少しおかしな艦娘達と提督が生きるために 作:大和
――島風、速さの理由
朝の訓練場。
今日のメニューは「回避と連携の複合訓練」。
暁は前よりも安定し、雪風は笑顔に少しだけ本物の光が戻った。
冬月も、まだぎこちないが動きが良くなっている。
そして――
島風は、いつも通り元気いっぱいだった。
「提督ー! 島風、今日も速いよーっ!」
玲奈は苦笑しながらも、その動きを観察していた。
(島風……速すぎる。
“速い”というより、“逃げている”ような……)
島風の動きは軽快だが、どこか不自然だった。
まるで何かから必死に逃げているような、そんな速さ。
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◆ 訓練中の異変
「島風、次は雪風と連携して動いてみて」
「はーいっ!」
島風は雪風の横に立つ。
雪風は少し緊張した様子で島風を見る。
「島風ちゃん、よろしくね」
「うんっ! 島風に任せて!」
訓練開始の合図が鳴る。
島風は――
雪風の動きを待たずに、先に飛び出した。
「島風、待って!」
雪風が叫ぶ。
だが島風は振り返らない。
ただ、ひたすら前へ、前へ。
玲奈はすぐに訓練を止めた。
「島風、ストップ!」
島風は急停止し、振り返る。
「えへへ……ごめんね、提督。
島風、速すぎちゃった?」
玲奈は首を振った。
「違うわ。
あなた……“誰かと一緒に動く”のが苦手なのね?」
島風の笑顔が、一瞬だけ固まった。
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◆ 島風の拒絶
訓練後、玲奈は島風を呼び止めた。
「島風。少し話せる?」
「えっ? う、うん……」
島風は珍しく落ち着きがなく、指先をいじっている。
玲奈は静かに切り出した。
「島風。
あなた、どうしてそんなに速く動くの?」
「えっ……それは……島風は速いから……」
「違うわ。
“速くなきゃいけない理由”があるんでしょう?」
島風は目を見開き、後ずさった。
「な、なんでそんなこと言うの……?」
「あなたの速さは、才能じゃない。
“恐怖”から来ている」
島風の表情から、笑顔が消えた。
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◆ 島風の告白
島風は震える声で呟いた。
「……島風ね……
前の鎮守府で……」
玲奈は黙って待つ。
「……みんな、島風より遅かったの」
風が吹き、島風の髪が揺れる。
「敵が来た時……
島風だけ、逃げられたの。
速かったから……」
玲奈は息を呑んだ。
島風は続ける。
「でも……みんなは……
島風の後ろで……沈んじゃった」
声が震える。
「島風、助けられなかった……
振り返ったら……誰もいなかった……
だから……」
島風は胸に手を当てた。
「島風は、速くなきゃいけないの。
速くないと……また一人になっちゃうから……」
玲奈はそっと島風の肩に手を置いた。
「島風。
あなたは“逃げた”んじゃない。
“生き残った”のよ」
島風は涙をこぼした。
「でも……島風だけ……!」
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◆ 玲奈の言葉
玲奈は島風を抱きしめた。
「島風。
あなたは速い。
でも、それは“逃げるため”じゃなくていい」
島風は玲奈の胸に顔を埋める。
「……じゃあ……島風は……どうしたらいいの……?」
「これからは――
“仲間と一緒に走るため”に速くなればいい」
島風の呼吸が止まる。
「一人で走らなくていい。
あなたの速さは、仲間を守る力になる」
島風は涙を拭き、玲奈を見上げた。
「……島風……みんなと走りたい……
もう一人は……いやだよ……」
玲奈は微笑んだ。
「なら、最初の一歩を踏み出しましょう」
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◆ 仲間たちの声
雪風が駆け寄る。
「島風ちゃん、今度は一緒に走ろうね!」
暁も手を挙げる。
「暁も一緒に走るわ! レディは仲間を置いていかないの!」
冬月は静かに言う。
「……速さは、仲間と合わせるためにもある」
島風は涙を浮かべながら笑った。
「……うんっ!
島風、みんなと走る!」
玲奈はその姿を見て、胸が温かくなった。
(この子たち……本当に強くなってる)
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◆ 第一章の締めへ
こうして、
島風の“速さの呪い”は、仲間と共に走る力へと変わり始めた。
暁、雪風、冬月、島風――
4人の駆逐艦がそれぞれの傷を乗り越え、
ようやく“艦隊”としての形が見え始める。
次は、
基礎訓練の総仕上げと、第一章の締め
へと進んでいく。