少しおかしな艦娘達と提督が生きるために 作:大和
第1話-現状-
――現状確認会議
執務室の窓から、荒れた海が見えた。
波は高く、風は冷たい。
この鎮守府の“過酷さ”を象徴するような景色だった。
高野玲奈は、机の上に広げた資料を見つめていた。
艦娘の名簿、練度、装備、資材、燃料、弾薬――
どれを見ても、ため息しか出ない。
「……これ、本当に艦隊って呼んでいいの?」
思わず漏れた独り言に、大和が静かに答える。
「呼んでいいかどうかではなく……呼ぶしかないのです、玲奈さん」
玲奈は苦笑した。
大和の言葉はいつも優しいが、現実は容赦ない。
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◆ 会議開始
執務室に集まったのは、10人の艦娘たち。
全員が緊張した面持ちで、玲奈の言葉を待っている。
玲奈は深呼吸し、資料を閉じた。
「まずは……現状を共有するわ。
あなたたちも薄々感じていると思うけど――
この艦隊は、半個艦隊にも満たない」
ざわり、と空気が揺れた。
「1個艦隊は24人。
半個艦隊は12人。
でも、ここにいるのは10人だけ」
暁が不安そうに手を挙げる。
「て、提督……わ、私たちじゃ……足りない、ってこと?」
玲奈は首を振った。
「足りないのは“数”じゃない。
“戦える状態”の子が少なすぎるのよ」
その言葉に、艦娘たちの視線が床に落ちた。
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◆ 個別の問題
玲奈は一人ひとりの顔を見渡す。
「暁。あなたは前の鎮守府で唯一の生存者。
そのショックがまだ抜けていない」
暁は唇を噛んだ。
「雪風。あなたは……帰ってくるたびに、誰かを失ってきた」
雪風は笑顔を作ろうとしたが、目が笑っていなかった。
「冬月。あなたは姉妹艦を全て亡くしている。
心が閉じているのは、無理もない」
冬月は無言で頷いた。
「島風。あなたは……その、精神的に幼い部分がある。
理由は聞かない。でも、戦闘では危険よ」
島風は「えへへ」と笑って誤魔化した。
「青葉は練度不足。
伊13はほぼ新人。
鳳翔さんは支援向きで、攻撃力は高くない」
玲奈は最後に、大和を見た。
「そして……大和。
あなたは強い。でも、あなた一人で艦隊は作れない」
大和は静かに頷いた。
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◆ 玲奈の本音
玲奈は机に手を置き、正直に言った。
「――このままじゃ、戦えない。
航路奪還なんて、夢物語よ」
艦娘たちの表情が曇る。
だが玲奈は続けた。
「でもね。
“戦えない”と“戦わない”は違う」
その言葉に、全員が顔を上げた。
「私は中央に逆らってここに来た。
でも、それは逃げたんじゃない。
“正しいと思う戦い方をしたい”からよ」
玲奈は胸に手を当てた。
「あなたたちも事情を抱えている。
でも……私はあなたたちを見捨てない。
絶対に」
静寂が落ちた。
その静寂を破ったのは、鳳翔だった。
「……提督。
まずは、何から始めましょうか?」
玲奈は微笑んだ。
「基礎訓練よ。
まずは“艦隊として動く”ことから始める」
大和が一歩前に出る。
「私が指揮補佐を務めます。
皆さん、どうか……力を貸してください」
暁が小さく手を挙げた。
「……が、頑張るわ。暁は一人前のレディだから!」
雪風も続く。
「雪風、幸運を届けます!」
冬月は静かに頷き、
島風は「走るの得意だよ!」と元気に手を振った。
青葉はカメラを構えながら笑い、
伊13は玲奈の後ろからそっと顔を出した。
玲奈はその光景を見て、胸が熱くなる。
(……この子たちなら、きっと立ち直れる)
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◆ 第一章の幕開け
「よし。
――今日から、この10人で艦隊を作るわ」
玲奈の宣言に、艦娘たちの表情が少しだけ明るくなった。
こうして、
“壊れた艦隊を立て直すための第一歩”
が始まった。