少しおかしな艦娘達と提督が生きるために   作:大和

14 / 29
第4話-代償-

――航路奪還・第一段階完了、しかし代償は大きく

 

海はようやく静けさを取り戻していた。

だが、その静けさは“勝利の余韻”ではなく――

疲労と痛みの沈黙だった。

 

玲奈は艦隊の状況を確認しながら、胸が締め付けられる思いだった。

 

「……大和、小破。

 暁、軽傷。

 雪風、精神的疲労大。

冬月、軽度の損傷。

 島風、脚部艤装ユニットに歪み……」

 

鳳翔が静かに言う。

 

「提督……皆、限界に近いです」

 

玲奈は深く息を吸った。

 

(勝った……でも、これは“勝利”と言えるの?)

 

---

 

◆ 帰還――沈黙の桟橋

 

鎮守府に戻ると、桟橋は静まり返っていた。

誰も出迎えに来ない。

それが、この鎮守府の“現実”だった。

 

大和はゆっくりと歩きながら、玲奈に言う。

 

「玲奈さん……申し訳ありません。

 私がもっとしっかりしていれば……」

 

玲奈は首を振った。

 

「あなたは十分すぎるほど戦ったわ。

 あなたがいなければ、誰かが沈んでいた」

 

大和は目を伏せた。

 

「……でも、私は盾です。

 守れなければ……意味がありません」

 

玲奈は大和の手を握った。

 

「あなたがいたから、誰も沈まなかった。

 それが“意味”よ」

 

大和の瞳に、わずかに光が戻った。

 

---

 

◆ 鳳翔の疲労

 

鳳翔は艦載機の整備をしながら、ふらりとよろめいた。

 

「鳳翔さん!」

暁が駆け寄る。

 

鳳翔は微笑んだ。

 

「大丈夫ですよ……少し疲れただけです」

 

だが、その顔色は明らかに悪い。

 

雪風が心配そうに言う。

 

「鳳翔さん……無理しないでください……」

 

鳳翔は優しく雪風の頭を撫でた。

 

「ありがとう、雪風さん。

 でも……皆さんを守るのが、私の役目ですから」

 

玲奈は胸が痛んだ。

 

(鳳翔さん……あなたに頼りすぎている)

 

---

 

◆ 敵の“異常強化”の分析

 

青葉が資料を抱えて駆け寄ってきた。

 

「提督! 敵の残骸を分析したんですが……

 これ、ただの深海棲艦じゃありません!」

 

玲奈は資料を受け取り、目を通す。

 

「……装甲材質が違う。

 内部構造も……まるで“人工的”……?」

 

冬月が静かに言う。

 

「……誰かが、深海棲艦を“作ってる”」

 

暁が震える。

 

「そんな……深海棲艦って、自然発生じゃ……?」

 

玲奈は唇を噛んだ。

 

「自然発生じゃない。

 “誰かが意図的に強化している”」

 

島風は不安そうに言う。

 

「じゃあ……これからもっと強い敵が出るの……?」

 

玲奈は答えられなかった。

 

---

 

◆ 司令部からの通信

 

その時、通信室から青葉が叫んだ。

 

「提督! 司令部から通信です!」

 

玲奈は急いで通信室へ向かう。

 

画面に映ったのは、冷たい声の司令部将校だった。

 

『高野提督。

 第一段階の制圧を確認した。

 引き続き第二段階へ移行せよ』

 

玲奈は眉をひそめた。

 

「第二段階……?

 補給は? 修理資材は?

 この状態で続行は――」

 

『補給は予定していない。

 現有戦力で遂行せよ』

 

玲奈の拳が震えた。

 

「ふざけないで……!

 この子たちは限界よ!

 このままじゃ――」

 

『命令だ。

 以上』

 

通信は一方的に切られた。

 

玲奈はしばらく動けなかった。

 

---

 

◆ 艦隊の反応

 

暁が不安そうに言う。

 

「て、提督……どうするの……?」

 

雪風は震えながら言う。

 

「雪風……怖いです……」

 

冬月は静かに言う。

 

「……無茶」

 

島風は涙目で言う。

 

「島風……みんなと走りたいのに……

 これじゃ……沈んじゃうよ……」

 

鳳翔は玲奈の肩に手を置いた。

 

「提督。

 私たちは……あなたの判断に従います」

 

大和も静かに言う。

 

「玲奈さん。

 あなたが“進む”と言うなら、私は盾になります。

 あなたが“止まる”と言うなら、私はここに立ちます」

 

玲奈は深く息を吸い、皆を見渡した。

 

「……わかったわ。

 第二段階には進む。

 でも――」

 

玲奈は強く言った。

 

「補給が来ないなら、私たちで補給を確保する。

 ――“補給途絶”に備えるわ」

 

艦娘たちの表情に、わずかに光が戻った。

 

---

 

◆ 第三章・完

こうして、

航路奪還作戦・第一段階は成功した。

 

だがその代償は大きく、

艦隊は疲弊し、

司令部は冷酷で、

敵は異常に強化されている。

 

そして――

補給は途絶える。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。