少しおかしな艦娘達と提督が生きるために 作:大和
――航路奪還・第一段階完了、しかし代償は大きく
海はようやく静けさを取り戻していた。
だが、その静けさは“勝利の余韻”ではなく――
疲労と痛みの沈黙だった。
玲奈は艦隊の状況を確認しながら、胸が締め付けられる思いだった。
「……大和、小破。
暁、軽傷。
雪風、精神的疲労大。
冬月、軽度の損傷。
島風、脚部艤装ユニットに歪み……」
鳳翔が静かに言う。
「提督……皆、限界に近いです」
玲奈は深く息を吸った。
(勝った……でも、これは“勝利”と言えるの?)
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◆ 帰還――沈黙の桟橋
鎮守府に戻ると、桟橋は静まり返っていた。
誰も出迎えに来ない。
それが、この鎮守府の“現実”だった。
大和はゆっくりと歩きながら、玲奈に言う。
「玲奈さん……申し訳ありません。
私がもっとしっかりしていれば……」
玲奈は首を振った。
「あなたは十分すぎるほど戦ったわ。
あなたがいなければ、誰かが沈んでいた」
大和は目を伏せた。
「……でも、私は盾です。
守れなければ……意味がありません」
玲奈は大和の手を握った。
「あなたがいたから、誰も沈まなかった。
それが“意味”よ」
大和の瞳に、わずかに光が戻った。
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◆ 鳳翔の疲労
鳳翔は艦載機の整備をしながら、ふらりとよろめいた。
「鳳翔さん!」
暁が駆け寄る。
鳳翔は微笑んだ。
「大丈夫ですよ……少し疲れただけです」
だが、その顔色は明らかに悪い。
雪風が心配そうに言う。
「鳳翔さん……無理しないでください……」
鳳翔は優しく雪風の頭を撫でた。
「ありがとう、雪風さん。
でも……皆さんを守るのが、私の役目ですから」
玲奈は胸が痛んだ。
(鳳翔さん……あなたに頼りすぎている)
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◆ 敵の“異常強化”の分析
青葉が資料を抱えて駆け寄ってきた。
「提督! 敵の残骸を分析したんですが……
これ、ただの深海棲艦じゃありません!」
玲奈は資料を受け取り、目を通す。
「……装甲材質が違う。
内部構造も……まるで“人工的”……?」
冬月が静かに言う。
「……誰かが、深海棲艦を“作ってる”」
暁が震える。
「そんな……深海棲艦って、自然発生じゃ……?」
玲奈は唇を噛んだ。
「自然発生じゃない。
“誰かが意図的に強化している”」
島風は不安そうに言う。
「じゃあ……これからもっと強い敵が出るの……?」
玲奈は答えられなかった。
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◆ 司令部からの通信
その時、通信室から青葉が叫んだ。
「提督! 司令部から通信です!」
玲奈は急いで通信室へ向かう。
画面に映ったのは、冷たい声の司令部将校だった。
『高野提督。
第一段階の制圧を確認した。
引き続き第二段階へ移行せよ』
玲奈は眉をひそめた。
「第二段階……?
補給は? 修理資材は?
この状態で続行は――」
『補給は予定していない。
現有戦力で遂行せよ』
玲奈の拳が震えた。
「ふざけないで……!
この子たちは限界よ!
このままじゃ――」
『命令だ。
以上』
通信は一方的に切られた。
玲奈はしばらく動けなかった。
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◆ 艦隊の反応
暁が不安そうに言う。
「て、提督……どうするの……?」
雪風は震えながら言う。
「雪風……怖いです……」
冬月は静かに言う。
「……無茶」
島風は涙目で言う。
「島風……みんなと走りたいのに……
これじゃ……沈んじゃうよ……」
鳳翔は玲奈の肩に手を置いた。
「提督。
私たちは……あなたの判断に従います」
大和も静かに言う。
「玲奈さん。
あなたが“進む”と言うなら、私は盾になります。
あなたが“止まる”と言うなら、私はここに立ちます」
玲奈は深く息を吸い、皆を見渡した。
「……わかったわ。
第二段階には進む。
でも――」
玲奈は強く言った。
「補給が来ないなら、私たちで補給を確保する。
――“補給途絶”に備えるわ」
艦娘たちの表情に、わずかに光が戻った。
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◆ 第三章・完
こうして、
航路奪還作戦・第一段階は成功した。
だがその代償は大きく、
艦隊は疲弊し、
司令部は冷酷で、
敵は異常に強化されている。
そして――
補給は途絶える。