少しおかしな艦娘達と提督が生きるために   作:大和

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第3話-雪風の-

――雪風、幸運の呪い

 

午後の訓練場は、潮風が少しだけ暖かくなっていた。

暁の涙の後、艦娘たちは少しだけ打ち解けたように見える。

 

玲奈は、次の訓練メニューを確認しながら呟いた。

 

「次は……回避行動の確認ね。

 雪風、あなたの番よ」

 

「はーいっ! 雪風、幸運いっぱいで頑張ります!」

 

雪風はいつものように明るく手を挙げた。

その笑顔は眩しいほどで、周囲の空気を軽くする。

 

だが――

玲奈はその笑顔の“奥”に、微かな影を感じていた。

 

---

 

◆ 回避訓練

 

「では、模擬弾を撃つわ。

 雪風、回避行動を」

 

「了解ですっ!」

 

大和が模擬弾発射装置を操作し、雪風に向けて弾を放つ。

雪風は軽やかに跳ねるように動き、弾を避けていく。

 

その動きは――異常なほど正確だった。

 

「すごい……」

暁が呟く。

 

「雪風ちゃん、やっぱりすごいね!」

島風が目を輝かせる。

 

雪風は笑顔で手を振った。

 

「えへへ、雪風は幸運艦ですから!」

 

だが玲奈は、その動きを見て確信した。

 

(……これは“幸運”じゃない。

 “死にたくない”っていう必死の動きだ)

 

---

 

◆ 雪風の異変

 

訓練が終わった後、雪風は一人で海を見ていた。

風に揺れる髪が、どこか寂しげだった。

 

玲奈はそっと近づく。

 

「雪風。少し話せる?」

 

「えっ? はいっ! 雪風、なんでも話しますよ!」

 

いつもの笑顔。

だが、玲奈はその笑顔が“作り物”だと気づいていた。

 

「今日の回避行動……すごかったわ。

 でも、あれは“慣れ”じゃないわよね?」

 

雪風の笑顔が、ほんの一瞬だけ固まった。

 

「……どういう意味ですか?」

 

「あなた、何度も艦隊が壊滅して……

 そのたびに一人だけ帰ってきたんでしょう?」

 

雪風の肩が震えた。

 

「……はい。

 でも、それは雪風が“幸運艦”だからで……」

 

玲奈は首を振る。

 

「違うわ。

 あなたは“生き残るために必死だった”だけよ」

 

雪風の目が揺れた。

 

---

 

◆ 雪風の告白

 

「……提督。

 雪風ね……本当は、怖いんです」

 

雪風は海を見つめたまま、ぽつりと呟いた。

 

「みんな沈んでいくのを見て……

 雪風だけ、帰ってきて……

 “幸運艦だから仕方ない”って言われて……」

 

声が震える。

 

「でも……雪風は……

 本当は……みんなと一緒に帰りたかった……!」

 

その言葉は、雪風の心の奥底から絞り出されたものだった。

 

「“幸運”なんて……いらない……

 みんなが沈むくらいなら……

 雪風も沈んだ方がよかった……!」

 

玲奈はすぐに雪風の肩を抱いた。

 

「そんなこと言わないで」

 

雪風は涙をこぼした。

 

「だって……雪風だけ……生き残って……

 みんなの顔が……沈む瞬間の声が……

 今でも、耳から離れないんです……!」

 

玲奈は雪風の頭をそっと撫でた。

 

「雪風。

 あなたが生き残ったのは、罪じゃない。

 あなたが悪いんじゃない」

 

雪風は玲奈の胸に顔を埋めた。

 

「……提督……雪風、どうしたらいいんですか……」

 

---

 

◆ 玲奈の答え

 

玲奈は優しく言った。

 

「これからは、一人で帰ってこなくていい。

 “みんなで帰る”ために戦うのよ」

 

雪風は涙を拭き、玲奈を見上げた。

 

「……みんなで、帰る……?」

 

「そう。

 あなたの幸運は“呪い”じゃない。

 “仲間を生かす力”に変えられる」

 

雪風の瞳に、少しだけ光が戻った。

 

「……雪風、頑張ります。

 今度こそ……みんなで帰りたいです」

 

玲奈は微笑んだ。

 

「その気持ちがあれば、きっとできるわ」

 

---

 

◆ 仲間たちの声

 

その時、暁が駆け寄ってきた。

 

「雪風! 一緒に帰るわよ!

 暁はレディだから、仲間を見捨てないんだから!」

 

島風も手を振る。

 

「雪風ちゃん、今度は一緒に走ろうよ!」

 

冬月は静かに言った。

 

「……生きて帰るのは、みんなで」

 

雪風は涙を浮かべながら笑った。

 

「……うん。

 雪風、みんなと帰りたい」

 

玲奈はその光景を見て、胸が温かくなった。

 

(この子たち……少しずつ前に進んでる)

 

---

 

◆ 第一章の再生が進む

 

こうして、

雪風の“幸運の呪い”は、仲間と共に歩む力へと変わり始めた。

 

壊れた艦隊は、少しずつ――

確かに再生へ向かっていた。

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