少しおかしな艦娘達と提督が生きるために   作:大和

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第4話-冬月の-

――冬月、沈黙の理由

 

夕暮れの訓練場は、赤い光に染まっていた。

今日の訓練は、駆逐艦組の連携行動。

 

暁は元気を取り戻し、雪風も少し明るくなった。

島風は相変わらず走り回っている。

 

だが――

冬月だけは、ずっと無言だった。

 

玲奈はその様子を見ながら、胸の奥がざわつく。

 

(……冬月。あなたの心は、まだ止まったままなのね)

 

---

 

◆ 訓練中の異変

 

「冬月、次はあなたの番よ。

 回避行動、やってみて」

 

玲奈が声をかけると、冬月は静かに頷いた。

 

「……了解」

 

大和が模擬弾を発射する。

冬月は――動かない。

 

「冬月、危ない!」

 

暁が叫ぶ。

雪風が息を呑む。

 

だが冬月は、弾がかすめる直前でようやく身体を傾けた。

その動きは遅く、ぎこちない。

 

玲奈は訓練を止めた。

 

「冬月、どうしたの?

 あなたならもっと動けるはずよ」

 

冬月は俯いたまま、ぽつりと呟いた。

 

「……動けません」

 

「どうして?」

 

「……動いても……意味がないから」

 

その言葉に、空気が凍りついた。

 

---

 

◆ 冬月の“空白”

 

玲奈は冬月を訓練場の端に連れていき、静かに問いかけた。

 

「冬月。

 あなた……前の鎮守府で、何があったの?」

 

冬月はしばらく沈黙していた。

風が吹き、髪が揺れる。

 

やがて、冬月は小さく口を開いた。

 

「……空襲でした。

 突然、警報が鳴って……

 気づいたら、姉さんたちが……」

 

声が震える。

 

「……みんな、いなくなっていました」

 

玲奈は息を呑んだ。

 

冬月は続ける。

 

「冬月だけ……生き残りました。

 でも……冬月は、何もできなかった。

 助けられなかった。

 だから……」

 

冬月は胸に手を当てた。

 

「……冬月の中は、空っぽなんです。

 何をしても……何を言われても……

 心が動かないんです」

 

玲奈はそっと冬月の手を握った。

 

「冬月。

 あなたは“空っぽ”なんかじゃない」

 

冬月は首を振る。

 

「……違います。

 冬月は……壊れています」

 

---

 

◆ 玲奈の言葉

 

玲奈は冬月の肩に手を置いた。

 

「壊れているなら、直せばいい。

 空っぽなら、また満たせばいい」

 

冬月は驚いたように玲奈を見た。

 

「……そんな簡単に……」

 

「簡単じゃないわ。

 でも、あなたは一人じゃない」

 

玲奈は微笑む。

 

「暁も、雪風も、島風も……

 みんな傷ついてる。

 でも、少しずつ前に進んでる」

 

冬月の目が揺れた。

 

「冬月。

 あなたの心が動かないなら……

 私が動かしてあげる」

 

冬月は息を呑んだ。

 

「あなたがもう一度笑えるように。

 もう一度、誰かを守りたいと思えるように。

 私はあなたを見捨てない」

 

冬月の目に、初めて“感情”が宿った。

 

「……提督……」

 

---

 

◆ 大和の支え

 

その時、大和が静かに近づいてきた。

 

「冬月さん。

 あなたが感じている痛みは……

 決して弱さではありません」

 

冬月は大和を見上げる。

 

「私は戦艦として、多くの仲間を失いました。

 そのたびに心が軋みました。

 でも……玲奈さんが支えてくれた」

 

玲奈は照れくさそうに笑う。

 

「だから……冬月さん。

 あなたも、誰かに支えられていいのです」

 

冬月は小さく震えた。

 

「……支えられて……いいんですか……?」

 

「もちろんよ」

玲奈が答える。

 

「あなたは一人じゃない」

 

冬月の目から、ぽろりと涙が落ちた。

 

「……冬月……もう一度……戦いたいです……

 みんなと……一緒に……」

 

玲奈は冬月を抱きしめた。

 

「その気持ちがあれば、十分よ」

 

---

 

◆ 仲間たちの声

 

暁が駆け寄る。

 

「冬月! 一緒に頑張ろうよ!

 暁はレディだから、仲間を支えるわ!」

 

雪風も手を握る。

 

「雪風、冬月ちゃんの幸運にもなるよ!」

 

島風は笑顔で言う。

 

「冬月ちゃん、走るの苦手なら島風が引っ張るね!」

 

冬月は涙を拭き、微笑んだ。

 

「……ありがとう。

 冬月……頑張ります」

 

玲奈はその姿を見て、胸が温かくなった。

 

(この子たち……本当に強い)

 

---

 

◆ 冬月の再生が始まる

 

こうして、

冬月の“空白”は、仲間の声で少しずつ満たされ始めた。

 

壊れた艦隊は、また一歩――

確かに前へ進んだ。

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