少しおかしな艦娘達と提督が生きるために   作:大和

9 / 29
第2話-新たな力-

――建造と製造、足りないものだらけ

 

初出撃から一夜明けた鎮守府は、どこか浮き足立っていた。

暁は胸を張り、雪風は本物の笑顔を見せ、冬月は静かに誇らしげで、島風はいつも以上に元気だった。

 

だが――

玲奈の表情は重かった。

 

執務室の机には、資材報告書が山積みになっている。

 

「……燃料、弾薬、鋼材、ボーキ……全部ギリギリね」

 

大和が心配そうに覗き込む。

 

「玲奈さん……そんなに深刻なのですか?」

 

「深刻どころじゃないわ。

 このままじゃ、次の出撃すら危うい」

 

玲奈は資料を叩いた。

 

「司令部は“航路奪還を急げ”と言うくせに、

 資材は最低限しか送ってこない。

 建造なんて……夢のまた夢よ」

 

大和は静かに眉を寄せた。

 

「……意図的に、ですか?」

 

「ええ。

 “辺境送りの艦隊に資材を割く価値はない”ってことよ」

 

玲奈は苦笑した。

 

---

 

◆ 工廠の現実

 

玲奈と大和は工廠へ向かった。

そこには鳳翔と青葉、そして伊13がいた。

 

工廠は古く、壁にはひびが入り、機材は錆びついている。

鳳翔が申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「提督……申し訳ありません。

 この工廠では、まともな建造は難しいかと……」

 

青葉がカメラを構えながら言う。

 

「青葉、取材してみたんですけど……

 この工廠、中央の基準で言えば“廃棄寸前”レベルですよ」

 

伊13は小さく呟いた。

 

「……ここ、怖い……」

 

玲奈はため息をついた。

 

「わかってる。

 でも、ここでやるしかないのよ」

 

---

 

◆ 資材の計算

 

玲奈はホワイトボードに数字を書き出した。

 

- 燃料:残りわずか

- 弾薬:最低限

- 鋼材:建造1回分にも満たない

- ボーキ:空母運用にギリギリ

 

「……これじゃ、建造は無理ね」

 

暁が手を挙げる。

 

「て、提督……じゃあ、どうするの?」

 

玲奈は答えた。

 

「装備を作るわ。

 建造は無理でも、装備なら少しは作れる」

 

雪風が首を傾げる。

 

「装備って……どんなのを?」

 

「駆逐艦用の魚雷、対潜装備、偵察機……

 今ある資材で作れるものを全部作る」

 

冬月が静かに言う。

 

「……地味だけど、大事」

 

島風は元気に手を挙げた。

 

「島風、速くなる装備がいい!」

 

玲奈は苦笑した。

 

「あなたは十分速いわよ」

 

---

 

◆ 製造開始 ――“足りない”の連続

 

工廠に火が入り、製造が始まった。

 

鳳翔が手際よく機材を動かし、

青葉が記録を取り、

伊13が資材を運ぶ。

 

だが――

 

「提督、鋼材が足りません!」

「ボーキがもう底です!」

「燃料が……これ以上は危険です!」

 

次々と問題が発生する。

 

玲奈は歯を食いしばった。

 

(……わかってた。

 でも、ここまでとは……)

 

大和がそっと肩に手を置く。

 

「玲奈さん。

 無理をしないでください」

 

「無理しなきゃ、戦えないのよ」

 

玲奈は苦笑しながらも、手を止めなかった。

 

---

 

◆ 小さな成果

 

数時間後――

工廠に、かすかな光が灯った。

 

「提督! 出来ました!」

暁が駆け寄る。

 

鳳翔が微笑む。

 

「駆逐艦用の新型魚雷です。

 威力は控えめですが、命中精度が高いタイプです」

 

雪風が目を輝かせる。

 

「雪風、これ使ってみたいです!」

 

冬月は静かに頷く。

 

「……悪くない」

 

島風は跳ねる。

 

「島風も欲しい!」

 

玲奈は魚雷を手に取り、深く息を吐いた。

 

「……これだけでも、十分よ。

 今の私たちには“前に進む力”になる」

 

大和が微笑む。

 

「玲奈さん。

 あなたの判断は正しいです」

 

玲奈は照れくさそうに笑った。

 

---

 

◆ 新しい仲間は来るのか

 

その時――

通信室から青葉が走ってきた。

 

「提督! 司令部から通信です!」

 

玲奈の心臓が跳ねる。

 

(まさか……新しい艦娘が?

 それとも……)

 

青葉が息を整え、報告した。

 

「司令部より――

 “資材送付は当面見送り。

 戦力補強の予定なし”」

 

訓練場の空気が凍りついた。

 

暁が震える。

 

「……補強、なし……?」

 

雪風が呟く。

 

「じゃあ……この10人で……?」

 

冬月は静かに目を閉じた。

 

島風は不安そうに玲奈を見る。

 

「提督……どうするの……?」

 

玲奈は拳を握りしめた。

 

「どうするも何も――

 この10人で戦うしかない」

 

大和が隣に立つ。

 

「玲奈さん。

 私たちは……あなたと共にあります」

 

玲奈は深く息を吸い、皆を見渡した。

 

「いい?

 資材がなくても、仲間がいれば戦える。

 私たちは――絶対に負けない」

 

駆逐艦たちの表情に、再び光が戻る。

 

---

 

◆ 第二章の核心へ

 

こうして、

資材不足の中での“戦力補強の苦闘” は幕を閉じた。

 

新しい仲間は来ない。

資材も来ない。

司令部は見捨てている。

 

それでも――

この艦隊は前に進む。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。