少しおかしな艦娘達と提督が生きるために 作:大和
エピローグ
――静寂の海、揺らぐ影
鎮守府は、静かだった。
戦いの傷跡は深く、
崩れた防壁、焦げた地面、
そして海岸に散らばる黒い破片が、
あの“要塞艦”の恐怖を物語っていた。
海風が吹くたび、
金属片がカラカラと音を立てる。
その音が、まるで“戦いの残響”のように響いた。
---
◆ 生き残った者たち
暁は桟橋に座り込み、海を見つめていた。
その瞳には、恐怖と、そしてわずかな誇りが宿っていた。
「……終わったの……?
それとも……まだ続くの……?」
雪風は隣に座り、小さく呟いた。
「雪風……怖いです……
でも……生きてる……
それだけで……嬉しいです……」
冬月は静かに言った。
「……戦いは終わっていない。
でも……生き残った。
それが……今は大事」
島風は脚部ユニットを抱えながら、
悔しそうに唇を噛んだ。
「島風……もっと速くなりたい……
もっと……みんなを守れるように……!」
鳳翔は壊れた艦載機を撫でながら、
静かに目を閉じた。
「皆さん……
どうか……次の戦いまで……
少しだけ……休んでください……」
彼女の手は震えていた。
だがその震えは、恐怖ではなく――
守れなかった悔しさだった。
---
◆ 大和の沈黙
大和は、砕けた装甲のまま、
玲奈の隣に立っていた。
その姿は痛々しく、
しかし誰よりも誇らしかった。
「玲奈さん……
あなたが進むなら……
私は……何度でも立ち上がります」
玲奈はその言葉に胸が締め付けられた。
(大和……
あなたを……これ以上傷つけたくない……
でも……あなたがいなければ……
私は……前に進めない)
大和は微笑んだ。
「私は……あなたの盾です。
それが……私の存在理由です」
---
◆ 大本営の“沈黙”
青葉が資料を抱えて駆け寄ってきた。
「提督……
本部長の所在……
大本営は“行方不明”と発表しました……」
玲奈は目を細めた。
「逃げたのね……
私たちが真実に近づいたから」
青葉は唇を噛んだ。
「提督……
大本営は……何かを隠しています。
本部長の記録も……
要塞艦計画の資料も……
全部“閲覧不可”にされました」
玲奈は静かに言った。
「……大本営は敵よ。
少なくとも、今の私たちにとっては」
青葉は息を呑んだ。
「提督……
それは……」
「事実よ。
私たちを守る気がないなら……
敵と同じ」
その言葉は、
玲奈が初めて見せた“怒り”だった。
---
◆ 夜の海に揺れる影
日が沈み、夜が訪れた。
鎮守府の灯りは少なく、
海は黒く沈んでいた。
玲奈は一人、海岸に立っていた。
(本部長……
あなたは何をしたの……?
どうして……こんな戦争を……?
深海棲艦を生み出し……
要塞艦を作り……
私たちを殺そうとした……
その理由を……必ず暴く)
その時――
海の向こうで、
一瞬だけ赤い光が揺れた。
玲奈は息を呑んだ。
(……見ている?
まだ……私たちを……?)
風が吹き、
海面がわずかに揺れた。
まるで、
“影が動いた”
かのように。
---
◆ そして、艦隊は歩き出す
大和が玲奈の隣に立った。
「玲奈さん……
次は……“追跡”です」
鳳翔も静かに言った。
「提督……
私たちは……あなたと共にあります」
暁、雪風、冬月、島風も集まり、
それぞれの傷を抱えながら、
玲奈を見つめていた。
玲奈は深く息を吸い、
静かに宣言した。
「――本部長を追うわよ。
この戦争を……終わらせるために」
海は静かだった。
だがその静けさは、
嵐の前の静寂だった。
そして――
艦隊は再び歩き出す。