少しおかしな艦娘達と提督が生きるために   作:大和

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第5話-島風の-

――島風、速さの理由

 

朝の訓練場。

今日のメニューは「回避と連携の複合訓練」。

 

暁は前よりも安定し、雪風は笑顔に少しだけ本物の光が戻った。

冬月も、まだぎこちないが動きが良くなっている。

 

そして――

島風は、いつも通り元気いっぱいだった。

 

「提督ー! 島風、今日も速いよーっ!」

 

玲奈は苦笑しながらも、その動きを観察していた。

 

(島風……速すぎる。

 “速い”というより、“逃げている”ような……)

 

島風の動きは軽快だが、どこか不自然だった。

まるで何かから必死に逃げているような、そんな速さ。

 

---

 

◆ 訓練中の異変

 

「島風、次は雪風と連携して動いてみて」

 

「はーいっ!」

 

島風は雪風の横に立つ。

雪風は少し緊張した様子で島風を見る。

 

「島風ちゃん、よろしくね」

 

「うんっ! 島風に任せて!」

 

訓練開始の合図が鳴る。

 

島風は――

雪風の動きを待たずに、先に飛び出した。

 

「島風、待って!」

雪風が叫ぶ。

 

だが島風は振り返らない。

ただ、ひたすら前へ、前へ。

 

玲奈はすぐに訓練を止めた。

 

「島風、ストップ!」

 

島風は急停止し、振り返る。

 

「えへへ……ごめんね、提督。

 島風、速すぎちゃった?」

 

玲奈は首を振った。

 

「違うわ。

 あなた……“誰かと一緒に動く”のが苦手なのね?」

 

島風の笑顔が、一瞬だけ固まった。

 

---

 

◆ 島風の拒絶

 

訓練後、玲奈は島風を呼び止めた。

 

「島風。少し話せる?」

 

「えっ? う、うん……」

 

島風は珍しく落ち着きがなく、指先をいじっている。

 

玲奈は静かに切り出した。

 

「島風。

 あなた、どうしてそんなに速く動くの?」

 

「えっ……それは……島風は速いから……」

 

「違うわ。

 “速くなきゃいけない理由”があるんでしょう?」

 

島風は目を見開き、後ずさった。

 

「な、なんでそんなこと言うの……?」

 

「あなたの速さは、才能じゃない。

 “恐怖”から来ている」

 

島風の表情から、笑顔が消えた。

 

---

 

◆ 島風の告白

 

島風は震える声で呟いた。

 

「……島風ね……

 前の鎮守府で……」

 

玲奈は黙って待つ。

 

「……みんな、島風より遅かったの」

 

風が吹き、島風の髪が揺れる。

 

「敵が来た時……

 島風だけ、逃げられたの。

 速かったから……」

 

玲奈は息を呑んだ。

 

島風は続ける。

 

「でも……みんなは……

 島風の後ろで……沈んじゃった」

 

声が震える。

 

「島風、助けられなかった……

 振り返ったら……誰もいなかった……

 だから……」

 

島風は胸に手を当てた。

 

「島風は、速くなきゃいけないの。

 速くないと……また一人になっちゃうから……」

 

玲奈はそっと島風の肩に手を置いた。

 

「島風。

 あなたは“逃げた”んじゃない。

 “生き残った”のよ」

 

島風は涙をこぼした。

 

「でも……島風だけ……!」

 

---

 

◆ 玲奈の言葉

 

玲奈は島風を抱きしめた。

 

「島風。

 あなたは速い。

 でも、それは“逃げるため”じゃなくていい」

 

島風は玲奈の胸に顔を埋める。

 

「……じゃあ……島風は……どうしたらいいの……?」

 

「これからは――

 “仲間と一緒に走るため”に速くなればいい」

 

島風の呼吸が止まる。

 

「一人で走らなくていい。

 あなたの速さは、仲間を守る力になる」

 

島風は涙を拭き、玲奈を見上げた。

 

「……島風……みんなと走りたい……

 もう一人は……いやだよ……」

 

玲奈は微笑んだ。

 

「なら、最初の一歩を踏み出しましょう」

 

---

 

◆ 仲間たちの声

 

雪風が駆け寄る。

 

「島風ちゃん、今度は一緒に走ろうね!」

 

暁も手を挙げる。

 

「暁も一緒に走るわ! レディは仲間を置いていかないの!」

 

冬月は静かに言う。

 

「……速さは、仲間と合わせるためにもある」

 

島風は涙を浮かべながら笑った。

 

「……うんっ!

 島風、みんなと走る!」

 

玲奈はその姿を見て、胸が温かくなった。

 

(この子たち……本当に強くなってる)

 

---

 

◆ 第一章の締めへ

 

こうして、

島風の“速さの呪い”は、仲間と共に走る力へと変わり始めた。

 

暁、雪風、冬月、島風――

4人の駆逐艦がそれぞれの傷を乗り越え、

ようやく“艦隊”としての形が見え始める。

 

次は、

基礎訓練の総仕上げと、第一章の締め

へと進んでいく。

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