったのかなーとラシアは思う。

 

「だから……ティーガーさんがかなり私のことで慌てていたんですね。ゲートポータルで連れ出せるならやりたい放題ですし」

 

「そういうことだ……だけど父さん。そんな危険な村を放置でいいのか?」

 

 デゴットは大きく息を吐き出して、パルサーに伝える。パルサーが生まれる前のことだが……何度も滅ぼしていると。

 

 騎士団と聖騎士で合同で、何度も村を焼き払い、司祭も倒し、地下の施設も徹底的に破壊した。

 

 だけど……次の日には復活している。何度やってもだ。

 

 ダンジョンが次の日には元に戻っているように、あの村も何をしても戻っている。

 

 しかも司祭がかなり強い。倒せなくはないが……犠牲は確実に出る。こちらだけが被害を受けて、向こうは次の日には元に戻っている。

 

 割に合わないのだ。だから……国としては関わるのをやめた。

 

 村を閉鎖しようと何かを持ち込んでも、次の日には無くなっている。騎士達をあんな危険な場所に置いておくことはできない。

 

 冒険者達にも行くなといくら言っても無意味だ。罰則をつけようが行く奴は行く。だから危ないという話だけは流してある。それで行くなら言うだけ無駄だという判断だ。

 

「かといって……放置する訳にもいかんからな。定期的に巡回に行くように聖騎士に任せてある。白ナマズが出てもあいつは闇属性だから、聖騎士の方がいいだろ? 危ない奴もいるが……」

 

「あーそこは少し注意した方がいいですよ。闇ですけど、元になった人の強さで色々変わりますし……」

 

「頭痛い! ラシア、お前ホワイトナイトパワーで再生しないように焼き払ってくれ」

 

「できたとして……司祭を探す方が先では?」

 

「正論言うな正論」

 

 そしてその話はしばらく続き、ある程度のことが決まってから、デゴットはラシアの扱いがどうなったのかを話し始めた。

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