少しおかしな艦娘達と提督が生きるために 作:大和
――暁、レディの影
朝の訓練場は、まだ冷たい潮風に包まれていた。
玲奈は腕を組み、艦娘たちの準備を見守っていた。
今日から本格的な基礎訓練が始まる。
まずは駆逐艦組の動きを確認する予定だった。
「暁、島風、雪風、冬月。
まずは基本の隊列移動から始めるわ」
「は、はいっ! 暁、頑張るわ!」
暁は胸を張って答えた。
その声は大きいが、どこか震えている。
島風は「はーい!」と元気に手を振り、
雪風はにこにこしながらも視線が泳いでいる。
冬月は無言で頷いた。
玲奈は大和と目を合わせる。
大和は静かに頷いた。
(……暁の様子、やっぱり気になるわね)
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◆ 訓練開始
「では、行くわよ。
暁、先頭。島風、二番手。雪風、冬月は後方支援位置」
「了解っ! 暁、レディとして皆を導くわ!」
暁は勢いよく走り出した。
だが――
「……っ!」
急に足が止まり、肩が震えた。
「暁?」
玲奈が声をかける。
暁は振り返らない。
ただ、震える声で呟いた。
「……また、私だけ……」
玲奈は眉をひそめた。
「暁、どうしたの?」
「……また、私だけ生き残ったら……どうしよう……」
その言葉に、訓練場の空気が凍りついた。
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◆ 暁の崩壊
暁は両手で頭を抱え、しゃがみ込んだ。
「前の鎮守府……みんな、みんな沈んで……
私だけ、私だけが……っ」
雪風が息を呑む。
冬月は目を伏せ、島風は困ったように足踏みした。
玲奈はゆっくりと暁に近づいた。
「暁。顔を上げて」
暁は首を振る。
「いや……いやよ……!
レディは泣かないのに……!
でも……怖いの……また一人になるのが……!」
その声は、幼い少女そのものだった。
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◆ 玲奈の言葉
玲奈はしゃがみ込み、暁の肩に手を置いた。
「暁。
あなたが生き残ったのは、罪じゃない」
暁は涙で濡れた目を見開く。
「で、でも……私だけ……!」
「生き残ったからこそ、今ここにいる。
あなたが生きてくれたから、私はあなたに会えた」
暁の呼吸が止まる。
玲奈は続けた。
「あなたは弱くなんかない。
怖いと思えるのは、ちゃんと仲間を大切にしている証拠よ」
暁の目から、ぽろりと涙が落ちた。
「……提督……」
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◆ 大和の支え
その時、大和がそっと暁の背中に手を添えた。
「暁さん。
あなたは一人ではありません。
ここには、玲奈さんがいて……私がいて……
仲間がいます」
暁は大和の大きな手を見つめた。
「……大和さん……」
「あなたが怖いと思うなら、私が守ります。
あなたが泣きたいなら、玲奈さんが受け止めます。
だから――もう、一人で抱えないでください」
暁は堰を切ったように泣き出した。
「う、うわあああああああん……っ!」
玲奈はそっと抱きしめた。
暁は小さな子供のように、玲奈の胸に顔を埋めて泣き続けた。
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◆ 訓練の再開
しばらくして、暁は涙を拭いた。
「……ごめんなさい、提督……
レディなのに、泣いちゃって……」
玲奈は微笑む。
「泣いていいのよ。
泣ける子の方が、強くなれる」
暁は小さく笑った。
「……うん。暁、頑張るわ。
今度は……みんなで帰ってくるために」
雪風が手を挙げる。
「雪風も、暁ちゃんを守るよ!」
島風が元気に叫ぶ。
「じゃあ島風は暁を引っ張る役だね!」
冬月は静かに言った。
「……一緒に、生きて帰ろう」
暁は涙の跡を残したまま、胸を張った。
「うんっ! 暁、レディとして頑張るわ!」
玲奈は満足げに頷いた。
(この子たちなら……きっと立ち直れる)
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◆ 第一章の流れが動き出す
「よし。
――訓練、再開するわよ」
暁は先頭に立ち、今度はしっかりと前を向いた。
こうして、
“壊れた艦隊の再生”の最初の一歩
が確かに踏み出された。