少しおかしな艦娘達と提督が生きるために 作:大和
――雪風、幸運の呪い
午後の訓練場は、潮風が少しだけ暖かくなっていた。
暁の涙の後、艦娘たちは少しだけ打ち解けたように見える。
玲奈は、次の訓練メニューを確認しながら呟いた。
「次は……回避行動の確認ね。
雪風、あなたの番よ」
「はーいっ! 雪風、幸運いっぱいで頑張ります!」
雪風はいつものように明るく手を挙げた。
その笑顔は眩しいほどで、周囲の空気を軽くする。
だが――
玲奈はその笑顔の“奥”に、微かな影を感じていた。
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◆ 回避訓練
「では、模擬弾を撃つわ。
雪風、回避行動を」
「了解ですっ!」
大和が模擬弾発射装置を操作し、雪風に向けて弾を放つ。
雪風は軽やかに跳ねるように動き、弾を避けていく。
その動きは――異常なほど正確だった。
「すごい……」
暁が呟く。
「雪風ちゃん、やっぱりすごいね!」
島風が目を輝かせる。
雪風は笑顔で手を振った。
「えへへ、雪風は幸運艦ですから!」
だが玲奈は、その動きを見て確信した。
(……これは“幸運”じゃない。
“死にたくない”っていう必死の動きだ)
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◆ 雪風の異変
訓練が終わった後、雪風は一人で海を見ていた。
風に揺れる髪が、どこか寂しげだった。
玲奈はそっと近づく。
「雪風。少し話せる?」
「えっ? はいっ! 雪風、なんでも話しますよ!」
いつもの笑顔。
だが、玲奈はその笑顔が“作り物”だと気づいていた。
「今日の回避行動……すごかったわ。
でも、あれは“慣れ”じゃないわよね?」
雪風の笑顔が、ほんの一瞬だけ固まった。
「……どういう意味ですか?」
「あなた、何度も艦隊が壊滅して……
そのたびに一人だけ帰ってきたんでしょう?」
雪風の肩が震えた。
「……はい。
でも、それは雪風が“幸運艦”だからで……」
玲奈は首を振る。
「違うわ。
あなたは“生き残るために必死だった”だけよ」
雪風の目が揺れた。
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◆ 雪風の告白
「……提督。
雪風ね……本当は、怖いんです」
雪風は海を見つめたまま、ぽつりと呟いた。
「みんな沈んでいくのを見て……
雪風だけ、帰ってきて……
“幸運艦だから仕方ない”って言われて……」
声が震える。
「でも……雪風は……
本当は……みんなと一緒に帰りたかった……!」
その言葉は、雪風の心の奥底から絞り出されたものだった。
「“幸運”なんて……いらない……
みんなが沈むくらいなら……
雪風も沈んだ方がよかった……!」
玲奈はすぐに雪風の肩を抱いた。
「そんなこと言わないで」
雪風は涙をこぼした。
「だって……雪風だけ……生き残って……
みんなの顔が……沈む瞬間の声が……
今でも、耳から離れないんです……!」
玲奈は雪風の頭をそっと撫でた。
「雪風。
あなたが生き残ったのは、罪じゃない。
あなたが悪いんじゃない」
雪風は玲奈の胸に顔を埋めた。
「……提督……雪風、どうしたらいいんですか……」
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◆ 玲奈の答え
玲奈は優しく言った。
「これからは、一人で帰ってこなくていい。
“みんなで帰る”ために戦うのよ」
雪風は涙を拭き、玲奈を見上げた。
「……みんなで、帰る……?」
「そう。
あなたの幸運は“呪い”じゃない。
“仲間を生かす力”に変えられる」
雪風の瞳に、少しだけ光が戻った。
「……雪風、頑張ります。
今度こそ……みんなで帰りたいです」
玲奈は微笑んだ。
「その気持ちがあれば、きっとできるわ」
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◆ 仲間たちの声
その時、暁が駆け寄ってきた。
「雪風! 一緒に帰るわよ!
暁はレディだから、仲間を見捨てないんだから!」
島風も手を振る。
「雪風ちゃん、今度は一緒に走ろうよ!」
冬月は静かに言った。
「……生きて帰るのは、みんなで」
雪風は涙を浮かべながら笑った。
「……うん。
雪風、みんなと帰りたい」
玲奈はその光景を見て、胸が温かくなった。
(この子たち……少しずつ前に進んでる)
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◆ 第一章の再生が進む
こうして、
雪風の“幸運の呪い”は、仲間と共に歩む力へと変わり始めた。
壊れた艦隊は、少しずつ――
確かに再生へ向かっていた。